「このまま、ずっと病棟で働けるのかな」と思ったことがある方へ
夜勤明けの帰り道や、人手の足りない日勤の途中で、ふと「自分はこの先もずっとこの病棟で働き続けられるのかな」と考えたことはありませんか。体力のこと、高齢の患者さんが増えていく実感、退院支援や家族対応で広がり続ける業務範囲。目の前の忙しさに追われながら、漠然とした不安だけが積み重なっていく方は少なくないはずです。
2026年5月、厚生労働省は「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」の資料を公表しました(第1回は令和8年5月7日開催)。この検討会では、2040年頃に向けて医療を取り巻く状況が大きく変わること、その中で医療従事者をどう確保していくかが議論されています(Source: 厚生労働省「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」資料)。
制度の話だけを聞くと遠い未来のように感じますが、その中身は「高齢の患者さんが増え、救急や在宅の需要が伸び、働き手が減っていく」という、もう今の現場で始まっている変化そのものです。この記事は、漠然とした将来不安を抱えながら働く看護師さんに向けて、これから何が変わるのか、自分の働き方をどう考えればよいのかを、現場目線で整理するものです。
この記事でわかること
この記事は、いまの働き方を続けるか迷っている看護師さん、病棟以外の選択肢が気になり始めた看護師さんに向けて書いています。
この記事の価値:厚生労働省の検討会資料と新たな地域医療構想の数値をもとに、2040年に向けて看護師の働く場と求められるスキルがどう変わるのかが分かります。
読むと判断できること:いまの職場の変化が「自分だけの実感」ではなく構造的なものだと分かったうえで、続ける・場所を変える・働き方を変えるという選択肢を、感情ではなく材料で考えられるようになります。
次にできること:チェックリストで自分の状況を整理し、必要なら病棟以外の働き方や相談先を具体的に調べる準備が整います。
読むポイントは次のとおりです。
- 2040年頃に向けて、医療需要と働き手の数がどう変わると見込まれているか
- 高齢者救急・在宅医療が増えると、看護師の現場はどう変わるか
- 病棟・訪問看護・地域医療で、それぞれ求められる看護がどう変わりうるか
- 都市部と地方で、働き方の悩みはどう違ってくるか
- いまの職場を続けるか迷ったときに確認したいこと
- 病棟以外の働き方を知っておく意味
判断材料になる一次情報
この記事は、以下の一次情報をもとに整理しています。本文中の数値や見込みは、原則として下記の出典に基づきます。
この記事で確認したいポイントは、次のとおりです。
高齢の患者さんが増えて救急や在宅の需要が伸びる一方で、働き手は減っていく。だからこそ「どこで、どんな看護をするか」によって、看護師さんの負担と求められるスキルが変わっていく。
数値は「制度の話」ではなく、「数年後の自分の働き方の話」として読むと、意味が変わってきます。
このニュースを看護師さんの働き方で見ると
検討会や地域医療構想の資料が示しているのは、ざっくり言えば次の3つの流れです。
1. 高齢の患者さんは、2040年頃まで増え続ける
新たな地域医療構想のとりまとめでは、85歳以上を中心に高齢者数は2040年頃のピークまで増加すると見込まれています(Source: 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」)。85歳以上は、複数の病気を抱え、医療と介護の両方を必要とする方が多い年代です。つまり、急性期の治療だけでは完結せず、生活を支える視点が欠かせない患者さんが増えていきます。
2. 救急搬送と在宅医療の需要が大きく伸びる
同じ資料では、2020年と比較して、85歳以上の高齢者の救急搬送は75%増加し、85歳以上の在宅医療の需要は62%増加することが見込まれるとされています(Source: 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」)。一方で、入院医療では病床利用率は低下傾向で手術件数の減少が見込まれ、外来医療は全国的にすでに需要が減少傾向にあると整理されています。
これは「病棟の中だけで看護が完結する時代」から、「救急・在宅・地域で看護師が必要とされる時代」へ、ニーズの重心が移っていくことを意味します。
3. 働き手(生産年齢人口)は減っていく
そして、生産年齢人口はほぼ全ての地域で減少することが見込まれています(Source: 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」)。需要が増えるのに、医療を支える人は減る。この差を埋めるために、検討会では働き方改革や医療DX(ICT・タスクシフト等の活用)の推進が重要だと整理されています(Source: 厚生労働省「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」資料)。
「人手不足はもっとひどくなるの?」と不安に感じるかもしれません。ただ、見方を変えれば、看護師という資格の価値はむしろ高まり、働く場所の選択肢が広がっていく局面でもあります。
