医療現場で活躍する保健師と看護師。同じ看護の基盤を持ちながらも、業務内容や働き方には大きな違いがあります。
この記事では、両職種の特性を徹底比較し、あなたに合った選択をサポートします。職務内容や適性の違い、給与・待遇・キャリアパスの詳細、効果的な職種選択のための自己分析法に加え、2025年現在の将来展望まで解説。
看護師と保健師のどちらを選ぶか迷っている方、キャリアチェンジを検討している方、医療・保健分野でのキャリアパスを考えている方に必読の内容です。あなたの適性とライフスタイルに合った選択で、充実した医療人生を送りましょう。
この記事で分かること
- 保健師と看護師の職務内容・適性の違い
- それぞれの職種に向いている人の特徴
- 給与・待遇・キャリアパスの詳細比較
- 効果的な職種選択のための自己分析法
- 2025年現在の両職種の将来展望と働き方の実態
この記事を読んでほしい人
- 看護師と保健師のどちらを選ぶか迷っている看護学生
- 看護師から保健師へのキャリアチェンジを検討している方
- 医療・保健分野でのキャリアパスを考えている方
- 自分の適性に合った医療職を探している方
- 両職種の待遇や将来性について知りたい方
保健師と看護師の職種特性の理解

医療と保健の現場で活躍する看護師と保健師は、同じ看護の基盤を持ちながらも、その役割や働き方には大きな違いがあります。効果的な職種選択のためには、まずそれぞれの職種の特性を正確に理解することが重要です。
このセクションでは、看護師と保健師の業務内容、活動の場、そして働き方の違いについて詳しく解説します。
看護師の職種特性
看護師は主に医療機関内で働き、患者さんの直接的なケアを担当します。病院や診療所、介護施設などで、医師の指示のもと治療に関わる業務を行います。看護師は「目の前の患者」に対して、より直接的・短期的な関わりを持つことが特徴です。状態の急変にも対応する必要があり、臨機応変な判断力と実践力が求められます。
看護師の活動の場
看護師の主な活動の場は多岐にわたります。一般病院や大学病院などの入院施設を持つ医療機関、診療所やクリニックなどの外来施設、訪問看護ステーション、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護施設、企業の健康管理室など、様々な場所で活躍しています。
看護師の1日の流れ(一般病棟の場合)
一般的な病院の日勤帯(8:30~17:00)における看護師の1日の流れを見てみましょう。
朝は申し送りから始まり、前の勤務帯からの患者情報を受け取ります。その後、担当患者の朝のバイタルサイン測定やケアを行い、点滴や内服薬の準備・投与を行います。午前中は医師の回診への同行や処置の介助、入退院の対応などに追われることが多いです。
昼食時間をはさんで午後は、検査や手術の前後の患者ケア、記録作成、カンファレンスへの参加などが主な業務となります。また、患者さんやご家族への説明や相談対応、退院指導なども重要な仕事です。夕方には、夜勤帯への申し送り準備を行い、次の勤務者へ情報を伝達して業務を終了します。
夜勤の場合は、17:00~翌8:30程度の時間帯で勤務し、夜間の患者観察や緊急対応、投薬などを担当します。入院施設を持つ医療機関では、2交代制(日勤・夜勤)または3交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)の勤務形態が一般的です。
保健師の職種特性
保健師は主に地域や組織に軸足を置き、集団や地域全体の健康増進や予防に関わる業務を担当します。保健所、市区町村の保健センター、企業、学校などで働くことが一般的です。
保健師は「地域・集団全体」を対象に、より予防的・長期的な視点で関わることが特徴です。地域の実情を把握し、健康課題を見つけ出す分析力と企画力が重要になります。
保健師の活動の場
保健師の主な活動の場としては、市区町村の保健センターや保健福祉課、都道府県・保健所、企業の健康管理部門、健康保険組合、学校(養護教諭)、医療機関の地域連携部門などがあります。
保健師の1日の流れ(市町村保健センターの場合)
市町村保健センターで働く保健師の一般的な1日の流れを見てみましょう。
基本的には8:30~17:15程度の勤務時間で、土日祝日は休みとなるケースが多いです(ただし、健診や健康イベントなどで休日出勤することもあります)。
朝は事務連絡やスケジュール確認から始まり、午前中は乳幼児健診や健康相談、家庭訪問などの直接的な住民対応の業務を行うことが多いです。健診では、身体計測や問診、育児相談などを担当します。
