2025年版【医療保険訪問看護制度と利用の完全ガイド】 算定要件から手続きまで

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医療保険による訪問看護は、在宅療養を支える重要なサービスですが、制度の理解や手続きについて不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

2024年度の診療報酬改定では、在宅医療の充実に向けた見直しが行われ、特に医療依存度の高い患者さんへの支援が強化されています。

本記事では、医療保険による訪問看護制度について、実務経験豊富な看護師の視点から、算定要件や手続き方法、費用負担から実践的な活用方法まで、すべての疑問にお答えします。

これから訪問看護の利用を検討されている方はもちろん、すでにサービスを提供している看護師の方々にも役立つ情報を、具体的な事例を交えながら解説していきます。

この記事で分かること

  • 医療保険による訪問看護の対象者条件と算定要件の詳細
  • 利用開始までの具体的な手続き方法とポイント
  • 医療保険適用時の費用負担と給付内容の解説
  • 疾患別の具体的な利用事例とケーススタディ
  • 訪問看護導入から終了までの流れと注意点
  • 効果的な活用のためのポイントと実践的なアドバイス

この記事を読んでほしい人

  • 訪問看護の利用を検討している患者さんとご家族
  • 訪問看護の保険制度について学びたい医療従事者
  • 在宅医療に関わる医療機関のスタッフ
  • 訪問看護ステーションの管理者・スタッフ
  • 在宅療養の準備を進めている方
  • 医療保険制度に関する知識を深めたい方
  • 退院調整に関わる医療従事者

医療保険による訪問看護の基本

訪問看護における医療保険制度は、特定の疾患や医療依存度の高い患者さんの在宅療養を支える重要な仕組みです。

このセクションでは、制度の基本的な枠組みから対象となる方の条件、最新の制度改定のポイントまで詳しく解説します。

医療保険による訪問看護の概要

医療保険による訪問看護は、疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある方が、主治医の指示に基づいて訪問看護ステーションから提供される看護サービスです。医療処置や病状観察、療養上の世話などが提供され、医療保険から給付が行われます。

制度の基本的な仕組み

医療保険による訪問看護は、健康保険法に基づいて提供されるサービスです。利用者は医療保険の被保険者であり、主治医の訪問看護指示書に基づいてサービスが提供されます。

訪問看護ステーションは、指示書の内容に沿って訪問看護計画を作成し、計画的なケアを実施します。

医療保険と介護保険の違い

医療保険による訪問看護は、主に医療依存度の高い方や特定疾病の方を対象としています。一方、介護保険による訪問看護は、原則として65歳以上の高齢者で要介護認定を受けた方が対象となります。

医療処置の必要性や病状の安定度によって、適用される保険制度が異なってきます。

対象となる方の詳細

特定疾病の患者さん

特定疾病に該当する方は、年齢に関わらず医療保険による訪問看護を利用することができます。末期の悪性腫瘍、難病患者(特定疾患治療研究事業対象疾患)、重度の褥瘡のある患者さん、人工呼吸器を使用している患者さんなどが該当します。

これらの疾患では、専門的な医療処置や継続的な病状管理が必要となるためです。

急性増悪期の患者さん

在宅療養中に状態が一時的に悪化した方や、退院直後で集中的な医療管理が必要な方も対象となります。この場合、主治医の判断により、一時的に医療保険による訪問看護が適用されます。病状が安定した後は、適切な保険制度に移行することになります。

2025年度の制度改定ポイント

算定要件の見直し

2025年度の診療報酬改定では、在宅医療の充実に向けた見直しが行われました。特に、医療依存度の高い患者さんへの支援強化や、24時間対応体制の評価の充実が図られています。

具体的には、特別管理加算の対象範囲拡大や、緊急時訪問看護加算の要件見直しなどが実施されています。

新設された加算項目

新たに設けられた加算により、より手厚い医療管理が必要な患者さんへの対応が評価されることになりました。医療機器の管理や、複雑な医療処置を要する患者さんへのケアについて、適切な評価が行われるようになっています。

