2025年最新【看護師等遠隔診療補助加算とは?制度理解と実践ガイド】

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医療のデジタル化が加速する中、2024年の診療報酬改定で注目されている「看護師等遠隔診療補助加算」について、制度の概要から実践方法まで徹底解説します。

この記事では、遠隔診療に携わる看護師の皆さんが知っておくべき重要事項を、実務に即した視点からお伝えします。

この記事を読んでほしい人

  • 遠隔診療に関わる業務を担当している看護師の方 
  • 診療報酬の加算について詳しく知りたい方 
  • 職場で遠隔診療の導入を検討している看護管理者の方 
  • 遠隔診療の記録管理に課題を感じている方 
  • 効率的な遠隔診療体制の構築を目指している方 
  • 診療報酬改定後の最新情報を知りたい方

この記事で分かること

  • 看護師等遠隔診療補助加算の制度概要と目的 
  • 具体的な算定要件と施設基準 
  • 遠隔診療における看護師の役割と実践方法 
  • 効果的な記録管理と評価基準のポイント 
  • 算定漏れを防ぐためのチェックリストと運用例 
  • 遠隔診療の質向上につながる看護実践のコツ

看護師等遠隔診療補助加算とは:制度の基本と概要

看護師等遠隔診療補助加算は、オンライン診療やD to P with N(医師-患者間の遠隔診療における看護師の役割)が拡大する中で、看護師による遠隔診療の補助業務を適切に評価するために設けられた加算制度です。

患者が医療機関を訪れることなく、自宅や施設などから診療を受けられる環境を整備するための重要な仕組みとなっています。

制度創設の背景と意義

遠隔診療は、高齢化社会や医療資源の地域偏在という課題に対応するための重要な手段として注目されてきました。

そうした中で、医師と患者をつなぐ架け橋として看護師の果たす役割は非常に大きく、その専門性を適切に評価するために本加算が設けられました。

看護師の適切な関与により、遠隔診療においても対面診療と変わらない質の医療を提供することが可能になります。

加算の位置づけと点数設定

看護師等遠隔診療補助加算は、オンライン診療料に加えて算定できる加算として位置づけられています。

点数は患者の状態や看護師の関与度によって異なりますが、基本的には1回の診療につき50点(500円)から150点(1,500円)の範囲で設定されています。

この点数設定は、看護師による問診、バイタルサイン測定、診療補助などの業務の複雑さや時間的負担を考慮したものとなっています。

制度が目指す医療提供体制

本加算制度が目指しているのは、場所や時間の制約を超えた質の高い医療の提供です。

具体的には以下のような医療提供体制の実現を目指しています。

患者中心の医療体制の強化

患者が自宅にいながら専門的な医療を受けられる環境を整えることで、通院の負担を軽減し、特に高齢者や障害のある方々の医療アクセスを向上させることができます。

看護師の適切な関与により、患者の状態を正確に医師に伝えることが可能になり、より患者のニーズに合った医療の提供につながります。

地域医療の充実

医療資源が限られている地域においても、遠隔診療を活用することで専門的な医療へのアクセスが可能になります。

地域の看護師が患者の側で支援することにより、地域と専門医療機関をつなぐ体制が構築できます。

医療の質と安全性の担保

遠隔という環境においても、看護師が専門的視点から患者の状態を観察・評価することで、対面診療と遜色ない医療の質を確保できます。

看護師の持つ「観察力」は、画面越しでは見えにくい患者の微妙な変化を捉える上で非常に重要な役割を果たします。

看護師等遠隔診療補助加算の詳細条件

看護師等遠隔診療補助加算を算定するためには、明確に定められた要件を満たす必要があります。

ここでは、2024年度の最新情報に基づいた算定要件を詳しく解説します。

基本的な算定条件

看護師等遠隔診療補助加算の算定には、以下の基本条件を満たすことが求められます。

対象となる患者の条件

遠隔診療補助加算の対象となるのは、慢性疾患を有し、継続的な医学管理が必要な患者です。

また、通院困難な事情を有する患者(高齢、障害、地理的制約等)も対象となります。さらに、主治医による直近3ヶ月以内の対面診療の実績がある患者であることが条件となっています。

