褥瘡(じょくそう)ケアの基本|予防・アセスメント・処置の完全ガイド

編集部
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褥瘡(じょくそう)は、持続的な圧迫によって皮膚や皮下組織が障害される創傷であり、予防と早期発見・適切な治療が看護師の腕の見せどころです。厚生労働省の調査によると、入院患者の褥瘡有病率は約2〜3%ですが、ICUや長期療養病棟ではさらに高くなります。褥瘡は一度発生すると治癒までに長期間を要し、患者さんのQOLを著しく低下させるだけでなく、敗血症などの重篤な合併症につながる可能性もあります。

この記事では、褥瘡のステージ分類(NPUAP分類)、DESIGN-Rによるアセスメント、ブレーデンスケールによるリスク評価、エビデンスに基づく予防策、ステージ別の処置方法、ドレッシング材の選び方、多職種連携のポイント、記録の書き方まで、褥瘡ケアに必要な知識を網羅的に解説します。

褥瘡のステージ分類|NPUAP分類を理解する

褥瘡の重症度を評価する国際的な基準として、NPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel)のステージ分類が広く使用されています。正確なステージ判定ができることが、適切な治療方針決定の第一歩です。

ステージI:消退しない発赤

皮膚に圧迫を加えた後、発赤が消退しない状態です。皮膚の損傷(びらんや潰瘍)はまだ生じていません。指で圧迫しても白くならない(ブランチテスト陰性)発赤がステージIの特徴です。暗色の皮膚では発赤が分かりにくいため、周囲と比較して温度が高い、硬い、浮腫がある、色調が変化しているなどの変化に注意します。このステージで発見し、圧迫を除去すれば、進行を防ぐことができます。

ステージII:部分層損傷

表皮から真皮の浅い層にかけての損傷です。びらん(表皮剥離)、浅い潰瘍、または血清で満たされた水疱として観察されます。創底はピンク色で、壊死組織は見られません。テープかぶれや失禁関連皮膚障害(IAD)との鑑別が必要です。鑑別のポイントは、褥瘡は骨突出部に限局するのに対し、IADは会陰部全体に広がることです。

ステージIII:全層皮膚損傷

皮下脂肪組織まで達する全層損傷です。骨・腱・筋肉は露出していません。壊死組織(黄色の湿性壊死組織や黒色の乾燥壊死組織)が見られることがあります。ポケット(創面より深部に広がる空洞)を伴うこともあり、綿棒やゾンデで深さとポケットの範囲を確認します。

ステージIV:全層組織損傷

骨・腱・筋肉が露出する最も重症のステージです。広範な壊死組織やポケットを伴うことが多く、骨髄炎のリスクもあります。治癒には長期間を要し、外科的デブリードマン(壊死組織の除去)や皮弁手術が必要になることもあります。

なお、壊死組織に覆われて創底が観察できない場合は「判定不能(Unstageable)」、紫色や暗赤色の変色・血疱がある場合は「深部組織損傷疑い(DTPI:Deep Tissue Pressure Injury)」として分類します。DTPIは見た目以上に深い損傷が隠れていることがあり、注意深い経過観察が必要です。

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DESIGN-Rによる褥瘡評価

DESIGN-R(デザインアール)は、日本褥瘡学会が開発した褥瘡の状態評価スケールです。褥瘡の深さ、浸出液、大きさ、炎症/感染、肉芽組織、壊死組織、ポケットの7項目を数値化し、治療効果の判定や経過観察に用います。

DESIGN-Rの7つの評価項目

項目英語表記評価内容
DDepth(深さ)0:皮膚損傷なし〜5:関節腔・体腔に至る
EExudate(浸出液)0:なし〜3:多量
SSize(大きさ)長径×短径で算出。0〜6段階
IInflammation/Infection0:なし〜3:全身的影響あり
GGranulation(肉芽組織)0:創閉鎖〜5:肉芽形成なし
NNecrotic tissue(壊死組織)0:なし〜6:硬く厚い壊死組織
PPocket(ポケット)0:なし〜24以上