昼食後の午後は、健康教室の運営や関係機関との会議、データ分析や事業計画の立案・評価などのデスクワークが中心となることが多いです。また、ケースカンファレンスで多職種と連携し、支援が必要な住民への対応を検討することもあります。
一日の終わりには、訪問記録や相談記録などの事務作業を行い、翌日の準備を整えて業務を終了します。
両職種の働き方の違い
看護師と保健師では、勤務形態や業務の進め方、対象者との関わり方など、働き方に大きな違いがあります。ここでは、両職種の働き方を比較してみましょう。
勤務形態については、看護師は交代制勤務が一般的で、夜勤・当直のある不規則な勤務になることが多いです。一方、保健師は基本的に日勤勤務で、土日祝日が休みという公務員に準じた勤務形態が多いです(ただし、健診や健康イベント、感染症対応などで時折休日出勤や時間外勤務が発生します)。
業務の緊急性と計画性の面では、看護師は患者の急変対応など緊急性の高い業務が多く、その場での判断と迅速な対応が求められます。保健師は比較的計画的に業務を進めることができ、長期的な視点での活動計画を立てることが多いです。ただし、災害や感染症流行時には緊急対応が必要になることもあります。
両職種のストレス要因と対処法
両職種にはそれぞれ特有のストレス要因があります。看護師の場合は、患者の急変や死別の経験、夜勤による疲労蓄積、医療事故のリスク、職場の人間関係などがストレスとなることが多いです。対処法としては、チーム内でのサポート体制の構築、適切な休息の確保、ストレスマネジメント技術の習得などが挙げられます。
保健師と看護師の適性診断の実施

職業選択において、自分の適性を理解することは非常に重要です。保健師と看護師は、同じ看護の基盤を持ちながらも、必要とされる資質や能力には違いがあります。
このセクションでは、両職種に求められる適性や向いている人の特徴について解説し、自己適性診断のためのポイントを紹介します。
看護師に向いている人の特徴
看護師として活躍するには、特定の資質や適性が役立ちます。まず、「実践的なケアを好む」という特徴が挙げられます。直接患者に触れるケアや処置を通じて、目に見える形で患者さんの回復に貢献することに喜びを感じられる人は看護師に向いています。患者さんから「ありがとう」と言われる瞬間にやりがいを感じる方も多いでしょう。
また、「チームでの連携を得意とする」点も重要です。看護師は医師や他職種との協働を日常的に行います。情報を適切に共有し、チームの一員として機能できる協調性や連携力が求められます。特に多職種カンファレンスでの発言力や調整力は、患者さんのケアの質を左右する重要な要素です。
看護師として活躍している人の共通点
実際に看護師として長く活躍している人々には、いくつかの共通点があります。まず、「コミュニケーション能力の高さ」が挙げられます。患者さんやその家族、他職種との円滑なコミュニケーションを通じて信頼関係を構築する能力は、良質なケアの基盤となります。
また、「学び続ける姿勢」も重要です。医療は日進月歩で進化しており、新しい知識や技術を継続的に学ぶ意欲と行動力が必要です。研修や学会への参加、自己学習などを通じて常に最新の知識を更新している人が多いです。
保健師に向いている人の特徴
保健師として活躍するには、看護師とは少し異なる適性が求められます。まず、「予防的・長期的視点がある」ことが重要です。問題が顕在化する前にリスクを予測し、予防策を講じることに関心と喜びを感じられる人が向いています。目に見える成果がすぐに表れなくても、長期的な視点で健康支援を続けられる忍耐力も必要です。
保健師として活躍している人の共通点
実際に保健師として活躍している人々には、いくつかの共通点があります。まず、「地域や社会への関心の高さ」が挙げられます。地域の歴史や文化、社会的背景に関心を持ち、地域に根ざした保健活動を展開する姿勢が見られます。
また、「人々のエンパワメントを大切にする姿勢」も重要です。住民や当事者が自ら健康課題に気づき、解決する力を引き出す支援を大切にしている人が多いです。一方的な指導ではなく、対象者の強みを活かした支援を行う視点を持っています。
自己適性診断チェックリスト
自分がどちらの職種に向いているかを判断するためのチェックリストを以下に示します。当てはまる項目が多い方が、あなたの適性により合っている可能性があります。
看護師適性チェックとしては、直接患者に触れて行うケアに魅力を感じる、病院の忙しい環境でも集中して仕事ができる、急な状況変化にも臨機応変に対応できる、チームで連携して動くことが得意である、身体的な負担がある仕事でも問題ない、医療技術や処置に関心がある、短期間で成果が見える仕事が好きである、といった項目が挙げられます。
適性と環境のマッチング
