病院勤務から一歩踏み出し、患者さんの生活の場で看護を提供する訪問診療。 女性化の高齢社会と在宅医療推進の流れを受け、訪問診療における看護師の需要は高まる一方です。
この記事では、訪問診療における看護師の最新求人情報と、効果的な就職活動のポイントを徹底的に解説します。
この記事で分かること
- 訪問診療看護師の最新求人市場動向と将来性
- 採用条件・給与レベルの現状と交渉のポイント
- 多様な勤務形態と働き方の選択肢
- 転職成功のための具体的な戦略と注意点
- 訪問診療看護師としてのキャリアパス
- 訪問診療特有の医療行為とスキルアップ方法
- 成功事例から学ぶ理想的な職場の見つけ方
この記事を読んでほしい人
- 病院勤務から訪問診療への転職を検討している看護師
- より患者さんに寄り添った看護を実践したい看護師
- ワークライフバランスの改善を目指す看護師
- 訪問診療の世界に興味を持っている看護師
- キャリアや専門性向上を目指す看護師
- 育児と介護と両立しながら働きたい看護師
- 地域医療に貢献したいと考えている看護師
訪問診療看護師の求人市場動向

訪問診療市場は2025年現在、医療政策の追い風を受けて急速に拡大しています。
看護師の皆様にとって、この分野がどのような可能性を秘めているのか、最新データに基づいて詳しく解説します。
拡大する訪問診療市場と看護師が必要
2024年現在、訪問診療市場は順調な成長を続けています。
厚生労働省の発表によると、在宅医療を必要とする患者数は2025年には2018年比で約1.5倍に増加すると予想されています。
特に注目すべきは、新型コロナウイルス感染症の流行に向けて、医療提供体制の見直しが進む中で、病院上映型から地域上映型の医療への移行が加速している点です。
この流れは訪問診療の重要性をさらに高め、専門職としての看護師の価値を高める取り組みとなっています。
医療経済研究機構の調査によれば、全国の在宅療養支援診療所は2023年時点で約1万7千カ所、訪問看護ステーションは約1万2千カ所に達しております。
その数は毎年5〜7%のペースで増加しています。
「訪問診療分野は今後10年間、看護師にとって最も安定した就職先の一つになるでしょう」と、医療人材コンサルタントの田中氏は語ります。
「特に40歳以上のベテラン看護師にとって、経験を活かせる魅力的なフィールドです」。
地域別の求人状況と特徴
地域によって求人状況と特性には大きな差があります。主要都市圏と地方の状況を詳しく見ていきましょう。
エリア(東京・神奈川・千葉・埼玉)
特に東京23区内と横浜市内では高齢者人口の増加を背景に、訪問診療専門クリニックの開設が決まっています。
給与水準も全国平均より15〜20%高い傾向にありますが、時々訪問エリアの交通事情や住宅事情の難しさがあり、移動効率の良さが重要な課題となっています。
「東京では一日の訪問トラフィックが5〜6件と他の地域より少ないですが、移動時間が長くなりがちです。
その分、一回あたりの診療報酬は高く設定されている傾向があります」と首都圏の大手訪問診療グループの採用担当者が説明しています。
関西圏(大阪・京都・兵庫)
関西圏では特に大阪市と神戸市で訪問診療の需要が把握されています。地域医療連携が進んでおり、病院と訪問診療クリニックの連携体制が比較的安定しているのが特徴です。
大阪府内の求人では「認知症ケアの経験者」をお待ちする傾向が強く、認知症認定看護師や認知症ケア専門士の資格保持者へのニーズがございます。
中部圏(愛知・岐阜・三重)
名古屋市を中心に訪問診療クリニックの増加が見られますが、郊外型の大型クリニックが多いのが特徴です。
社用車を使用した広域エリアでの訪問が一般的で、運転技術も重視されています。
「とりあえず社用車を使った効率的なルートを構築し、一日8〜10件の訪問を実現しています。
そのため、看護師には運転の負担が少ない環境を提供できるよう工夫しています」と中部地区の訪問診療クリニック院長は話をしています。
地方中核都市
県庁所在地クラスの地方都市では、地域を含むケアシステムの推進に伴い、訪問診療の体制整備が急いでいます。
地域密着型の小規模クリニックからの求人が多く、地域コミュニティとの連携能力が重視される傾向にあります。
「地方都市では顔の見える関係づくりが重要です。地域の医師会や介護事業者との連携が円滑な看護師は非常に貴重な存在です」と地方中核都市のクリニック経営者は語ります。
郊外・過疎地域
医療過疎地域では訪問診療の重要性が特にあります。地域医療を支える唯一の手段として訪問診療が機能しているケースも多く、自治体からの支援を受けた事業所が増加しています。
「地方の訪問診療では移動距離が長くなりますが、その分じっくりと患者さんと向き合える環境があります。
都会では経験できない地域医療の醍醐味があります」と過疎地域で10年以上の訪問診療に携わる看護師長は話をしています。
事業所タイプ別の求人特徴
訪問診療に関わる事業所は大きく分けて以下の4タイプがあり、それぞれ求人の特徴が異なります。
訪問診療専門クリニック
外来的な診療を行わず、訪問診療に特化したクリニックで、効率運営体制を構築している場合が多いです。
給与水準は比較的高く、訪問トークによるインセンティブ制度を導入しているケースも多く見られます。
「とりあえずでは看護師の判断力と実践力を重視しています。
医師がすぐそばにいない環境だからこそ、自立した看護が提供できる人材を求めています」と訪問診療専門クリニックの医師は話しています。
在宅療養支援診療所
外来診療と訪問診療の両方を行っている診療所です。地域に根差した医療を提供しており、患者との長期的な関係構築が特徴です。
看護師の役割は外来業務と訪問診療業務の両方に取り組むことが多く、堅実なスキルが求められます。
地域密着型のため、地元出身者や地域での就労経験者を優先する傾向があります。
「外来と訪問の両方を経験できるため、スキルの幅が広がります。
また、同じ患者さんを外来と訪問の両方で診ることで、継続的なケアが実現できるのが魅力です」と在宅療養支援診療所の看護師は言います。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは看護師が中心となって運営する事業所です。医師の指示の下、より自律看護が実践できる環境です。
リハビリテーションや終末期的なケアなど、専門性を考慮した看護が求められます。
訪問看護ステーションからの求人は全体の約40%を占めており、看護師のキャリア形成の場として注目されています。
「訪問看護では看護の専門性を発揮して発揮できます。
特に認定看護師や専門看護師の資格を持つ方には、その専門性を活かせるフィールドを提供できます」と訪問看護ステーション協会の代表は権利を持っています。
大手医療法人・チェーン展開型
システム化された業務フローとマニュアルが整備されており、未経験者でも取り組みやすい環境が整っています。
キャリアパスが明確で、将来的に管理職や経営層を目指せる道筋があるのが特徴です。福利厚生も充実している傾向があります。
「大手企業のメリットは教育体制の充実と安定した経営基盤です。
新人でも段階的に成長できるプログラムを用意しており、キャリアアップの機会も豊富です」と全国展開する訪問診療グループの人事部長は話しています。
このように、訪問診療看護師の求人市場は地域や事業所のタイプによって特性が大きく異なります。
自分のキャリアやライフスタイルに合った環境を選ぶことが、長く活躍するための鍵となります。
訪問診療看護師の採用要件:求められるスキルと経験

訪問診療の看護師として働くためには、どのようなスキルや経験が求められるので応募してください。採用側の視点から、基本的な要件と検討されるポイントを詳しく解説します。
基本的な採用条件とその背景
多くの訪問診療クリニックや訪問看護ステーションでは、以下のような基本条件を求人要件としています。
看護師免許
訪問診療では医師の目が見えない場所での判断が求められるため、より高度な教育を受けた正看護師が好まれる傾向にあります。
「ただ看護師の判断が患者さんの生命に直結することも少なくありません。
そのため、基本的な医学知識と判断力を持つ正看護師を基本としています」と訪問診療クリニック「A医院」の採用担当医師が説明しています。
臨床経験
一般的に3年以上の臨床経験が求められることが多いです。 特に急性期病棟や内科、外科、救急科などでの経験者が好まれます。
「訪問診療の心得は、病院とは異なる環境での看護ですが、その土台となるのはやはり臨床での経験です。
特に内科や救急での経験は、様々な症状への対応力につながります」と訪問診療経験10年のベテラン看護師はいらっしゃいます。
運転免許と運転技術
多くの訪問診療では移動手段として車両を使用するため、普通自動車免許(AT限定可)が必須条件となっております。
また、実際の運転技術も重視されています。 特に都市部では狭い道や駐車場が少ない環境での運転が求められるため、運転に苦手意識のある方は応募前に確認が必要です。
「訪問診療では一日の業務の3割から4割が移動時間です。
安全かつ効率的に移動できることは、良質な医療を提供するための基本条件となります」と訪問診療クリニック「B診療所」の事務長は話します。
コミュニケーション能力
特に患者さんの自宅という特別環境なため、礼儀やマナー、状況に応じた柔軟な対応力が求められます。 面接時にはこの点を特に重視して採用する担当者が多いようです。
「訪問診療では看護師が医療チームの代表として患者さんのお宅を訪問します。
そのため、コミュニケーション能力は技術的なスキル以上に重要視しています」と訪問看護ステーション管理者が指摘します。
