
看護師が肌身離さず持ち歩いているのがワークシートです。1日の業務予定や情報を書き込み、その日の業務に取り組んでいます。しかし、ある程度経験を積んだ看護師でも、上手にワークシートを作成できないという方も多くいます。
そこで本記事では、看護師の業務に欠かせないワークシートの作り方について、詳しく解説していきます。ワークシートが上手く作成できないという方は、ぜひ参考にしてください。
看護師の仕事の一つ「ワークシート」とは?

看護師は、勤務中にワークシートを常に持ち歩き、1日の業務計画や看護指示、注意点などを記入します。これはまさしく「業務の予定表」といえるものであり、看護師の日々の行動計画を立て、業務の進捗を確認するのに役立ちます。
さまざまな状況での患者のケアにおいて、データの正確な記録や情報の共有、ケアの計画と実施の効率化に貢献する重要なツールです。
ワークシートは、紙のフォーマットや電子的な形式で存在し、患者の情報を整理・管理する際に広く用いられています。看護の現場での効率的な情報管理や適切なケアの提供に欠かせないツールとして、看護師の日常業務に必要なものとなっています。
ワークシートを作成する理由
ワークシートを作成する主な理由は、「効果的な行動計画の策定」と「業務の進捗状況を的確に把握する」ための2つが理由として挙げられます。
日々の勤務において看護師は、多忙な状況でありながら正確で効率的なケアを提供する必要があります。ワークシートは、これらの課題に対する解決策として重要な役割を果たします。
逆に、ワークシートを用いない場合、効率的な業務進行やタスクの遂行が困難になるだけでなく、業務の抜けやミスが生じ、これが他の看護スタッフや患者の安全に影響を与える可能性があります。
<看護師・ナースのリアルな声>ワークシートを上手に作れる方ですか?その理由も教えてください
ワークシートの基本的な作り方

ワークシートを作成することは、優先順位を考えやすくなったり、抜け漏れを防いだりすることもできます。それでは、一般的なワークシートの作成方法を順を追ってご紹介していきます。
フォーマットを用意する
ワークシートのフォーマットは基本的に自由に選べます。電子カルテ内には既存のワークシートが保存されていることもありますが、自分が使いやすいものを選ぶことが重要です。患者情報、時間、業務内容が基本項目として含まれていることが肝心です。
フォーマットの種類としては、午前と午後に分けて書き込むものや、1時間ごとに区切るもの、業務の種類ごとにタスクを分けるものなど多様な選択肢があります。各種ワークシートを活用しながら、自身に適した型を選定することが重要です。
これらの要点を踏まえて、自分の業務スタイルや患者のケアニーズに合わせたワークシートのフォーマットを選びましょう。適切なフォーマットを選ぶことで、効率的に業務を進め、患者への適切なケアを提供することが可能となります。
時間指定がある処置・ケアを記載する
まず、ワークシートには時間指定がある処置・ケアを明示的に記載します。たとえば、「10:00 点滴」といった形で指定時間を書き込みます。また、赤ペンやマーカーを利用して強調することで、時間に関連する重要な処置・ケアを目立たせましょう。
時間指定がある処置・ケアとは、定められた時間通りに実施しなければならない重要な業務です。これには、検査(MRI、胃カメラ、超音波など)、点滴・薬剤投与、手術、リハビリ専門職による機能訓練、病状説明などが含まれます。それぞれの処置・ケアについて、詳細な情報や特記事項も記載します。
これらの時間指定がある処置・ケアは、遅れることで他部門の医療スタッフのタスクスケジュールに影響を与える可能性があります。したがって、ワークシートに記載する際には、これらの処置・ケアの重要性や優先順位を考慮して適切に整理しましょう。
時間に少し幅がある処置・ケアを書き込む
ワークシートには、「時間に少し幅がある処置・ケア」を適切に記載することが重要です。これは、実施する時間帯の目安を示すものであり、具体的な時間ではなくある程度の時間帯を示します。たとえば、「〇〇の処置は11時半~12時の間に実施する」といった具合に、目安の時間で記載します。
重要なのは、各業務の所要時間を正しく見積もり、適切にスケジュールを立てることです。これにより、業務間に適切な余裕を持たせることが可能となり、効率的な業務遂行が実現します。
勤務時間内に実施する業務を記載する
