
急速にグローバル化が進む日本の医療現場。
特に出産や母子ケアという繊細な分野に携わる助産師にとって、英語力は単なるスキルではなく、患者さんとの信頼関係を築く重要なツールとなっています。
本記事では、日々の臨床現場で実際に役立つ英語スキルから、効率的な学習法、さらには英語を活かしたキャリア展開まで、助産師に特化した英語学習の完全ガイドをお届けします。
この記事を読んでほしい人
- 英語力を高めて国際的な助産活動を目指している助産師
- 外国人患者の対応に不安を感じている医療従事者
- 海外での助産師としての活動に興味がある方
- 医療英語を効率的に学びたい助産師
- グローバルな環境での就職やキャリアアップを考えている助産師
- 多文化共生社会における助産ケアに関心のある方
- 英語を活かした助産師のキャリア展開を検討している方
この記事で分かること
- 助産師として必要な英語力のレベルと具体的な到達目標
- 実際の臨床現場で役立つ医療英語フレーズと活用シーン
- 忙しい勤務の合間でも続けられる効果的な英語学習法
- 外国人患者とのコミュニケーションで役立つ実践テクニック
- 英語力を活かした助産師のキャリア展開の可能性
- 海外で活躍する助産師の体験談と成功事例
- 異文化理解に基づいた効果的な外国人患者ケアのポイント
助産師に求められる英語力とは?

日本での外国人居住者の増加に伴い、医療現場における言語の壁は年々大きな課題となっています。
特に出産という人生の一大イベントにおいて、言葉の障壁は患者さんにとって大きな不安要素となります。
では、助産師として実際にどの程度の英語力が必要なのでしょうか?
必要な英語レベルの目安
助産師に必要な英語レベルは、勤務先や役割によって異なりますが、一般的にはTOEIC600点以上(英検2級、CEFR B1〜B2レベル)が目安とされています。しかし、大切なのはスコアよりも実践的なコミュニケーション能力です。
文法や語彙の正確さよりも、「伝える力」が重視されるのが医療英語の特徴です。特に助産の現場では、専門用語を使いこなすだけでなく、患者さんの不安を和らげる共感的なコミュニケーション能力が求められます。
専門的な医療英語の必要性
一般的な日常会話と医療英語は大きく異なります。助産師には以下のような専門的な英語スキルが必要です。
産科医療用語の理解と使用能力、出産の進行状況を説明するための表現力、緊急時に簡潔かつ正確に情報を伝える能力、患者の訴えや症状を正確に理解する聴解力、文化的背景を考慮したコミュニケーション能力が求められるでしょう。
A病院の国際外来で働くB助産師は「医療用語は日本語でも難しいのに、英語となるとさらにハードルが上がります。でも、基本的な専門用語と共感的な表現さえ身につければ、意外とコミュニケーションは取れるものです」と語っています。
英語力がもたらす臨床上のメリット
英語力の向上は、以下のような臨床上の具体的なメリットをもたらします。外国人患者との信頼関係構築がスムーズになり、緊急時の対応がスピーディーになります。
また、患者の細かなニーズや文化的背景への理解が深まり、最新の国際的な助産研究や情報へのアクセスが容易になります。さらに、チーム医療において通訳者への依存度が下がるという効果も期待できます。
助産の現場で実際に使われる英語表現

英語を学ぶうえで最も効果的なのは、実際の現場で使われる表現を知ることです。
ここでは、助産の臨床現場で役立つ実践的なフレーズを場面別にご紹介します。
初診時・問診での英語表現
初めて会う外国人患者さんとの信頼関係構築は、その後のケアの質に大きく影響します。まずは丁寧な自己紹介から始めましょう。
「Hello, I’m (your name), a midwife who will be taking care of you during your pregnancy and delivery.」(こんにちは、私は(あなたの名前)です。妊娠中や出産時のケアを担当する助産師です)と自己紹介することで、信頼関係の第一歩を築くことができます。
問診では、明確かつシンプルな質問を心がけましょう。「When was the first day of your last menstrual period?」(最終月経の開始日はいつですか?)や「Have you been pregnant before? How many times?」(これまでに妊娠したことはありますか?何回ですか?)など、具体的な質問が重要です。さらに、「Do you have any allergies or medical conditions?」(アレルギーや持病はありますか?)や「Are you currently taking any medications?」(現在、何か薬を服用していますか?)といった基本的な問診フレーズを覚えておくと役立ちます。