自己管理能力・判断力
訪問診療では一人で行動することが多いため、自己管理能力と判断力が特に重視されます。
限られた時間とリソースの中で優先順位を決め、適切な判断をする能力は、訪問診療看護師に必要不可欠です。
また、緊急時の対応や医師への報告タイミングの判断も重要なスキルとなります。
「訪問診療の現場では、看護師が最初の医療者として様々な判断を求められます。
医師に電話で状況を簡潔に伝え、指示を仰ぐべきかどうかの判断も含めて、自律的な行動ができる人材が求められます」と在宅医療専門クリニックの医師は語ります。
受信される経験・資格とその理由
基本条件に加えて、以下のような経験や資格を持つ看護師は採用面で受け入れられることが多いです。
在宅ケア・訪問看護の経験
訪問看護ステーションや在宅療養支援診療所などでの経験がある方は、即戦力として高く評価されます。
特に初回訪問時のアセスメント能力や在宅特有の医療行為の経験は大きな強みとなります。
「在宅での医療は病院とは全く違う環境です。すでに在宅ケアの経験がある方は、環境適応の期間が短く、すぐに活躍していただけます」と訪問診療クリニック管理者は語ります。
緩和ケアの経験
訪問診療では終末期の患者さんをみるケースも多いため、緩和ケアの経験は非常に重視されています。
「在宅での見方をサポートするには、医学の知識だけでなく、患者さんのご家族の心理面へのアプローチが重要です。
緩和ケアの経験者は特にその点で力を発揮していただけます」と緩和ケア専門の訪問診療医は話します。
認定看護師資格
特に以下の分野の認定看護師資格保持者は高く評価されます。
- 緩和ケア認定看護師
- 皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)
- 認知症看護認定看護師
- 訪問看護認定看護師
- 慢性呼吸器疾患看護認定看護師
「認定看護師の専門的知識は訪問診療の質を大幅に高めさせていただきます。
特にWOCナースは在宅での褥瘡ケアの質を飛躍的に高めてくれます」と大手訪問医療グループの看護統括責任者は評価しています。
特定行為研修修了者
2024年現在、特定行為研修を修了した看護師の確保が急務です。
医師の働き方改革に従って、特に点滴やカテーテル管理、気管カニューレ交換などの医療行為を担える看護師の価値が上昇しています。
「特定行為研修修了者は訪問診療の現場での対応力を覚悟してください。
特に医師が瞬時に駆けつけられない地域では、そのスキルが患者さんの安全を守る重要な役割を担います」と地方の訪問診療クリニック院長は語ります。
ケアマネジャー資格
介護保険制度に精通し、多方面連携の要となるケアマネジャーを持つ看護師資格も受け付けられます。
医療と介護の両方の視点を持つことで、より包括的なケアの提供が可能になるためです。
「訪問診療では医療だけでなく、介護サービスとの連携が必須です。
ケアマネジャーの資格を持つ看護師は、その連携をスムーズに進めてくれる貴重な存在です」と訪問看護ステーション管理者が話します。
事業所タイプ別の重点ポイント
事業所の種類によって、特に重視される要件が異なります。それぞれの特徴を捉え、自分の強みを活かせる職場を選ぶことが大切です。
訪問診療専門クリニック
- 医療処置の技術と経験
- 急変時の対応力
- 効率的な訪問組立ルート能力
- 正確な医療記録作成能力
「当クリニックでは高度な医療ニーズを持つ患者さんも多いため、点滴管理や中心静脈カテーテルの管理など、医療行為に精通した看護師を特に歓迎しています」
と近隣の訪問診療専門クリニックの医師は語ります。
訪問看護ステーション
- 自律的な看護実践力
- リハビリテーションの知識
- 多職種能力
- マネジメントケアの視点
「訪問看護ステーションでは看護師が中心となってケアを提供します。
そのため、自律的に考えて行動できる方や、チームを考えリーダーシップを持つ方を特に求めています」と訪問看護ステーション経営者は話します。
在宅療養支援診療所
- 外来対応と訪問の両立能力
- 堅い疾患への対応力
- 地域医療連携の経験
- 継続的な患者教育能力
「とりあえずこのような在宅療養支援診療所では、外来と訪問の両方に対応できる柔軟性が求められます」
「特に地域の特性を捉えて、患者さんの生活環境も含めた視点を持つ方が活躍されています」と在宅療養支援診療所の院長は語ります。
大手医療法人・チェーン型
- 標準化された業務プロセスの実行力
- データ管理・分析力
- マネジメント志向
- 組織内コミュニケーション能力
「大規模な組織では、個人の裁量だけではなく、標準化されたプロセスに沿って業務を遂行する力が重要です」
「また、将来的に管理職を目指せる素質のある方を積極的に採用しています」と全国展開する訪問医療グループの採用担当者は話しています。
訪問診療看護師に求められる要件は多様ですが、最も患者さんの生活に寄り添う姿勢と、自律的に考えて行動できる力が基本となります。
自分の強みや経験が活かせる事業所を選ぶことで、やりがいを持って長く活躍できます。
給与条件:訪問診療看護師の収入

訪問診療看護師の給与水準は病院勤務と比較してどうなのか、また事業所タイプによってどのような違いがあるのか、詳細なデータに基づいて解説します。
基本給与の相場と地域差
2024年における訪問診療看護師の給与相場は以下の通りです。
常勤(正社員)の基本給与相場
- 全国平均:月給30万円〜40万円
- 圏:月給32万円〜45万円
- 関西圏:月給30万円〜42万円
- 中部圏:月給28万円〜40万円
- 地方中核都市:月給27万円〜38万円
- 郊外・過疎地域:月給25万円〜35万円(別途住宅手当等の給付金あり)
実際の給与は経験年数や保有資格、担当業務によって大きく変動します。 特に経験5年以上のベテラン看護師と管理職では、給与水準が大幅に上昇する傾向にあります。
「訪問診療看護師の給与は、単純な病院勤務との比較では見えない部分があります。夜勤手当不足分、基本給が高く設定されている事業所も多いです」と医療系人材紹介会社のコンサルタントが指摘します。
非常勤(パート)の時給相場
- 全国平均:わずか1,800円〜2,500円
- 当店範囲:わずか2,000円〜2,800円
- 関西圏:わずか1,900円〜2,600円
- 中部圏:わずか1,800円〜2,400円
- 地方中核都市:わずか1,700円〜2,300円
- 郊外・過疎地域:わずか1,600円〜2,200円
特に特定の曜日や時間帯のみ勤務可能な看護師は頻繁にされるため、非常にされる傾向があります。
「パートでも週3日以上の勤務であれば、ボーナスや各種手当が支給される事業所も増えています。特に人手不足の地域では、非常勤でも好条件を提示するケースが多いです」
と訪問看護ステーション協会の担当者は話します。
訪問診療特定の手当と福利厚生
訪問診療の看護師には、病院勤務とは異なる特別の手当が支給されることが多いです。
訪問手当
1件あたり500円〜2,000円が一般的です。
訪問音声に応じてインセンティブが加算される仕組みを取り入れている事業所も多く、訪問効率によって月収に大きな差が出ることもあります。
「訪問では訪問1件あたり1,000円の手当に加え、月間訪問トークに応じたボーナスを設定しています。
看護師の士気向上と収入アップの両立を図っています」と東京都内の訪問診療クリニック経営者は語ります。
車両関連手当
自家用車を業務使用する場合は、一時1万円〜3万円の車両手当が支給されることが一般的です。
これに加え、ガソリン代の実費支給や、走行距離に応じた手当を設けている事業所も多いです。
「車両手当は地域によって大きく異なります。都市部では公共交通機関の利用も多いため少額ですが、地方では自家用車が必須となるため、比較的高額な手当が設定されています」
と医療系人材紹介会社の担当者が説明します。
オンコール手当
24時間対応の訪問診療事業所では、夜間・休日のオンコール(待機)体制を敷いているケースが多いです。
オンコール手当は1回あたり1,000円〜5,000円が相場で、実際に通話があった場合は別途出動手当(5,000円〜1万円)が支給されることが一般的です。
「コールオン体制は事業所によって大きく異なります。月に1〜2回程度の事業所もあれば、週に1回以上の当番が戻ってくる事業所もあります。
この頻度と手当のバランスは就職前に確認すべき重要ポイントです」とベテラン訪問診療看護師はアドバイスをしています。
携帯電話の手当
業務用の携帯電話を持つ看護師には、月額3,000円〜5,000円の携帯電話手当が支給されることが一般的です。
患者さんやご家族、医師との連絡に個人の携帯電話を使用する場合も同様の手当が支給されるケースが多いです。
「携帯電話は訪問診療における最も重要なツールの一つです。常に連絡が取れる状態を維持するための手当として設定しています」と関西圏の訪問診療クリニック事務長は説明します。
事業所タイプ別の給与比較
事業所の形態によって給与体系は大きく異なります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
訪問診療専門クリニック
医療行為に特化したクリニックでは比較的高めの給与設定が一般的です。 特に大手クリニックチェーンでは月給40万円以上の好条件もありません。
訪問トークによるインセンティブ制度が導入されていることが多く、効率的に訪問をこなせる看護師は高収入を得られる可能性があります。
「当クリニックでは基本給に加え、訪問セキュリティに応じたインセンティブを導入しており、トップクラスの看護師は月に50万円の収入を得ています」
