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「われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん」――看護学生なら誰もが一度は声に出して読んだことのある「ナイチンゲール誓詞」。戴帽式(たいぼうしき)でキャンドルの灯りの中、仲間とともに読み上げたあの瞬間を覚えている方も多いのではないでしょうか。この誓詞は看護師としての原点を表す言葉であり、100年以上にわたって世界中の看護師に受け継がれてきました。この記事では、ナイチンゲール誓詞の全文(日本語訳・英語原文)を掲載し、一文ずつの意味を丁寧に解説します。そして、この誓いの言葉が現代の看護にどう活きているのかを改めて考えます。
この記事でわかること
- ナイチンゲール誓詞の日本語訳全文と英語原文
- 誓詞の一文ごとの意味と込められた精神
- 誓詞の成り立ち・歴史と戴帽式との関係
- 現代の看護においてナイチンゲール誓詞が持つ意義
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ナイチンゲール誓詞とは?成り立ちと歴史
ナイチンゲール誓詞(The Nightingale Pledge)は、看護師としての倫理と献身を誓う宣誓文です。多くの方がナイチンゲール本人が書いたものだと思っているかもしれませんが、実はそうではありません。この誓詞は1893年にアメリカのデトロイトにあるハーパー病院の看護学校校長であったリストラ・E・グレッター(Lystra E. Gretter)が、看護学校の卒業式のために作成したものです。
誕生の背景
グレッターは医師が卒業時に唱える「ヒポクラテスの誓い」に相当するものが看護師にも必要だと考えました。医師にはヒポクラテスの誓いという2,400年の歴史を持つ倫理宣誓がありましたが、看護師にはそれに匹敵するものがなかったのです。近代看護の母であるフローレンス・ナイチンゲールの名を冠することで、看護師の職業倫理と使命感を後世に伝えようとしました。
1893年の初版作成後、1935年にはグレッター自身が内容を一部改訂し、現在広く知られている版が完成しました。この改訂では「有害なるものを絶ち」という表現が追加され、看護師の倫理的責任がより明確に示されるようになりました。
戴帽式との結びつき
日本では看護学校や看護大学の「戴帽式(たいぼうしき)」で、ナイチンゲール誓詞を読み上げるのが伝統となっています。戴帽式はナースキャップを授与する儀式で、看護師を目指す学生が臨地実習に出る前の節目に行われてきました。キャンドルサービスとともに行われるこの儀式は、看護の道に進む決意を新たにする厳粛な場です。
近年ではナースキャップの廃止に伴い「戴帽式」を「宣誓式」や「ナーシングセレモニー」と名称変更する学校が増えていますが、ナイチンゲール誓詞の朗読は多くの学校で継続されています。形式は変わっても、看護師としての誓いを立てるという本質的な意味は守り継がれています。
ナイチンゲール誓詞 全文(日本語訳)
以下が日本で広く使用されている標準的な日本語訳です。なお、翻訳にはいくつかのバージョンがありますが、ここでは看護教育で最も一般的に用いられている訳を掲載します。
われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん。
わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを。
われはすべて毒あるもの、害あるものを絶ち、
悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし。
われはわが力の限りわが任務の標準を高くせんことを努むべし。
わが任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて、
わが知り得たる一家の内事のすべて、われは人に洩らさざるべし。
われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん。
ナイチンゲール誓詞 英語原文(The Nightingale Pledge)
1935年の改訂版の英語原文を掲載します。
I solemnly pledge myself before God and in the presence of this assembly,
to pass my life in purity and to practise my profession faithfully.
I will abstain from whatever is deleterious and mischievous,
and will not take or knowingly administer any harmful drug.
I will do all in my power to maintain and elevate the standard of my profession,
and will hold in confidence all personal matters committed to my keeping
and all family affairs coming to my knowledge in the practice of my calling.
With loyalty will I endeavor to aid the physician in his work,
and devote myself to the welfare of those committed to my care.