サービス提供体制

24時間対応体制

医療保険による訪問看護では、24時間365日の対応体制が重視されています。緊急時の電話対応や臨時訪問など、利用者の急変時にも適切な対応ができる体制が整備されています。この体制により、在宅療養者とその家族の安心感が確保されます。

多職種連携の実際

訪問看護の効果的な提供には、医師や薬剤師、理学療法士など、多職種との緊密な連携が欠かせません。特に医療依存度の高い患者さんの場合、様々な専門職が協力してケアを提供することで、より質の高い在宅療養が実現できます。

利用にあたっての注意点

医療保険適用の判断

医療保険による訪問看護の利用を検討する際は、まず主治医に相談することが重要です。医師は患者さんの状態を総合的に判断し、適切な保険制度の選択をアドバイスします。状態が変化した場合は、適用される保険制度が変更になる可能性もあります。

利用開始前の確認事項

サービス開始前には、利用者の状態や家族の介護力、住環境などを総合的に評価します。また、医療処置の内容や頻度、緊急時の対応方法などについても、事前に十分な確認が必要です。これらの情報を基に、適切な訪問看護計画が立案されます。

算定要件の詳細

医療保険による訪問看護の算定要件は、適切なサービス提供と請求の基準となる重要な要素です。

このセクションでは、具体的な算定要件とその解釈、実務における注意点について詳しく解説します。

医師の指示書に関する要件

訪問看護指示書の基本事項

訪問看護指示書は、主治医が患者の病状や必要な看護内容を具体的に記載する重要な文書です。指示書には、患者の病名、症状、必要な処置内容、注意事項などが明記されます。有効期限は最長6ヶ月となっており、定期的な見直しが必要となります。

特別指示書の要件

急性増悪期など、より頻回な訪問が必要な場合には、特別訪問看護指示書が発行されます。特別指示書の有効期限は14日間であり、集中的な医療管理が必要な期間に限って発行されます。この期間は医療保険での算定となり、より手厚いケアを提供することが可能です。

訪問時間に関する要件

基本的な訪問時間区分

訪問看護の時間区分は、20分未満、30分未満、30分以上60分未満、60分以上90分未満などに分かれています。それぞれの時間区分に応じて、基本療養費の算定単位が異なります。患者の状態や必要なケアの内容に応じて、適切な時間区分を選択します。

長時間訪問の算定条件

90分以上の長時間訪問が必要な場合は、患者の状態や医療処置の内容により、特別な算定要件が設定されています。人工呼吸器装着患者や特別管理加算の対象となる患者などは、長時間訪問の算定が可能です。

特別管理加算の算定要件

対象となる医療処置

特別管理加算は、特定の医療処置や状態にある患者に対して算定できます。具体的には、真皮を越える褥瘡の処置、点滴注射、中心静脈栄養、人工呼吸器の管理などが対象となります。これらの医療処置には、高度な看護技術と綿密な管理が必要とされます。

算定期間と評価方法

特別管理加算の算定には、当該医療処置が継続して必要な状態であることが求められます。毎月の評価を行い、医療処置の必要性や患者の状態変化を確認します。状態が改善し、対象となる医療処置が不要となった場合は、算定を終了します。

緊急時訪問看護加算

算定の基本条件

緊急時訪問看護加算は、24時間連絡体制を確保し、必要時に緊急訪問が可能な体制を整備している事業所において算定できます。利用者の同意を得た上で、緊急時の連絡方法や対応手順を明確にしておく必要があります。

緊急訪問時の対応と記録

実際に緊急訪問を行った場合は、その内容や時間、対応した看護師、患者の状態変化などを詳細に記録します。また、主治医への報告や必要な指示の確認など、適切な医療連携を図ることが重要です。

複数名訪問看護加算

算定が必要となるケース

複数名での訪問が必要となるケースには、重度の褥瘡処置や人工呼吸器の管理、その他高度な医療処置など、一人では安全なケア提供が困難な場合が含まれます。また、患者の体格や症状により、複数名での介助が必要な場合も対象となります。