妊婦健診における英語フレーズ
定期健診では、状態説明や指示が中心となります。
「I’m going to measure your blood pressure now.」(これから血圧を測ります)と検査前に説明することで、患者さんの不安を軽減できます。検査結果を伝える際には、「Your baby’s heart rate is normal at 140 beats per minute.」(赤ちゃんの心拍数は140回/分で正常です)や「Your baby is growing well. The current estimated weight is about 1500 grams.」(赤ちゃんは順調に成長しています。現在の推定体重は約1500グラムです)など、安心感を与える表現が効果的です。
また、「We’ll perform an ultrasound today to check your baby’s development.」(今日は超音波検査で赤ちゃんの発育を確認します)といった検査内容の説明も欠かせません。
分娩時に使える重要英語表現
分娩時は特に正確かつ迅速なコミュニケーションが求められる場面です。「Your contractions are coming every 3 minutes now.」(今、陣痛は3分おきに来ています)と陣痛の状況を伝えたり、「When you feel a contraction, try to breathe slowly and deeply.」(陣痛を感じたら、ゆっくりと深く呼吸してみてください)とアドバイスしたりすることが大切です。
また、「You’re doing great. Your cervix is dilated to 7 centimeters.」(よくできています。子宮頸管は7センチまで開いています)と進行状況と励ましの言葉を伝えることも重要です。
分娩の最終段階では、「It’s time to push now. Take a deep breath and push down when I tell you.」(今、いきむ時間です。私が言ったら、深呼吸をしていきんでください)や「The baby’s head is crowning. One more push!」(赤ちゃんの頭が見えています。あと一回いきんでください!)といった具体的な指示が必要になります。
産後ケアと育児指導での英語表現
出産後も英語でのコミュニケーションは続きます。
「Let me show you how to breastfeed. Hold your baby like this.」(授乳の仕方をお見せします。赤ちゃんをこのように抱いてください)と授乳指導を行ったり、「It’s normal for your breasts to feel full and tender when your milk comes in.」(母乳が出てくると、胸が張って痛みを感じるのは正常なことです)と産後の身体の変化について説明したりすることが大切です。
育児指導では、「Make sure to support your baby’s head when you hold them.」(赤ちゃんを抱くときは、必ず頭を支えてください)や「Change the diaper whenever it’s wet or soiled, usually 8-10 times a day.」(おむつは濡れたり汚れたりしたら交換してください。通常は1日8〜10回です)などの基本的なアドバイスを英語で伝えられるようにしておきましょう。
緊急時の英語表現
緊急時には、簡潔かつ明確な英語表現が重要になります。「We need to move quickly. Your baby’s heart rate is dropping.」(急いで対応する必要があります。赤ちゃんの心拍数が下がっています)や「I’m calling the doctor now. We may need to perform an emergency cesarean section.」(今、医師を呼んでいます。緊急帝王切開が必要かもしれません)といった緊急事態の説明が必要な場面もあるでしょう。