各項目の大文字スコアの合計が高いほど重症であり、治療により数値が下がれば改善を示します。週1回程度の頻度で評価し、治療方針の見直しに活用します。同じ看護師が継続して評価することで、評価の一貫性が保たれます。

評価時の実践ポイント

DESIGN-Rの評価では、まず創部を生理食塩水で十分に洗浄し、壊死組織や浸出液を除去してから観察します。大きさの測定は、定規を当てて最長径と最短径を測定します。ポケットの評価には、綿棒やゾンデを用いて深さと方向を確認します。写真撮影を行う場合は、定規(スケール)を一緒に写し込むと、経時的な比較が容易になります。

発生リスクのアセスメント|ブレーデンスケール

褥瘡は「予防」が最も重要です。リスクのある患者さんを早期に特定し、予防ケアを開始することで、褥瘡発生率を大幅に低下させることができます。

ブレーデンスケールの6項目

ブレーデンスケールは、褥瘡発生リスクを評価する最も広く使用されているスケールです。6つの項目をそれぞれ1〜4点で評価し、合計点が低いほどリスクが高くなります。

  • 知覚の認知(1〜4点):圧迫による不快感を感じて反応する能力
  • 湿潤(1〜4点):皮膚が湿気にさらされる程度(発汗・失禁など)
  • 活動性(1〜4点):身体活動の程度(歩行可能か、車椅子か、臥床か)
  • 可動性(1〜4点):体位を自分で変えられる能力
  • 栄養状態(1〜4点):通常の食事摂取パターン
  • 摩擦とずれ(1〜3点):皮膚と寝具・衣服との摩擦の程度

合計23点満点で、一般的に14点以下がハイリスク、15〜18点が中等度リスク、19〜23点が低リスクとされています。入院時に全患者のリスク評価を行い、その後は週1回以上の再評価が推奨されます。状態変化があった時(手術後、ADL低下時、栄養状態悪化時など)にも再評価してください。

褥瘡予防の4つの柱

褥瘡予防は「体位変換」「圧再分配」「栄養管理」「スキンケア」の4つの柱で構成されます。単独の介入ではなく、4つを組み合わせた包括的なケアが効果的です。

体位変換

2時間ごとの体位変換が伝統的に推奨されていますが、患者さんの状態やマットレスの種類によって間隔を調整します。高機能エアマットレスを使用している場合は4時間間隔でも許容される場合がありますが、施設のプロトコルに従ってください。体位変換の際は、30度側臥位が推奨されます。90度側臥位は大転子に圧が集中するため避けましょう。体位変換後は、踵部を浮かせるためにクッションや専用デバイスを使用します。踵は褥瘡好発部位の一つで、見落とされやすい部位です。

圧再分配(体圧分散マットレス)

ハイリスク患者には、体圧分散マットレスの使用が必須です。マットレスには静的タイプ(高密度ウレタンフォーム、エアセルなど)と動的タイプ(エアマットレス:交互圧切替式・圧切替式)があります。ブレーデンスケール14点以下の高リスク患者や、すでに褥瘡が発生している患者には動的エアマットレスが推奨されます。車椅子を使用する場合も、座面にクッションを使用して圧を分散させましょう。

栄養管理

褥瘡の予防と治療には十分な栄養が不可欠です。特に重要なのはタンパク質、エネルギー、亜鉛、ビタミンCです。低栄養は褥瘡の発生リスクを2〜3倍に高めるとされています。血清アルブミン値3.0g/dL以下は低栄養のサインであり、栄養サポートチーム(NST)との連携を検討してください。褥瘡がある患者の必要エネルギーは、基礎代謝量の1.5倍程度、タンパク質は体重1kgあたり1.2〜1.5gが目安です。

スキンケア

皮膚の清潔と保湿を保つことで、皮膚のバリア機能を維持します。失禁がある患者では、排泄後すぐに清拭し、撥水性のある皮膚保護クリーム(ワセリン、ジメチコン含有クリームなど)を塗布します。皮膚が乾燥している場合は保湿剤を使用し、逆に湿潤が過度な場合は吸湿性のあるパッドを使用します。摩擦を防ぐために、患者の移動時にはスライディングシートやリフトを使用しましょう。

