バイタルサインの測定方法と正常値|異常値の報告基準【看護師必携】

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バイタルサインの測定は、看護師が毎日繰り返し行う最も基本的な観察手技であり、患者さんの全身状態の変化を最も早くキャッチできる「看護師の目」です。体温・脈拍・血圧・呼吸・SpO2の5つのバイタルサインを正確に測定し、異常を速やかに発見・報告できる能力は、あらゆる看護場面の土台になります。「いつもと違う」に気づくためには、正常値を知り、測定技術を磨き、変化の意味を理解することが不可欠です。

この記事では、5つのバイタルサインそれぞれの正しい測定方法、年齢別の正常値一覧表、異常値の判断基準、SBARを使った医師への報告方法、測定タイミングの考え方、意識レベル(JCS・GCS)の評価法まで、看護師に必要なバイタルサインの知識を網羅的に解説します。

体温の測定方法と正常値

体温は生体の代謝活動を反映する重要なバイタルサインです。感染症の早期発見、術後の経過観察、解熱剤の効果判定など、あらゆる場面で必要になります。

測定部位と方法

腋窩温(わきの下):最も一般的な測定部位です。電子体温計を腋窩中央(腋窩動脈の真上)に当て、腕を体に密着させて測定します。予測式電子体温計では約15〜30秒、実測式では10分程度で測定が完了します。腋窩に汗をかいている場合は、拭き取ってから測定してください。汗が体温計と皮膚の間に入ると低めの値が出ます。

口腔温:舌下に体温計を入れて測定します。腋窩温より0.3〜0.5度高く出るのが一般的です。飲食後30分以内は正確な値が得られないため、タイミングに注意しましょう。意識障害のある患者さんや、口腔内の処置後には不適です。

鼓膜温(耳式体温計):赤外線センサーで鼓膜からの放射熱を測定します。数秒で測定できる利便性がありますが、耳道の湾曲に合わせて正しく挿入しないと不正確な値が出ます。耳介を後上方に引っ張りながらプローブを挿入するのがコツです。

直腸温:中枢温に最も近い値が得られます。新生児や全身麻酔中の体温管理で用いられることがあります。成人では日常的にはあまり使用されません。

体温の正常値と異常

分類腋窩温の目安
低体温35.0度未満
正常36.0〜37.0度
微熱37.0〜37.9度
中等度発熱38.0〜38.9度
高熱39.0度以上

体温には日内変動があり、朝は低く、午後〜夕方に0.5〜1.0度程度高くなるのが生理的です。高齢者では基礎体温が低い傾向があり、37.5度でも感染症を示唆している場合があります。逆に、免疫抑制状態の患者さんでは、重症感染でも発熱しないことがあるため、体温だけでなく他のバイタルサインも合わせて評価しましょう。

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脈拍の測定方法と正常値

脈拍は心臓の拍動を末梢血管で触知するもので、心拍数・リズム・脈の強さから心血管系の状態を評価できます。

測定のポイント

橈骨動脈(手首の親指側)が最も一般的な測定部位です。人差し指・中指・薬指の3本の指腹で橈骨動脈に軽く触れ、15秒間のカウント×4(または30秒×2)で1分間の脈拍数を算出します。不整脈がある場合は、必ず60秒間(1分間)フルカウントしてください。15秒カウントでは不整脈を見逃すことがあります。

脈拍を測定する際は、数だけでなく「リズム」と「強さ」も評価しましょう。リズムが不規則な場合は不整脈の可能性があります。脈が弱い(微弱脈)場合はショックや心不全の可能性、脈が強く跳ねる(大脈)場合は大動脈弁閉鎖不全症や発熱などが考えられます。

年齢別の正常値

年齢脈拍数(回/分)
新生児120〜160
乳児100〜150
幼児80〜130
学童70〜110
成人60〜100
高齢者60〜100(やや低めの傾向)

血圧の測定方法と正常値

血圧は心臓のポンプ機能と血管の状態を反映する重要な指標です。正確な測定には、適切なカフサイズの選択と正しい測定方法が欠かせません。

測定手順と注意点

血圧測定の手順と正確な値を得るためのポイントを説明します。

  • カフサイズ:上腕の周径の40%以上の幅のカフを使用。カフが小さすぎると高めの値が、大きすぎると低めの値が出る
  • 測定肢位:カフの中央が心臓と同じ高さに来るように調整。腕が心臓より低いと高めの値、高いと低めの値になる
  • 安静:測定前5分以上の安静が理想。運動直後、喫煙直後、飲食直後は避ける
  • カフの巻き方:上腕にぴったりと巻く。指1〜2本入る程度のゆとりが目安。カフの下端は肘窩の2〜3cm上方
  • 左右差:初回測定では両腕で測定し、10mmHg以上の差がある場合は高い方の腕を基準とする。血管疾患のスクリーニングにもなる

血圧の正常値と高血圧分類

分類収縮期血圧拡張期血圧
正常血圧120mmHg未満かつ 80mmHg未満
正常高値血圧120〜129mmHgかつ 80mmHg未満
高値血圧130〜139mmHgかつ/または 80〜89mmHg
I度高血圧140〜159mmHgかつ/または 90〜99mmHg
II度高血圧160〜179mmHgかつ/または 100〜109mmHg
III度高血圧180mmHg以上かつ/または 110mmHg以上

