保健衛生業3,810事業場への長時間労働監督|勤怠・未払い・健康確保の監査表
法令違反率として一般化できる調査ではありません。長時間労働が疑われた対象への監督結果から、自院の勤怠・賃金・健康確保を一体で点検します。
厚生労働省は2026年9月15日、「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」を公表しました。保健衛生業では3,810事業場が監督対象となり、労働基準関係法令違反が3,102、違法な時間外労働が1,460、賃金不払残業が253、過重労働による健康障害防止措置の未実施が673事業場で確認されました。
この分母は無作為に選ばれた全医療・介護事業場ではありません。各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重労働による過労死等の労災請求が行われた事業場を対象とする監督です。したがって「保健衛生業の81.4%が違反」と一般化してはいけません。
この記事では、監督結果を病院・診療所・介護事業者の内部監査へ翻訳します。個別の労働時間該当性や法的適用を確定する記事ではありません。
監督結果の対象と数値を正しく読む
| 区分 | 監督対象 | 法令違反 | 違法な時間外労働 | 賃金不払残業 | 健康障害防止措置未実施 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全業種 | 29,150 | 22,882 | 11,228 | 1,901 | 5,919 |
| 保健衛生業 | 3,810 | 3,102 | 1,460 | 253 | 673 |
保健衛生業には医療・介護等が含まれ、資料の当該表には病院、診療所、訪問看護、介護施設などの内訳がありません。看護師だけの結果でもありません。
監査は勤怠の合計時間だけで終えない
| 監査層 | 照合する証跡 | 確認すること |
|---|---|---|
| 実態 | 入退館、PC、電子カルテ、電話・呼出し等 | 所定外に業務が発生していないか |
| 申請 | 打刻、残業申請、修正履歴、承認・差戻し | 乖離の理由と修正者が追えるか |
| 賃金 | 給与明細、割増区分、締め期間 | 認定時間と支給が一致するか |
| 協定 | 36協定、就業規則、対象職種・上限 | 現行版と実運用が一致するか |
| 健康 | 面接指導、産業医、衛生委員会、措置記録 | 接近者を把握し、申出・措置が機能するか |
PCや電子カルテのログは有力な手掛かりですが、ログイン時間を自動的にすべて労働時間と断定するものではありません。逆に、打刻後の記録、研修、持帰り作業、オンコール対応など、単一ログで捉えにくい業務もあります。本人確認と業務実態を合わせて判断します。
申請差戻しと修正履歴を月次で見る
総残業時間が減っていても、申請されない時間が増えていれば改善とはいえません。部署・職種・雇用形態・時間帯別に次を確認します。
- 残業申請の件数・時間・承認率
- 差戻し・削減・取消しの件数、理由、実行者
- 打刻と入退館・PC・記録時刻の乖離
- 研修、委員会、申し送り、着替え等の扱い
- 退勤後の電話・チャット・持帰り業務
- 翌月への付替え、定額手当との関係
監査目的は、個人を責めることではなく、申請しづらい承認構造や配置不足を見つけることです。内部通報・相談者が不利益を受けない取扱いも、監査計画に含めます。
健康確保は80時間到達後だけの作業にしない
厚労省資料は、監督対象事業場に対して、労働時間の適正把握、一定時間を超えた医師への情報提供、面接指導、勤務状況に応じた措置などを指導した状況を示しています。個別の義務・対象者は法令、通達、職種、協定等で異なるため、産業医・社会保険労務士・所轄機関と確認します。
内部運用では、月末の集計を待たず、上限や健康リスクに接近する職員を週次で把握します。確認するのは時間数だけではありません。
- 連続勤務、夜勤回数、勤務間隔
- 申出方法が本人に分かるか
- 面接までの日数と勤務上の措置
- 部署責任者・人事・産業医への情報連携
- 衛生委員会での傾向確認と是正期限
医師の特例を看護師へ流用しない
医師には時間外労働の上限規制に特例がありますが、その枠組みを看護師や他職種へそのまま適用できません。職種別の法令・協定・労働条件を確認し、院内共通の「医療者ルール」で一括処理しないでください。
また、監督結果は違反を確認した後の是正だけを目的に使わず、業務配分、委員会、記録、会議、応援体制の見直しにつなげます。医師の働き方改革と看護部の業務移管とは論点を分け、移管先の看護師に未計測の業務が増えていないかを確認します。
30日で行う監査の順序
- 対象部署・職種・期間・証跡を決める
- 4週間分の勤怠と関連ログを突合する
- 差戻し・未申請・賃金差を本人確認する
- 協定、就業規則、健康確保手順と照合する
- 是正担当、期限、再計算・追加支給の要否を決める
- 翌月に同じ乖離が再発したかを再監査する
個別の未払い額や法違反の有無は、記事だけで確定せず専門家・所管機関へ確認してください。勤怠、業務工程、健康確保の証跡を整理する支援は法人向け相談窓口で扱います。
この記事の確認範囲
- 原典公表日:2026年9月15日
- 最終確認日:2026年9月19日
- 確認済み:厚労省公表ページと監督指導結果PDF
- 未確認:個別施設の違反、職種別内訳、この記事を読む施設への法的適用
- 数値の扱い:長時間労働が疑われた監督対象の件数であり、業界全体の違反率ではありません