その際、「Don’t worry, we’re well-prepared for this situation.」(心配しないでください。私たちはこの状況に十分準備ができています)と安心感を与える言葉も添えることが大切です。
また、「We need your consent for this procedure. This form explains what we’re going to do.」(この処置にはあなたの同意が必要です。このフォームで行う内容を説明しています)といった同意取得のための表現も覚えておきましょう。
効果的な医療英語の学習法

英語学習には継続が重要ですが、忙しい助産師の日常では、効率的な学習方法を選ぶことが成功への鍵となります。
助産師向け英語学習リソース
助産師に特化した英語学習リソースを活用しましょう。「Medical English for Midwives and Nurses」などの専門教材や、NHK「医療英語」講座、医療従事者向けのオンライン英会話が役立ちます。
また、国際助産師連盟(ICM)のウェブサイトや無料リソースも貴重な学習材料となります。YouTube上の出産や母子ケアに関する英語動画や、Medical EnglishやMediBabbleなどの医療英語アプリも効果的な学習ツールです。
D助産師は「通勤時間に医療英語のポッドキャストを聴くことで、1年間で基本的な医療会話ができるようになりました。特に患者さんへの声掛けフレーズは繰り返し聴くことで自然と身についていきました」と効果を実感しています。
忙しい助産師でも続けられる学習習慣
限られた時間でも効果的に学習するためのヒントをご紹介します。休憩時間や隙間時間を活用した5分間学習の習慣化は、忙しい助産師にとって実践しやすい方法です。フラッシュカードアプリで産科用語を覚えることも効率的です。
さらに、英語での申し送りや症例カンファレンスに参加したり、外国人患者のカルテを英語で記入する練習をしたり、同僚と週に一度の英会話ランチを実施したりすることで、実践的な英語力を養うことができます。
実践的なトレーニング方法
実際の現場で使える英語力を身につけるためのトレーニング方法としては、同僚と患者・助産師役を交代で演じるロールプレイングが効果的です。また、医療英語の音声を聞きながら同時に発音するシャドーイングや、英語での症例プレゼンテーションの練習も実践的なスキルアップにつながります。
さらに、外国人患者向けの説明資料を英語で作成したり、医療通訳ボランティアと協力して実践的な会話練習をしたりすることも有効です。
E病院では、月に一度「English Day」を設け、スタッフ間のコミュニケーションを英語のみで行う取り組みを実施しています。「最初は戸惑いましたが、実践を通じて自然と医療英語が身についていきました」とF助産師は話します。
外国人患者とのコミュニケーション戦略

英語力だけでなく、異文化理解を含めた総合的なコミュニケーション戦略が重要です。
文化的背景を考慮したケア
外国人患者へのケアでは、文化的背景への配慮が不可欠です。食事制限や宗教的慣習への理解は基本中の基本です。ハラール食や断食期間などの知識を持っておくことで、より適切なケアが可能になります。
また、出産や産後ケアに関する文化的慣習の尊重も重要です。プライバシーや身体接触に関する文化的差異への配慮、家族の関わり方についての文化的違いの認識も欠かせません。さらに、アイコンタクトやタッチングなどの非言語コミュニケーションにも文化差があることを理解しておく必要があります。
G助産師は「ムスリムの患者さんの場合、診察時に女性医療者のみの対応を希望されることが多いです。事前に宗教的・文化的背景を理解しておくことで、より配慮の行き届いたケアができます」と指摘しています。
言語の壁を超えるコミュニケーション技術
英語が流暢でなくても効果的にコミュニケーションを取る方法があります。ピクトグラムや解剖図などの絵や図を使った説明は、言語の壁を超えて情報を伝える効果的な手段です。翻訳アプリやタブレット端末の活用も便利です。
また、複雑な表現を避けたシンプルな英語(プレーン・イングリッシュ)の使用は、理解を促進します。ジェスチャーや表情を意識した非言語コミュニケーションも大切です。さらに、重要事項の確認と繰り返し(Teach-back method)を行うことで、正確な情報伝達が可能になります。