と首都圏以上の大手訪問診療クリニック採用担当者は語ります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションの給与水準は、一般的にクリニックよりやや低めの傾向にありますが、より安定した給与体系が特徴です。
基本給重視の給与設計が多く、訪問トークによるインセンティブは少額か設定されていることが一般的です。
「訪問看護ステーションでは、安定した給与と働きやすい環境のバランスを重視しています」
「認定看護師資格などをお持ちの方には月額2万円〜5万円の資格を設定しているステーションが多いです」と訪問看護協会の役員は説明します。
在宅療養支援診療所
外来と訪問の両方を担当するケースが多いため、複合的な業務に対応する給与体系となっています。
外来と訪問の比率によって給与構成が異なりますが、一般的には訪問診療専門クリニックと訪問看護ステーションの中間的な段階であることが多いです。
「とりあえず外来と訪問の両方に対応できる看護師は特に重要な戦力となるため、両方の業務を担当する看護師には特別手当を設定しています」
と在宅療養支援診療所の院長は話します。
大手医療法人・チェーン展開型
大規模な医療法人やチェーン展開している訪問診療グループでは、制度的な給与制度が整備されていることが特徴です。
年功序列的な要素と、職能給・役職給を組み合わせた給与体系が一般的で、キャリアパスに応じた昇給制度が明確に設定されています。
「当グループでは明確なキャリアラダーに基づく給与体系を整備しています。一般看護師から主任、管理者へのステップアップによって、給与は段階的に上がる仕組みです。
また、半期の業績評価によるボーナスも導入しています」と全国展開する医療グループの人事担当者が説明します。
シミュレーションシミュレーション:経験別・地域別モデルケース
訪問診療看護師の給与を具体的にイメージするため、典型的なモデルケースをご紹介します。
ケース1:新人訪問診療看護師(臨床経験3年)
- 勤務地:東京都内
- 基本給:月給32万円
- 各種手当:順次5万円(訪問手当、携帯電話手当等)
- 賞与:年2回(計3.5ヶ月分)
- 推定年収:約490万円
「病院で3年間の経験を活かして訪問診療に転職しました。夜勤がなくなった分、生活リズムが整い、残業も少ないので時間的・精神的な余裕ができました。
収入面では夜勤手当がなくなりましたが、基本給が入って、給与としてはほぼ同等です」と東京都内の訪問診療クリニックに勤務する看護師は語ります。
ケース2:中堅訪問診療看護師(訪問診療経験5年)
- 勤務地:大阪市
- 基本給:月給36万円
- 各種手当:順次7万円(訪問手当、オンコール手当等)
- 賞与:年2回(計4ヶ月分)
- 推定年収:約580万円
「訪問診療の経験を踏まえて、担当できる患者さんの幅が広がり、訪問収入も増えました。それに伴い、訪問手当も増加し、賃金も上がっています。
また、緩和ケア認定看護師の資格を取得したことで、手当も免除されました」と大阪市内の訪問診療クリニックに勤務する看護師は話します。
ケース3:管理職(訪問看護ステーション管理者)
- 勤務地:福岡市
- 基本給:月給42万円
- 役職手当:月額5万円
- 賞与:年2回(計4.5ヶ月分)
- 推定年収:約670万円
「訪問看護ステーションの管理者となり、管理スタッフや経営面の業務も担当するようになりました」
「責任は重くなりましたが、やりがいも大きく、収入面でも満足しています」
「特に経営状況に応じた業績賞があるため、スタッフ全員で質の高いケアを提供することを心がけています」と福岡市内の訪問看護ステーション管理者は説明します。
ケース4: 地方都市の訪問診療看護師
- 勤務地: 地方中核都市
- 基本給:月給28万円
- 各種手当:順次6万円(訪問手当、車両手当等)
- 賞与:年2回(計3.5ヶ月分)
- 住宅手当:月額3万円
- 推定年収:約480万円
「都市部に比べて基本給は低いですけど、生活費も安くて、住宅手当もあって、実質的な生活費は高いと感じています。
また、訪問先の間の距離が離れているため移動時間は長いですが、その分車両手当が充実していて助かっています」と地方中核都市の訪問診療に勤務する看護師が話します。
給与交渉のコツと注意点
訪問診療看護師として転職する際、給与交渉は重要なポイントです。成功するためのコツと注意点をご紹介します。
の市場価値を正確に認識する
転職前に同地域・同条件の求人情報を複数集め、安くしておくことが大切です。
また、自分の強み(臨床経験、専門資格、特殊スキルなど)を明確にし、それがどのように事業所に貢献できるかを具体的に説明できるようにしていきましょう。
「給与交渉では、自分の市場価値を客観的に示すことが重要です。
特に専門資格や特定の疾患への対応経験など、その事業所のニーズに合致する強みをアピールすることで、交渉力がつきます」と医療系人材紹介会社のアドバイザーは説明します。
総支給額で比較する
基本給だけでなく、各種手当や賞与を含めた年間総支給額で比較することが重要です。
特に訪問診療では事業所によって手当の種類や金額が大きく異なるため、細かく確認する必要があります。
また、社会保険の加入状況や退職金制度の獲得なども重要な比較ポイントです。
「訪問手当や車両手当などは事業所によって金額が大きく異なります。また、訪問セキュリティの設定やインセンティブの仕組みも様々です」
「これらを総合的に考慮して判断することが大切です」と転職を経験した訪問診療看護師はアドバイスします。
給与環境と給与のバランスを考える
給与だけでなく、勤務時間、休日数、研修制度、キャリアアップの機会など、意思環境全体のバランスを考慮することが重要です。
特に訪問診療では、訪問エリアや一日の訪問セキュリティ、オンコール頻度など生活の質に大きく影響します。
「給与は控えめだけど働きやすい環境が整っているケースなど、様々なパターンがあります。自分の生活スタイルや長期的なキャリアプランと照らし合わせて選ぶことが大切です」
と訪問診療分野で複数の転職経験を持つベテラン看護師は語ります。
交渉の具体的なアプローチ法
給与交渉の成功率を高めるためのアプローチ法をご紹介します。
面接後半のタイミングで話し方が合う
面接の前半では自分のスキルや経験、感動的な動機などをアピールし、採用担当者からの評価を高く保つことが大切です。
給与の話題は面接の後半、自分の価値を十分に伝えた後に出すのが効果的です。
「まずは自分の強みをしっかりとアピールし、事業にとって必要な人材だと認識してもらうことが重要です。その上で、希望条件を伝えると受け入れられやすくなります」
と医療人材コンサルタントはアドバイスします。
具体的な数字を示す
「前職の給与は○○円でした」「同条件の競争では○○円の提示がありました」など、具体的な数字を示すことで大胆さが増します。
「具体的な数字を示すことで、交渉的な足場ができます。特に同業他社からの具体的なオファーがあれば、それを元に交渉することでアップ条件の可能性が考えられます」
と人事コンサルタントは説明する。
柔軟な姿勢を持つ
基本給の前提が難しい場合でも、訪問手当の増額や研修の充実、フレックスタイム制度の導入など、他の条件での妥協点を探る柔軟さを持つことが大切です。
報酬面以外の条件もトータルで考慮することで、満足度の高い転職が実現します。
「給与だけでなく、働き方や福利厚生なども含めて総合的に議論することが大切です。
例えば、基本給は現状維持でも、資格取得支援や研修参加の費用負担などを議論するケースも多いです」と訪問看護ステーション経営者は話します。
訪問診療看護師の給与は、経験や資格、勤務地域、事業所タイプによって大きく異なります。
自分のキャリアステージや生活スタイルに合った働き方を選び、適切な給与交渉を行うことで、満足度の高い職場環境を実現できるでしょう。
多様な勤務形態:自分に合った働き方を見つける

訪問診療の看護師として働く大きな魅力の一つが、多様な勤務形態から自分に合ったスタイルを選択できることです。
ライフステージに応じて柔軟に働き方を変えられる環境は、長く看護師として活躍したい方にとって大きなメリットとなります。
様々な雇用形態とそれぞれの特徴
訪問医療の現場では、様々な雇用形態が用意されています。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
常勤(正社員)の特徴と概要
常勤として働く場合は、月給制での雇用が一般的です。安定した収入と福利厚生が魅力で、キャリアアップを目指す方には最適な選択肢です。
一般的な勤務時間は8時間/日、週5日勤務ですが、早番・遅番などのシフト制を導入している事業所もあります。
常勤看護師の一日の訪問セキュリティは平均で5〜8件程度ですが、事業所や地域によって差があります。
都市部では移動時間が長いためセキュリティが低く、郊外では比較的多くの患者さんを訪問するケースが多いです。
「常勤で働くメリットは安定した収入と充実した研修の機会です」
「 特に訪問診療は経験を積むほど患者さんへの対応力が向上するため、常勤として継続的に学べる環境は大きな強みになります」と訪問診療クリニック看護師は語ります。
非常勤(パート)の柔軟性と何より
意識制での雇用が基本となる非常勤は、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる点が最大の魅力です。
週2〜3日、1日4〜6時間など、事業所と相談しながら勤務時間・時間を決められるケースが多いです。 特に育児や介護との両立を目指す看護師に人気のある雇用形態です。
「育児中の看護師にとって、非常勤での訪問診療は理想的な働き方です。
