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特定技能外国人を受け入れる社会福祉施設、監督指導を受けた事業場の76.6%に法令違反|割増賃金・健診後の意見聴取・労働条件の明示を点検する

76.6%は全国の施設の違反率でも、外国人職員に対する違反の割合でもありません。数字の読み方を押さえたうえで、夜勤・待機・研修の時間、健診で所見のあった職員の記録、雇入れ時の書面を、全職員を対象に確かめる表を用意しました。

この記事は、特定技能の介護職員を受け入れている、あるいは受け入れを検討している社会福祉法人・介護施設の理事長、施設長、事務長、人事労務担当者に向けたものです。介護部門を併設する病院の人事担当者にも関係します。

厚生労働省は2026年9月15日、全国の労働基準監督署などが令和7年(2025年)に行った監督指導の結果を公表しました。特定技能外国人を使用する事業場を業種別に見た表に「社会福祉施設」の行があり、監督指導を受けた1,047事業場のうち802事業場、割合にして76.6%で労働基準関係法令の違反が認められています。

先に結論を書きます。この76.6%は、全国の社会福祉施設の違反率ではありません。外国人職員に対する違反の割合でもありません。一方で、表に挙がった3つの違反事項(割増賃金の支払、健康診断結果についての医師等からの意見聴取、労働条件の明示)は、どれも施設の中の書類で今日から確かめられるものです。読み終えると、数字をどこまで自施設に当てはめてよいかと、誰がどの書類を見ればよいかが決められます。

公表された数字

別紙2「特定技能外国人を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況」から、社会福祉施設と全業種の行を抜き出します。

区分監督指導実施事業場数違反事業場数(違反率)表に挙げられた主な違反事項
社会福祉施設1,047802(76.6%)割増賃金の支払 271(25.9%)、健康診断結果についての医師等からの意見聴取 240(22.9%)、労働条件の明示 191(18.2%)
全業種8,0826,179(76.5%)安全基準 1,676(20.7%)、健康診断結果についての医師等からの意見聴取 1,349(16.7%)、割増賃金の支払 1,315(16.3%)

全業種の実施数は前年の5,750事業場から8,082事業場へ、約1.4倍に増えました。違反率は前年76.4%、令和7年76.5%でほぼ同じです。特定技能外国人に関する重大・悪質な違反として送検されたのは9件でした。

別紙2は違反事項に根拠条文を添えています。割増賃金の支払は労働基準法第37条、医師等からの意見聴取は労働安全衛生法第66条の4、労働条件の明示は労働基準法第15条です。本記事はこの表記をそのまま引いており、条文の解釈や計算方法までは扱いません。

読み違えやすい4つの点

対象は無作為に選ばれた事業場ではない

別紙2の冒頭には、特定技能外国人を使用しており「労働基準関係法令違反が疑われる」8,082事業場に監督指導を実施した、と書かれています。報道発表の本文にも、違反の疑いがある事業場に対して監督指導を実施しているとあります。つまり、疑いがあって立ち入った先の7割台で違反が確認された、という数字です。疑いをどう把握したか(通報、災害、他機関からの情報など)の内訳は、資料に記載がありません。

参考として、特定技能外国人を受け入れている特定技能所属機関は令和7年末時点で62,996機関とされています(出入国在留管理庁調べ)。ただしこれは法人等の数で、事業場数とは異なると注記されています。8,082を62,996で割って「何割に監督が入った」と計算することはできません。

外国人職員に対する違反の割合ではない

注3は、違反は事業場に認められたものであり、特定技能外国人以外の労働者に関する違反も含まれる、としています。802事業場のうち、特定技能の職員本人に関する違反がいくつあったかは公表されていません。資料から言えるのは「特定技能の職員がいる事業場で、誰かの労働条件に違反が見つかった」ところまでです。在留資格や国籍と違反の多さを結びつける根拠は、この資料にはありません。

3つの違反事項は足し上げられない

注4のとおり、違反事項は主なものだけが掲載され、1つの事業場に2つ以上あればそれぞれに計上されています。271、240、191を足した702は、違反事業場数802とは別物です。

割合の分母にも注意が要ります。271を1,047で割ると25.9%になるので、表の割合は監督指導を受けた事業場全体に対するものです。編集部で違反が認められた802事業場を分母に置き直すと、割増賃金の支払は約33.8%になります。違反が見つかった施設のおよそ3つに1つで、割増賃金が問題になっていた計算です。