職種の組み合わせと記録

複数名訪問の際の職種の組み合わせには、看護師同士、看護師と准看護師、看護師と理学療法士などがあります。それぞれの職種の専門性を活かした効果的なケア提供が求められます。

理学療法士等による訪問の要件

算定可能な職種と内容

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問は、医師の指示に基づき、その専門性を活かしたリハビリテーションを提供する場合に算定可能です。訪問看護計画に基づき、計画的なリハビリテーションを実施します。

看護師との連携方法

理学療法士等による訪問の場合も、看護師との緊密な連携が不可欠です。定期的なカンファレンスや情報共有を行い、患者の状態変化や訓練内容の調整などについて、チームで検討します。

精神科訪問看護基本療養費

算定要件の特徴

精神科訪問看護は、精神疾患を有する患者に対して、専門的な看護ケアを提供する場合に算定できます。精神科医の指示のもと、精神症状の観察や服薬支援、生活指導などを行います。

専門性の確保と研修

精神科訪問看護に従事する看護師には、一定の実務経験や専門研修の受講が求められます。継続的な研修参加や事例検討を通じて、専門性の向上を図ることが重要です。

利用手続きの具体的な流れ

医療保険による訪問看護の利用を開始するためには、適切な手順での手続きが必要です。

このセクションでは、利用開始から終了までの具体的な流れと、各段階での注意点について解説します。

主治医への相談と手続き開始

初回相談の進め方

医療保険による訪問看護の利用を検討する場合、まずは主治医への相談が必要となります。主治医は患者さんの病状や医療処置の必要性を評価し、訪問看護の必要性を判断します。この際、ご家族の介護状況や在宅療養の環境についても確認が行われます。

医師の指示書作成

主治医による訪問看護指示書の作成は、サービス利用開始の重要なステップとなります。指示書には病名、症状、必要な医療処置、注意事項などが具体的に記載されます。

指示内容に基づいて訪問看護計画が立案されるため、必要な医療情報を漏れなく記載することが重要です。

訪問看護ステーションの選択

適切なステーション選びのポイント

訪問看護ステーションを選ぶ際は、対応可能な医療処置の範囲や24時間対応の有無、緊急時の体制などを確認します。

また、自宅からの距離や訪問可能な時間帯なども重要な選択基準となります。複数のステーションに相談し、サービス内容を比較検討することをお勧めします。

事前相談と見学

選定したステーションには、まず電話で相談の予約を入れます。初回相談では、利用者の状態や必要なケア内容、サービスの具体的な内容について詳しく確認します。可能であれば、実際にステーションを見学することで、より具体的なイメージを持つことができます。

初回訪問と契約

初回訪問時の確認事項

初回訪問では、訪問看護師が自宅を訪問し、実際の療養環境を確認します。この際、必要な医療機器の設置場所や、緊急時の動線確保などについても検討します。また、ご家族への介護指導の必要性や、多職種との連携方法についても話し合います。

利用契約の締結

サービス内容や利用条件について合意が得られれば、訪問看護利用契約を締結します。契約書には、サービス内容、利用料金、緊急時の対応方法などが明記されます。重要事項説明書をよく確認し、不明な点があれば質問することが大切です。

訪問看護計画の作成

アセスメントの実施

訪問看護計画の作成に先立ち、利用者の全体的な状態をアセスメントします。医療処置の必要性や日常生活の自立度、家族の介護力などを総合的に評価し、必要なケア内容を検討します。

計画内容の説明と同意

作成された訪問看護計画は、利用者とご家族に詳しく説明します。計画には訪問頻度や具体的なケア内容、目標などが記載されており、これらについて十分な理解を得ることが重要です。同意を得た上で、計画に基づくサービスが開始されます。

サービス開始後の調整

モニタリングと計画の見直し

サービス開始後は、定期的なモニタリングを実施し、計画の妥当性を評価します。利用者の状態変化や新たなニーズが生じた場合は、適宜計画の見直しを行います。また、主治医への報告と必要な指示の確認も定期的に行います。

多職種との連携体制

在宅療養では、医師、薬剤師、理学療法士など、様々な専門職との連携が重要です。情報共有の方法や連絡体制を確立し、チームとして効果的なケアを提供できる体制を整えます。