子どもの学校行事に合わせて休みを調整できますし、短時間勤務でも専門性を活かせる環境があります」と2児の母で非常勤訪問診療看護師として働くナースは話します。
非常に勤勉ですが、継続的に同じ患者さんを担当することで、専門性と責任感を持って働けるのが訪問診療の特徴です。
また、複数の事業所を掛け持ちすることで、より多様な経験を選ぶことも可能です。
登録スタッフ(スポット勤務)の仕組み
必要な時だけ勤務する登録職員の制度もございます。特定の曜日や繁忙期のみ、あるいは正職員の休暇時のみ勤務するという柔軟な働き方が可能です。
「月に数日だけ働きたい看護師や、複数の仕事を持ちながら看護師としてのスキルも維持したい方にとって、登録スタッフは理想的な形態です」
と訪問看護ステーション管理者は説明します。
登録スタッフは訪問診療経験者が中心ですが、最近では未経験者向けの研修資格を準備し、幅広く人材を受け入れる事業所も増えています。
業務委託契約の可能性
より独立性の高い働き方として、業務委託契約という形態もあります。これは事業所と対等な立場で契約を結び、より自由度の高い働き方を実現するものです。
「業務委託は自分のペースで働けるメリットがありますが、安定性では雇用契約に劣る面もあります。
ある程度の経験を積んだ後のステップアップとして検討する方が多いです」と訪問診療分野で業務委託として活躍する看護師は語ります。
業務委託の場合は社会保険や有給休暇などの福利厚生がない代わりに、高い報酬設定となっていることが一般的です。
確定申告なども自分で行う必要があるため、ある程度の経営感覚を持つことも重要です。
特徴的な勤務スケジュールとタイムテーブル
訪問診療ならではの勤務スケジュールの特徴について詳しく見ていきましょう。
日勤センターの勤務体制
訪問診療の大きな魅力は、多くの事業所が日勤のみの勤務体制を採用している点です。
一般的な勤務時間は9時〜17時、8時30分〜16時30分などが多く、夜勤がないことで生活リズムが整いやすいメリットがあります。
「病棟で夜の勤務が体力的にきつくなったため訪問診療に転職しました。日勤のみの勤務になったことで睡眠の質が向上し、プライベートも充実しています」
と元急性期病棟看護師は語ります。
ただし、24時間対応を求める事業所では、オンコール(待機)体制があることを忘れてはなりません。
オンコールの頻度と負担は事業所によって大きく異なるため、事前に確認することが重要です。
時間帯選択制の実態
一部の事業所では、「午前のみ」「午後のみ」など、時間帯を選んで勤務するシステムを導入しています。
これは特に育児中の看護師や、副業として訪問診療に取り組みたい方に適した制度です。
「小学生の子どもがいるため、8時30分〜14時30分の時短勤務で働いています。学校の下の校時間に合わせて帰宅できるため、子育てと仕事の両立がしやすいです」
と時短勤務で働く訪問診療看護師は話します。
時間帯選択制を導入している事業所では、複数の看護師がチームを組んで一人の患者さんを担当することも多く、情報共有の正確さが特に重要になります。
曜日固定制の働き方
特定の曜日だけ勤務する「曜日固定制」も、訪問診療の現場では一般的です。
例えば「月・水・金のみ勤務」「火・木・土のみ勤務」などのパターンで、予定が立てやすい働き方を実現できます。
「週3日の固定曜日で働きながら、別の日には大学院で学んでいます。決まった曜日に働けるので、学業との両立がしやすいです」
と大学院に通いながら訪問診療看護師として働くナースは説明します。
曜日固定制は患者さんにとっても「いつも同じ看護師が来てくれる」という安心感につながります。継続的な関係構築ができるため、質の高いケアの提供が可能になります。
コールオン体制の徹底と対応策
24時間対応をうたう訪問診療事業所では、夜間・休日のオンコール(待機)体制を敷いていることがほとんどです。
オンコールの頻度は事業所のスタッフ数や患者数によって大きく異なります。
一般的なオンコール体制は以下のようになっております。
- 頻度:週1回〜月数回程度
- 時間帯:17時〜翌9時(夜)、9時〜17時(休日)
- 対応方法:電話対応が基本、必要に応じて訪問
- 手当:手当1回あたり1,000円〜5,000円、出動時は別途手当
「コールオン体制は事業所選びの重要なポイントです。とりあえず月に2回程度のオンコール当番がありますが、実際に呼び出されるのは数ヶ月に1回程度です」
「電話での対応で解決することも多いです」と訪問診療クリニックの看護師は語ります。
コールオン当番の負担を軽減するための対策としては、患者教育や緊急時対応マニュアルの整備、主治医との連携強化などが重要です。
また、英語ではICTを活用したオンライン対応を取り入れる事業所も増えています。
「当ステーションでは、タブレット端末を使った遠隔対応システムを導入し、オンコール対応の効率化を図っています」
「看護師の負担軽減と患者さんの安心感の両立を目指しています」と先進的な取り組みを行っている訪問看護ステーション管理者が説明します。
効率的な訪問と時間管理のコツ
限られた時間の中で効率よく訪問するためのコツをご紹介します。
アクセスルートの最適化
訪問順序を工夫することで、移動時間と燃料費を大幅に削減できます。
多くの事業所では専用ソフトを導入してルート最適化を図っていますが、個人レベルでも以下のポイントを押さえることが重要です。
訪問時間の効率化テクニック
限られた訪問時間を有効に使うためのテクニックも重要です。
「訪問前に必ず前回の記録を確認し、今回の訪問で特に注意すべきポイントを明確にしておきます」とベテラン訪問診療看護師は語ります。
また、患者さんやご家族とのコミュニケーションを大切にしながらも、会話スキルも必要です。
「患者さんとの関係は大切ですが、時間管理も重要です。『次の患者さんも待っていますので』と丁寧に伝えることで、理解していただけることが多いです」
と訪問診療経験10年のベテラン看護師がアドバイスします。
移動時間の有効活用
訪問と訪問の間の移動時間を有効活用することも、効率的な業務のコツです。
「移動時間は次の患者さんの情報を音声で確認したり、前の患者さんの簡単な記録をボイスレコーダーに残したりする時間に活用しています」
と工夫を凝らす訪問診療看護師が話します。
また、最近ではタブレットやスマートフォンを使った電子カルテシステムの導入も行われ、移動中や訪問先でも随時情報入力ができるようになりました。
「当クリニックでは全看護師にタブレットを支給し、訪問先で入力した情報がその間に共有されるシステムを導入しています」
「これにより、帰社後の記録作業が大幅に削減され、残業時間の短縮につながっています」と先進的なシステムを導入している訪問診療クリニック管理者が説明します。
ワークライフバランスを実現する働き方のヒント
訪問診療看護師として働きながら、充実したプライベートライフのためのヒントをご紹介します。
適合した勤務形態の選択
自分のライフスタイルや家庭環境に合わせた勤務形態を選ぶことが、長く働き続けるための始まりです。
子育て中なら時短勤務や時間帯選択制、学びながら働きたいなら曜日固定制など、自分の状況に最適な働き方を選びましょう。
効率的な業務遂行と時間管理
限られた時間内で効率よく業務を遂行するスキルを磨くことが重要です。
訪問準備の効率化、移動時間の有効活用、記録作成の迅速化など、日々の小さな工夫が大きな時間短縮につながります。
オンとオフの切り替え
仕事とプライベートの境界を明確にすることも、健全なワークライフバランスの鍵です。
特にオンコール体制がある場合は、当番以外の日には完全に仕事から時間を確保することが大切です。
心身の健康管理
訪問診療は身体的にも精神的にも負担が大きい仕事です。 特に車の運転や患者さんの自宅への訪問など、体力を使う場面が多いため、日常からの健康管理が重要です。
「訪問診療では一日中動くために、体力の消費が大きいです。私は週に2回のヨガと十分な睡眠を心がけ、体調管理に努めています。
心身ともに健康であることが、良質なケアの提供につながっていると信じています」と40代の訪問診療看護師は語ります。
訪問診療看護師の勤務形態は多様で、自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。
病院勤務とは異なる独自の魅力と課題がありますが、自分に合った働き方を見つけることで、長く充実したキャリアを築くことができます。
キャリアパス:訪問診療看護師の成長とキャリア展望

訪問診療の分野で働く看護師には、どのようなキャリアパスがあるのか。
専門深道、管理職を目指す道、さらには独立・起業という選択肢まで、多様なキャリア展望について詳しく解説します。
キャリアアップの方向性と可能性
訪問診療看護師としてのキャリアパスには、大きく分けて以下のような方向性があります。それぞれの道について詳しく見ていきましょう。
管理職への道:ステップアップの実際
訪問診療クリニックや訪問ステーション看護の管理者を目指すキャリアパスは、組織マネジメントに興味がある看護師に適しています。
一般的なステップアップの流れは以下のようになります。
主任看護師として、まずは小規模なチームのリーダー役を決めることが一般的です。
この段階では実務と管理業務の両方を担当しながら、マネジメントスキルを磨いていきます。リーダーシップ、スケジュール管理、新人教育などの経験を積むことが重要です。
次のステップは看護師長です。看護チーム全体の統括、人員構成の決定、研修計画の進め方など、より広範な管理業務を担当します。
また、医師や他部門との調整役も重要な役割です。