緊急時の対応について合意が得られている患者も対象となります。

医療機関の施設基準

医療機関側にも、遠隔診療に必要な機器・設備の整備(高画質カメラ、安定した通信環境等)や個人情報保護とセキュリティ対策の実施といった施設基準が設けられています。

また、遠隔診療に関する研修を受けた看護師の配置や緊急時の対応体制の整備、診療録等の適切な管理体制も求められています。

これらの施設基準を満たしていることを証明するための書類の整備も必要となります。特に、情報セキュリティに関しては厳格な基準が設けられており、患者情報の漏洩リスクを最小化するための対策が求められます。

看護師の役割と要件

看護師等遠隔診療補助加算において、看護師には特定の役割や資格要件が定められています。

必要な資格・経験

加算の算定に関わる看護師には、正看護師の資格(一部の限定された状況では准看護師も可)が必要です。遠隔診療に関する所定の研修の修了も求められています。

また、原則として臨床経験3年以上(特に慢性疾患管理の経験)が必要とされています。電子カルテや医療情報システムの基本的操作スキルも求められます。

特に、遠隔診療に特化した研修の受講は必須要件となっています。この研修では、遠隔診療の法的枠組み、適切な問診技術、バイタルサイン測定の方法、緊急時の対応など、遠隔診療特有の知識とスキルを学びます。

看護師が行うべき診療補助業務

加算の算定対象となる看護師の診療補助業務には、問診による患者情報の収集と医師への伝達、バイタルサインの測定と記録(血圧、脈拍、体温、呼吸数、SpO2等)が含まれます。

また、医師の指示に基づく身体所見の観察と報告、医療機器の操作補助(聴診器、心電図等)、服薬状況や治療効果の確認、療養上の指導や教育的支援も業務の一部です。

これらの業務を適切に実施し、その内容を診療録に記録することが求められます。単に機器の操作を行うだけでなく、看護師としての専門的判断に基づく観察や支援が加算の対象となる点が重要です。

算定における注意点と除外規定

看護師等遠隔診療補助加算の算定にあたっては、いくつかの注意点や除外規定があります。

他の加算との併算定ルール

在宅患者訪問看護・指導料、訪問看護基本療養費、精神科訪問看護・指導料、特定の在宅医療に関する加算とは、原則として同一日に併算定できません。

ただし、一部の加算については条件付きで併算定が認められている場合もあります。最新の診療報酬点数表や通知を確認し、適切な算定を行うことが重要です。

算定不可となるケース

看護師不在のオンライン診療、単なる予約調整や事務的な対応のみの場合、医師と看護師が同一の医療機関に所在する場合(一部例外あり)、患者の状態が急変し、緊急対応が必要となった場合、診療時間が5分未満の極めて短時間の診療などの場合は、看護師等遠隔診療補助加算は算定できません。

特に、看護師の役割が実質的に診療補助となっていない場合は、たとえ看護師が同席していても加算の対象とはなりません。診療内容と看護師の関与について、適切に記録を残すことが重要です。

遠隔診療補助の具体的な進め方

ここでは、実際に看護師が遠隔診療の補助を行う際の具体的な手順やポイントを解説します。

実務に直結する内容ですので、ぜひご自身の業務に活かしてください。

診療前の準備と確認事項

遠隔診療の成功は、しっかりとした事前準備にかかっています。以下の点に注意して準備を行いましょう。

患者情報の事前確認

遠隔診療を行う前には、直近の診療内容と検査結果、処方薬の内容と服薬状況、前回からの症状変化や新たな訴え、生活環境や介護状況(独居、家族の支援状況等)、バイタルサインの推移(自己測定データがある場合)などの患者情報を確認しておくことが重要です。

これらの情報を事前に確認しておくことで、診療中に効率的な問診や観察が可能になります。

特に、前回の診療で指示された内容(生活改善点や自己管理方法など)については、その実施状況を確認できるよう準備しておきましょう。

機器・通信環境の確認

遠隔診療では、機器や通信環境のトラブルが診療の質に直結します。

カメラの画質と位置の適切さ、マイクとスピーカーの音質確認、インターネット接続の安定性、遠隔聴診器など特殊機器の動作確認、照明条件の確認(患者の表情や皮膚色が適切に見えるか)、プライバシーが確保された診療環境の確保など、事前にしっかりと確認しておく必要があります。

特に高齢の患者さんの場合は、機器操作に不安がある場合もあります。必要に応じて、家族や介護者に協力を依頼することも検討しましょう。また、バックアップ手段(電話など)も確認しておくと安心です。