H産院では、主要言語の「分娩時フレーズ集」を作成し、外国人患者とのコミュニケーションに活用しています。「特に緊急時に役立ちます。指さしながら必要な情報を伝えられるようにしています」とI助産師は説明します。
医療通訳との効果的な協働
医療通訳者との連携も重要なスキルです。通訳を介した会話では、短く区切って話すなどのコツがあります。
また、通訳者に事前に医療情報を共有することの重要性も忘れてはなりません。通訳者の役割と限界を理解し、電話通訳やビデオ通訳サービスの活用方法も知っておく必要があるでしょう。さらに、通訳者が不在の緊急時の対応策も考えておくことが重要です。
J病院の国際診療部では「通訳者は単なる『言葉の変換機』ではなく、文化的背景も含めた橋渡し役です。通訳者とのパートナーシップを大切にすることで、より効果的なケアが可能になります」と強調しています。
英語力を活かした助産師のキャリア展開

英語力の向上は、助産師としてのキャリアの幅を大きく広げることにつながります。
国内での英語を活かした活躍の場
国内にも英語を活かせる多くの機会があります。国際病院や外国人患者の多い医療機関での勤務は、英語力を活かす最も一般的な道です。
また、在日外国人向けの母親学級や産後ケア教室の運営も、英語力を活かした貢献の場となります。医療通訳者との協働プロジェクトへの参加や、国際学会での研究発表や交流も貴重な経験となるでしょう。さらに、外国人看護師・助産師への教育・指導役として活躍することも可能です。
K助産師は「外国人向けの両親学級を英語で開催したところ、予想以上の反響がありました。日本の出産文化を伝える貴重な機会になるとともに、私自身の英語力も大きく向上しました」と語っています。
海外での助産師としての活動機会
グローバルに活躍するチャンスも広がっています。WHO、UNICEFなどの国際NGOや国際機関での活動は、英語力を持つ助産師にとって魅力的な選択肢です。開発途上国での母子保健プロジェクトへの参加や、海外の病院や出産センターでの勤務も可能です。
また、国際的な助産師教育プログラムへの参加や、災害時の国際医療支援チームでの活動も、英語力を活かした貢献の場となります。
L助産師は「最初は語学への不安がありましたが、JICAのプロジェクトでアジアの途上国に派遣された経験が転機となりました。現地の人々との触れ合いを通じて語学力も向上し、今では国際的な助産活動を主なキャリアとしています」と自身の経験を共有しています。
英語力を活かした新たな挑戦
英語力を基盤に、さらに専門性を深める道も広がっています。国際母乳コンサルタント(IBCLC)資格の取得は、英語力を持つ助産師の具体的なキャリアパスの一つです。また、多言語対応の妊娠・出産アプリ開発への参画や、外国人向け母子保健情報の執筆・翻訳活動も英語力を活かせる分野です。
さらに、オンラインを活用した国際的な助産コンサルティングや、外国人助産師の日本での就労支援など、新たな活躍の場も広がっています。
M助産師は「英語力を活かして、海外の助産技術や知見を日本に紹介する翻訳や執筆活動を始めました。最新の海外文献にアクセスできることで、より質の高いケアを提供できるようになりました」と新たな可能性を語っています。
実際の成功事例:英語を活かした助産師の活躍

理論だけでなく、実際に英語を活かして活躍している助産師たちの事例から学びましょう。
ケーススタディ1:外国人患者対応の成功例
N助産師(30代・総合病院勤務)の事例では、英語に苦手意識を持ちながらも、外国人患者の増加に危機感を覚え、医療英語の学習を始めました。「最初は単語カードから始めて、YouTubeの出産動画で耳を慣らしました」と語るN助産師。ある日、英語しか話せないアメリカ人妊婦が緊急搬送されてきました。
通訳の到着を待つ間、N助産師は基本的な英語フレーズと身振り手振りを駆使してコミュニケーションを取りました。「Perfect English isn’t necessary. Your care and attention helped me through the scariest moment of my life.」(完璧な英語は必要ありません。
あなたのケアと気配りが、人生で最も怖い瞬間を乗り越える助けになりました)と患者さんから感謝の言葉をもらったことが、さらなる英語学習のモチベーションになったそうです。