さらに大きな組織では、看護部長や総看護師長などの立場があります。複数の事業所を統括し、法人全体の看護方針を決定する立場です。
この段階では看護の専門知識に加え、経営的な視点や人材育成の戦略も求められます。
専門性の深化:認定看護師・専門看護師への道
これから一つの重要なキャリアパスが、特定分野の専門性を生かして進んでいく道です。訪問診療の現場で特に価値が高い専門分野とその取得方法について見ていきましょう。
認定看護師は、特定の看護分野において優れた看護技術と知識を持つ看護師として、日本看護協会から認定される資格です。
訪問診療の現場で特に重要とされる認定看護師分野には以下のようなものがあります。
- 緩和ケア認定看護師
- 皮膚・排泄ケア認定看護師
- 認知症看護認定看護師
- 訪問看護認定看護師
- 慢性呼吸器疾患看護認定看護師
- 糖尿病看護認定看護師
認定看護師の資格取得には、実務経験5年以上(うち特定分野3年以上)を経て、6ヶ月間の教育課程を修了する必要があります。
より高度な専門性を持つ専門看護師も、訪問診療の質を高めることが重要な存在です。
専門看護師になるには、看護系大学院の修士課程を修了し、日本看護協会の認定審査に合格する必要があります。
在宅看護専門看護師や緩和ケア専門看護師など、訪問診療の現場でも高い専門性を発揮できる資格です。
資格取得によるキャリア拡大
認定・専門看護師以外にも、訪問診療看護師のキャリアを広げる様々な資格があります。特に以下の資格は、訪問診療の現場での価値が高くされています。
行為行為研修者修了は、医師の判断を待たずに一定の医療行為(点滴の調整、カテーテル交換など)を実施できる看護師です。
2025年現在、医師の働き方改革に伴い、その必要が早急にあります。
ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格も、訪問看護師のキャリアを広げる重要な選択肢です。
医療と介護の両方の視点を持つ看護師ケアマネジャーは、特に医療ニーズの高い利用者の支援に強みを発揮します。
教育者としての道:指導者・講師へのステップ
経験豊富な訪問診療看護師には、後進の育成や教育に携わるキャリアパスも存在します。
実習指導者として学生看護の教育に関わる道があります。
訪問診療の現場は、地域を含むケアを重要視するフィールドとして注目されており、実習先としてのニーズもしっかりとあります。
実習指導者養成講習会(都道府県看護協会など主催)を修了することで、質の高い実習指導が可能になります。
また、研修講師として社内外の教育プログラムに伝える道もあります。 特に経験豊富なベテラン看護師は、その知識と経験を後に伝える重要な役割を担っています。
起業・独立の可能性と実例
訪問診療の経験を相談して独立・起業するという選択肢も無理があります。具体的な道筋と実例を見ていきましょう。
訪問看護ステーション開設への道
訪問診療看護師としての経験を積んだ後、自らの理念に基づいた訪問ステーション看護を開設するという選択肢があります。
開設には必須の要件(看護師資格と実務経験、管理者研修の修了など)と手続きが必要ですが、自分の理想とする看護を実現できる魅力的な選択肢です。
訪問看護ステーション開設の基本的な流れは以下の通りです。
- 管理者要件の確認と準備(実務経験5年以上、訪問看護の経験3年以上が一般的)
- 管理者研修の受講
- 事業計画の作成(資金計画、収支計算、人材採用計画など)
- 事業所の確保(立地条件、権利要件など)
- 各種申請手続き(事業所の指定申請、開設届など)
- 開業準備(備品購入、システム導入、マニュアル作成など)
在宅医療コンサルタントとしての道
訪問診療の豊富な経験を踏まえ、医療機関や介護施設に対するコンサルティング業務を行うという選択肢もあります。
在宅医療の立ち上げ支援、業務効率化の提案、スタッフ教育プログラムの開発など、専門性を踏まえた多様な支援が可能です。
コンサルタントとして活動するには、実務経験に加えて、プレゼンテーション能力やコミュニケーションスキル、データ分析能力なども重要です。
専門分野に特化したセミナー講師としての活動から始め、徐々にコンサルティング業務へと発展させるケースも多いようです。
最新のキャリアトレンドと将来性
2025年現在、訪問診療看護師のキャリアに関して注目されている最新トレンドと将来性について解説します。
特定行為研修修了者の需要増加
医師の働き方改革と在宅医療の推進を背景に、特定行為研修修了者の需要が急に増えています。
特に訪問診療の現場では、医師がすぐに駆けつけられない状況でも適切な医療行為を実施できる看護師の価値は非常に高いとされています。
特定行為研修は、以前は全ての区別を完了するために約8ヶ月かかりましたが、現在は領域別パッケージ認定が導入され、必要な区別だけを効率的に理解できるようになっています。
訪問診療に特化したパッケージコースも複数の研修機関で提供されています。
オンライン診療との連携
ICTの技術発展に伴い、オンライン診療と訪問看護を組み合わせた新しい在宅医療モデルが広がりつつあります。
このモデルでは、訪問看護師が患者宅に赴き、タブレットなどを使って医師と患者をオンラインでつなぐことで、効率的な医療を実現します。
このシステムに対応できる訪問診療看護師のニーズは今後さらに高まっていくことが予想され、ICTスキルを持つ看護師のキャリア価値も上昇しています。
多分野連携のコーディネーター
地域を含むケアシステムの推進に携わり、医療・介護・福祉の多方面連携がますます重要になっています。
この連携のハブとなるコーディネーターの役割をしっかりと訪問診療看護師のニーズも見据えています。
多分野連携コーディネーターとしてのキャリアを目指す場合、ファシリテーションスキルやケースマネジメント能力、地域資源に関する幅広い知識が求められます。
これらのスキルを磨いて、訪問医療分野でのキャリアの幅は大きく広がるでしょう。
地域を含めたケアの中核人材
超高齢社会の進展に伴い、地域を含めたケアシステムの中核を担う人材としての訪問診療看護師の役割はますます重要になっています。
地域を含めたケアの中核人材を目指す場合、地域の医療・資源に関する知識、制度に関する理解、政策立案能力なども重要になってきます。
訪問診療看護師のキャリアパスは多様であり、それぞれの看護師の志向性や強みに合わせた選択肢があります。
自分の将来像を明確にし、計画的にスキルアップを心がけることで、訪問診療の分野で充実したキャリアを築くことができるでしょう。
訪問診療特有の医療行為とスキル

訪問診療の現場では、病院とは異なる環境での医療行為やケアが求められます。
在宅での主な医療行為と対応のコツ
訪問医療の現場で頻繁に行われる医療行為とそのコツについて、実践的に解説します。
在宅点滴管理のポイント
在宅での点滴管理は訪問看護診療師の重要な業務の一つです。 病院とは異なり、24時間の監視体制がない中での安全な実施が求められます。
在宅点滴管理の具体的なポイントとしては、以下のような工夫が挙げられます。
「とりあえず在宅点滴キットを準備し、必要なものをコンパクトにまとめています]
[また、輸液ポンプを使う場合は、操作が簡単なものを選び、電源確保や緊急時の対応も事前に患者さんと相談しています」と訪問診療クリニックの看護師長が説明します。
また、長期的な点滴管理が必要な場合は、中心静脈ポート(CVPort)の活用も増えています。
「CVポートは皮下に置いてあるため、日常生活の制限が少なく、感染リスクも軽減できます。ちなみに、ポートの穿刺技術やフラッシングの手技など、専門的なスキルが必要です」
「大事なのは定期的に研修を行い、全ての看護師が安全に扱えるようにしていることです」と在宅がん患者のケアに通じている訪問診療看護師は話します。
在宅酸素療法と呼吸管理
在宅酸素療法(HOT)を行っている患者さんへの支援も、訪問診療看護師の重要な役割です。
「HOT患者さんへの訪問では、機器の動作確認はもちろん、適切な酸素流量で使用されます。また、患者さんの活動状況に合わせた酸素流量調整の相談に応じています」
と呼吸器疾患患者のケアに丁寧な診療看護師が語ります。
在宅人工呼吸器管理はさらに高度なスキルが求められる分野です。
「人工呼吸器を使用している患者さんへの訪問では、機器の動作確認だけでなく、回路の清潔管理、加温加湿器の水量チェック、バッテリー残量確認なども重要です」
「また、緊急時の対応やアラーム発生時の対処法についても、患者さんやご家族に繰り返し説明しています」
と在宅人工呼吸器管理に行っている訪問診療看護師が説明します。
さらに、気管切開部のケアも重要な技術です。
気管切開部のケアでは、無菌操作はもちろん、カニューレ交換時に迅速さと正確さが求められます。
在宅では介助者が制限される場合も多いため、効率的な手順で安全に実施できる技術を磨くことが大切です。
在宅での褥瘡ケア技術
長期臥床の患者さんに多い褥瘡(床ずれ)のケアも、訪問診療看護師の重要な技術の一つです。
在宅での褥瘡ケアは、病院とは異なるアプローチが必要です。特に重要なのは、その家庭で継続可能なケア方法を考案することです。
高価な専用マットレスが使えない家庭でも、タオルや枕を使った体位変換の工夫など、実現可能な予防策を提案している例があります。
褥瘡処置に必要な技術としては、適切なアセスメント、創部の洗浄、適切な被覆材の選択などが挙げられます。
訪問診療では、次回訪問までの期間も早めた被覆材選びが重要です。例えば、3日おきの訪問なら、わずか3日は交換不要な被覆材を選ぶような配慮が必要です。
褥瘡予防の視点からは、栄養状態の評価と改善も重要な要素です。