病院の行はなく、社会福祉施設の前年値もこの資料にはない

注1によると、「主な業種」は令和7年12月末時点で特定技能1号の在留者が多い5分野(飲食料品製造、介護、工業製品製造、建設、外食業)に関連する業種を取りまとめたものです。病院や診療所に当たる行はありません。5業種の実施数を足すと5,772で、全業種8,082との差は2,310事業場ですが、この中に医療機関が何件含まれるかは分かりません。

また、注2の内訳は「社会福祉施設…社会福祉施設」とあるだけで、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、訪問系の事業所などのどこまでを含むかは示されていません。社会福祉施設の前年の数値も別紙2には載っていないため、増減は判断できません。

社会福祉施設だけ、最初に挙がるのが割増賃金

別紙2の5業種を並べると、最初に挙げられている違反事項は、食料品製造と工業製品製造が安全基準、建設が健康診断結果についての医師等からの意見聴取、飲食店が労働時間です。割増賃金の支払が先頭に来るのは社会福祉施設だけでした。

全業種との差も見ておきます。割増賃金の支払は全業種16.3%に対し社会福祉施設25.9%、医師等からの意見聴取は16.7%に対し22.9%、労働条件の明示は14.6%に対し18.2%です。機械や設備の安全よりも、時間の数え方と書類の整え方に指摘が集まっている、というのが表から読み取れる範囲です。なぜそうなるのかの分析は資料にありません。夜勤や待機が多いから、といった理由づけは編集部の推測にとどまるため、ここでは断定しません。

介護の事例は掲載されていない

別紙2には監督指導事例が3件、送検事例が2件載っています。業種は金属製品製造業、飲食店、鉄鋼業、食料品製造業で、社会福祉施設や介護の事例は掲載されていません。

介護に引きつけて読める箇所は2つあります。1つは製造業の2つの事例で、会社側の対応として作業手順を母国語で教育したこと、母国語を併記した掲示物を使ったことが挙げられている点です。もう1つは飲食店の事例で、年次有給休暇の管理表の様式を全社で変え、現場の管理者に労働法の教育を行ったとされている点です。どちらも「本人に伝わる形にする」「現場の管理者が制度を知っている」という、業種を問わない対応です。

このほか、特定技能外国人からの申告は150件で、内容は賃金・割増賃金の不払が131件と最も多くなっています(業種別の内訳は資料に記載がありません)。監督指導の結果、特定技能外国人に係る法令違反が認められた事案は出入国在留管理機関へ通報することとされ、令和7年の通報は502件、逆方向の通報は101件でした。

3つの違反事項を現場の場面に置き換えた点検表

ここからは編集部の整理です。表の「確認する問い」は、法令上の結論を示すものではなく、施設の中で事実をそろえるための問いです。労働時間に当たるかどうかなどの判断は実態によって変わるため、事実をそろえてから、所轄の労働基準監督署か顧問の社会保険労務士に尋ねてください。対象は特定技能の職員だけでなく、日本人を含む全職員です。

違反事項現場の場面と確認する問い確認する書類担当確認日
割増賃金の支払夜勤の開始・終了時刻と休憩(仮眠)の実績が勤怠記録に残り、賃金計算に使った時間と一致しているか勤務表の実績版、勤怠データ、賃金台帳人事労務担当、介護主任(記入)
割増賃金の支払宿直やオンコール待機の時間をどう扱っているか。労働時間に数えていない場合、その根拠となる書類があり、呼び出しに対応した時間が記録されているか宿直・待機の規程、根拠書類、呼び出し記録施設長、人事労務担当(記入)
割増賃金の支払勤務時間外の研修、委員会、申し送り、記録入力について、参加や実施の指示があったかどうかと時間を把握しているか研修計画、参加記録、時間外勤務の申請記録教育担当、各フロアの責任者(記入)
割増賃金の支払割増賃金の計算の基礎に入れている手当と外している手当を一覧にし、外している理由を説明できるか賃金規程、給与計算の設定内容、賃金台帳人事労務担当、給与計算の委託先(記入)
医師等からの意見聴取直近の健康診断で所見があった職員の一覧があり、一人ずつ、医師の意見を聴いた日と内容が記録されているか健康診断の結果、医師の意見の記録衛生管理の担当者(記入)
医師等からの意見聴取夜勤専従、中途入職、短時間勤務、派遣から直接雇用に切り替えた職員などが、健診と意見聴取の対象から漏れていないか職員名簿、健診の受診者名簿衛生管理の担当者、人事労務担当(記入)
労働条件の明示雇入れ時に渡した書面の控えが全職員分そろい、夜勤の有無、就業場所、手当などが現在の勤務実態と食い違っていないか労働条件通知書の控え、雇用契約書、直近3か月の勤務表採用担当、人事労務担当(記入)
労働条件の明示書面の内容を、本人が理解できる言語や方法で説明したか。説明した人と日付が残っているか翻訳版や説明資料、説明の記録採用担当、受け入れ担当(記入)