ケーススタディ2:海外で活躍する日本人助産師
O助産師(40代・国際NGO所属)の事例も参考になります。看護大学時代に交換留学を経験したO助産師は、助産師として5年の経験を積んだ後、国際的な母子保健活動に興味を持ち、国際NGOに転職しました。
現在はアフリカの農村地域で、現地の伝統的産婆のトレーニングプログラムを担当しています。「最初は英語でのコミュニケーションに苦労しましたが、『完璧な英語』を目指すのではなく、『伝わる英語』を意識することで壁を乗り越えられました」とO助産師。
現在では英語とフランス語を駆使して、複数の国でプロジェクトを展開しています。「日本の助産ケアの質の高さは国際的にも評価されています。語学の壁を恐れず、もっと多くの日本人助産師が国際舞台で活躍してほしい」と後進にエールを送っています。
ケーススタディ3:オンラインを活用した国際活動
P助産師(30代・フリーランス)の事例は、デジタル時代の新たな可能性を示しています。コロナ禍をきっかけにデジタルスキルを磨いたP助産師は、英語を活用したオンライン助産活動を展開しています。在日外国人向けのバーチャル両親学級や、海外在住日本人向けの産前産後サポートプログラムを提供し、国境を越えた助産ケアの可能性を広げています。
「対面でのケアが基本の助産の世界でも、言語力とデジタルスキルを組み合わせることで新たな価値を生み出せることに気づきました」と語るP助産師。今では国内の医療機関向けに、外国人患者対応のオンライン研修プログラムも提供しています。
「言語の壁を越えることは、同時に文化や価値観の違いを理解することでもあります。その経験が助産師としての視野を広げてくれました」と振り返ります。
英語学習の具体的ステップと目標設定

助産師としての英語学習を成功させるためには、明確なステップと目標設定が重要です。
初級レベルからのステップアップ戦略
英語初心者の助産師向けの段階的学習プランとして、まず第1段階(1〜3ヶ月目)では基礎固めを行います。助産に関する基本単語・フレーズの習得を週20単語ペースで進め、挨拶や自己紹介など基本的な会話表現の練習を行います。また、医療英語アプリを活用した日常的な学習習慣の確立も重要です。
第2段階(4〜6ヶ月目)では、実践的コミュニケーションに焦点を当てます。問診や説明など、場面別の医療英会話練習や、英語の出産シーンの動画視聴による聴解力向上に取り組みましょう。同僚との定期的なロールプレイ練習も効果的です。
第3段階(7〜12ヶ月目)では、専門性の強化を目指します。英語の専門書や論文の読解練習に取り組み、外国人患者との実際のコミュニケーション経験を蓄積します。また、英語での症例プレゼンテーション練習も行うと良いでしょう。
Q助産師は「毎日3つの医療英単語を覚えるという小さな目標から始めました。1年後には、基本的な診察やケアを英語で行えるようになり、自信につながりました」と成功体験を語っています。
中級者向け英語力強化法
ある程度英語の基礎がある助産師向けのステップアップ法としては、英語での専門的なディスカッションへの参加が効果的です。
また、国際的な助産ジャーナルの定期購読と要約練習や、オンライン国際カンファレンスへの積極的参加も有益です。外国人助産師とのオンライン交流会への参加や、英語での症例報告や研究論文の執筆練習も、中級レベルの英語力強化に役立ちます。
R助産師は「週に1回、海外の助産師とZoomで交流する『バーチャル言語交換』を始めたことで、実践的な医療英語が大きく上達しました。お互いの国の助産事情について教え合うことで、英語学習と専門知識の更新が同時にできています」と効果を実感しています。
英語学習の継続と目標達成のコツ
英語学習を長期的に続けるためのモチベーション維持のコツとしては、仲間と一緒に学ぶ「学習コミュニティ」の形成が有効です。
また、3ヶ月ごとの具体的な短期目標設定や、学習記録アプリを活用した「見える化」も継続のポイントです。さらに、英語力を活かした小さな成功体験の積み重ねや、国際学会参加など大きな目標の設定による動機づけも効果的です。
S助産師は「英語学習を始めて6ヶ月後に、小さな国際ワークショップに参加しました。完璧ではなくても自分の英語でコミュニケーションが取れた経験が、その後の学習の大きなモチベーションになりました」と振り返ります。
英語学習において助産師が直面する課題と解決策

英語学習の道のりには様々な障壁がありますが、それを乗り越えるための具体的な解決策を考えましょう。
時間不足の克服法