診療中の看護師の役割

遠隔診療中の看護師の役割は多岐にわたります。効果的な診療補助を行うためのポイントを紹介します。

効果的な問診と観察のコツ

遠隔という限られた環境の中で、患者の状態を正確に把握するためのコツとして、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを適切に使い分けることが大切です。

また、患者の言葉だけでなく、表情や動作からも情報を読み取ることが重要です。画面の向こうでは見えにくい部分について、詳細な質問を行うことも必要です。

患者自身による身体の提示方法をガイドすること(患部の見せ方など)、主観的訴えと客観的所見を区別して記録すること、患者の答えやすさに配慮した質問順序を心がけることも大切です。

バイタルサイン測定のガイダンス

患者自身または介助者がバイタルサインを測定する場合のガイダンスも、看護師の重要な役割です。

血圧計の正しい装着方法の指導、体温計の適切な使用法の確認、脈拍・呼吸の数え方の説明、測定値の読み取り方のガイド、測定結果の妥当性の判断(明らかに異常値の場合の再測定指示など)といったことが含まれます。

特に初めて遠隔診療を利用する患者さんには、事前に測定方法を丁寧に説明しておくことが重要です。また、測定器具の精度や点検状況についても確認しておきましょう。

診療後のフォローアップと記録

診療終了後のフォローアップも、加算算定の重要な要素です。

療養指導と次回診療の調整

診療後には、医師の指示内容の再確認と補足説明、服薬方法や生活上の注意点の具体的な指導、症状悪化時の対応方法の確認、次回診療の日程調整と必要な準備の説明、必要に応じた家族や介護者への情報提供などのフォローアップを行いましょう。

患者さんが理解しやすいよう、可能であれば文書やイラストを活用した説明資料を用意しておくとよいでしょう。

また、遠隔診療ならではの不安について丁寧に対応することも重要です。

診療内容の記録と共有

診療内容の適切な記録は、加算算定の根拠となるだけでなく、継続的な医療の質を保証するためにも重要です。

看護師が実施した診療補助業務の詳細記録、観察した身体所見や患者の訴えの客観的記述、医師との情報共有内容の記録、指導内容とその反応の記録、次回診療までの観察ポイントやプランなどを記録します。

特に、看護師の専門的判断や観察に基づく内容(「皮膚の乾燥が強く、掻痒感の訴えあり」「呼吸音の聴取で右下肺野に軽度の湿性ラ音を確認」など)を具体的に記録することが重要です。

適切な記録作成と管理のポイント

看護師等遠隔診療補助加算の算定には、適切な記録管理が不可欠です。

ここでは、診療記録の作成方法や管理のポイントについて解説します。

診療記録の作成と保存方法

遠隔診療における記録には、対面診療とは異なる特有のポイントがあります。

記録すべき基本項目

看護師等遠隔診療補助加算の算定に必要な記録項目として、診療日時と診療時間(開始・終了時刻)、患者基本情報(氏名、ID、年齢、診断名等)、担当医師と担当看護師の氏名、使用した遠隔診療システムの種類、患者の所在地と環境(自宅、施設等)、看護師が実施した診療補助業務の内容、測定したバイタルサイン、観察した身体所見と患者の訴え、医師の指示内容と看護師の対応、患者への指導内容などがあります。

これらの項目を漏れなく記録することで、適切な加算算定の根拠となります。単に「遠隔診療を実施した」という記載だけでは不十分であり、看護師の具体的な関与を明確に記録する必要があります。

電子カルテと紙記録の使い分け

遠隔診療の記録方法には、電子カルテを活用する方法と紙記録を併用する方法があります。

電子カルテを使用する場合のメリットは、情報共有のスピードや検索性の高さです。特に、テンプレート機能を活用することで、必要な記録項目の漏れを防止できます。一方、通信環境によっては入力に遅延が生じる場合もあるため、バックアップとしての紙記録も準備しておくとよいでしょう。

紙記録を併用する場合は、専用の遠隔診療記録シートを作成しておくことをおすすめします。このシートには、前述の必要記録項目をチェックリスト形式で含めておくとよいでしょう。紙記録は後で電子カルテに転記し、原本は所定の保管場所に保存します。

プライバシー保護と情報セキュリティ

遠隔診療においては、通常の診療以上に情報セキュリティとプライバシー保護に注意が必要です。

個人情報保護のための対策

個人情報保護のために、患者の明確な同意取得と記録、診療画面の録画や撮影に関する取り決め、第三者の映り込み防止対策、診療中の情報漏洩リスクの最小化(周囲からの音声の聞こえ等)、アクセス制限による記録の保護といった対策を講じることが重要です。