記録と報告の管理

訪問記録の作成

毎回の訪問では、実施したケア内容や利用者の状態変化、観察事項などを詳細に記録します。これらの記録は、ケアの継続性を確保し、適切な評価を行うための重要な資料となります。

関係機関への報告

主治医や関係機関への報告は、定められた様式と期限に従って行います。特に医療処置の実施状況や病状の変化については、タイムリーな報告と情報共有が求められます。

医療保険適用時の費用負担

医療保険による訪問看護を利用する際の費用負担については、保険制度や加算項目によって複雑な計算が必要となります。このセクションでは、具体的な費用構造と自己負担の計算方法、さらに負担軽減のための制度について解説します。

基本的な費用構造

自己負担割合の決定

医療保険による訪問看護の自己負担割合は、年齢や所得によって異なります。70歳未満の方は原則3割負担、70歳以上の方は所得に応じて1割から3割の負担となります。なお、現役並み所得者は年齢に関わらず3割負担となります。

訪問看護基本療養費

基本療養費は訪問時間に応じて設定されており、20分未満から90分以上まで、時間区分ごとに異なる単位数が定められています。医療処置の内容や患者の状態によって、適切な訪問時間が選択されます。

各種加算による追加料金

24時間対応体制加算

24時間連絡体制を確保し、緊急時の対応が可能な体制を整備している事業所では、月額での加算が算定されます。この加算により、夜間休日を問わず、必要時の対応が可能となります。

特別管理加算の内容

特定の医療処置や状態管理が必要な場合、特別管理加算が算定されます。加算は処置の内容によって特別管理加算Ⅰ、Ⅱに分類され、それぞれ異なる単位数が設定されています。

実際の費用計算例

標準的な利用パターン

週2回の定期訪問で、1回60分の訪問を行う場合の月額費用について、具体的な計算例を示します。基本療養費に各種加算を加え、自己負担割合を掛けることで、実際の負担額が算出されます。

医療処置が必要な場合

点滴管理や褥瘡処置など、特別な医療処置が必要な場合は、基本料金に加えて特別管理加算が発生します。これにより、月額の費用は増加しますが、必要な医療管理を受けることができます。

費用負担軽減の制度

高額療養費制度の活用

医療費が高額になった場合、高額療養費制度を利用することで、自己負担額の軽減が可能です。所得区分に応じて自己負担限度額が設定されており、超過分が払い戻されます。

その他の助成制度

特定疾患医療費助成制度や自立支援医療制度など、疾患や状態に応じた各種助成制度があります。これらの制度を組み合わせることで、さらなる負担軽減が期待できます。

医療費の管理と請求

月次の費用確認

毎月の訪問看護利用後には、明細書が発行されます。内容を確認し、算定されている加算や訪問回数が実際のサービス内容と一致しているか、確認することが重要です。

支払い方法の選択

費用の支払いは、口座引き落としや窓口での現金支払いなど、複数の方法から選択できます。定期的な支払いに備え、計画的な資金管理が必要となります。

ケーススタディ

医療保険による訪問看護の実際の利用例を通じて、サービス導入から終了までの流れを具体的に見ていきましょう。

このセクションでは、異なる疾患や状態の患者さんの事例を紹介し、実践的な対応方法について解説します。

ケース1:末期がん患者への訪問看護

患者プロフィール

Aさん(65歳・女性)は、進行性の肺がんにより在宅療養中です。疼痛コントロールと点滴管理が必要な状態で、ご家族の強い希望により在宅での看取りを希望されています。主介護者は夫(68歳)で、週3回のペースで訪問看護を利用することになりました。

導入時の対応

退院前カンファレンスでは、在宅主治医、訪問看護師、薬剤師が参加し、疼痛管理や緊急時の対応について詳細な打ち合わせを行いました。特に麻薬の管理方法や副作用への対応、緊急時の連絡体制について具体的な確認を行いました。