適性を考える上で重要なのは、自分の特性だけでなく、「どのような環境で働きたいか」という点も考慮することです。例えば、以下のような環境の違いがあります。
仕事のペースについては、看護師は一般的に「テンポが速く、次々と課題に対応する」環境が多いです。
一方、保健師は「じっくりと腰を据えて取り組む」仕事が中心です。あなたはどちらの働き方が合っているでしょうか。
保健師と看護師の待遇比較

職種選択において、給与や勤務条件など待遇面の比較は重要な判断材料です。
このセクションでは、保健師と看護師の給与水準、勤務条件、福利厚生などについて、2025年現在の最新情報をもとに詳しく比較します。どちらの職種がより自分のライフスタイルに合っているか、客観的に判断するための情報を提供します。
給与条件の比較
まずは両職種の給与水準について見ていきましょう。ただし、給与は勤務先の規模や地域、雇用形態、個人の経験や能力によって差があることを前提にしています。
看護師の給与水準(2025年現在の平均値)
看護師の初任給は、約23〜26万円程度です。これは新卒で基本的な看護師資格のみを持つ場合の基本給の目安です。大規模病院や都市部では高めの傾向があります。
経験を積んだ看護師の場合、5年目では約28〜32万円、10年目以上では約35〜40万円程度となることが多いです。この金額には、一般的な諸手当(通勤手当、住宅手当など)を含んでいますが、夜勤手当は含んでいません。
夜勤手当は一回につき約5,000〜12,000円となっており、月に4回夜勤を行うと、基本給にプラスして2〜5万円程度の収入増となります。特に大学病院など特定機能病院では夜勤手当が高く設定されているケースが多いです。
保健師の給与水準(2025年現在の平均値)
保健師の初任給は、約24〜27万円程度です。公務員保健師の場合は地方公務員の給与表に準じるため、自治体によって違いがありますが、一般的には看護師よりもやや高めに設定されていることが多いです。
経験を積んだ保健師の場合、5年目では約30〜33万円、10年目以上では約35〜40万円程度となることが多いです。公務員の場合は定期昇給があるため、経験年数に応じて比較的安定した昇給が期待できます。
地域や雇用形態による差
両職種とも、勤務地域によって給与水準に差があります。一般的に都市部(特に東京、大阪、名古屋などの大都市圏)では地方に比べて給与水準が高い傾向にあります。例えば、東京都内の大規模病院の看護師と地方の中小病院の看護師では、月額で5万円程度の差があることも珍しくありません。保健師も同様に、大都市圏の自治体は地域手当などが高く設定されているため、地方と比べて給与水準が高くなります。
年収ベースでの比較
年収ベースで比較すると、2025年現在の平均的な数値は以下のようになります。
看護師の場合、新人で年収約350〜400万円、5年目で約450〜500万円、10年目以上のベテランになると約550〜650万円程度です。夜勤回数や役職、勤務先によって大きく変動します。特に夜勤を多く行う看護師は、夜勤手当によって年収が100万円以上増えることもあります。
保健師の場合、新人で年収約380〜420万円、5年目で約450〜520万円、10年目以上で約550〜650万円程度です。公務員保健師の場合は、役職に就くと年収が大きく上がり、課長級になると700万円を超えることもあります。
勤務条件の比較
給与と並んで重要なのが勤務条件です。ワークライフバランスや長期的なキャリア形成を考える上で、勤務形態や休日数、残業の状況などは重要な判断材料となります。
看護師の勤務条件
看護師の勤務形態は、勤務先によって異なりますが、入院施設を持つ医療機関では交代制勤務が一般的です。2交代制(日勤・夜勤)または3交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)が主流で、どちらの形態でもシフト制による不規則な勤務となることが多いです。
2025年現在では働き方改革の進展により、以前よりも労働環境は改善されつつあります。休日数は月8〜10日程度(シフト制)が一般的で、年間休日数では105〜120日程度となっています。ただし、人員不足の施設では希望通りの休みが取りにくいという課題もあります。
有給休暇の取得率は平均60〜70%程度で、施設によって大きな差があります。働き方改革により有給取得を推進する動きは強まっていますが、慢性的な人員不足から取得しづらい職場環境もまだ存在します。
保健師の勤務条件
保健師の勤務形態は、日勤が基本となるケースがほとんどです。特に行政機関に勤務する保健師は、公務員としての勤務条件が適用されます。一般的な勤務時間は8:30〜17:15程度で、土日祝日は基本的に休みとなります。ただし、健診や健康イベント、感染症対応などで休日出勤や時間外勤務が発生することもあります。