忙しい勤務スケジュールの中でも英語学習を継続するコツとして、通勤時間や待機時間の有効活用が挙げられます。ポッドキャストやアプリを使った学習は、移動時間を有効に活用できます。
また、家事や運動中のリスニング練習(ながら学習)も効率的です。週に一度の「英語学習デー」を設定して徹底することや、5分×3回の「マイクロ学習」の習慣化も継続のポイントです。さらに、英語での申し送りや記録作成による業務内学習も実践的です。
T助産師は「スマートフォンのメモ機能を使って、患者さんとのやりとりで使った英語フレーズを記録する習慣をつけました。隙間時間にこれを見直すことで、無理なく語彙力が向上しました」と実践的なアドバイスを共有しています。
モチベーション維持の工夫
長期的な英語学習のモチベーションを保つ方法としては、英語力向上による具体的なキャリアプランの可視化が効果的です。自分が英語を身につけることでどのようなキャリアが開けるのかを具体的にイメージすることで、学習意欲が高まります。また、小さな成功体験の記録と振り返りも重要です。
日々の学習の成果を記録し、定期的に振り返ることで進歩を実感できます。さらに、英語を使ったボランティア活動への参加や、オンライン国際コミュニティでの交流と刺激を得ること、英語力を活かした副業や新たな挑戦の創出も長期的なモチベーション維持に役立ちます。
U助産師は「英語学習を始めて3ヶ月目に壁にぶつかりましたが、SNSで知り合った海外の助産師とのオンライン交流が転機となりました。実際のコミュニケーションを通じて学ぶ喜びを感じられたことが、その後の学習の原動力になっています」と語っています。
費用対効果の高い学習投資
限られた予算内で効果的に英語力を向上させる方法としては、無料の医療英語アプリやリソースの活用が挙げられます。現在は質の高い無料アプリやオンラインリソースが多数存在するため、賢く活用することが大切です。また、職場の研修制度や補助金の活用も検討しましょう。
多くの医療機関では、専門スキル向上のための支援制度があります。さらに、グループレッスンやコミュニティ学習の活用、国際的な助産師組織の会員特典の活用、ランゲージエクスチェンジ(言語交換)の活用も費用対効果の高い学習方法です。
V病院では「英語学習のための小規模な院内勉強会を立ち上げました。外部講師を招くよりも費用を抑えつつ、職場の実情に合わせた学習ができています」という取り組みが好評です。
助産師のグローバルキャリアを見据えた英語学習

長期的なキャリア展望を持つことが、継続的な英語学習のモチベーションになります。
国際的な資格取得と英語
グローバルに通用する専門資格取得に役立つ英語力の養成法としては、国際ラクテーションコンサルタント(IBCLC)資格取得のための英語学習が具体的な目標となります。この資格は国際的に認められており、取得することで活躍の場が広がります。
また、国際的な周産期メンタルヘルスの認定資格に向けた準備や、海外大学院進学のための学術英語の強化も将来のキャリアにつながる英語学習です。さらに、WHOやUNICEFなどの国際機関での活動に必要な英語力の養成や、国際学会での発表に向けた準備も重要です。
W助産師は「国際ラクテーションコンサルタント試験のための英語学習を通じて、専門知識と語学力の両方が向上しました。資格取得後は、国内外での活動の幅が大きく広がりました」と資格取得のメリットを語っています。
グローバルネットワーク構築の重要性
国際的なキャリアを築くためには、グローバルなネットワーク構築も欠かせません。国際助産師連盟(ICM)などの国際組織への参加は、世界中の助産師とのつながりを作る良い機会です。
また、国際学会やワークショップへの積極的な参加や、SNSやオンラインプラットフォームを活用した海外の同業者とのつながり作りも重要です。さらに、国際的な助産プロジェクトへのボランティア参加や、オンライン国際カンファレンスでの発表経験の蓄積もネットワーク構築に役立ちます。
X助産師は「最初は勇気が必要でしたが、国際会議でポスター発表をしたことで、世界中の助産師とのネットワークができました。その後のキャリア展開に大きく影響しています」と経験を共有しています。
将来を見据えた段階的英語学習計画
長期的なキャリアビジョンに基づいた段階的な英語学習計画の立て方としては、まず5年後、10年後のキャリアビジョンを明確にすることが大切です。そのビジョンを実現するために必要な英語力のレベルと種類(医療会話、学術英語、プレゼンテーションスキルなど)を特定しましょう。