病棟看護師に起きそうな変化
いまの病棟で働き続ける場合でも、求められる看護は少しずつ変わっていきます。
- より高齢・多疾患の患者さんが中心になる:認知症ケア、せん妄対応、転倒・誤嚥予防、複数の慢性疾患の管理が日常業務の比重を増していきます。
- 退院支援・在宅調整の比重が増す:「治して退院」ではなく「生活に帰すための調整」が看護師の役割として大きくなります。多職種・地域との連携の力が問われます。
- 急性期だけでなく生活支援に近い看護が増える:医療処置だけでなく、食事・排泄・移動といった生活機能を支える視点が、これまで以上に重要になります。
- タスクシフト・ICTの活用が進む:記録の電子化、看護補助者との役割分担、特定行為研修を受けた看護師の活躍など、働き方そのものが変わっていきます。
「業務範囲が広すぎる」と感じる場面が増えるのは、こうした構造変化の表れでもあります。
訪問看護・地域医療で求められる看護師が増える可能性
在宅医療の需要が2020年比62%増と見込まれる以上、訪問看護や地域包括ケアの現場で看護師が必要とされる場面は、今後さらに増えると考えられます(Source: 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」)。
訪問看護や地域医療では、病棟とは違うやりがいと負担があります。
- 利用者さんの生活の場で、自分の判断とアセスメントが直接活きる
- 医師がその場にいない環境での観察力・判断力が求められる
- 一人で訪問する時間が長く、責任の重さと裁量の大きさが同居する
- 移動や天候、緊急時のオンコール対応など、病棟とは異なる負担がある
「病棟がきつい=訪問看護なら楽」という単純な話ではありません。ただ、「病棟以外にも看護師として働ける場所が広がっていく」ことは、選択肢を持つうえで知っておく価値があります。
都市部・地方で、悩みは変わってくる
地域医療構想は、地域ごとに医療需要の変化に差があることを前提にしています。
- 都市部:人口が多く需要は維持されやすい一方、施設間の競争や役割分担の見直しが進み、急性期・回復期・在宅の機能分化が進む可能性があります。
- 地方・過疎地域:人口減少が先行し、限られた人数で救急から在宅までを担う「マルチに動ける看護師」が必要とされやすくなります。
どちらが良い・悪いではなく、「自分が働く地域でこれから何が増えるのか」を知っておくと、キャリアの見通しが立てやすくなります。
いまの職場を続けるか迷ったときのチェックリスト
「このまま続けられるかな」と思ったときに、自分の状況を整理する7項目です。3つ以上当てはまる場合は、すぐに転職するかどうかは別として、自分に合う働き方を整理してみる価値があります。
- [ ] 高齢者対応や認知症ケアの負担が、以前より明らかに増えている
- [ ] 退院支援・在宅調整の業務が増え、本来の看護に時間を割けないと感じる
- [ ] 急性期というより、生活支援に近い看護の比重が増えている
- [ ] 人手不足で、教育や休憩が後回しになっている
- [ ] 電子カルテやICTの新しい仕組みについていくのがしんどい
- [ ] 病棟以外の働き方に、少しずつ興味が出てきた
- [ ] 訪問看護・地域包括ケア・施設看護などを、一度も具体的に調べたことがない
このチェックは「辞めるべきかどうか」の判定ではありません。「自分がいま、どの変化に負担を感じているのか」を言葉にするための整理です。
いまの職場で確認できること
働き方を変える前に、いまの職場でできる確認・相談があります。
- 病棟内の配置転換や、夜勤回数の調整が相談できるか
- 退院支援部門・地域連携室など、病棟以外の院内ポジションの有無
- 特定行為研修・認定看護師など、スキルアップ支援制度の有無
- 看護補助者やICTによる業務分担が、自分の負担軽減につながっているか
- 看護部に、中長期のキャリア相談ができる仕組みがあるか
「環境を変える=転職」だけではありません。同じ法人の中で働く場所を変えるだけで、悩みが解決することもあります。
「働き方を変える」で解決しやすいこと・しにくいこと
将来不安から場所を変えることを考えるなら、何が変わって何が変わらないかを分けて考えると、後悔の少ない判断につながります。
場所を変えると解決しやすいこと
- 病棟特有の夜勤負担(訪問看護・外来・クリニックなど夜勤の少ない働き方)
- 急性期の身体的・時間的なハードさ(回復期・療養・施設・地域医療)
- 自分の裁量で動きたいという希望(訪問看護・在宅医療)
- 生活支援に近い看護をじっくりやりたいという希望(施設・地域包括ケア)
場所を変えても解決しにくいこと
- 高齢化と人手不足という構造そのもの(どの場でも程度の差はあれ向き合う)
- 在宅・地域に移れば責任が軽くなるわけではないこと(むしろ判断の重さは増す)
- 「いまがつらいから」という理由だけで決めると、移った先でも別の不満が出やすいこと
- 給与・通勤・働く時間など、優先順位を整理しないまま決めると後悔しやすいこと
将来の構造変化は止められませんが、「その中で自分はどこで、どんな看護をしたいか」は選べます。それを早めに考え始めること自体が、長く働き続けるための備えになります。