休日数は週休2日制(土日休み)が一般的で、年間休日数は120〜125日程度となっています。祝日や年末年始も休みとなるケースが多く、看護師に比べると規則的な生活リズムを保ちやすいといえます。
勤務環境と仕事内容の違い
職場の物理的環境や仕事内容も、両職種で大きく異なります。看護師は医療機関という「治療の場」で働くことが多く、医療機器や医薬品に囲まれた環境での業務が中心となります。患者の身体的ケアや医療処置など、身体的な負担が大きい業務も多いです。また、感染症や医療事故のリスクも常に存在します。
一方、保健師は保健センターや役所、企業など、比較的一般的なオフィス環境で働くことが多いです。デスクワークの比率が高く、書類作成や会議、電話対応などの業務が多くなります。また、家庭訪問や健康教育など、地域に出向いての活動も特徴的です。
福利厚生・雇用安定性
長期的なキャリアを考える上で、福利厚生や雇用の安定性も重要な要素です。ここでは、両職種の福利厚生や雇用の安定性について比較します。
看護師の福利厚生と雇用安定性
看護師の雇用安定性は一般的に高いといえます。少子高齢化による医療ニーズの増加から、看護師の人材需要は全国的に高い状態が続いています。ただし、地域によっては求人数に差があり、都市部では競争が激しくなる傾向があります。一方、地方では人材不足が顕著で、採用のハードルは比較的低いケースが多いです。
福利厚生については、病院の規模や経営状態により大きな差があります。大規模病院や公立病院では、退職金制度、各種保険、職員寮や住宅手当、育児支援制度、院内保育所などが充実しているケースが多いです。一方、小規模な民間病院やクリニックでは、福利厚生がやや限定的なことがあります。
保健師の福利厚生と雇用安定性
保健師の雇用安定性は非常に高いといえます。特に公務員として働く保健師の場合、終身雇用が基本であり、雇用の安定性は極めて高いです。民間企業の保健師も、健康経営の推進により需要が高まっていますが、求人数自体は看護師に比べると少ないのが現状です。
福利厚生については、公務員保健師の場合は公務員としての恩恵を受けることができます。具体的には、手厚い退職金制度、各種保険、住宅手当、育児・介護休暇制度などが整備されています。また、公務員特有の福利厚生として、共済組合による各種給付や福利施設の利用なども挙げられます。民間企業の保健師の場合は、その企業の福利厚生制度に準じます。
育児との両立のしやすさ
仕事と育児の両立のしやすさも、職種選択において重要な要素です。看護師の場合、夜勤を含む不規則な勤務形態が育児との両立の障壁となることがあります。特に小さな子どもがいる場合、保育園の送迎や子どもの急な病気への対応が難しいケースもあります。ただし、近年では育児支援制度の充実により、短時間勤務制度や日勤のみの勤務など、柔軟な働き方を選択できる医療機関も増えています。
一方、保健師は規則的な勤務時間が基本となるため、育児との両立がしやすい環境といえます。特に公務員保健師の場合、育児休業制度や短時間勤務制度が整備されており、復職後のサポート体制も充実しているケースが多いです。また、土日祝日が休みとなることが多いため、家族との時間も確保しやすいといえるでしょう。
保健師と看護師のキャリアパスの検討

キャリア選択において重要なのは、長期的な視点でのキャリアパスを考えることです。保健師と看護師は、将来的にどのようなキャリアを築いていけるのか、どのような専門性を磨けるのか、転職や昇進の可能性はどうかなど、様々な観点から比較する必要があります。このセクションでは、両職種のキャリアパスについて詳しく解説し、あなたの長期的なキャリア形成に役立つ情報を提供します。
看護師のキャリアパス
看護師のキャリア形成には、いくつかの方向性があります。自分の適性や希望に合わせて、様々なキャリアパスを選択することができます。
専門性を高める道
看護師として一つの選択肢は、特定分野の専門性を高めていくことです。専門看護師(CNS)や認定看護師などの資格取得を目指すことで、特定の分野でより高度な看護実践能力を身につけることができます。
専門看護師(CNS)は、大学院修士課程で特定の専門分野を学び、日本看護協会の認定審査に合格することで取得できる資格です。がん看護、精神看護、急性・重症患者看護、慢性疾患看護など、現在13分野が認定されています。専門看護師は、専門的な知識と技術を用いた直接ケア、コンサルテーション、調整、倫理調整、教育、研究の6つの役割を担います。給与面でも専門看護師手当(月2〜5万円程度)が支給される施設が多く、キャリアアップに繋がります。