特に注意すべきは、診療中の画面キャプチャーや録画に関するルールです。医療機関側の記録として残す場合は、その目的と保存期間、アクセス権限について患者に明確に説明し、同意を得る必要があります。

セキュリティインシデント発生時の対応

万が一、情報漏洩などのセキュリティインシデントが発生した場合の対応手順も、あらかじめ定めておく必要があります。インシデント発生時の報告ルート、患者への説明と謝罪の方法、再発防止策の検討と実施、関係機関への報告(必要に応じて)といった対応手順を定めておきましょう。

情報セキュリティに関しては、定期的な研修や確認テストを実施することで、スタッフの意識向上を図ることも重要です。

また、システムのアップデートや脆弱性対策も定期的に行いましょう。

多職種連携と情報共有

遠隔診療においては、多職種間の円滑な情報共有が特に重要です。

医師との効果的な情報共有方法

医師との情報共有には、診療前のブリーフィング(患者の状態や特記事項の共有)、診療中の効率的な情報伝達(観察所見の簡潔かつ正確な伝達)、診療後のデブリーフィング(振り返りと次回への課題抽出)、経時的な情報共有ツールの活用(共有ファイルなど)といったポイントがあります。

特に、「医師に伝えるべき重要所見」と「記録としては残すが即時共有は不要な情報」を区別することで、診療の効率化が図れます。

SOAPなどの共通フォーマットを活用すると、情報の伝達漏れを防ぐことができます。

他部門・他施設との連携

患者が利用する他のサービス(訪問看護、介護サービスなど)との連携も重要です。

診療内容と指示事項の共有方法の確立、他施設からの情報収集と活用、地域連携パスやICTツールの活用、定期的なカンファレンスの実施といった方法で連携を図ります。

遠隔診療の質を高めるための指標

看護師等遠隔診療補助加算を算定するだけでなく、提供する医療の質を高めていくことが重要です。

ここでは、遠隔診療の質を評価するための指標や改善方法について解説します。

診療の質評価指標と改善サイクル

遠隔診療の質を継続的に改善していくためのアプローチを紹介します。

客観的評価指標の設定

遠隔診療の質を客観的に評価するための指標として、患者満足度(アンケート等による)、遠隔診療の完遂率(中断せずに最後まで診療を完了できた割合)、通信トラブルの発生頻度と対応時間、対面診療への切り替え率とその理由、臨床アウトカム指標(血圧や血糖値などの改善状況)、再診間隔の適切さなどがあります。

これらの指標を定期的にモニタリングすることで、遠隔診療の質を客観的に評価できます。

指標の選定にあたっては、自施設の特性や患者層を考慮し、実行可能で意味のある指標を選ぶことが重要です。

PDCAサイクルによる継続的改善

評価結果に基づく継続的な改善のために、PDCAサイクルを活用しましょう。

Plan(計画)の段階

現状分析に基づく改善計画の立案を行います。評価指標の選定と目標値の設定、改善のための具体的な方策の立案、実施スケジュールと担当者の明確化などが含まれます。

Do(実行)の段階

計画に基づく実践を行います。スタッフへの周知と教育、新たな手順やツールの導入、進捗状況のモニタリングなどを行います。

Check(評価)の段階

実施結果の評価を行います。設定した指標に基づく評価、予期せぬ問題点の抽出、成功要因の分析などを行います。

Act(改善)の段階

評価に基づく改善を行います。効果的だった取り組みの標準化、新たな課題に対する対策の検討、次サイクルの計画への反映などを行います。

このサイクルを定期的(例:四半期ごと)に回すことで、遠隔診療の質を継続的に向上させることができます。

患者満足度の向上策

遠隔診療における患者満足度を高めるための具体的な方策を紹介します。

患者フィードバックの収集と活用

患者からのフィードバックは、遠隔診療の質向上に不可欠です。簡潔な満足度調査の実施(診療後のWebアンケートなど)、オープンエンドの質問を含めた深掘り調査、定期的な患者インタビューの実施、収集したフィードバックの分析と課題抽出、改善策の策定と実施といった方法でフィードバックを収集し活用しましょう。

