「一日の半分が記録」になっていませんか
患者さんとゆっくり話したいのに、気づけば残務の記録に追われている——そんな看護師さんは少なくないのではないでしょうか。施設をまたいで患者さんを引き継ぐとき、前の病院の情報がFAXや紙の紹介状でしか分からず、もどかしさを感じた経験がある方もいるかもしれません。
国はいま、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、医療機関のあいだで患者さんの診療情報を電子的に共有する「電子カルテ情報共有サービス」を整備しています。診療情報提供書を電子で共有したり、患者さんの臨床情報を全国の医療機関や本人が閲覧できるようにする仕組みで、モデル事業での検証を経て本格運用に向けた準備が段階的に進められています(Source: 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」)。
この記事は、特定の操作手順や運用ルールを指示するものではありません。電子カルテ情報共有サービスで「何が」共有されるのかを整理し、看護の現場や働き方にどう関わりうるかを、実務目線で考えるためのものです。実際の運用は、各施設の方針とシステムの仕様に従ってください。
この記事でわかること
この記事は、記録や情報共有の負担に悩む看護師さん、医療DXで仕事がどう変わるのか気になる看護師さんに向けて書いています。
この記事の価値:電子カルテ情報共有サービスで全国共有される情報の中身と、看護の記録・情報連携がどう変わりうるか、その便利さと注意点が分かります。
読むと判断できること:「自分の記録や情報共有の手間が、何によって変わるのか」を具体的に捉えられ、漠然とした不安を整理できます。
次にできること:自施設のシステム対応状況や、職場を選ぶときに見るIT環境のポイントを、この記事の視点で確認する準備が整います。
読むポイントは次のとおりです。
- 電子カルテ情報共有サービスとは、結局どんな仕組みか
- 「3文書6情報」として共有されるのは何か
- 看護の記録・情報連携は、どう変わりうるか
- 便利さの裏で、看護師が気をつけたいこと
- IT環境を、職場選びの視点でどう見るか
判断材料になる一次情報
この記事は、以下の一次情報をもとに整理しています。サービスの仕様・運用時期は更新されるため、最新の内容は各施設と公式の案内で確認してください。
この記事で確認したいポイントは、次のとおりです。
情報共有が便利になっても、その情報を「正確に記録する」役割の重さは変わらない。仕組みが広がるほど、入力する一人ひとりの記録が、ほかの施設の判断の土台になる。
電子カルテ情報共有サービスって、結局なに?
ひとことで言うと、これまで各医療機関のなかに閉じていた患者さんの診療情報を、本人の医療に関わる施設のあいだで電子的に共有できるようにする仕組みです。厚生労働省は、診療情報提供書を電子で共有できるサービスや、患者さんの臨床情報・患者サマリーを全国の医療機関等や本人が閲覧できるサービスとして案内しています(Source: 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」)。
これまでは、転院や紹介のたびに紙の紹介状やFAXでやり取りし、前医の情報が手元にそろうまで時間がかかることもありました。電子的に共有できれば、必要な情報を、必要なときに参照しやすくなることが期待されています。患者さん本人も、マイナポータルなどを通じて自分の情報を確認できる方向で整備が進められています。
なお、2025年からは一部地域でモデル事業として運用・検証が行われ、その結果を踏まえて改修や本格運用に向けた準備が段階的に進められています。スケジュールや対応施設は変わりうるため、最新の状況は公式の案内で確認してください。
「3文書6情報」として共有されるのは何か
電子カルテ情報共有サービスでは、共有する情報の範囲が「3文書6情報」という枠組みで整理されています(具体的な項目・運用は公式の案内に従ってください)。
3文書
- 診療情報提供書(いわゆる紹介状)
- 退院時サマリー(診療情報提供書に添付する形で扱われます)
- 健診結果報告書
6情報
- 傷病名
- アレルギー情報
- 感染症情報
- 薬剤禁忌情報
- 検査情報
- 処方情報
看護師にとって身近なのは、退院時サマリーやアレルギー・感染症・薬剤に関する情報でしょう。入退院や転院の場面で、これらが施設をまたいで参照しやすくなることは、引き継ぎの抜け・漏れを減らす方向に働きうると考えられています。
看護の記録・情報連携は、どう変わりうるか
仕組みが広がると、看護の現場では次のような変化が考えられます。いずれも「こう変わる」と断定するものではなく、自施設の運用次第である点に注意してください。
- 転院・紹介時に、前医の情報を参照しやすくなり、初回アセスメントの材料が増える
- アレルギーや感染症、薬剤禁忌などの安全に関わる情報を確認しやすくなる
- 退院支援で、地域の連携先と情報を共有しやすくなる
- 患者さん本人が自分の情報を見られることで、説明や意思決定の支援がしやすくなる
一方で、こうした便利さは「正確な情報が、正確に登録されている」ことが前提です。看護記録やサマリーの内容が、ほかの施設での判断の土台になりうるからこそ、記録の正確さ・タイムリーさの重みはむしろ増すとも言えます。
便利さの裏で、看護師が気をつけたいこと
情報共有が広がる局面で、現場の看護師が意識しておきたい点を挙げます。
- 記録の正確さ:自分が入力・記載した情報が、他施設や本人に参照されうる前提で、あいまいな表現や誤記を残さない
- 個人情報・同意の扱い:誰が、どの範囲を、どんな目的で閲覧できるのかは制度・施設のルールで決まっている。自己判断で情報を扱わず、施設の手順に従う
- 「画面にある情報」を過信しない:共有される情報は万能ではなく、最新でない・反映に時間差がある場合もある。患者さん本人への確認や観察を省略しない