一文ずつの意味を解説
ナイチンゲール誓詞は短い文章ですが、一文一文に深い意味が込められています。ここでは各文を丁寧に読み解きます。
「われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん」
英語原文:I solemnly pledge myself before God and in the presence of this assembly,
誓詞の冒頭は「宣誓」そのものの宣言です。「ここに集いたる人々」とは戴帽式に参列した教員・先輩看護師・家族・同期生のことであり、「神に誓う」とは宗教的な意味にとどまらず、人間を超えた普遍的な倫理に対する誓約を意味します。自分一人の決意ではなく、公の場で他者に対して誓うことで、その言葉に責任と重みが生まれます。看護師という職業が単なる仕事ではなく、社会的な使命を担う専門職であることを冒頭で明確にしています。
「わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを」
英語原文:to pass my life in purity and to practise my profession faithfully.
「清く過ごし(in purity)」とは、道徳的な誠実さを持って生きることを意味します。19世紀の文脈では看護師の品行に対する社会的期待が反映されていますが、現代的に解釈すれば「専門職者としての倫理観を持ち、患者からの信頼に値する人格であり続ける」ということです。「忠実に尽くす(faithfully)」は単に指示に従うということではなく、看護の専門知識と技術を誠実に発揮し、手を抜かずにケアに当たるという意味です。
「われはすべて毒あるもの、害あるものを絶ち、悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし」
英語原文:I will abstain from whatever is deleterious and mischievous, and will not take or knowingly administer any harmful drug.
この一文は患者の安全を守ることへの誓いです。「毒あるもの、害あるもの(deleterious and mischievous)」とは薬物の害だけでなく、患者に害を及ぼすあらゆる行為を指します。「知りつつこれをすすめざるべし」は特に重要で、自分が危険だと知っている行為を見て見ぬふりをしないという意味が含まれています。現代の看護でいえば、医師の指示に疑問を感じた時に確認する勇気、インシデントを隠さず報告する誠実さ、安全でない環境を改善する行動力に通じます。医療安全の根幹にある「Do no harm(害をなすなかれ)」の精神そのものです。
「われはわが力の限りわが任務の標準を高くせんことを努むべし」
英語原文:I will do all in my power to maintain and elevate the standard of my profession,
看護の質を維持し、さらに向上させる努力を続けるという宣言です。「maintain and elevate(維持し向上させる)」という表現は、現状に満足せず常に学び続ける姿勢を求めています。ナイチンゲール自身が統計学を独学で習得し、公衆衛生の改革に取り組んだように、看護師には自己研鑽を続ける責任があります。現代においては、最新のエビデンスに基づく看護実践、継続教育への参加、専門看護師や認定看護師の資格取得など、具体的な行動として表れます。個人の努力だけでなく、看護という専門職全体の社会的な地位と信頼を高めていくという意味も込められています。
「わが任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて、わが知り得たる一家の内事のすべて、われは人に洩らさざるべし」
英語原文:and will hold in confidence all personal matters committed to my keeping and all family affairs coming to my knowledge in the practice of my calling.
患者のプライバシーを守るという守秘義務の宣誓です。看護師は業務上、患者の身体的な情報だけでなく、家族関係、経済状況、精神的な悩みなど、極めて私的な情報に触れます。「人に洩らさざるべし」は単に法律を守るということではなく、患者が信頼して打ち明けてくれた情報を人間として守るという道義的な責任の表明です。現代では個人情報保護法や看護師の守秘義務(保健師助産師看護師法第42条の2)として法的にも規定されていますが、130年前の誓詞の時点で既にこの原則が明確に示されていたことは、看護倫理の先見性を物語っています。
「われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん」
英語原文:With loyalty will I endeavor to aid the physician in his work, and devote myself to the welfare of those committed to my care.