質問項目には、「操作のわかりやすさ」「看護師の説明のわかりやすさ」「診療時間の適切さ」「プライバシーへの配慮」など、遠隔診療特有の視点を含めることが重要です。

また、定量的評価だけでなく、自由記述による意見も積極的に求めましょう。

コミュニケーション技術の向上

遠隔という環境下でのコミュニケーション技術の向上も、患者満足度に直結します。

カメラ目線やジェスチャーの適切な使用、声のトーンや話すスピードの調整、視覚的補助材料(図や写真)の効果的な活用、患者の理解度を確認する技術(Teach-backメソッドなど)、文化的背景や価値観への配慮といったコミュニケーション技術の向上が大切です。

看護師のスキル向上と教育

遠隔診療の質向上には、看護師自身のスキルアップも不可欠です。

必要なスキルと知識の体系化

遠隔診療に携わる看護師に必要なスキルや知識を体系化し、教育プログラムに反映させましょう。

遠隔診療の法的・倫理的側面、ICT・通信技術の基礎知識、遠隔でのフィジカルアセスメント技術、効果的な遠隔コミュニケーション方法、緊急時対応プロトコル、多職種連携の方法、情報セキュリティの知識などが含まれます。

これらの要素を含んだ体系的な教育プログラムを整備し、定期的に更新していくことが重要です。また、実践的なシミュレーション訓練も効果的です。

看護師の業務最適化のヒント

看護師等遠隔診療補助加算を算定しながら、効率的に業務を進めるためのヒントを紹介します。

テンプレートと効率化ツールの活用

業務の効率化には、適切なツールの活用が欠かせません。

診療記録テンプレートの作成

遠隔診療の記録を効率的に行うためには、専用のテンプレートを活用することが効果的です。テンプレートには以下の要素を含めるとよいでしょう。

タイトル部分

患者基本情報(ID、氏名、年齢、主病名)、診療日時、診療時間(開始・終了時刻)、担当医師名、担当看護師名、使用システム名を記載します。

身体所見欄

バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸数、SpO2など)、身体各部の観察結果(皮膚状態、浮腫の有無、呼吸音、腹部状態など)、自覚症状(痛み、倦怠感、眠気など)を記録します。

対応内容欄

実施した診療補助内容(問診内容、指導内容など)、医師の指示内容と対応、次回までの観察ポイントを記載します。

このようなテンプレートを電子カルテ内に作成しておくことで、必要な情報を漏れなく記録できます。また、パソコン入力が難しい環境では、同様の項目を印刷した紙のチェックリストを用意しておくとよいでしょう。

オンライン診療支援ツールの選定ポイント

効率的な遠隔診療を行うためには、適切なオンライン診療支援ツールの選定も重要です。選定の際のポイントとしては、操作の簡便性があります。患者側の操作が簡単であることは特に重要です。高齢者でも迷わず使えるインターフェースであるかどうかを確認しましょう。

セキュリティ面では、医療情報の取り扱いに適した暗号化や認証機能を備えているか確認します。個人情報保護法やガイドラインに準拠したものを選びましょう。他システムとの連携性も重要です。電子カルテとの連携機能があれば、二重入力の手間が省けます。予約システムとの連携があれば、スケジュール管理も効率化できます。

機能面では、高画質カメラ機能(ズームや焦点調整が可能なもの)、安定した音声通信機能、画面共有機能(検査結果や説明資料の表示に有用)、記録機能(患者の同意のもとで診療内容を記録できる機能)が備わっているかチェックします。費用対効果も考慮しましょう。初期費用と月額費用のバランス、患者数や使用頻度に応じた料金プランの有無を確認します。

業務フローの最適化

効率的な遠隔診療を実現するためには、業務フローの最適化も重要です。

診療前・中・後のタスク整理

遠隔診療の業務を効率化するためには、診療の前・中・後のタスクを明確に整理することが重要です。

診療前のタスク

患者情報の確認と準備(前回診療内容の確認、検査結果の整理)、機器・通信環境の確認準備(接続テスト、バックアップ手段の確認)、患者への事前連絡(診療時間の確認、測定器具の準備依頼)があります。これらを診療前日までに完了させておくことで、当日の業務がスムーズになります。

診療中のタスク

患者の接続サポート、問診と情報収集、身体所見の観察と記録、医師への情報伝達、患者からの質問対応があります。これらのタスクの優先順位を明確にし、効率的に進められるよう準備しておきましょう。