低血圧については明確な基準値はありませんが、一般的に収縮期血圧90mmHg以下は低血圧とされ、ショックの徴候として注意が必要です。起立性低血圧(体位変換時に収縮期血圧が20mmHg以上低下)は転倒リスクの評価に重要です。

呼吸の測定方法と正常値

呼吸は「最も見落とされやすいバイタルサイン」と言われています。実際、多くの急変事例で、呼吸数の変化が最初の異常サインであったことが報告されています。

測定のコツ

呼吸数の測定は、患者さんに気づかれないように行うことがポイントです。「呼吸を数えていますよ」と意識させると、呼吸パターンが変わってしまいます。脈拍を測定するふりをしながら(手首に指を当てたまま)、胸郭の動きを観察して呼吸数をカウントする方法が一般的です。30秒間カウントして2倍するか、不規則な場合は60秒間フルカウントします。

呼吸数だけでなく、呼吸の深さ、リズム、パターン、努力呼吸の有無も評価しましょう。

  • 異常な呼吸パターン:チェーンストークス呼吸(周期的に増減→無呼吸を繰り返す)、クスマウル呼吸(深く速い呼吸:代謝性アシドーシス)、ビオー呼吸(不規則な無呼吸:脳幹障害)
  • 努力呼吸の徴候:鎖骨上窩・肋間の陥没、鼻翼呼吸、口すぼめ呼吸、起座呼吸(横になれない)

年齢別呼吸数の正常値

年齢呼吸数(回/分)
新生児30〜60
乳児30〜50
幼児20〜40
学童18〜30
成人12〜20

成人で呼吸数が24回/分以上の場合は頻呼吸であり、何らかの異常を示唆しています。呼吸数の増加は急変の24時間前に最も早く出現する徴候であることが研究で示されています。

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SpO2の測定とSBARによる報告

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は、パルスオキシメーターで非侵襲的に動脈血の酸素化を評価できるツールです。

SpO2の測定ポイントと正常値

パルスオキシメーターを指先(人差し指が一般的)に装着し、安定した値が表示されるまで数秒〜数十秒待ちます。測定値に影響を与える要因として、末梢循環不良(冷え、ショック)、マニキュア(特に黒や青の色)、体動、強い外光、一酸化炭素中毒(偽高値を示す)などがあります。

正常値は96〜100%です。90%以下は呼吸不全の基準であり、緊急対応が必要です。ただし、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんでは、普段から88〜92%程度の方もおり、個別の目標値を確認してください。CO2ナルコーシス(二酸化炭素の蓄積による意識障害)のリスクがある患者さんに高濃度酸素を投与すると呼吸抑制が起こるため、酸素投与の判断は慎重に行いましょう。

SBARによる異常値の報告

バイタルサインの異常を医師に報告する際は、SBAR(エスバー)のフレームワークを使うと、簡潔かつ的確に伝えることができます。

  • S(Situation:状況):「○号室の△△さんについてご報告です。血圧が80/50に低下しています」
  • B(Background:背景):「今朝まで130/80で安定していました。○○の手術後2日目で、午前中から下腹部痛の訴えがあります」
  • A(Assessment:評価):「術後出血の可能性を考えています。Hb低下の可能性もあります」
  • R(Recommendation:提案):「診察をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか。採血のオーダーも必要でしょうか」

SBARを使うことで、必要な情報が漏れなく伝わり、医師も迅速に判断できます。「なんとなく変」という感覚も大切にしてください。数値だけでは表現できない「患者さんの雰囲気の変化」に気づけるのは、ベッドサイドにいる看護師だけです。

意識レベルの評価|JCSとGCS

意識レベルの評価は、バイタルサインと合わせて患者さんの全身状態を把握するために欠かせません。日本ではJCS(Japan Coma Scale)が広く使われ、国際的にはGCS(Glasgow Coma Scale)が標準です。

JCS(ジャパン・コーマ・スケール)

レベル状態
0清明(意識障害なし)
I-1見当識は保たれているが、今ひとつはっきりしない
I-2見当識障害がある
I-3自分の名前・生年月日が言えない
II-10普通の呼びかけで開眼する
II-20大きな声または体を揺さぶることで開眼する
II-30痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと開眼する
III-100痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
III-200痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
III-300痛み刺激に反応しない

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)

GCSは開眼(E)、言語反応(V)、運動反応(M)の3項目で評価し、合計3〜15点でスコア化します。満点の15点が清明、8点以下は重度の意識障害とされ、気管挿管を考慮するレベルです。

意識レベルの変化は、脳血管障害、頭部外傷、代謝異常、薬物中毒、感染症など、さまざまな緊急疾患のサインです。「さっきまで話していたのに反応が鈍くなった」という変化は、たとえ軽度でも速やかに医師に報告してください。

バイタルサインの測定は看護の基礎中の基礎ですが、「正確に測る」「異常に気づく」「的確に報告する」この3つを高いレベルで実践できる看護師は、どの職場でも重宝されます。バイタルサインの測定スキルを活かしてキャリアアップを目指す方や、より専門性の高い環境で働きたいと考えている方は、自分の市場価値を確認するためにも転職の情報収集から始めてみてください。

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