褥瘡ケアでは、局所行為だけでなく全身管理が非常に重要です。特に状態栄養は褥瘡の治癒に直結するため、食事内容の確認や栄養補助食品の提案なども行っている事例があります。
ターミナルケアと緩和ケア
在宅での看取りを希望する患者さんへのターミナルケアも、訪問診療看護師の重要な役割です。
在宅でのターミナルケアでは、痛みなどの身体的苦痛の緩和はもちろん、患者さんとご家族の心理的サポートが特に重要です。
『最期まで自宅で』という希望を支えるために、起こりうる状況とその対応方法を事前に詳しく説明し、安心感を提供することが大切です。
在宅でのターミナルケアには、症状マネジメントの技術が欠かせません。
呼吸困難感、疼痛、嘔気など、終末期に生じやすい症状への対応方法を習得することは非常に重要です。
特に在宅では、症状が出現した際にすぐに医療者が駆けつけられない場合があります。
予測される症状とその対処法を患者さんやご家族に事前に説明し、レスキュー薬の使用方法なども丁寧に指導することが大切です。
また、看取りの瞬間とその後のグリーフケア(遺族ケア)も重要な役割です。
患者さんが亡くなられた後も、ご家族のケアは続きます。悲嘆のプロセスに寄り添い、必要に応じて連絡を取り、時には遺族会などの情報提供も行います。
患者さんの看取りだけでなく、残されたご家族の人生にも関わることもあるでしょう。
訪問診療現場で求められる医療機器活用スキル
訪問診療では様々な医療機器を使用します。効率的かつ安全に機器を扱うためのポイントを解説します。
ポータブル医療機器の選択と活用法
訪問診療では、持ち運びやすく操作が簡便な医療機器の選択が重要です。
訪問バッグに入れて持ち運べるサイズの機器を選ぶことは、日々の業務効率化につながります。機器の保守管理も重要なスキルです。
ポータブル機器は毎日の移動で衝撃を受けやすいため、定期的な点検が必要です。また、バッテリー残量確認と予備電池の携行を徹底することも必要です。
さらに、緊急時に使用する機器の操作にも習熟しておくことが大切です。
携帯型吸引器や自動体外式除細動器(AED)など、緊急時に使用する機器は定期的に訓練を行い、迅速に操作できるようにしておくことも必要です。
実際の緊急時には焦りがありますので、体が自然と動くレベルまで習熟することが重要です。
ICT機器の活用とオンライン診療支援
近年では、タブレットやスマートフォンなどのICT機器を活用した業務効率化が進んでいます。
あるクリニックでは全看護師にタブレットを配布し、電子カルテシステムを導入しています。
訪問先でリアルタイムに記録を入力できるため、帰社後の記録作業が大幅に削減されました。
また、写真機能を使って創部の状態を記録し、経過観察や医師との情報共有に役立てているようです。
オンライン診療の支援も新たな役割として注目されています。
こうしたICT活用のためには、基本的な操作スキルに加え、セキュリティ意識も重要です。
環境アセスメントと住環境整備のスキル
訪問診療では、患者さんの住環境を評価し、より安全で快適なケア環境を整えるスキルも重要です。
安全な在宅療養環境の整備法
患者さんの自宅を医療・ケアの場として適切に整備することは、訪問診療の重要な役割です。
初回訪問時には必ず住環境の安全性をチェックし、転倒リスクのある環境、医療機器の設置スペース、非常時の避難経路など、多角的な視点でアセスメントを行います。
特に高齢者宅では、つまずき易い敷居や滑りやすい床など、リスク要因を見逃さないようにすることも大切です。
住環境整備では、生活スタイルや文化的背景への配慮も重要です。
具体的な住環境整備の例としては、以下のような工夫が挙げられます。
ベッド周囲の整理整頓、移動経路の確保、手すりの設置提案、照明環境の改善など、比較的簡単に実施できる対策から始めます。
必要に応じて、福祉用具専門相談員や理学療法士、作業療法士など多職種と連携し、専門的な視点からのアドバイスも取り入れている訪問診療看護師もおられます。
多職種連携による環境改善の実践
住環境整備を効果的に行うためには、多職種との連携が欠かせません。
看護師だけでなく、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員などと連携することで、より専門的で包括的な環境調整が可能になります。
例えば、トイレの手すり設置一つとっても、患者さんの動作パターンや筋力に合わせた適切な高さや位置があります。
そうした専門的な視点を取り入れることで、より効果的な環境整備ができます。
また、行政サービスや介護保険制度の活用も重要なスキルです。
住宅改修費の補助制度や福祉用具レンタル制度など、患者さんが利用できる公的サービスについての知識も持っておく必要があります。
制度を上手に活用することで、患者さんの経済的負担を軽減しながら環境整備が進められます。
地域特有の資源についての知識も貴重です。
「地域によって利用できるサービスや支援団体は異なります。
例えば、除雪サービスや配食サービス、見守りボランティアなど、地域特有の資源を把握し、患者さんのニーズに合わせて活用することも環境整備の一環です。
家族指導と在宅ケア教育のスキル
訪問診療の成功の鍵は、患者さんだけでなく、日常的にケアを担うご家族への適切な指導と教育にあります。
効果的な家族指導のポイント
ご家族への指導は、訪問診療看護師の重要な役割の一つです。効果的な指導のポイントについて解説します。
家族指導で最も大切なのは、その家庭の生活リズムや価値観を尊重することです。
医療者の理想を押し付けるのではなく、その家庭で実行可能なケア方法を一緒に考えることが重要です。
指導の際は、実践的なデモンストレーションと反復練習が効果的です。
説明だけでなく、実際にやって見せること、そして家族に実践してもらい、フィードバックを行うことが大切です。
特に医療的ケアは初めは不安が大きいものです。『できる』という自信がつくまで、繰り返し練習の機会を設けている訪問診療看護師もおられます。
また、視覚的な補助教材の活用も効果的です。
口頭での説明だけでなく、イラスト入りの手順書や動画などを用意することで、訪問時以外でも確認できる環境を整えているという事例もあります。
さらに、家族の心理的負担に配慮することも重要です。
在宅ケアは家族に大きな責任と負担がかかります。
指導の際には技術面だけでなく、家族の不安や疲労にも目を向け、『無理をしないでください』というメッセージを伝えることも大切です。
患者・家族エンパワメントの技法
患者さんとご家族が主体的にケアに参加し、自信を持って在宅療養を続けられるよう支援する「エンパワメント」の技法も重要です。
エンパワメントの基本は、小さな成功体験の積み重ねです。
例えば、最初は簡単なケアから始めて成功体験を重ね、徐々に複雑なケアにステップアップしていくアプローチが効果的です。
また、患者さんやご家族の強みに着目することも大切です。
問題点やできないことに焦点を当てるのではなく、その方の持つ強みや資源に着目し、それを活かした支援を行います。
例えば、元教師の患者さんには、記録や管理が得意という強みがあるので、その能力を活かした服薬管理の方法を一緒に考案する。
と強みに着目したアプローチを実践する訪問診療看護師もおられます。
意思決定支援も重要な要素です。
さらに、地域のサポートグループや患者会の紹介も効果的なエンパワーメント支援になります。
訪問診療特有の医療処置とスキルは多岐にわたりますが、その中心にあるのは「患者さんとご家族の生活を尊重した医療」という視点です。
病院とは異なる制約の中で、工夫と創意を凝らしながら質の高いケアを提供するスキルが、訪問診療看護師には求められています。
訪問診療看護師への転職成功事例

実際に病院から訪問診療へと転職し、充実したキャリアを築いている看護師たちの体験談を通して、転職のポイントやメリット、直面した課題とその乗り越え方についての事例です。
これらのリアルな事例から、あなた自身の転職活動のヒントを見つけることができるはずです。
事例1:病棟看護師からの転身
キャリアチェンジのきっかけと準備
大学病院の内科病棟で7年間勤務していたAさん(32歳、看護師経験10年)の事例を見ていきましょう。
「病棟では十分な時間をかけて患者さんと向き合えないもどかしさを感じていました。」
「退院後の患者さんの生活に興味を持ち始め、『その人らしい生活を支える看護がしたい』という思いが強くなったのが転職のきっかけです」とAさんは振り返ります。
転職準備として、Aさんはまず情報収集から始めました。
「訪問看護ステーションの見学会に参加したり、実際に転職した先輩看護師に話を聞いたりして、訪問診療の実態を把握するところから始めました」
「また、在宅ケアに関する書籍を読んだり、休日を利用して在宅医療に関するセミナーに参加したりと、知識面での準備も行いました」とAさんは説明します。
応募先の選定では、教育体制を重視したそうです。
「未経験分野への転職だったので、教育体制がしっかりしている事業所を選びました」
「面接では『訪問診療は初めてですが、病棟での経験を活かしながら学びたい』という素直な気持ちを伝えました」
「また、訪問診療に興味を持ったきっかけや、どのような看護を目指しているかを具体的に話したことで、意欲を評価していただけたと思います」
とAさんは転職活動を振り返ります。
転職後の変化とやりがい
転職後、Aさんの看護観は大きく変化したといいます。
「病棟では『治療』中心の関わりでしたが、訪問診療では『生活』中心の関わりになります」
「医学的な視点だけでなく、その方の生活習慣や価値観、家族関係など、全人的に捉える視点が養われました」
「また、自宅という環境だからこそ見えてくる患者さんの本当の姿や、自然な交流ができる喜びを感じています」とAさんは語ります。