認定看護師は、日本看護協会が認定する特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる看護師を指します。感染管理、緩和ケア、皮膚・排泄ケア、救急看護など、多くの分野があります。認定看護師になるには、実務経験5年以上(うち特定の分野での経験が3年以上)を有し、6ヶ月の教育課程を修了して認定審査に合格する必要があります。認定看護師も専門看護師同様、資格手当が支給されることが多いです。
管理職を目指す道
看護師のもう一つのキャリアパスとして、管理職を目指す道があります。一般的なキャリアラダーとしては、主任看護師→看護師長→看護部長という流れがあります。
主任看護師(副師長)は、師長の補佐役として、病棟や外来などの看護単位におけるリーダー的役割を担います。スタッフの育成や業務改善、チーム医療の推進など、実務と管理の両面で活躍します。一般的に5〜10年程度の臨床経験を経て昇進するケースが多いです。
看護師長(師長)は、病棟や外来などの看護単位のマネジメントを担当します。具体的には、人員配置、勤務表作成、業務改善、予算管理、スタッフ教育、他部門との調整など、管理業務が中心となります。主任経験者から昇進するケースが一般的で、看護師長になると役職手当(月3〜5万円程度)が支給されることが多いです。
看護部長(総看護師長)は、病院全体の看護部門のトップとして、看護部の方針策定や人事管理、予算管理などを担当します。病院の経営陣の一員として、経営方針の決定にも関わることが多いです。看護部長のポジションは限られているため、競争率が高くなります。
教育・研究の道
看護実践だけでなく、次世代の看護師を育成する教育者や、看護の発展に貢献する研究者を目指すキャリアパスもあります。
看護学校の教員になるには、一般的に5年以上の臨床経験と、専任教員養成講習会の修了が必要です。大学の教員を目指す場合は、大学院修士課程や博士課程を修了し、研究業績を積むことが求められます。看護教育者として働くことで、自身の経験や知識を次世代に伝え、看護の質向上に間接的に貢献することができます。
保健師のキャリアパス
保健師のキャリア形成にも、様々な方向性があります。行政機関での昇進、専門分野の深化、教育・研究活動など、自分の適性や希望に合わせたキャリアパスを選択することができます。
行政機関でのキャリア
公務員として働く保健師の多くは、行政機関でのキャリアアップを目指します。一般的なキャリアラダーとしては、保健師→主任保健師→係長→課長補佐→課長→部長という流れがあります。
新任保健師は、最初は地区担当や特定の保健事業(母子保健、成人保健、高齢者保健など)を担当することが多いです。数年の経験を積んだ後、主任保健師として後輩指導や事業の中心的役割を担うようになります。
係長(班長)になると、特定の事業の管理運営や予算管理、計画立案などの責任者となります。複数の保健師やその他のスタッフのマネジメントも担当するようになります。役職に就くと、役職手当(月2〜4万円程度)が加算されることが一般的です。
専門性を高める道
保健師として特定の専門領域のエキスパートを目指すキャリアパスもあります。保健師の専門領域としては、母子保健、高齢者保健、精神保健、難病保健、感染症対策などが挙げられます。
母子保健分野では、妊産婦や乳幼児の健康支援、育児支援、児童虐待予防などに特化したスペシャリストを目指します。発達障害や育児不安を持つ親子への支援など、専門的な知識とスキルが求められる分野です。
高齢者保健分野では、介護予防や認知症対策、高齢者の健康づくりなどに特化した専門家を目指します。地域包括ケアシステムの中で保健師の専門性を活かし、多職種と連携しながら高齢者の健康と生活を支える役割を担います。
精神保健分野では、こころの健康づくりや自殺対策、ひきこもり支援、精神障害者の地域生活支援などに特化した専門家を目指します。メンタルヘルスの問題が増加する現代社会において、重要性が高まっている分野です。
健康危機管理の専門家として、感染症対策や災害時保健活動、テロ対策などに特化することも可能です。2025年現在では、新興感染症対策や気候変動に伴う災害対応など、健康危機管理の重要性は一層高まっています。
保健師からの転身例
保健師としての経験や知識を活かして、新たなキャリアに挑戦するケースもあります。
看護管理者への転職は、保健師から病院の看護部門(特に地域連携部門や予防医療部門)の管理職へとキャリアチェンジする例です。保健師としての予防的視点や地域との連携経験が、病院の地域包括ケア推進に貢献できます。特に地域医療構想の実現に向けて、病院と地域の連携強化が求められる中、保健師経験者のニーズは高まっています。
