骨折の看護計画ガイド|大腿骨骨折の術後DVT予防・リハビリ計画・転倒予防の看護過程【学生向け】

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大腿骨骨折は高齢者に多く、術後のDVT予防・早期離床・転倒予防が看護の三本柱となる、整形外科実習で最も受け持つ可能性が高い疾患です。看護学生にとっては、手術直後の急性期管理からリハビリ期の退院支援まで、幅広い看護過程を学ぶことができる貴重な実習テーマでもあります。この記事では、大腿骨骨折(特に大腿骨頸部骨折・転子部骨折)の看護計画を、具体的なアセスメント例とOP・TP・EPとともに詳しく解説します。

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この記事でわかること

  • 大腿骨骨折の術後看護で重要なDVT予防とその観察項目
  • 早期離床の進め方とリハビリ期の看護計画の立て方
  • 転倒予防策と退院に向けた生活環境調整のポイント

大腿骨骨折の病態と手術方法を理解する

大腿骨骨折は骨折の部位によって手術方法と看護計画が異なります。実習で受け持つ患者がどの手術を受けたかを確認し、術式に応じた看護を展開しましょう。

大腿骨頸部骨折

大腿骨の頸部(頭と転子部の間)で生じる骨折です。血流が乏しい部位であるため、骨癒合が得られにくく、人工骨頭置換術が選択されることが多いです。術後は脱臼予防が重要な看護ポイントとなります。禁忌肢位(過度な屈曲・内転・内旋)を患者に指導し、日常動作で脱臼リスクのある動きを回避できるよう支援します。

大腿骨転子部骨折

大腿骨の転子部で生じる骨折です。血流が豊富な部位であるため骨癒合が期待でき、骨接合術(ガンマネイル、CHSなど)が選択されます。脱臼リスクは頸部骨折より低いですが、術後の荷重制限と疼痛管理が看護の焦点となります。

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術後のDVT予防と観察ポイント

大腿骨骨折の術後は深部静脈血栓症(DVT)のリスクが非常に高く、最も重要な合併症予防の一つです。DVTから肺血栓塞栓症(PE)に発展すると生命に関わるため、予防的介入と早期発見が不可欠です。

DVTの予防策

  • 弾性ストッキングの装着:術後早期から両下肢に装着し、静脈還流を促進する。シワやたるみがないか、足趾の循環(色、温度、しびれ)を定期的に確認する
  • 間欠的空気圧迫装置(IPC):医師の指示に基づき装着する。装着中の皮膚トラブルを観察する
  • 足関節の自動運動:足首の背屈・底屈運動を1時間に10回程度実施するよう指導する。腓腹筋のポンプ作用で静脈還流を促す
  • 抗凝固療法:ヘパリン皮下注射やエノキサパリンなどが使用される。出血傾向(皮下出血、歯肉出血、血尿)の観察が必要
  • 十分な水分摂取:脱水は血液粘稠度を高めDVTリスクを増大させる。飲水を促す

DVTの早期発見のための観察

  • Homans徴候:膝関節を伸展した状態で足関節を背屈させた時の腓腹部痛(陽性率は低いが、スクリーニングとして実施)
  • 下肢の腫脹・左右差:腓腹部や大腿部の周径を左右で比較する。2cm以上の差は精査が必要
  • 下肢の疼痛・発赤・熱感:一側性の腓腹部痛、皮膚の色調変化を観察する
  • 肺血栓塞栓症の徴候:突然の胸痛、呼吸困難、頻脈、SpO2低下があった場合は緊急報告する

早期離床とリハビリ計画の看護

大腿骨骨折の術後は、できるだけ早期の離床が推奨されます。長期臥床は廃用症候群(筋力低下、関節拘縮、褥瘡、肺炎、DVT)のリスクを高めるためです。

離床の段階的進め方

  1. 術翌日:ベッド上での上体挙上(ギャッジアップ30〜60度)。起立性低血圧に注意しながら端座位を試みる
  2. 術後2〜3日目:端座位の安定を確認し、立位訓練を開始する。歩行器やバーを使用する
  3. 術後3〜5日目:荷重制限に応じて歩行訓練を開始する。理学療法士と連携し、免荷歩行または部分荷重歩行を実施する
  4. 術後1〜2週目:段階的に荷重を増やし、歩行距離を延長する。ADL訓練(トイレ歩行、入浴動作)を進める

離床時の観察ポイント

  • 起立性低血圧:臥位から座位・立位への体位変換時にめまい・ふらつき・血圧低下がないか確認する
  • 疼痛:NRS(Numerical Rating Scale)で疼痛レベルを評価し、鎮痛薬の効果を確認してから離床を進める
  • バイタルサインの変動:活動前後の血圧・脈拍・SpO2を比較し、過度な心負荷がかかっていないか評価する
  • ドレーンの管理:離床時にドレーンの事故抜去がないよう固定を確認し、排液の性状と量を観察する