診療後のタスク

診療内容の記録と確認、次回診療の調整、他部門・他施設との情報共有、患者への追加指導や説明があります。これらを診療終了後すぐに実施することで、情報の鮮度を保ちながら業務を完了させることができます。

これらのタスクを時系列で整理し、チェックリスト化しておくことで、業務漏れを防ぎながら効率的に進めることができます。

複数診療の効率的なスケジュール管理

複数の遠隔診療を効率的に行うためには、適切なスケジュール管理が不可欠です。限られた人員と時間の中でも効率的な遠隔診療が可能になります。

加算算定の確認ポイント

看護師等遠隔診療補助加算の算定漏れを防ぐための確認ポイントを解説します。

算定要件チェックリスト

加算の算定漏れを防ぐためには、チェックリストを活用することが効果的です。

日常的に確認すべき事項

日々の診療において、以下の事項を確認することで算定漏れを防ぎましょう。

患者側の要件

対象疾患の確認(慢性疾患で継続的な医学管理が必要)、直近3ヶ月以内の対面診療の有無、遠隔診療同意書の取得状況を確認します。これらの条件を満たしていない患者は算定対象外となるため、事前にチェックしておくことが重要です。

診療内容の要件

看護師の関与の実質性(単なる機器操作だけでなく、専門的判断を伴う関与があったか)、診療時間の確認(5分未満は原則として算定不可)、実施した診療補助内容の明確な記録があります。特に、看護師の関与については、具体的にどのような判断や観察を行ったのかを明記することが重要です。

施設基準関連

研修修了看護師の配置状況、機器・設備の適切な稼働状況、緊急時対応体制の確保状況を確認します。これらの条件が満たされていない場合は、速やかに対応する必要があります。

他の加算との関係

同日に併算定できない加算(訪問看護関連の加算など)との重複がないかを確認します。誤って重複算定してしまうと、後日返還請求の対象となる可能性があるため、注意が必要です。

これらの項目をチェックリスト化し、診療ごとに確認することで、算定漏れや誤算定を防ぐことができます。

定期的な監査ポイント

月に一度など定期的に、以下の点について監査を行うことをおすすめします。

算定患者リストの確認

対象となる患者に漏れなく算定されているか、対象外の患者に誤って算定されていないかをチェックします。診療録と算定リストを照合し、相違がないか確認するとよいでしょう。

記録内容の質的確認

看護師の関与が適切に記録されているか、必要な観察項目や指導内容が記載されているかをチェックします。単に「遠隔診療を実施した」という記載だけでは、査定の対象となる可能性があるため注意が必要です。

施設基準の維持状況

研修修了看護師の在籍状況(退職や異動がないか)、必要な機器・設備の保守状況、マニュアルや緊急時対応フローの更新状況を確認します。これらは定期的に見直し、最新の状態を維持することが重要です。

診療報酬改定対応

算定要件や点数の変更がないか、新たな解釈通知が出ていないかを確認します。診療報酬改定時だけでなく、随時出される通知や事務連絡にも注意を払いましょう。

これらのポイントを定期的に監査することで、長期的に適切な算定を維持することができます。監査結果は記録に残し、問題点があれば速やかに改善策を講じることが重要です。

査定対策と適切な記録のポイント

査定を防ぐためには、適切な記録が不可欠です。

よくある査定理由と対策

遠隔診療補助加算の査定理由としてよく見られるものと、その対策を紹介します。

看護師の関与が不明確というケース

診療録に「看護師が同席した」との記載のみで、具体的な関与内容の記載がない場合に査定されることがあります。対策としては、看護師が行った診療補助業務の内容(問診、バイタルサイン測定、身体所見の観察、指導内容など)を具体的に記録することが重要です。特に、専門的判断を伴う観察結果や患者への指導内容は詳細に記載しましょう。

算定要件不備というケース

3ヶ月以内の対面診療の実績がない、緊急時の対応方法が定められていないなど、基本的な算定要件を満たしていない場合に査定されることがあります。対策としては、前述のチェックリストを活用し、すべての算定要件を満たしていることを確認してから算定するようにしましょう。

診療時間不足というケース

診療時間が5分未満など極めて短時間の診療に対して算定した場合に査定されることがあります。対策としては、診療の開始時間と終了時間を明確に記録し、適切な診療時間が確保されていることを示すことが重要です。また、診療内容に見合った時間設定を行い、十分な診療が提供できるよう心がけましょう。