両職種の資格取得ルート
看護師と保健師は関連性の高い職種ですが、それぞれの資格を取得するには異なるルートがあります。
ここでは、看護師から保健師になるルートと、保健師から看護師として実務に戻るルートについて解説します。
看護師から保健師になるには
看護師として働いている方が保健師を目指す場合、保健師国家試験受験資格を得るための教育課程を修了する必要があります。主なルートとしては、以下の方法があります。
保健師養成課程(1年)に入学する方法があります。看護師免許を持つ方を対象とした1年制の専門課程で、保健師国家試験の受験資格を得ることができます。働きながら学ぶことが難しいため、一旦離職して学ぶケースが多いですが、カリキュラムが保健師養成に特化しているため、効率的に学ぶことができます。全国各地の看護専門学校や短期大学、大学などに設置されています。授業料は年間約80〜120万円程度で、昼間課程が主流です。
大学院(公衆衛生看護学専攻)に進学する方法もあります。看護師免許を持つ方が大学院修士課程(公衆衛生看護学専攻、地域看護学専攻など)に進学し、保健師国家試験の受験資格を得るルートです。2年間で修士号と保健師国家試験受験資格の両方を取得できる点がメリットです。仕事を続けながら学べる社会人大学院も増えていますが、学費は2年間で約200〜300万円程度と比較的高額です。
看護大学の編入学や科目等履修生として保健師課程を履修する方法もあります。一部の看護大学では、看護師免許を持つ方を対象に、3年次または4年次への編入学制度を設けています。また、大学によっては科目等履修生として保健師課程の科目のみを履修することが可能な場合もあります。看護師として働きながら学べる可能性がありますが、設置大学が限られていることや、競争率が高いことがネックです。
これらの教育課程を修了後、保健師国家試験に合格することで保健師免許を取得できます。保健師国家試験は年1回(2月)実施され、合格率は例年85〜90%程度と比較的高いものの、十分な学習と準備が必要です。
看護師から保健師へのキャリアチェンジを考える際には、教育課程の選択だけでなく、将来どのような保健師になりたいかというビジョンを明確にすることも重要です。例えば、行政保健師を目指すなら公務員試験対策も並行して行う必要がありますし、産業保健師を目指すなら企業や健康経営に関する知識も身につけておくとよいでしょう。
両方の資格を活かせる働き方
看護師と保健師の両方の資格を持つことは、キャリアの選択肢を広げる大きなアドバンテージとなります。両方の資格を活かせる働き方としては、以下のようなものが考えられます。
地域包括ケア関連の職種として活躍する道があります。地域包括支援センターや在宅医療連携拠点、医療機関の地域連携室などで、看護師としての医療知識と保健師としての予防・地域支援の視点を併せ持つ専門職として重宝されます。地域包括ケアシステムの中で、医療と介護、予防をつなぐコーディネーターとしての役割を担うことができます。
訪問看護ステーションの管理者や指導的立場として働くのも両方の資格を活かせる選択肢です。訪問看護は医療処置から予防的支援、家族支援まで幅広い業務を含み、看護師と保健師両方の視点が求められます。特に管理者や指導的立場では、個別のケア技術だけでなく、地域全体を視野に入れた活動計画の立案や多機関連携の調整力が重要となります。
保健師と看護師の将来展望の分析
医療や保健の分野は、社会情勢や政策、テクノロジーの発展などによって常に変化しています。将来的にどのような需要があり、どのような働き方が求められるのかを見通すことは、長期的なキャリア選択において重要です。
このセクションでは、看護師と保健師それぞれの将来展望について、社会的需要の変化、働き方の変化、注目のキャリア領域などの観点から詳しく解説します。
看護師の将来展望
看護師の職業としての将来展望は、医療を取り巻く環境の変化とともに進化しています。ここでは、社会的需要の変化、働き方の変化、そして注目のキャリア領域について見ていきましょう。
社会的需要の変化
看護師の需要は今後も堅調に推移すると予測されています。その背景にはいくつかの要因があります。まず、高齢化の進行による需要増加は今後も継続すると見られています。
2025年には団塊の世代が75歳以上となり、医療・介護需要がピークを迎えるとされる「2025年問題」も目前となりました。高齢者人口の増加に伴い、慢性疾患や複数の疾患を抱える患者が増加し、看護需要も高まっています。
7. ケーススタディ
ここでは、実際に看護師と保健師の選択に直面し、それぞれの道を選んだ方々の事例を紹介します。実際の経験に基づいたケーススタディを通じて、職種選択の判断材料や参考になる視点を提供します。