次に、年単位、月単位、週単位の具体的な学習計画を立て、定期的な見直しと調整を行います。また、キャリアステージごとの優先順位を決め(例:初期キャリアでは会話力重視、中期キャリアでは専門的な読解力や執筆力強化など)、環境変化に応じた柔軟な計画調整も重要です。
Y助産師は「最初は漠然と『英語ができるようになりたい』と思っていましたが、『5年後に国際学会で発表する』という具体的な目標を設定したことで、学習の方向性が明確になりました。目標に向かって段階的に学習を進めることで、無理なく英語力を高められました」と目標設定の重要性を強調しています。
国際的視野を持つ助産師としての専門性向上

英語力の向上は、より広い視野での専門性の向上にもつながります。
海外の助産ケアから学ぶ視点
英語力を活かして海外の助産ケアから学ぶことの意義は大きいです。各国の出産文化や助産ケアの違いを理解することで、自分のケアの視野が広がります。また、エビデンスに基づいた国際的な助産実践の最新情報へのアクセスや、文化的背景の異なる妊産婦へのケアのアプローチ方法の学習も重要です。
さらに、海外の助産教育カリキュラムや継続教育プログラムの特徴を比較研究することや、国際的な母子保健の課題と解決策への理解を深めることも、専門性向上につながります。
Z助産師は「英語の文献を読めるようになったことで、各国の助産ケアの違いや共通点を学ぶことができました。特に、自然分娩へのアプローチ方法の違いは、私のケア観に大きな影響を与えています」と語っています。
国際的な研究活動への参加
英語力があれば、国際的な研究活動への参加も可能になります。国際的な助産研究プロジェクトへの参加や、多国間での共同研究の企画・参加は貴重な経験となります。
また、国際学術誌への論文投稿や、国際学会での研究発表も視野に入れることができます。さらに、海外の研究者とのオンライン研究会や勉強会への参加や、国際的な研究資金獲得のための申請書作成なども、研究力向上につながる活動です。
AA助産師は「英語論文を読めるようになったことで、最新のエビデンスに基づいたケアが提供できるようになりました。さらに、自分の研究を国際誌に投稿したことで、海外の研究者からのフィードバックを得られ、研究の質が向上しました」と研究活動の国際化のメリットを語っています。
多文化対応力の向上
英語を学ぶことは、言語以上の多文化対応力の向上にもつながります。異なる文化的背景を持つ妊産婦のニーズ理解や、文化的に適切なケア(カルチュラルコンピテンス)の提供能力が高まります。
また、異文化間のコミュニケーションスキルの向上や、多様な価値観への理解と尊重の姿勢の強化も期待できます。さらに、グローバルな視点での母子保健課題への取り組み方の学習や、文化的背景の異なるスタッフとの効果的な協働スキルの向上も重要な側面です。
BB助産師は「外国人患者への対応を通じて、文化的背景に配慮したケアの重要性を実感しています。言語だけでなく、出産に関する考え方や習慣の違いを理解することで、より共感的なケアが提供できるようになりました」と多文化対応力の向上を実感しています。
助産師さんからのQ&A「おしえてカンゴさん!」

助産師の英語学習に関するよくある質問にお答えします。
Q1: 助産師に必要な英語レベルはどのくらいですか?
A: 助産師に必要な英語レベルは勤務先や役割によって異なりますが、一般的にはTOEIC600点以上(英検2級、CEFR B1〜B2レベル)が目安です。ただし、スコアよりも重要なのは、実際のコミュニケーション能力です。
特に助産の現場では、専門用語を理解し使用できること、患者さんに共感的に接することができること、緊急時に簡潔に情報を伝えられることが重要です。完璧な英語を目指すよりも、「伝わる英語」を意識することが大切です。
Q2: 忙しい勤務の合間に英語学習を続けるコツは?
A: 継続的な学習のコツは、小さな学習を日常に組み込むことです。通勤時間にポッドキャストを聴く、スマホアプリで隙間時間に単語学習をする、就寝前の10分間を英語の音読に充てるなど、無理のない形で習慣化することが大切です。
また、業務に関連づけた学習も効果的です。例えば、英語の症例報告を読む、外国人患者用の説明資料を英語で作成する、同僚と英語での申し送りを練習するなど、実践と結びついた学習を取り入れるとモチベーションが続きやすくなります。
Q3: 外国人患者との信頼関係を築くために大切な英語表現は?