他加算との重複というケース

同日に算定できない訪問看護関連の加算と重複して算定した場合に査定されることがあります。対策としては、算定前に他の加算との関係を確認し、重複がないことを確認することが重要です。特に、同一患者に複数のサービスを提供している場合は注意が必要です。

これらの査定理由を理解し、適切な対策を講じることで、査定リスクを最小化することができます。

効果的な記録の書き方とポイント

査定を防ぎ、適切な算定を行うための記録のポイントを紹介します。

SOAP形式の活用が効果的です。S(主観的情報):患者の訴えや症状、O(客観的情報):観察した身体所見やバイタルサイン、A(アセスメント):看護師としての判断や評価、P(計画):今後の対応や指導内容という形式で記録することで、看護師の専門的判断が明確になります。

また、時系列での記録も重要です。診療の開始・終了時間を明記し、診療中に行った観察や指導の時間経過がわかるように記録しましょう。これにより、適切な診療時間が確保されていることを示すことができます。

看護師からのQ&A「おしえてカンゴさん!」

遠隔診療補助加算に関して看護師の皆さんからよく寄せられる質問に、ベテラン看護師「カンゴさん」が答えます。

Q1:主な算定要件は何ですか?

A1:主な算定要件は、対象となる患者が慢性疾患で継続的な医学管理が必要であること、直近3ヶ月以内に対面診療を受けていること、看護師が実質的な診療補助(問診、バイタルサイン測定、身体所見の観察など)を行っていること、診療時間が原則5分以上であることなどです。

また、医療機関側の施設基準としては、遠隔診療に関する研修を受けた看護師の配置や、遠隔診療に必要な機器・設備の整備、個人情報保護とセキュリティ対策の実施などが求められます。

これらの要件をすべて満たしていることが算定の前提となります。

Q2:看護師の遠隔診療研修はどのようなものがありますか?

A2:看護師向けの遠隔診療研修には、日本看護協会や各都道府県看護協会が実施する「遠隔看護実践研修」があります。また、日本遠隔医療学会や医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)などが提供する研修プログラムもあります。

これらの研修では、遠隔診療の法的枠組み、情報セキュリティ、コミュニケーション技術、フィジカルアセスメント、緊急時対応などについて学ぶことができます。

多くの研修はオンラインでも受講可能ですので、勤務スケジュールに合わせて計画的に受講するとよいでしょう。医療機関によっては独自の研修プログラムを設けているところもあります。

Q3:遠隔診療時の看護記録はどのように書けばよいですか?

A3:遠隔診療の看護記録は、対面診療と同様にSOAP形式で記載するとわかりやすいです。特に重要なのは、看護師の専門的判断や観察が明確になるよう具体的に記載することです。

例えば、「血圧測定実施」だけではなく、「血圧135/85mmHg(右上腕)、前回診療時より5mmHg低下。自宅で毎日測定していることを確認し、記録方法を指導」というように具体的に記載します。

また、診療の開始・終了時間、使用した遠隔診療システム、患者の所在環境、実施した診療補助業務の内容、医師への情報伝達内容、指導内容とその反応なども漏れなく記録しましょう。定型的な記録項目はテンプレート化しておくと効率的です。

Q4:患者からの同意取得はどのように行えばよいですか?

A4:患者からの同意取得は、文書による同意を得ることが基本です。同意書には、遠隔診療の方法と内容、予想されるメリットとリスク、個人情報の取り扱い(通信の暗号化や記録の保管方法など)、緊急時の対応方法(近隣の医療機関の情報など)、費用(診療費や通信費の負担など)について明記します。

また、同意はいつでも撤回できることも伝えておきましょう。初回の遠隔診療前に対面で同意取得を行うのが理想的ですが、困難な場合は郵送で同意書を送付し返送してもらう方法も考えられます。

同意書は診療録と共に適切に保管し、定期的に内容を見直して必要に応じて再同意を得ることも重要です。

まとめ

看護師等遠隔診療補助加算は、看護師による遠隔診療の専門的補助を評価する制度です。算定には慢性疾患患者への継続的医学管理や3ヶ月以内の対面診療実績などの要件があります。

看護師は問診やバイタルサイン測定、身体所見観察、指導などを行い、その内容を具体的に記録します。加算は50~150点で、算定漏れ防止にはチェックリストの活用が効果的です。テンプレートや業務フローの最適化で効率的な診療が可能となり、多職種連携と情報共有により質の高い医療提供につなげられます。

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