それぞれの選択の背景や理由、実際に働いてみての感想などをリアルに描写することで、あなた自身の選択の参考にしていただければ幸いです。
ケーススタディA:看護師から保健師へ転向したGさんの場合
Gさん(30代女性)は、大学病院の救急外来で5年間看護師として勤務した後、保健師への転向を決断しました。現在は市の保健センターで3年目の保健師として活躍しています。
Gさんが看護師から保健師への転向を決断した理由はいくつかあります。まず、急性期の現場で「予防できたはずの疾患」と向き合う機会が多かったことが大きな理由でした。救急外来には、生活習慣病の悪化や予防可能な感染症、適切な受診行動がとれなかったために重症化したケースなど、「もっと早く」「もっと予防的に」関われていれば防げたかもしれない状況で運ばれてくる患者さんが少なくありませんでした。「治療」も大切だけれど、そもそも「病気にならないようにする」予防活動にも関わりたいという思いが強くなっていったそうです。
ケーススタディB:保健師を選択したHさんの場合
Hさん(20代男性)は、看護学生時代から予防医学に関心があり、卒業後すぐに保健師の道を選択しました。現在は県庁の保健師として感染症対策の部署で3年目を迎えています。
Hさんが保健師を選んだ理由はいくつかあります。まず、地域全体の健康課題に取り組む仕事に魅力を感じていました。看護学生時代から公衆衛生や予防医学に関心があり、特に感染症対策や健康危機管理に興味を持っていました。個人のケアも大切だけれど、社会全体の健康レベル向上に関わる仕事がしたいという思いが強かったそうです。学生時代に経験した新型インフルエンザの流行時に、保健所の活動に感銘を受けたことも大きな影響を与えています。
8. おしえてカンゴさん!看護師と保健師の選択に関するQ&A
看護師や保健師を目指す方々から寄せられる疑問や質問に、経験豊富な看護師「カンゴさん」が回答するコーナーです。実際によく聞かれる質問とその回答を通して、両職種の選択に関する疑問を解消し、より具体的なイメージを持っていただくことを目指します。
Q1:保健師と看護師の主な違いのポイントは?
カンゴさん:一言でいうと、「対象」と「アプローチ」の違いですね。看護師は主に「個人の患者さん」を対象に、目の前の健康問題に対応する「治療的アプローチ」が中心です。一方、保健師は「地域や集団」を対象に、健康問題を未然に防ぐ「予防的アプローチ」が特徴です。
看護師は医師の指示のもとで業務を行うことが多く、より直接的なケアや処置を担当します。患者さんの状態の変化にすぐに対応することが求められ、その場での判断力や実践力が重要です。一方、保健師は比較的裁量が大きく、自ら企画・立案した事業を実施することが多いです。健康課題の分析から対策立案、実施、評価までのプロセス全体に関わります。
Q2:看護師と保健師はどちらの方が給料が高いのですか?
カンゴさん:一概にどちらが高いとは言えませんが、傾向としては、経験年数が浅いうちは保健師(特に公務員)の方が初任給は高めです。しかし、看護師は夜勤手当があるため、トータルの月収では看護師が上回るケースも多いです。
具体的な数字で見てみましょう。2025年現在、新卒看護師の初任給は約23〜26万円程度ですが、保健師(特に公務員)の初任給は約24〜27万円程度と若干高めです。ただし、看護師が夜勤を月に4回程度行うと、夜勤手当(一回につき約5,000〜12,000円)が加算されるため、月収では逆転することも多いです。
長期的には、看護師は専門看護師や看護管理職、保健師は行政職のキャリアラダーによって、どちらも役職に応じた昇給が期待できます。2025年現在の傾向では、民間病院の看護管理職と行政機関の管理職で比較すると、地域や規模によって差はありますが、同程度か行政職の方がやや高い傾向にあります。
Q3:子育てと両立しやすいのはどちらですか?
カンゴさん:一般的には、勤務形態が規則的な保健師の方が子育てとの両立はしやすいと言えます。保健師は基本的に日勤勤務で休日も固定されていることが多く、特に公務員の場合は育児支援制度も充実しています。
保健師の場合、基本的に平日の8:30〜17:15程度の勤務で、土日祝日は休みというパターンが多いです。この規則的な勤務時間は、保育園の送迎や学校行事への参加など、子育てとの両立をしやすくします。また、公務員保健師の場合は、育児休業制度や短時間勤務制度が整備されており、取得率も比較的高いです。計画的に休暇を取得できる環境も、子育て中の保護者にとって大きなメリットとなります。
Q4:看護師から保健師への転向は難しいですか?