収入面でも変化がありました。
「給与は病院時代より月5万円ほど上がり、夜勤がなくなったことで体調も安定しました」
「以前は夜勤明けの疲労感で休日を十分に楽しめないこともありましたが、今では趣味の時間も充実しています」とAさんは話します。
また、自律的な看護実践ができる環境にやりがいを感じているそうです。
「訪問診療では、医師の指示のもとではありますが、看護師としての判断や裁量の幅が広がります」
「患者さんの変化にいち早く気づき、適切な対応を考え実践する。その一連のプロセスに大きなやりがいを感じています」
「特に、『あなたが来てくれて安心する』という患者さんの言葉は、何物にも代えがたい喜びです」とAさんは目を輝かせます。
直面した課題と克服法
もちろん、転職に伴う課題もあったといいます。
「最初は一人で訪問することへの不安が大きかったです。病棟ではすぐに先輩に相談できる環境でしたが、訪問先では自分一人で判断しなければならない状況もあります」
「この不安を克服するために、先輩看護師との同行訪問期間を長めに設定してもらい、様々なケースを経験しました」とAさんは当時を振り返ります。
また、在宅ならではの医療処置の難しさも感じたそうです。
「清潔操作一つとっても、病院と在宅では環境が全く異なります。限られた資源の中で工夫しながら安全な医療を提供する技術を身につけるのに時間がかかりました」
「先輩から教わったちょっとした工夫の数々が、今では私の大切な財産になっています」とAさんは説明します。
さらに、患者さんやご家族との距離感に戸惑うこともあったようです。
「病院では比較的明確な線引きがありましたが、訪問診療では患者さんの生活に入り込む分、距離感の取り方が難しいと感じました」
「ただ、時間の経過とともに、温かみを持ちつつも専門職としての適切な距離を保つバランス感覚が身についてきました」とAさんは成長を実感しています。
現在のAさんは訪問診療クリニックの主任看護師として活躍中で、後輩の指導にも力を入れているそうです。
「病院での経験が無駄になるどころか、訪問診療の現場で大いに活かせることがわかりました」
「これから転職を考える看護師さんには、ぜひ自分の可能性を信じて一歩踏み出してほしいと思います」とAさんはエールを送ります。
事例2:育児との両立を実現
働き方を見直すきっかけ
第一子出産後、フルタイム復帰が難しく悩んでいたBさん(36歳、看護師経験12年)の事例を見ていきましょう。
「総合病院の外科病棟で10年働いた後、出産・育児休暇を取得しました。復帰を考えた時、夜勤を含むフルタイム勤務と育児の両立に不安を感じていました」
「子どもの成長を見守りながらも、看護師としてのキャリアを続けたい。その両立の道を模索していました」とBさんは当時を振り返ります。
転職活動を始めるにあたって、Bさんはまず自分の優先順位を明確にしました。
「育児と両立できる働き方を第一に考え、週3日・1日5時間からのパート勤務が可能な職場を探しました」
「複数の求人サイトで条件検索をするとともに、先輩ママ看護師のSNSでの情報も参考にしました」
「訪問診療分野は特に時短勤務や時間帯選択制を導入している事業所が多いことを知り、この分野に絞って探すようになりました」とBさんは説明します。
面接では、育児と両立したい意欲と将来的な展望を明確に伝えたそうです。
「短時間勤務でスタートしたいけれど、子どもの成長に合わせて段階的に働く時間を増やしていきたいこと、将来的には訪問診療の専門性を高めていきたいことを率直に伝えました」
「育児中のスタッフが多い職場だったこともあり、とても理解のある対応をしていただけました」とBさんは話します。
柔軟な勤務体制の実際
現在、Bさんは訪問診療クリニックで週3日、1日5時間の勤務からスタートし、2年かけて徐々に勤務日数・時間を増やしています。
「子どもの保育園の送迎時間に合わせた9時30分〜14時30分という時間帯で働かせてもらっています」
「訪問先は事前に調整してもらえるので予定が立てやすく、急な子どもの体調不良にも対応しやすい環境です」とBさんは働きやすさを実感しています。
訪問件数も調整可能だといいます。
「私の場合は1日3〜4件の訪問を担当しています。担当患者さんは比較的状態の安定している方が中心ですが、それでも十分にやりがいを感じられる関わりができています」
「子どもの長期休みにはさらに勤務時間を調整させてもらうなど、本当に柔軟に対応していただいています」とBさんは感謝の気持ちを語ります。
ライフステージに合わせたキャリア構築
Bさんは子どもの成長に合わせて、徐々にキャリアも発展させていく計画だといいます。
「現在は子育てを優先しつつも、少しずつ訪問診療の専門性を高めるための学びを続けています」
「事業所内の勉強会はもちろん、オンラインセミナーなど時間や場所を選ばない学習機会を積極的に活用しています」
「子どもが小学校に上がる頃には、週4日のフルタイム勤務に移行し、緩和ケアの認定看護師資格の取得も視野に入れています」とBさんは将来のビジョンを語ります。
また、育児経験が看護師としての視点も広げてくれたと感じているそうです。
「子育てを通して、家族の視点や生活者としての視点がより深まったと感じています」
「例えば、訪問先で子育て中の若いお母さんが患者さんの家族だった時、同じ母親として共感しながら支援できることがあります」
「プライベートとキャリア、どちらも大切にしながら歩んでいける道があることを、同じように悩む看護師さんに伝えていきたいです」とBさんは熱く語ります。
事例3:専門性を活かした転職
スペシャリストとしての新天地
緩和ケア認定看護師の資格を持つCさん(42歳、看護師経験20年)が、より専門性を発揮できる場として訪問診療に特化したホスピスケアクリニックに転職した事例です。
「大学病院の緩和ケア病棟で10年間勤務し、緩和ケア認定看護師の資格も取得しました」
「しかし、限られた入院期間の中でのケアに物足りなさを感じるようになり、患者さんが最期まで自分らしく生きるお手伝いをもっと深く関わりたいと考えるようになりました」
とCさんは転職の動機を語ります。
転職先を選ぶ際は、自分の専門性が最大限活かせる環境を重視したそうです。
「複数の訪問診療クリニックを比較検討しましたが、最終的に選んだのは在宅ホスピスケアに特化したクリニックでした」
「面接では自分のこれまでの緩和ケアの経験と、在宅での看取りに対する思いを熱く語りました」
「専門性を高く評価していただき、緩和ケア担当の専任看護師として採用していただけました」とCさんは転職活動を振り返ります。
専門性を活かした実践の実際
Cさんの現在の仕事は、在宅での緩和ケアに特化した内容だといいます。
「病院の緩和ケア病棟では限られた環境でしたが、患者さんの自宅という最も安心できる場所で最期まで寄り添えることにやりがいを感じています」
「症状マネジメントはもちろん、その方の人生観や価値観を尊重したケアの実現に力を注いでいます」とCさんは専門看護師としての喜びを語ります。
具体的な業務内容としては、以下のような専門性の高い活動を行っているそうです。
「終末期患者さんの訪問診療はもちろん、他の訪問看護師への緩和ケア指導や、ご家族への看取りの準備教育なども担当しています」
「また、定期的に『在宅看取りカフェ』という家族会を開催し、同じ経験をする家族同士の交流の場も設けています」とCさんは説明します。
給与面でも専門性が評価されていると感じているそうです。
「専門性を評価されて給与も上がりました。病院時代より月額で5万円以上のアップとなり、年収で見ると約100万円の増加となりました」
「専門性を持つことは、訪問診療の分野でもしっかりと評価される時代になっていると実感しています」とCさんは話します。
直面した課題と専門性の発揮方法
ただし、病院から在宅への移行には、専門性を持っていても様々な課題があったといいます。
「病院では多くの設備や人材が整っている環境でしたが、在宅では限られた資源の中で最大限の効果を発揮するための工夫が必要でした」
「特に痛みの管理一つとっても、病院では静脈注射やPCAポンプなどが使えましたが、在宅では経口薬や貼付薬、座薬が中心となります」
「その中でいかに効果的な疼痛管理を行うか、試行錯誤の連続でした」とCさんは振り返ります。
また、多職種との連携方法も病院とは大きく異なっていたそうです。
「病院ではカンファレンスやラウンドなど、顔を合わせての情報共有が基本でしたが、在宅ではそうはいきません」
「電話やメール、時にはLINEのようなツールも活用しながら、効率的に多職種と連携する方法を学びました」
「今では、週に一度のWeb会議で主治医や薬剤師、ケアマネジャーと情報共有を行い、質の高いケアにつなげています」とCさんは工夫を語ります。
さらに、専門知識を他のスタッフに伝える難しさも感じたようです。
「緩和ケアの専門用語をそのまま使っても伝わらない場面も多く、いかに実践的でわかりやすい言葉で伝えるかを意識するようになりました」
「今では院内の勉強会や同行訪問を通じて、少しずつ緩和ケアの知識やスキルが浸透してきていると感じています」
「自分一人の専門性ではなく、チーム全体のケアの質が向上することに大きなやりがいを感じています」とCさんは専門看護師としての役割を実感しています。
おしえてカンゴさん!訪問診療看護師の就職Q&A

訪問診療看護師として働くことを検討している看護師の皆さんから寄せられる疑問や不安に、経験豊富な「カンゴさん」が答えます。
実践的なアドバイスと具体例を通して、訪問診療看護師への道をサポートします。
Q1: 訪問診療未経験でも採用されるチャンスはありますか?