- 一時的な負担増:新しいシステムの導入期は、入力や運用の習熟に手間がかかることがある。困ったときは一人で抱えず、システム担当や上司に相談する
医療情報の取り扱いはルールが細かく、判断に迷う場面もあります。「これは共有してよい情報か」「この操作で合っているか」と迷ったら、自己判断で進めず、施設の医療情報担当や上司に確認することが大切です。
IT環境は、看護師の働きやすさを左右する
電子カルテや情報共有の仕組みがどれだけ整っているかは、日々の記録のしやすさ、残業の量、そして患者さんに向き合える時間に直結します。同じ「看護師の仕事」でも、システムや運用体制によって働きやすさは大きく変わります。
いまの職場で、まず確認したいこと
- 記録・入力の負担が大きいと感じるとき、それは人員配置の問題か、システムや運用の問題か
- 新しい仕組みの導入時に、研修やフォロー、相談できる担当者がいるか
- 記録にかかる時間を減らす工夫(テンプレート、音声入力、役割分担など)が職場にあるか
これらは、すぐに転職しなくても、いまの職場で見直しや相談ができることです。「記録がつらい=辞めるしかない」ではなく、まず何が負担の原因かを切り分けるのが先決です。
転職で変わりやすいこと・変わりにくいこと
職場を変えると変わりやすいのは、電子カルテの使い勝手や情報共有の体制、IT化への投資姿勢、記録業務に割ける人員といった「職場ごとの環境」です。一方で、医療DXそのものの流れや、医療情報を正確に扱う責任、患者さんの安全を守るための確認作業は、どの職場でも基本的に求められます。転職すればすべての記録負担がなくなる、というわけではない点は押さえておきましょう。
「いまの職場が嫌だから」ではなく、「自分が患者さんに向き合える環境はどこか」という視点で、ほかの職場のIT環境や記録体制を知っておくことには意味があります。
まずは、カンゴさんに気持ちを整理してみる
「記録に追われて本来の看護ができていない気がする」「新しいシステムについていけるか不安」「情報の扱いで失敗しないか怖い」。こうした気持ちは、職場では「慣れだよ」と流されがちで、言葉にしづらいものです。
はたらく看護師さんのカンゴさんには、匿名で気持ちを話せます。負担の正体が人員なのか、システムなのか、それとも自分の働き方への迷いなのか——まずは一緒に整理してみてください。
「記録に追われない環境か」を職場選びの材料に
医療DXが進むこれからは、「電子カルテや情報共有の仕組みがどれだけ整い、現場が使いこなせているか」が、看護師の働きやすさを左右していきます。記録に追われて患者さんに向き合えない状態が慢性化しているなら、それは長く安心して働けるかどうかに関わります。
いますぐ転職を考えていなくても、ほかの職場の体制を知っておくことには意味があります。レバウェル看護のような看護師専門の転職紹介サービスでは、求人票だけでは分からない次のような点を、職場に確認して教えてもらえます。
- 電子カルテのシステムや、記録・情報共有のしやすさ
- 記録業務に割ける人員配置と、残業・記録時間の実態
- 新しい仕組みの導入時の研修・サポート体制
- IT化・業務改善にどれくらい投資している職場か
「いまの記録がつらいから逃げる」ではなく、「患者さんに向き合える時間を確保できる場所はどこか」を考える材料として、選択肢を知っておくのがおすすめです。
まとめ
厚生労働省は医療DXの一環として、診療情報提供書の電子共有や、患者の臨床情報を全国の医療機関等・本人が閲覧できる「電子カルテ情報共有サービス」を、モデル事業を経て整備しています(Source: 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」)。情報共有が便利になるほど、それを正確に記録する看護師の役割は重みを増します。
ポイントは次の3つです。
- 共有される情報は「3文書6情報」で整理され、退院時サマリーやアレルギー・薬剤情報など看護に身近なものを含む
- 便利さは「正確な記録」が前提。あいまいな記載を残さず、共有・同意のルールは施設の手順に従い、画面の情報を過信しない
- 記録の負担は人員かシステムかを切り分ける。IT環境は職場で変わりやすいが、医療DXの流れと記録の責任はどの職場でも求められる
記録に追われてしんどいと感じるのは、患者さんに向き合いたい気持ちがあるからです。その負担を個人の頑張りだけに背負わせず、職場の体制と仕組みの両面から見直していきましょう。
よくある質問
電子カルテ情報共有サービスとは何ですか?
医療機関のあいだで患者さんの診療情報を電子的に共有できるようにする、医療DXの仕組みです。厚生労働省は、診療情報提供書を電子で共有できるサービスや、患者さんの臨床情報・患者サマリーを全国の医療機関等や本人が閲覧できるサービスとして案内しています。モデル事業での検証を経て、本格運用に向けた準備が段階的に進められています。
共有される「3文書6情報」とは具体的に何ですか?
3文書は診療情報提供書・退院時サマリー(診療情報提供書に添付)・健診結果報告書、6情報は傷病名・アレルギー情報・感染症情報・薬剤禁忌情報・検査情報・処方情報として整理されています。項目や運用の詳細は更新されるため、最新の内容は公式の案内で確認してください。
看護師の記録の負担は減りますか?
施設間で情報を参照しやすくなることで引き継ぎの手間が減る可能性はありますが、「必ず負担が減る」とは言い切れません。導入期は新しい入力や運用に慣れる手間が増えることもあります。負担の原因が人員配置なのかシステム・運用なのかを切り分け、職場で相談・改善することが大切です。
情報の扱いで気をつけることはありますか?
誰がどの範囲をどんな目的で閲覧できるかは制度と施設のルールで決まっています。自己判断で情報を扱わず、施設の手順に従ってください。また、共有される情報は最新でない場合もあるため、患者さん本人への確認や観察を省略しないことが大切です。迷ったら施設の医療情報担当や上司に確認しましょう。
参考資料


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