A: 外国人患者との信頼関係構築には、まず丁寧な自己紹介から始めることが大切です。
「I’m here to support you throughout your pregnancy and delivery.」(妊娠から出産まで、あなたをサポートします)など、安心感を与える言葉が重要です。また、「How are you feeling today?」(今日の調子はいかがですか?)「Is there anything concerning you?」(何か心配なことはありますか?)といった開かれた質問を通じて患者さんの気持ちを理解しようとする姿勢を示すことも大切です。
さらに、「I understand this must be difficult for you.」(これはあなたにとって大変なことだと理解しています)など、共感を示す表現も信頼関係構築に役立ちます。
Q4: 医療英語と一般英語はどう違いますか?専門教材は必要ですか?
A: 医療英語は一般英語と比べて専門用語が多く、より正確さが求められる特徴があります。特に助産分野では、解剖学的用語や出産過程の専門用語、新生児ケアに関する表現など、特有の語彙があります。
効率的に学ぶためには、一般的な英会話教材だけでなく、医療英語や助産英語に特化した教材を併用することをお勧めします。「Medical English for Midwives」などの専門書や、医療従事者向けのオンライン英会話コース、医療英語アプリなどを活用すると効率的に学習できます。
ただし、まったくの初心者の場合は、まず基礎的な一般英語から始めることも大切です。
Q5: 英語を活かした助産師のキャリアパスにはどのようなものがありますか?
A: 英語力を持つ助産師には、様々なキャリアパスがあります。国内では、国際病院や外国人患者の多い医療機関での勤務、外国人向けの母親学級の運営、医療通訳との協働プロジェクト参加などが考えられます。
海外に目を向ければ、国際NGOや国際機関での活動、開発途上国での母子保健プロジェクト参加、海外の病院での勤務などのチャンスがあります。
また、国際的な資格取得(国際ラクテーションコンサルタントなど)、多言語対応の妊娠・出産アプリ開発への参画、外国人向け母子保健情報の執筆・翻訳活動、オンラインを活用した国際的な助産コンサルティングなど、専門性と英語力を組み合わせた新たな道も広がっています。
Q6: 外国人患者とのコミュニケーションで、言葉以外に気をつけるべきことは?
A: 言語だけでなく、文化的背景への理解と配慮が非常に重要です。出産や育児に関する文化的習慣や価値観は国によって大きく異なります。
例えば、食事制限や宗教的慣習(ハラール食、断食期間など)、プライバシーや身体接触に関する考え方、家族の関わり方についての文化的差異などを理解しておくことが大切です。また、非言語コミュニケーション(アイコンタクト、表情、ジェスチャー、距離感など)にも文化による違いがあります。
患者さんの文化的背景を尊重しつつ、丁寧に確認する姿勢を持つことが、真の意味でのコミュニケーションにつながります。
Q7: 英語での緊急時対応で特に知っておくべきフレーズはありますか?
A: 緊急時には簡潔かつ明確なコミュニケーションが重要です。「This is an emergency. We need to act quickly.」(緊急事態です。迅速に対応する必要があります)「Your baby’s heart rate is dropping. We need to deliver immediately.」(赤ちゃんの心拍数が下がっています。すぐに分娩する必要があります)など、状況を明確に伝えるフレーズを覚えておきましょう。
また、「I’m calling the doctor now.」(今、医師を呼んでいます)「We’re preparing for a cesarean section.」(帝王切開の準備をしています)といった対応の説明も重要です。
さらに、「Don’t worry, we’re well-prepared for this situation.」(心配しないでください。私たちはこの状況に十分準備ができています)など、安心感を与える言葉も大切です。これらのフレーズを自然に使えるよう、日頃からシミュレーション練習をしておくことをお勧めします。
まとめ:助産師の英語学習成功への道
本記事では、助産師に必要な英語力とその習得方法について、実践的な視点からご紹介しました。グローバル化が進む日本の医療現場において、英語力は助産師にとって重要なスキルとなっています。
忙しい日常の中での英語学習は決して容易ではありませんが、「完璧な英語」を目指すのではなく、「伝わる英語」を意識し、小さな一歩から始めることが成功への道です。本記事が、グローバルな活躍を目指す助産師の皆さんの英語学習の一助となれば幸いです。
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