サービス提供の実際

週3回の定期訪問に加え、状態変化時の臨時対応を含む24時間体制でケアを提供しました。疼痛評価とモルヒネの用量調整、点滴管理、褥瘡予防ケアを中心に、症状緩和と療養生活の質の向上に努めました。

ケース2:人工呼吸器使用患者

患者プロフィール

Bさん(40歳・男性)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)により人工呼吸器を使用しています。24時間の医療管理が必要な状態で、配偶者と二人暮らしです。医療依存度が高く、1日1回の定期訪問に加え、緊急時の対応体制を整えています。

医療機器管理の実際

人工呼吸器の作動状況確認、回路の管理、加湿器の点検など、医療機器の安全管理を重点的に行います。また、吸引技術の指導や緊急時の対応方法について、ご家族への教育支援も実施しました。

多職種連携の展開

在宅主治医、理学療法士、介護支援専門員と定期的なカンファレンスを開催し、ケアの方向性や役割分担を確認しています。特に呼吸リハビリテーションについては、理学療法士と綿密な連携を図りながら実施しています。

ケース3:難病患者の在宅療養

患者プロフィール

Cさん(35歳・女性)は、多発性硬化症により、症状の進行と寛解を繰り返しています。夫と小学生の子どもとの3人暮らしで、症状増悪時の対応が課題となっています。

症状管理の実際

病状の観察と評価を丁寧に行い、症状増悪の早期発見に努めています。特に、歩行状態や疲労度、視覚症状などの変化を注意深く観察し、必要に応じて医師への報告と治療方針の確認を行っています。

生活支援の工夫

日常生活動作の維持・改善を目指し、住環境の整備や動作方法の工夫について支援しています。また、育児と療養の両立について、具体的なアドバイスと精神的なサポートを提供しています。

ケース4:退院直後の医療処置管理

患者プロフィール

Dさん(75歳・男性)は、肺炎による入院後、中心静脈栄養と酸素療法を必要とする状態で退院されました。独居で、近隣に住む娘さんが主介護者となっています。

初期対応の重要性

退院直後は医療処置の確実な実施と状態観察が特に重要となります。中心静脈カテーテルの管理、輸液ポンプの操作方法、酸素濃縮器の使用方法など、具体的な指導と確認を丁寧に行いました。

自立支援への取り組み

医療処置の必要性を定期的に評価しながら、経口摂取への移行を段階的に進めています。また、ADLの向上を目指し、リハビリテーションとの連携を図りながら、活動性の維持・向上に取り組んでいます。

Q&A「おしえてカンゴさん!」よくある質問

訪問看護の医療保険制度について、実務経験豊富な看護師が、よくある疑問や質問にお答えします。

このセクションでは、利用者やご家族からよく寄せられる質問について、具体的な事例を交えながら解説します。

保険制度に関する質問

Q1:医療保険と介護保険、どちらの利用が適切でしょうか?

医療保険による訪問看護は、主に医療依存度の高い方や特定疾病の方が対象となります。一方、介護保険は65歳以上の方で、医療処置の必要性が低い場合に適しています。

どちらの保険を利用するかは、主治医と相談の上、病状や必要なケアの内容によって判断します。医療処置が必要な場合や、40歳未満の方は、医療保険の利用をお勧めします。

Q2:他のサービスと併用することはできますか?

医療保険による訪問看護は、他の医療サービスや福祉サービスと併用することが可能です。たとえば、訪問診療や訪問リハビリテーション、ホームヘルプサービスなどと組み合わせることで、より充実した在宅療養環境を整えることができます。

ただし、同一時間帯での重複利用はできないため、サービスの調整が必要となります。

利用方法に関する質問

Q3:緊急時の対応はどのようになっていますか?

24時間対応体制加算を算定している訪問看護ステーションでは、夜間や休日でも電話相談や緊急訪問が可能です。急な状態変化や医療処置のトラブルなど、緊急時には看護師が訪問して適切な対応を行います。また、あらかじめ緊急時の連絡方法や対応手順について、具体的な説明を受けることができます。

Q4:入院中でも申請は可能ですか?