まずは、カンゴさんに気持ちを整理してみる
「このまま病棟で働き続けられるかな」「訪問看護や地域医療も気になるけど、自分にできるか不安」。こうした気持ちは、職場の同僚に話すと「みんな同じだよ」で流れてしまい、家族には「考えすぎ」と言われがちです。
はたらく看護師さんのカンゴさんには、匿名で気持ちを話せます。将来の働き方の不安、病棟を続ける迷い、病棟以外の選択肢への興味を、誰にも気を使わずに整理する場所として使ってみてください。すぐに何かを決める必要はありません。まずは「自分が何に不安を感じているのか」を言葉にするところからで大丈夫です。
病棟以外の働き方を知っておくと、選択肢が増える
いますぐ転職を決めなくても、「病棟以外にどんな働き方があるのか」を知っておくことには意味があります。訪問看護、クリニック、施設、地域包括ケア、外来など、看護師が活躍できる場は今後さらに広がっていきます。
レバウェル看護のような看護師専門の転職紹介サービスでは、求人票だけでは分からない次のような情報を、職場に確認して教えてもらえます。
- 訪問看護ステーションのオンコール体制や1日の訪問件数
- 施設・在宅での看護師の人数配置と、緊急時のバックアップ体制
- 教育・研修制度(在宅未経験からの受け入れ実績)
- 夜勤の有無、勤務時間、移動範囲などの実態
「いまの職場が嫌だから」ではなく、「これから自分はどこで働きたいか」を考える材料として、選択肢を比較してみるのがおすすめです。情報を集めること自体は、転職を決めることとは別の行動です。
まとめ
厚生労働省の検討会資料と新たな地域医療構想は、2040年頃に向けて医療を取り巻く状況が大きく変わることを示しています。85歳以上を中心に高齢者は2040年頃まで増え、2020年と比べて85歳以上の救急搬送は75%増、在宅医療の需要は62%増と見込まれる一方、生産年齢人口はほぼ全ての地域で減少していきます(Source: 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」)。
この変化は、看護師の働く場と求められるスキルを少しずつ変えていきます。病棟では高齢・多疾患・生活支援の比重が増し、訪問看護・地域医療では看護師の需要が伸びていく可能性があります。「どこで、どんな看護をするか」を、感情ではなく材料で考えられるようにしておくことが、長く働き続けるための備えになります。
確認の3ステップは次のとおりです。
- チェックリストで、自分がいまどの変化に負担を感じているかを整理する
- いまの職場で、配置転換・スキルアップ・キャリア相談の仕組みを確認する
- 必要なら、病棟以外の働き方を具体的に調べ、解決しやすいこと・しにくいことを分けて考える
「2040年」と聞くと遠く感じますが、人手不足や高齢者対応のしんどさは、もう今のナースステーションに来ています。だからこそ、いまから選択肢を知っておいて大丈夫です。
よくある質問
2040年に向けて、看護師の仕事はなくなりますか?
なくなる可能性は低いと考えられます。むしろ、85歳以上の救急搬送や在宅医療の需要が増える一方で働き手が減るため、看護師の役割は広がる見込みです(Source: 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」)。ただし、求められる場所やスキルは、病棟中心から救急・在宅・地域へと少しずつ移っていくと考えられます。
病棟がきついので、訪問看護に移れば楽になりますか?
「楽になる」とは限りません。訪問看護は夜勤負担や急性期のハードさが軽くなる一方、一人で訪問する時間が長く、医師が不在の場で判断する責任の重さがあります。負担の「種類」が変わると考えるのが現実的です。今の職場で確認できることと、移って解決しやすいこと・しにくいことを分けて整理するのがおすすめです。
在宅医療が増えるなら、いまから何を準備すればいいですか?
特別な準備が必須というわけではありませんが、退院支援・地域連携・多職種連携の経験や、フィジカルアセスメントの力は、どの場でも活きます。興味があれば、訪問看護ステーションの見学や、院内の地域連携室への異動希望を相談するところから始められます。
医療DXやICTについていけるか不安です。
新しい仕組みへの不安は自然なものです。電子カルテやICTの活用は、本来は看護師の業務負担を減らすために進められるものです。職場が導入時の研修やサポートを用意しているか、看護補助者やシステムとの役割分担が自分の負担軽減につながっているかを確認してみてください。ついていけないと感じる場合は、それ自体を職場や上司に相談してよい事柄です。
いまの職場を辞めるべきか、続けるべきか分かりません。
この記事のチェックリストは、辞めるべきかどうかを判定するものではなく、「自分がどの変化に負担を感じているか」を整理するためのものです。続ける・場所を変える・働き方を変えるという選択肢を、感情ではなく材料で考えるために、まずはカンゴさんへの相談や、病棟以外の働き方の情報収集から始めるのが現実的です。
参考資料


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