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ステージ別の処置方法とドレッシング材の選択

褥瘡の処置は、ステージと創の状態に応じてドレッシング材を選択します。現代の創傷管理は「湿潤環境療法(モイストヒーリング)」が基本です。

ステージI〜IIの処置

ステージIでは、圧迫を除去し、皮膚の保護を行います。透明フィルムドレッシングを貼付して摩擦から保護する方法が有効です。ステージIIでは、ハイドロコロイドドレッシング(デュオアクティブなど)が第一選択です。ハイドロコロイドは創面に適度な湿潤環境を提供し、外部からの汚染を防ぎ、交換頻度も3〜7日に1回で済むため、患者さんの負担も少なくなります。水疱がある場合は、破らずにそのまま保護するのが原則です。

ステージIII〜IVの処置

深い褥瘡では、まず壊死組織の除去(デブリードマン)が必要です。デブリードマンには、外科的(メスやハサミで切除)、自己融解性(湿潤環境を作り体の酵素で自然に溶かす)、酵素的(酵素製剤を使用)の3つの方法があります。外科的デブリードマンは最も効果的ですが、医師の判断と実施が必要です。

ドレッシング材の選択は、創の状態に応じて行います。

創の状態適したドレッシング材特徴
浸出液が少ないハイドロジェル水分を供給し、湿潤環境を維持
浸出液が中等量フォームドレッシング吸収性が高く、クッション性もある
浸出液が多量アルギン酸ドレッシング高い吸収力。止血効果もある
壊死組織があるハイドロジェル+フィルム自己融解性デブリードマンを促進
感染を伴う銀含有ドレッシング抗菌作用あり。感染コントロール
ポケットがあるアルギン酸ロープポケット内に充填して浸出液を吸収

多職種連携と記録の書き方

褥瘡ケアは看護師だけで完結するものではなく、医師、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)、管理栄養士、理学療法士、薬剤師など、多職種チームでの取り組みが効果的です。

多職種連携のポイント

  • WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師):褥瘡ケアの専門家。アセスメント、処置方法の選択、スタッフ教育を担当。褥瘡の評価に迷った時は積極的にコンサルテーションを
  • 管理栄養士:栄養状態の評価と栄養プランの作成。褥瘡がある患者は必要カロリーが増加するため、個別の栄養プランが必要
  • 理学療法士:離床の促進、ポジショニングの指導。車椅子の座面調整なども含む
  • 薬剤師:外用薬やドレッシング材の選択に関する助言。褥瘡治療薬の適正使用
  • 医師:全身管理、外科的デブリードマンの判断、感染時の抗菌薬処方

褥瘡の記録の書き方

褥瘡の記録は、診療報酬上の観点からも正確な記載が求められます。記録すべき項目は以下の通りです。

  • 褥瘡の部位(仙骨部、踵部、大転子部など)
  • ステージ分類
  • DESIGN-Rスコア(各項目と合計点)
  • 創のサイズ(長径×短径×深さ、ポケットの範囲)
  • 創底の状態(肉芽・壊死組織の割合、色調)
  • 浸出液の量・性状
  • 周囲皮膚の状態(発赤、浸軟、硬結など)
  • 実施した処置の内容(洗浄方法、使用したドレッシング材)
  • 患者の痛みの有無と程度
  • 次回の処置予定

可能であれば写真記録も残しましょう。スケール付きの写真は、治癒経過の客観的な評価に非常に有用です。

褥瘡ケアは、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)をはじめとする専門分野として確立されています。褥瘡ケアのスキルを高めたい方にとって、認定看護師資格の取得はキャリアアップの大きな一歩です。もし今の施設では学べる症例が限られている、あるいは認定看護師の資格取得を支援してくれる施設を探したいと感じているなら、教育体制の充実した施設への転職も選択肢の一つです。まずは情報収集から始めてみてください。

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