ワークシートを活用する際、勤務時間内に実施可能な業務を効率的に記載することが重要です。勤務時間内に実施できる業務は、患者さんや他のスタッフに影響が及ばない業務です。これらを適切に活用することで、業務のペースアップや残業の回避につながるでしょう。
ワークシートの作成に際して、まずは勤務時間内に実施可能な業務を把握します。これには、患者さんの状態や病棟の状況によって異なりますが、「勤務時間内に実施すればOKな業務」をスキマの時間に差し込むことで、業務のペースアップが見込めます。
勤務時間内に実施できる業務としては、看護記録の作成、カルテ管理、清拭・入浴介助、同意書の説明・提出、治療・検査オリエンテーション、休憩に入る時間の目安、チーム内でのフォローが必要なことなどがあります。これらは、患者さんや病棟の状況によって優先度が異なりますが、基本的には隙間時間に進められる業務となります。
これらの業務を効率よく進めるためには、スキマの時間を活用しながら、適切なタイミングで進めていくことがポイントです。手の空いた時間帯にこれらの業務を適宜進めていくことで、全体的な業務のペースアップと残業の回避に繋がるでしょう。
実施のタイミングが重なる業務の順番を決める
ワークシートを作成する際には、実施タイミングが重なる業務の優先順位をあらかじめ決めることが重要です。これには、時間指定の有無だけでなく、患者さんの状態や看護必要度に注目することがポイントです。どの業務を優先して進めるかを判断する際には、以下のポイントに留意しましょう。
患者さんの状態は、業務の優先順位を決める際の重要な要素です。重症度や自立度、心理面などを考慮して、緊急性や重要度を判断しましょう。状態が急変する可能性がある患者さんに関わる業務は、優先順位を高く設定します。
優先順位の判断が難しい場合や手が回らないと感じる時は、チームと協力することが重要です。リーダーや先輩に相談し、共に業務の優先順位を考えることで、適切な判断が得られるでしょう。チームの力を活用して、効果的なスケジュールを作成しましょう。
業務の実施タイミングが重なる場合には、事前に対策を講じることが重要です。業務ごとに優先順位を設定し、時間的な充て方を考えておくことで、効率的に業務を進めることができます。適切な準備を行って、スムーズな業務遂行を目指しましょう。
<看護師・ナースのリアルな声>ワークシートの作成で難しいと感じる部分はどこですか?
ワークシートの活用法

ワークシートは、一日の業務を確認するだけでなく、他の活用方法も多くあります、そのため、見やすいワークシートを作ることで効率的な業務が可能となります。
終わった業務にチェックをして抜け漏れ防止をする
ワークシートには、日々の業務やタスクを明示的に記録します。業務が終わった際には、該当する業務にチェックやマークをつけることで、抜け漏れを防止できます。これにより、担当した業務が適切に完了しているかを確認すると共に、次のステップに進む際の手順が明確化されます。
業務に必要な時間を記載して計画的に行動する
ワークシートには、各業務に必要な見積もり時間を記載することが重要です。この時間目安を元に、日々のスケジュールを計画的に立てることができます。時間の有効活用が可能となり、急な対応や緊急の業務にも柔軟に対応することができます。
効率的な動線を意識して効率を上げる
ワークシートには、患者の位置や設備、必要な器具の場所など、効率的な動線に関する情報を記載することで、業務の効率化を図ることができます。例えば、連続して実施する業務を近くの場所で行うことで、移動時間を短縮し、効率を上げることができます。
他の看護師に依頼できそうな業務をチェックしておく
ワークシートには、他の看護師に依頼できそうな業務や協力が必要なタスクを明示的に記録することが重要です。チームでの効果的な連携と協力を促進することで、業務のスムーズな進行や負担の分散が可能となります。
急な予定の組み直しも慌てない
ワークシートは、急な予定変更や緊急の対応にも対応できる柔軟性を持つべきです。業務の優先順位や進行状況を的確に把握し、予定の再調整や変更に迅速かつ適切に対応することが求められます。
情報収集した内容を空白に書き込む
ワークシートには、患者の情報やケアプラン、医師からの指示などを適切に記載することが必要です。これにより、患者の状態や必要なケアを正確かつ効率的に把握し、適切な対応を行う基盤となります。
<看護師・ナースのリアルな声>ワークシートを作るときに自分なりの工夫はありますか?