誓詞の最後の一文は、チーム医療への貢献と患者中心のケアを誓うものです。「心より医師を助け(With loyalty will I endeavor to aid the physician)」という表現は、1893年当時の医師と看護師の関係性を反映していますが、現代的に解釈すれば「多職種と誠実に連携し、チーム医療に貢献する」という意味です。そして最も重要なのは「わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん(devote myself to the welfare of those committed to my care)」の部分です。看護師の仕事の最終的な目的は、自分に託された人々(患者)の幸福(welfare)のために尽くすことである。この一文が誓詞全体の結論であり、看護という職業の本質を端的に表現しています。
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現代の看護におけるナイチンゲール誓詞の意義
130年以上前に書かれたナイチンゲール誓詞は、現代の看護においても色褪せない価値を持っています。一方で、時代の変化に伴って再解釈が必要な部分もあります。
変わらない普遍的な価値
- 患者の安全を最優先にする:医療安全の考え方は誓詞の「害あるものを絶ち」という精神と完全に一致します。インシデントレポートの文化、ダブルチェック、医療安全対策は、誓詞の現代的な実践です
- 守秘義務の遵守:SNSが普及した現代、患者情報の取り扱いはより慎重さが求められます。業務中に知った情報をSNSに投稿しない、エレベーターや食堂で患者の話をしないなど、日常的な場面での守秘義務が重要です
- 自己研鑽の継続:「任務の標準を高くせん」という誓いは、エビデンスに基づく看護実践(EBN)や、認定看護師・専門看護師へのキャリアアップとして現代に引き継がれています
- 患者中心のケア:「託されたる人々の幸のために」という結語は、現代のPCC(Patient-Centered Care:患者中心のケア)の理念そのものです
現代的な再解釈が必要な点
- 「医師を助け」の解釈:1893年の誓詞では看護師は医師の補助的な存在として位置づけられていましたが、現代の看護師は独自の専門性を持つ自律した医療専門職です。チーム医療において対等なパートナーとして協働するという意味に読み替えることが適切です
- 宗教的表現:「神に誓う」という表現は、多様な信仰や無宗教の人が存在する現代社会では、「自らの良心と倫理に誓う」と解釈するのが自然です。実際に一部の看護学校では宗教色を薄めた独自の宣誓文を使用しています
- 看護師の権利:誓詞は看護師の義務と献身を強調していますが、看護師自身の健康や権利については触れていません。現代では看護師のメンタルヘルス、ワークライフバランス、適正な報酬への権利も重要であり、「自分を守ることも患者を守ることにつながる」という認識が広まっています
- ジェンダー表現:原文の「the physician in his work」は男性代名詞が使われていますが、現代では性別を問わない表現に修正して使用する学校も増えています
看護倫理綱領との関係
日本看護協会が定める「看護者の倫理綱領」は、ナイチンゲール誓詞の精神を現代の看護実践に即した形で具体化したものです。2021年に改訂された最新版では、16の条文が定められており、「看護者は、人間の生命、人間としての尊厳及び権利を尊重する」「看護者は、対象となる人々に平等に看護を提供する」といった条文はナイチンゲール誓詞の理念を継承しつつ、現代の多様な看護場面に対応した内容になっています。
ナイチンゲール誓詞が看護師個人の「誓い」であるのに対し、倫理綱領は看護専門職集団としての「行動基準」です。両者は対立するものではなく、誓詞が精神的な原点であり、倫理綱領が実践的な指針であるという関係にあります。
まとめ|ナイチンゲール誓詞は看護師の原点
ナイチンゲール誓詞は1893年にリストラ・E・グレッターによって作成された看護師の宣誓文であり、フローレンス・ナイチンゲールの精神を後世に伝えるために書かれました。わずか8つの文で構成されるこの誓詞には、患者の安全を守ること、守秘義務を遵守すること、自己研鑽を続けること、患者の幸福のために尽くすことという看護の本質が凝縮されています。
130年以上前に書かれた言葉ですが、その根底にある精神は今も変わりません。医療技術は進歩し、看護師の役割は拡大し、社会の価値観は変化しましたが、「患者の幸福のために自分の専門性を尽くす」という誓いは、時代を超えて看護師のアイデンティティの核であり続けています。
戴帽式であの言葉を読み上げた時の気持ちを、今もう一度思い出してみてください。仕事が辛い日も、やりがいを感じにくい日も、あの日の自分は確かに「看護の道を歩む」と誓いました。ナイチンゲール誓詞は、迷った時に立ち返る原点として、いつもあなたのそばにあります。
看護の日の由来や全国のイベント情報については「看護の日2026|全国のイベント情報とナースへ届けたいメッセージ」もあわせてご覧ください。