カンゴさん:難しさは個人の状況によりますが、転向自体は十分可能です。看護師としての実務経験がある方が、保健師として働く際に臨床知識を活かせるというメリットもあります。
転向のためには、保健師の国家試験受験資格を得る必要があります。代表的なルートとしては、①看護師として働きながら大学院(公衆衛生看護学専攻)へ進学する、②保健師養成課程のある大学の編入学や科目等履修生となる、③1年制の保健師養成課程に通う、などがあります。
Q5:保健師と看護師では必要なスキルセットが違いますか?
カンゴさん:はい、重なる部分もありますが、必要とされる中心的なスキルセットは異なります。
看護師に特に求められるスキルは、観察力、アセスメント能力、処置の技術、急変時の対応力、チーム医療における連携力などです。患者さんの状態を的確に判断し、適切なケアを提供する実践的なスキルが重視されます。例えば、バイタルサインの変化を素早く察知する観察力や、医師の指示に基づいて正確に医療処置を行う技術力、急変時に冷静に対応できる判断力などが必要です。また、患者さんやご家族とのコミュニケーション能力や、他職種との情報共有・連携能力も欠かせません。
Q6:2025年現在、将来性が高いのはどちらですか?
カンゴさん:どちらも社会的需要は今後も高い状態が続くと予測されますが、少し異なる観点から見ていく必要があります。
看護師は高齢化の進展により医療ニーズが増大し、特に在宅医療や介護施設での需要が高まっています。特に2025年問題(団塊の世代が全て75歳以上となる)を迎え、医療需要のピークが続いている状況です。また、特定行為研修を修了した看護師など、より高度な医療に対応できる看護師のニーズも拡大しています。医師の働き方改革に伴うタスクシフティングの流れもあり、看護師の役割拡大と専門性の向上が進んでいます。さらに、デジタル技術の進化により、遠隔看護や看護AI活用など、新たな看護の形も生まれつつあります。
Q7:転職のしやすさはどちらが上ですか?
カンゴさん:純粋な求人数では看護師の方が圧倒的に多く、転職の選択肢は広いと言えます。看護師は病院、診療所、訪問看護、介護施設、企業など様々な場所で求められています。
2025年現在、看護師の有効求人倍率は全国平均で約3倍前後と高い水準を維持しており、特に都市部以外では慢性的な人材不足が続いています。看護師の場合、勤務地域を変えたい、診療科を変えたい、夜勤なしの職場に移りたいなど、様々な希望に応じた転職が比較的容易です。また、経験年数や専門性によっては、条件の良い転職先を見つけやすくなります。特に訪問看護や介護施設などでは、経験豊富な看護師の需要が高まっています。
保健師は主に行政機関や企業の保健部門などが勤務先となりますが、求人数は看護師に比べると少なめです。特に公務員保健師は採用枠が限られています。2025年現在、保健師の有効求人倍率は全国平均で約1.5倍程度で、地域によってはさらに低い場合もあります。公務員保健師への転職は、年齢制限や採用試験の競争率の高さから、ハードルが高いケースもあります。一方、企業の産業保健師や健康保険組合の保健師などの民間求人は増加傾向にありますが、それでも看護師に比べると選択肢は限られます。
まとめ:あなたに合った選択のために
保健師と看護師、どちらを選ぶべきか。その答えは一人ひとり異なります。
この記事でご紹介した職種特性や待遇条件、キャリアパス、将来性などの情報を参考に、ご自身の価値観や適性に合った選択をしていただければ幸いです。
選択のためのポイント
最後に、職種選択のためのポイントを整理しておきましょう。自分の「軸」を明確にすることが大切です。仕事において何を最も大切にしたいのか、自分の価値観を明確にしましょう。患者との直接的な関わりを重視するなら看護師、予防や地域全体の健康づくりに関わりたいなら保健師が向いているかもしれません。また、夜勤の有無や勤務の規則性など、生活スタイルとの調和も重要な検討点です。
最後に
保健師と看護師は、共に医療・健康分野で重要な役割を担う専門職ですが、その特性は大きく異なります。看護師は医療機関での直接的ケアと治療支援に重点を置き、保健師は地域や集団を対象とした予防活動が中心です。
給与体系や勤務形態、キャリアパスも異なるため、自分の適性や価値観、ライフスタイルに合わせた選択が重要です。どちらの道も社会的需要は高く、専門性を高めることでさらなる活躍が期待できます。
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