「いま何が流行ってますか?」と外来で聞かれる方へ
発熱外来や小児外来で働いていると、患者さんやご家族から「いま何が流行ってるんですか?」とよく聞かれます。インフルエンザ、新型コロナ、RSウイルス、溶連菌——同じような症状でも原因はさまざまで、その時々の流行を肌で感じながら対応している方は多いはずです。
2025年4月7日から、急性呼吸器感染症(ARI)が感染症法上の5類感染症に位置づけられ、定点サーベイランスの対象になりました(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症(ARI)」)。これにより、発熱や咳といった症状の流行状況を、個別の病気だけでなく「呼吸器感染症全体」として把握できるようになっています。
この記事は、発熱外来・小児外来で日々対応する看護師さんに向けて、ARIサーベイランス週報とは何か、流行状況をどう読み、問診やトリアージ、患者さんへの説明にどう活かすかを整理するものです。
この記事でわかること
この記事は、外来で呼吸器感染症の対応にあたる看護師さんに向けて書いています。
この記事の価値:ARIとは何か、なぜ5類になったのか、サーベイランス週報の見方と、それを外来でどう活かすかが分かります。
読むと判断できること:流行状況の情報を、見出しではなく一次情報で読み、外来の備えや患者さんへの説明に活かせるようになります。
次にできること:ARIサーベイランス週報を確認する習慣と、外来での問診・説明の型が身につきます。
読むポイントは次のとおりです。
- 急性呼吸器感染症(ARI)とは何か
- なぜ5類感染症になり、定点サーベイランスが始まったのか
- ARIサーベイランス週報の見方
- 発熱外来・小児外来で看護師が活かす視点
- 患者さん・ご家族への説明で押さえること
判断材料になる一次情報
この記事は、以下の一次情報をもとに整理しています。
この記事で確認したいポイントは、次のとおりです。
「いま何が流行っているか」は、肌感覚だけでなく、サーベイランス週報という一次情報で確認できる。それを知っていると、外来の備えと患者さんへの説明の質が変わる。
急性呼吸器感染症(ARI)とは
急性呼吸器感染症(ARI)は、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、喉頭炎)または下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す、病原体による症候群の総称です(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症(ARI)」)。
ARIには、看護師にとってなじみのある次のような感染症が含まれます(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症(ARI)」)。
- インフルエンザ
- 新型コロナウイルス感染症
- RSウイルス感染症
- 咽頭結膜熱
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
- ヘルパンギーナ
つまりARIは、特定の一つの病気ではなく、発熱や咳・のどの痛みといった症状を起こす呼吸器感染症をまとめて捉える考え方です。
なぜ5類になり、サーベイランスが始まったのか
2025年4月7日から、急性呼吸器感染症が感染症法上の5類感染症に位置づけられ、定点サーベイランスの対象となりました(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症(ARI)」)。
これまでも、インフルエンザや新型コロナなど、個別の感染症ごとに流行状況を把握する仕組みはありました。ARIサーベイランスは、それらを含めて「呼吸器感染症全体」の流行を継続的に把握できるようにするものです。原因が特定される前の段階でも、発熱や咳といった症状の動きを捉えられるため、新しい感染症や流行の兆しを早期につかむことにもつながります。
ARIサーベイランスの対象は、咳嗽・咽頭痛・呼吸困難・鼻汁・鼻閉のいずれか1つ以上の症状があり、発症から10日以内の急性的な症状で、医師が感染症を疑う外来症例とされています(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症サーベイランス週報」)。
ARIサーベイランス週報の見方
国立健康危機管理研究機構は、ARIの流行状況を「急性呼吸器感染症サーベイランス週報」として公開しています(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症サーベイランス週報」)。
週報を見るときのポイントは次のとおりです。
- 定点あたりの報告数の推移:1医療機関あたりの報告数が、前の週と比べて増えているか減っているか
- 季節性との比較:例年のこの時期と比べて、流行が早いか遅いか、大きいか小さいか
- 地域差:自分の地域や近隣で、報告数がどう動いているか
- 関連する個別疾患の動き:インフルエンザや新型コロナなど、関連するサーベイランスの状況とあわせて見る
「肌感覚で増えている気がする」という現場の実感を、数字で確認できるのが週報の価値です。なお、週報は表示や記載方法が見直されることがあるため、最新の版で見方を確認するのがおすすめです。
このニュースを看護師さんの実務で見ると
ARIサーベイランス週報は、発熱外来・小児外来の現場で次のように活かせます。