転倒予防と退院に向けた生活環境調整

大腿骨骨折の患者は再転倒・再骨折のリスクが高く、入院中だけでなく退院後の転倒予防策も看護計画に含める必要があります。

入院中の転倒予防策

  • ベッド周囲の環境整備:ナースコールを手の届く位置に配置し、ベッドの高さを最低位にする
  • 履物の確認:かかとのある滑りにくい靴を使用する。スリッパは転倒リスクが高いため避ける
  • 排泄パターンの把握:夜間のトイレ回数が多い場合、ポータブルトイレの設置を検討する
  • せん妄の予防と早期対応:高齢者は術後せん妄のリスクが高い。日中の覚醒を促し、夜間の照明と騒音を調整する
  • 転倒リスクアセスメントツールの活用:転倒スコアを算出し、リスクレベルに応じた予防策を実施する

退院に向けた生活環境調整

退院後の生活環境の調整は、多職種(理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー)と連携して進めます。

  • 自宅内の段差解消:玄関、浴室、トイレの段差にスロープや手すりの設置を提案する
  • 介護保険サービスの活用:要介護認定の申請、福祉用具(歩行器、シャワーチェア)のレンタルを案内する
  • 家族への介助方法の指導:移乗動作、歩行見守りのポイントを家族に実演しながら指導する
  • 骨粗鬆症の治療継続:骨粗鬆症が背景にある場合、再骨折予防のための内服継続と定期受診を促す
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骨折の看護計画(OP・TP・EP)具体例

看護診断「身体可動性障害」に対する看護計画の具体例を示します。

OP(観察計画)

  1. 疼痛の部位・程度・性質をNRSで評価し、鎮痛薬の効果を確認する
  2. 術創部の状態(出血、腫脹、発赤、ドレーン排液)を観察する
  3. 下肢の循環(足背動脈の触知、足趾の色・温度・しびれ・腫脹)を確認する
  4. DVTの徴候(下肢の腫脹・疼痛・左右差・Homans徴候)を観察する
  5. 離床状況(端座位、立位、歩行距離、荷重レベル)の進行を記録する
  6. 転倒リスクスコアを定期的に評価する
  7. 栄養状態(食事摂取量、アルブミン値、BMI)を確認する
  8. 精神状態(術後せん妄の有無、意欲、不安の程度)を観察する

TP(援助計画)

  1. 医師の指示に基づき定時の疼痛コントロールを行い、リハビリ前に追加鎮痛を検討する
  2. DVT予防策(弾性ストッキング、IPC、足関節運動、飲水促進)を確実に実施する
  3. 段階的な離床を理学療法士と連携して進め、安全を確保する
  4. 移乗・歩行時の見守りと介助を行い、転倒を予防する
  5. ベッド周囲の環境整備(ナースコール位置、ベッド高さ、履物確認)を行う
  6. 人工骨頭置換術後は脱臼予防の体位管理(外転枕の使用、禁忌肢位の回避)を徹底する
  7. 清潔ケア(清拭、陰部洗浄)と褥瘡予防(体位変換、エアマット)を実施する
  8. 退院調整カンファレンスに参加し、自宅環境と介護サービスの調整を支援する

EP(教育計画)

  1. DVT予防のための足関節運動と水分摂取の重要性を説明する
  2. 疼痛を我慢せず、早めに報告することの重要性を伝える
  3. 人工骨頭置換術後の禁忌肢位と日常生活での注意点を図を用いて指導する
  4. 転倒予防のために履物の選び方、移動時の注意点を説明する
  5. 骨粗鬆症治療薬の継続と定期受診の必要性を説明する
  6. 自宅での運動(筋力訓練、バランス訓練)の方法を指導する
  7. 退院後の生活環境調整(段差解消、手すり設置)について家族を含めて情報提供する

まとめ|整形外科看護は「生活再建」への支援

大腿骨骨折の看護計画で求められるのは、術後の急性期管理だけでなく、患者が元の生活に戻るまでの「生活再建」を見据えた包括的な支援です。DVT予防、疼痛管理、早期離床、転倒予防、そして退院後の環境調整まで、多職種と連携しながら計画的に進めることが重要です。

高齢者の大腿骨骨折は、ADLの低下から要介護状態に移行するリスクが高い疾患です。「骨を治す」だけでなく「その人らしい生活を取り戻す」という視点を持って看護計画を立案しましょう。

他の疾患の看護計画も学びたい方は「心不全の看護計画ガイド」や「糖尿病の看護計画ガイド」もあわせてご覧ください。

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