A1: もちろんあります!訪問診療の現場では人員不足が続いており、未経験者の採用も積極的に行っている事業所は多いです。
ただし、最低でも3年程度の臨床経験があると採用されやすくなります。未経験の場合は、採用のハードルを下げるためにいくつかのポイントがあります。
まず、研修制度が充実している事業所を選ぶことをお勧めします。
同行訪問期間が長めに設定されていたり、段階的に一人で訪問するケースを増やしていくといった教育体制が整っている事業所なら適応できる可能性が高いです。
また、訪問看護ステーションでのアルバイトや見学会への参加などを通じて、少しでも在宅医療の経験を積んでおくことも有効です。
そうした経験は面接でもアピールポイントになります。
Q2: 訪問診療看護師の給与は病院と比べてどうですか?
A2: 一般的に、訪問診療の看護師は病院勤務と比較して同等かやや高めの傾向があります。ただし、夜勤手当がなくなる点も考慮する必要があります。
具体的な数字で言うと、訪問診療看護師の基本給は一般的に月30万円〜40万円程度で、病院の日勤常勤看護師と比べると5〜10万円程度高いケースが多いです。
これは、夜勤手当がなくなる分を基本給に上乗せしている面もありますが、より高度な判断力と自律性が求められる仕事であることへの評価でもあります。
また、訪問診療特有の手当(訪問手当、オンコール手当、車両手当など)もあり、訪問件数によってはさらに収入がアップすることもあります。
特に訪問件数に応じたインセンティブ制度がある事業所では、効率的に訪問をこなせる看護師は高収入を得られる可能性があります。
ただし、事業所によって給与体系は大きく異なりますので、基本給だけでなく、各種手当や賞与も含めた年間総支給額で比較することが大切です。
また、オンコール(待機)の頻度と手当の関係、訪問件数と収入の関係なども細かく確認するとよいでしょう。
Q3: 訪問診療看護師に向いている人、向いていない人の特徴は?
A3: 訪問診療看護師に向いている人の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
まず、自己判断力があり、独立して業務を行うことに抵抗がない人です。
訪問診療では医師がすぐそばにいない環境で判断を求められる場面が多いため、自分で考え行動できる自律性が重要です。
また、コミュニケーション能力が高く、患者さんやご家族との信頼関係を築くのが得意な人も向いています。
訪問診療では患者さんの自宅という特別な空間に入り込むため、円滑なコミュニケーションと適切な距離感が求められます。
さらに、柔軟な発想ができ、限られた資源の中で工夫しながらケアを提供できる創意工夫の才能も大切です。病院とは異なり、様々な制約がある中での看護実践力が試されます。
車の運転に抵抗がないことも重要な要素です。訪問診療では移動が業務の大きな部分を占めるため、運転に不安がある方は苦労するかもしれません。
生活全体を見る視点を持ち、医療だけでなく患者さんの生活背景や価値観を尊重できる姿勢も欠かせません。
一方、向いていない可能性があるのは、指示待ち型の人や、マニュアル通りの業務を好む人です。
訪問診療では状況に応じた臨機応変な対応が求められるため、決まった手順だけでは対応しきれないことも多いです。
また、環境変化に対応するのが苦手な人や、チームでの情報共有が不得手な人も難しさを感じるかもしれません。
訪問診療では様々な家庭環境や状況に適応する柔軟性と、限られた時間での効率的な情報共有が重要だからです。
Q4: 訪問診療で最も大変なことは何ですか?
A4: 多くの訪問診療看護師が挙げるのは「一人で判断する責任の重さ」です。
医師がすぐ側にいない環境で、患者さんの状態変化に対応しなければならないプレッシャーは確かに大きいものです。
天候に関わらず訪問しなければならないことも大変な点です。猛暑や大雨、積雪など、過酷な条件の中での移動は身体的にも精神的にも負担がかかります。
患者さんの自宅という多様な環境に適応することも難しさの一つです。清潔不足の住環境、複雑な家族関係、ペットの存在など、様々な状況に柔軟に対応する必要があります。
移動時間の負担も挙げられます。特に地方や山間部では、1件の訪問に往復1時間以上かかることも珍しくありません。
この移動時間は身体的な疲労だけでなく、効率的な訪問計画の難しさにもつながります。
これらの課題に対応できるようになると大きな自信につながり、訪問診療看護師としての専門性とやりがいを実感できるようになります。
Q5: オンコール対応はどの程度大変ですか?
A5: オンコール対応の負担は事業所によって大きく異なります。
24時間365日対応の訪問診療では、看護師が交代でオンコール当番を担当するのが一般的ですが、その頻度や実際の呼び出し状況には大きな差があります。
頻度についてですが、事業所やスタッフ数によって異なりますが、一般的には月に2〜4回程度のオンコール当番が回ってくるケースが多いようです。
スタッフが少ない小規模事業所では週1回程度になることもありますし、大規模な事業所では月1回程度の場合もあります。
実際の呼び出し頻度については、患者層や地域性によって大きく差があります。
一方で、終末期患者が多い事業所や、高齢者施設への訪問診療を行っている事業所では、呼び出し頻度が高くなる傾向があります。
オンコール体制の負担を軽減するために、様々な工夫を行っている事業所も多いです。
面接時には、過去の呼び出し実績や緊急時の医師との連携体制について質問しておくことをお勧めします。
また、オンコール手当の金額や、翌日の勤務調整の有無なども確認しておくと良いでしょう。
Q6: 訪問診療看護師から病院に戻ることは難しいですか?
A6: 訪問診療での経験は、総合的な判断力や患者さんの生活背景への理解など、病院でも十分に活かせる要素が多いです。
そのため、訪問診療から病院への復帰は決して難しいことではありません。特に近年は、病院と在宅の連携が重視される中で、訪問診療の経験者が重宝されるケースも増えています。
特に退院調整部門や地域連携室、在宅療養支援窓口などでは、訪問診療の経験者が重宝されるケースが多いです。
最新の医療機器操作などの面ではブランクができる可能性があるため、復帰時に研修がある病院を選ぶとよいでしょう。
訪問診療から病院に戻る際には、訪問診療での経験をどのように病院勤務に活かせるかを具体的にアピールすることが大切です。
また、最新の医療動向についても積極的に学び、ブランクを埋める姿勢を示すことで、スムーズな転職が可能になるでしょう。
Q7: 採用選考のポイントは何ですか?
A7: 勤務地域と訪問範囲を重視した選択が最も重要です。
訪問診療は毎日の移動が業務の大きな部分を占めるため、自宅や公共交通機関からのアクセスが良い事業所を選ぶことで、長く働き続けられる可能性が高まります。
また、事業所の理念や方針が自分の看護観と合致しているかどうかも重要なポイントです。
スタッフ間の人間関係や職場の雰囲気、教育体制の充実度も、特に訪問診療未経験者にとっては重要な選択ポイントです。
複数の事業所を比較検討し、見学や職場体験の機会を活用して、自分に合った環境を見極めましょう。
まとめ
訪問診療看護師は、患者さんの生活に寄り添い、本質的な看護を提供できる魅力あふれる職種です。
高齢化社会の進展に伴い需要は増加し続け、キャリアの安定性と将来性が期待できます。
自分のライフスタイルやキャリアビジョンに合った職場を選ぶことで、長く充実したキャリアを築くことができるでしょう。
訪問診療看護師への道は、新たな可能性に満ちた選択肢です。あなたも一歩踏み出してみませんか?
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