問診・トリアージに活かす
いま何が流行っているかを知っていると、問診で押さえるポイントや、トリアージの優先度の判断材料になります。たとえば、特定の感染症の流行期には、典型的な症状や接触歴の確認がより重要になります。流行状況は、こうした「気づきの感度」を支えてくれます。
感染対策の備えに活かす
流行が拡大傾向にあるときは、標準予防策に加えた感染対策(待合の動線、マスク・手指衛生の徹底、隔離スペースの確保、資材の在庫確認)を前もって整える判断につながります。流行のピークを過ぎていない段階で備えることが、現場の混乱を減らします。
患者さん・ご家族への説明に活かす
「いま何が流行ってますか?」と聞かれたとき、一次情報をもとに「この地域では◯◯が増えてきています」「例年より早い流行です」と伝えられると、患者さんの納得感が高まります。受診のタイミングや家庭での感染対策の説明にもつながります。
患者さん・ご家族への説明で押さえること
外来での説明では、次の点を意識すると、不安をあおらず必要な行動を伝えられます。
- いま地域で増えている感染症の傾向(一次情報に基づく)
- 同じような症状でも原因はさまざまであること(自己判断での決めつけを避ける)
- 受診や検査のタイミング、家庭でできる感染対策(手指衛生、マスク、換気、休養)
- 重症化のサインや、再受診の目安(呼吸が苦しい、水分が取れない、ぐったりしているなど)
特に小児では、ご家族が不安を抱えやすいため、「いま流行っているもの」と「家庭で見ておくサイン」を具体的に伝えることが安心につながります。重症化が疑われる所見があれば、医師の判断につなげることが前提です。
外来の対応に追われて疲れたら、カンゴさんに話してみる
流行期の発熱外来・小児外来は、問い合わせや対応に追われ、心身ともに消耗しやすい現場です。「ずっと感染対策に気を張っていて疲れた」「同じ説明を一日に何度もして声が枯れる」と感じることもあるはずです。
はたらく看護師さんのカンゴさんには、匿名で話せます。外来対応の負担、感染対策のプレッシャー、流行期の疲れを、誰にも気を使わずに話せる相手として使ってみてください。気持ちを整理するだけでも、少し肩の力が抜けることがあります。
まとめ
2025年4月7日から、急性呼吸器感染症(ARI)が感染症法上の5類感染症に位置づけられ、定点サーベイランスの対象になりました(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症(ARI)」)。ARIは、インフルエンザ・新型コロナ・RSウイルスなどを含む呼吸器感染症全体を捉える考え方で、流行状況は週報で確認できます。
「いま何が流行っているか」は、肌感覚だけでなく一次情報で確認できます。それを知っていると、外来の備えと患者さんへの説明の質が変わります。
実務の3ステップは次のとおりです。
- ARIサーベイランス週報で、地域の流行状況と季節性との比較を確認する
- 問診・トリアージ・感染対策の備えに、流行状況を活かす
- 患者さん・ご家族には、一次情報をもとに流行の傾向と家庭でのケアを具体的に伝える
「いま何が流行ってますか?」と聞かれたとき、肌感覚だけでなくサーベイランス週報という一次情報で答えられること。それが、外来で患者さんの不安を受け止める看護師の力になります。
よくある質問
急性呼吸器感染症(ARI)とは、具体的にどんな病気ですか?
ARIは、急性の上気道炎(鼻炎・副鼻腔炎・咽頭炎・喉頭炎)または下気道炎(気管支炎・細気管支炎・肺炎)を指す症候群の総称です。インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナなどが含まれます(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症(ARI)」)。
ARIはいつから5類になったのですか?
2025年4月7日から、急性呼吸器感染症が感染症法上の5類感染症に位置づけられ、定点サーベイランスの対象になりました(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症(ARI)」)。
ARIサーベイランス週報は、どこで見られますか?
国立健康危機管理研究機構の感染症情報提供サイトで公開されています。定点あたりの報告数の推移や季節性との比較を確認できます。表示や記載方法が見直されることがあるため、最新の版で見方を確認するのがおすすめです(Source: 国立健康危機管理研究機構「急性呼吸器感染症サーベイランス週報」)。
患者さんに「いま何が流行ってますか?」と聞かれたら、どう答えればいいですか?
ARIサーベイランス週報や関連する個別感染症の情報をもとに、「この地域では◯◯が増えてきています」「例年より早い流行です」と一次情報に基づいて伝えるのがおすすめです。同じような症状でも原因はさまざまであることを添え、家庭での感染対策や再受診の目安も具体的に説明すると安心につながります。
流行状況を外来でどう活かせばいいですか?
問診で押さえるポイントやトリアージの判断材料になるほか、流行拡大時には感染対策(動線、手指衛生、隔離スペース、資材の在庫)を前もって整える判断につながります。流行のピーク前に備えることが、現場の混乱を減らします。
参考資料


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