医師の働き方改革で看護部の仕事だけ増えていないか|第2回資料を3点検へ変える
医師時間の短縮だけを追わず、移管先の看護職・支援人材の時間、安全、定着、研修要件を同じ表で確認します。
医師の時間外労働は減った一方で、看護師、看護助手、医師事務作業補助者の業務と残業が増えていないでしょうか。タスク・シフトは、移管元の時間だけを短縮しても病院全体の改善にはなりません。
厚生労働省の2026年9月10日「医師の働き方改革の推進等に関する検討会」資料は、ICT・AIによる効率化、都道府県ごとの医療勤務環境改善支援センター(勤改センター)の体制差、医療専門職支援人材の確保・定着、看護職員の研修などを論点にしています。会議資料の論点を、新しい義務や確定結論と先取りせず、自院の点検に使います。
点検1:移管前後の時間を職種別に測る
| 見る数字 | よくある見落とし |
|---|---|
| 医師の対象業務時間 | 短縮だけを成果にする |
| 看護師の追加時間 | 説明、入力、照会、確認が増える |
| 看護助手・事務の時間 | 教育・差し戻しを含めない |
| 患者待ち時間 | 担当変更による再説明を見ない |
| インシデント・未完了 | 件数だけで情報欠落を見ない |
移管前の基準値がなければ、導入後に改善を証明できません。2週間だけでも、業務名、回数、一件当たり時間、時間帯、差し戻し理由を測ります。
点検2:支援人材を採用数ではなく定着条件で見る
資料3は、看護助手や医師事務作業補助者など医療専門職支援人材の確保・定着促進に向けた手引き整備を挙げています。手引きを待つ間も、自院で次を確認できます。
- 業務範囲と「しない業務」が文書化されているか
- 初日、1週間、1か月の教育担当がいるか
- 看護師が毎回教え直す時間を測っているか
- 早期離職理由を本人面談と配置側の両方で記録しているか
- 時給だけでなく、シフト、身体負担、相談先を求人票へ書いているか
採用人数を増やしても教育担当の看護師が疲弊すれば、支援人材と看護師の両方が離職します。看護助手の定着設計もあわせて確認してください。
点検3:研修要件と配置を同時に見る
資料は2026年度診療報酬改定に関連し、医師事務作業補助者の配置や、術前術後管理に携わる看護職員の適切な研修修了を示しています。算定要件の個別適用は通知・所管局へ確認し、経営会議では次を照合します。
- 対象部署と必要人数
- 研修修了者と未修了者
- 受講日、勤務扱い、代替要員
- 修了後の配置と役割
- 夜勤・休暇・離職への影響
研修を受けさせるだけで、対象業務に配置できなければ投資が遊休化します。
勤改センターを「相談先一覧」で終わらせない
都道府県ごとに勤改センターの体制・活動内容に差があるとの論点があります。自県の年次活動計画、支援メニュー、専門家、申込条件、費用、支援後の成果物を確認します。他県の好事例が自県でも同じ条件で受けられるとは限りません。
相談時には、抽象的な「働き方改革」ではなく、対象部署、時間データ、困っている業務、90日で変えたい指標を一枚にすると支援を受けやすくなります。
経営の判断軸
独自の視点は、医師の短縮時間と、移管先の追加時間を差し引いた「病院全体の正味時間」で判断することです。正味時間、安全、離職、患者待ち時間のうち一つでも悪化したら、役割分担やシステムを修正します。
トップマネジメント研修の実装とつなぎ、会議を受講で終わらせず、担当・期限・中止基準を持つ90日計画にします。勤務環境・業務分担の整理相談では、移管前後の時間と定着コストを同じ表にします。
タスク・シフトを止めて見直す条件
業務移管は開始日だけでなく、見直し条件を先に決めます。
- 移管先職種の時間外勤務や休憩未取得が基準時より増える
- 医師への確認が遅れ、患者待ち時間や未完了業務が増える
- 教育担当が固定されず、担当者ごとに手順が変わる
- 本来業務と移管業務の優先順位を現場が判断できない
- インシデントや差し戻しの原因が「慣れ」で処理される
該当したら、担当者個人への注意だけで終わらせず、対象業務、権限、情報、教育、配置のどこを戻すか決めます。移管を全面撤回するか継続するかの二択ではなく、対象時間帯や患者群を絞る修正も選択肢です。
経営会議には、医師の削減時間、移管先の追加時間、教育時間、待ち時間、安全上の差し戻しを同じページで出します。部門別の成果だけで評価せず、病院全体で正味時間と安全が改善したかを承認条件にします。
参考資料
最終確認日:2026年9月11日。当日の発言は議事録公表後に確認し、検討資料を確定義務として扱いません。