退院後の円滑なサービス利用のために、入院中から手続きを進めることをお勧めします。特に医療依存度の高い方の場合、退院前カンファレンスなどを通じて、必要な医療処置の確認や自宅での療養環境の調整を行うことが重要です。

早めに相談することで、より適切なサービス調整が可能となります。

医療処置に関する質問

Q5:どのような医療処置に対応できますか?

訪問看護では、点滴管理、褥瘡処置、人工呼吸器の管理、経管栄養、胃瘻管理、膀胱カテーテルの管理など、様々な医療処置に対応可能です。ただし、対応可能な医療処置は訪問看護ステーションによって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。

また、新しい医療処置が必要となった場合は、主治医と相談の上、適切な対応を検討します。

費用に関する質問

Q6:高額な医療費への対応方法はありますか?

医療費が高額になる場合は、高額療養費制度を利用することで、自己負担額を軽減することが可能です。また、特定疾患医療費助成制度や自立支援医療制度など、疾患や状態に応じた各種助成制度も利用できます。

これらの制度については、医療機関のソーシャルワーカーや訪問看護ステーションのスタッフに相談することをお勧めします。

生活支援に関する質問

Q7:家族への指導や支援も行ってもらえますか?

訪問看護では、医療処置の手技指導や、日常生活での注意点について、ご家族への支援も行います。具体的には、体位変換や移乗介助の方法、医療機器の取り扱い、緊急時の対応方法などについて、実践的な指導を行います。

また、介護負担の軽減に向けたアドバイスや、精神的なサポートも提供しています。

効果的な活用のためのポイント

訪問看護の医療保険制度を効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。このセクションでは、実務経験に基づく具体的なアドバイスと、サービスを最大限活用するためのポイントをお伝えします。

早期からの相談と準備

退院支援との連携

入院中から退院後の在宅療養に向けた準備を始めることで、よりスムーズな訪問看護の導入が可能となります。退院前カンファレンスでは、医療処置の確認や自宅での療養環境の調整について、具体的な打ち合わせを行います。

早期からの準備により、安心して在宅療養をスタートすることができます。

地域資源の活用

お住まいの地域にある訪問看護ステーションの特徴や対応可能な医療処置について、事前に情報収集を行うことをお勧めします。地域包括支援センターや医療機関の相談窓口では、地域の医療・介護資源について詳しい情報を得ることができます。

医療機関との連携強化

情報共有の工夫

訪問看護師と主治医、その他の医療職との間で、確実な情報共有を行うことが重要です。連絡ノートの活用や定期的なカンファレンスの開催により、よりきめ細かな医療管理が可能となります。

また、状態変化時の報告基準を明確にすることで、適切なタイミングでの医療介入が可能となります。

多職種連携の促進

理学療法士や薬剤師、介護支援専門員など、様々な専門職との連携を図ることで、より総合的な在宅療養支援が可能となります。それぞれの専門性を活かしたアプローチにより、療養生活の質を高めることができます。

記録管理の重要性

療養記録の活用

日々の療養状況や医療処置の実施内容を記録することで、継続的な評価と計画の見直しが可能となります。また、これらの記録は医療費の申請時にも重要な資料となるため、確実な保管が必要です。記録を通じて、ご家族とスタッフ間でも情報共有を図ることができます。

まとめ

本記事では、医療保険による訪問看護の制度について、基本的な仕組みから具体的な利用方法まで詳しく解説してきました。訪問看護は在宅療養を支える重要なサービスであり、適切な利用により、安心で質の高い療養生活を実現することができます。

キーポイントの整理

医療保険による訪問看護の利用にあたっては、対象となる条件や算定要件を正しく理解し、適切な手続きを行うことが重要です。

また、多職種との連携や、ご家族への支援を含めた包括的なアプローチにより、より効果的なサービス利用が可能となります。

医療保険による訪問看護は、在宅療養を支える重要なサービスです。本記事では、制度の基本から具体的な利用手順、実際のケーススタディまで詳しく解説してきました。

2025年度の制度改定も踏まえ、適切な訪問看護サービスの選択と活用方法について理解を深めていただけたのではないでしょうか。実務での活用にお役立てください。

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