最後の行は、法令が求める範囲を述べたものではありません。書面を渡した事実があっても、本人が内容を理解していなければ、後の賃金や勤務をめぐる行き違いは防げないという実務上の観点から加えました。日本語を母語とする職員でも、夜勤手当の内訳や待機の扱いを説明されないまま入職している例がないかを、同じ行で確かめられます。

点検の順番と担当の決め方

順番は、書類がすでにあるものから始めるのが現実的です。

  1. 労働条件通知書の控えを全職員分そろえ、欠けている人を洗い出す(採用担当)
  2. 健診で所見のあった職員の一覧と、医師の意見の記録を突き合わせる(衛生管理の担当者)
  3. 直近1か月の夜勤・待機・時間外研修の実績を、賃金台帳の支給時間と照らす(人事労務担当と現場の責任者)

3が最も手間がかかります。全員分を一度に見ようとせず、まず夜勤回数の多い職員と入職1年未満の職員から数名を選び、勤務表、勤怠データ、賃金台帳の3点が一致するかを見ます。ずれが出たら、直す前に「どの場面で、どの書類同士がずれたか」を記録してください。原因が勤怠の打刻なのか、規程の書き方なのか、給与計算の設定なのかで、相談先も直し方も変わります。

登録支援機関に任せきりにしない

これも編集部の見方です。別紙2は、違反を「事業場に認められたもの」と表現しています。登録支援機関に支援を委託していたかどうかで結果を分けた集計は、資料にありません。

賃金の計算、健診後の医師の意見聴取、雇入れ時の書面は、どれも雇用主である法人の中で行われる仕事です。生活支援や各種の届出を外部に委託していても、この3つの担当者は法人の中に置き、点検表の「担当」欄に個人名を入れておくことを勧めます。担当が「委託先」としか書けない行があれば、そこが最初に確かめる場所です。

よくある質問

特定技能の職員がいない施設にも関係がありますか

今回の集計は特定技能外国人を使用する事業場だけを対象にしており、受け入れていない施設の違反率はこの資料からは分かりません。ただ、注3のとおり、数えられている違反には特定技能外国人以外の職員に関するものも含まれます。点検する書類は、受け入れの有無にかかわらず同じです。

病院は今回の結果と無関係ですか

業種別の表に病院の行がないだけで、対象外とは書かれていません。全業種8,082事業場に医療機関が含まれるかどうかは、公表資料には記載がありません。介護施設を併設する法人は、施設単位で点検表を使ってください。

違反が認められると、その後どうなりますか

資料に書かれているのは3点です。事例では是正勧告や指導が行われ、会社側が対応を取っています。度重なる指導でも是正しないなど重大・悪質な事案は送検され、令和7年は9件でした。特定技能外国人に係る違反が認められた事案は、出入国在留管理機関へ通報されます。通報後の在留や受け入れへの影響は、別紙2には書かれていません。

数字より先に、自施設の書類を見る

76.6%という数字は、疑いがあって調べられた事業場の結果です。自施設がそこに入るかどうかは、この数字からは分かりません。分かるのは、社会福祉施設で指摘が集まった場所が、割増賃金、健診後の意見聴取、労働条件の明示の3つだったということです。3つとも、国籍を問わず全職員に関わります。

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採用時の説明資料と勤務実態の突き合わせ、職員への説明の仕方を整理したい場合は、はたらく看護師さんへのお問い合わせからご連絡ください。どの書類同士を比べるかの整理からお手伝いします。法令違反に当たるかどうかの判断は、労働基準監督署や社会保険労務士にご相談ください。

参考資料

未確認の事項:監督指導の対象とした事業場をどのように把握したかの内訳、社会福祉施設802事業場のうち特定技能外国人本人に関する違反の件数、社会福祉施設の前年の数値、「社会福祉施設」に含まれる施設・事業所の種類、病院・診療所への監督指導の件数、申告150件と送検9件の業種別内訳、出入国在留管理機関への通報後の取り扱いは、公表資料に記載がなく、本文では扱っていません。特定技能「介護」分野の在留者数も今回の資料には含まれていません。

最終確認日:2026年9月19日。本記事の数値は監督指導が行われた事業場に限った集計で、全国の社会福祉施設の実態を示すものではありません。点検表は編集部が作成した整理用の表であり、個別の法令適合の判断は労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。