看護師におすすめのワークシートのタイプ

ワークシートには、さまざまな種類があります。どのワークシートを使うかに決まりはありませんので、自分が使いやすいワークシートを見つけるようにしましょう。看護師によく使用されるワークシートは以下の3つです。
業務フロー付ワークシート
業務フロー付ワークシートは、看護師の1日の業務を効率的に管理するための重要なツールです。このワークシートは、各患者ごとに列を設け、患者の氏名や健康状態、必要なケア内容などを記載しながら、1日の業務を計画・管理するものです。業務の進捗や流れを明確にし、効果的なケアを提供することが目的です。
ワークシートの左端の列には、時間軸を設定し、30分から1時間ごとの時間枠を表示します。隣接する列には、その時間における担当業務を記載します。各患者ごとの欄には、測定結果や観察結果だけでなく、予定されているケア内容や実施状況を具体的に記入します。また、実施チェックリスト欄を設けることで、実施した業務をチェックし、抜け漏れを防止します。
このワークシートの適切な活用により、看護師は1日の業務フローを的確に把握し、患者に適したケアを提供することが可能となります。業務の効率化やミスの防止に寄与するため、看護現場で積極的に活用されています。
業務別ワークシート
業務別ワークシートは、看護師が日々の業務を効率的に管理するためのツールです。このワークシートでは、各業務ごとに列を設け、担当する業務ごとに具体的なケア内容を記録します。特に受け持ち患者が多く、日常的にルーティンワークが多い看護師にとって効果的なツールと言えます。
各列には、実施する業務や処置、ケアの種類が示されています。これに対して、各患者ごとに実施すべき具体的なケア内容や時間指定がある場合は、それに合わせて記載します。このワークシートを使用することで、時間指定の重要な業務やケアを見逃すことなく実施することが可能です。
シンプルで分かりやすいデザインとなっており、新人看護師でもすぐに使いこなせるでしょう。業務別ワークシートは、看護師の業務効率を向上させ、患者への適切なケアを提供するための重要なツールとなります。業務ごとの明確な把握やスケジュール管理に役立ち、看護チーム全体の効率化に寄与します。
電子カルテを活用したワークシート
電子カルテを活用したワークシートは、看護師が患者の情報やケアプランを効率的に管理するための優れたツールです。このワークシートでは、電子カルテから患者の情報を取得し、それを基に患者ごとにタスクやケア内容を記載していきます。
電子カルテの利用により、患者の重要な情報や過去のケア履歴が簡単に参照できるため、的確なケアプランを立てるのに役立ちます。ワークシートでは、患者ごとに欄を設け、患者の基本情報や重要な観察データ、処方された薬剤、実施すべきケアなどを記入します。
また、時間帯ごとに列を設けて、それぞれの時間帯に行うべき業務やケアを整理します。このワークシートを作成することで、看護師は患者ごとのケアを適切に計画し、電子カルテの情報と連携しながら効率的に業務を進めることが可能です。
電子カルテを活用したワークシートは、特にベテランの看護師向けに適しています。電子カルテの使い方に慣れることで、ワークシートの作成効率が向上し、より効果的な看護ケアの提供が可能となります。
<看護師・ナースのリアルな声>おすすめのワークシートはありますか?
抜けが減るワークシートを作ろう
抜けが減るワークシートを作成することは、看護師の業務効率向上やミスの防止、残業の削減などに大きく影響します。抜け漏れが少ないワークシートを作るための手法は以下の通りです。
消去方式やかっこで抜きチェックする
ワークシートにタスクや業務を記録する際に、消去方式やかっこを利用して抜きチェックすることで、業務の進捗を視覚的に把握できます。タスクが完了したらマーキングを消去したり、かっこで囲むことで、抜けがないかを簡単に確認できます。
休憩前と勤務終了前の見返しを習慣にする
業務の進捗状況を把握するために、休憩前や勤務終了前にワークシートを見返す習慣を身につけましょう。これにより、未完了の業務や見落としがないかを確認でき、抜けが減るだけでなく、次のステップを計画する手助けとなります。
抜けが減れば残業が減る
抜けが少ないワークシートを活用することで、業務が適切に進行し、抜け漏れが減少します。これにより、残業の頻度や時間が減少するため、看護師の労働環境が改善されます。正確に業務を進めることで、効率的な業務遂行が可能となり、業務量が適切に抑えられるためです。
インシデントが減る
抜けが減ることで、患者への適切なケアが担保され、それに伴うインシデントやミスが減少します。看護師がワークシートを適切に活用することで、患者の安全性が向上し、医療の質が向上する好循環が生まれます。
<看護師・ナースのリアルな声>上手なワークシートを作成できることで自分が成長した、成長できそうと思うことを教えてください
まとめ
この記事では、看護師の業務の必須アイテム、ワークシートについて解説してきました。
ワークシートは、看護師が日々の業務を効率的に計画し、進捗を把握するための重要なツールです。これを活用することで、看護師は複雑な業務を整理し、効率よく進めることができます。マルチタスクな看護業務において、ワークシートは見逃しやミスを防ぐための頼もしいサポートとなります。
ワークシートを活用する際には、患者ごとや業務別に明確に計画を立てることが重要です。患者ごとに欄を設け、必要なケアや観察項目、処置などを時間帯ごとに整理します。これにより、看護師はタスクを効率的に進めながら、業務の進捗状況を把握することができます。
また、スケジュールの変動が頻繁に起こる看護師の日常において、ワークシートは非常に有用です。時間に余裕のある業務や、優先度の高いタスクを的確に把握することで、柔軟かつ効果的な対応が可能となります。
ワークシートを使いこなすことで、より質の高い看護ケアを提供することができ、患者の安全と健康を支えることができます。是非、自分に適したワークシートを見つけ、積極的に活用していきましょう。