【看護師 特定行為】特定行為看護師になるメリットと資格取得方法|役割や制度を徹底解説

この記事を書いた人
はたらく看護師さん 編集部
「はたらく看護師さん」編集部
「はたらく看護師さん」は看護師の働き方や専門知識を発信するメディアです。現役看護師や医療現場経験者による編集体制で、臨床現場の実態に基づいた信頼性の高い情報をお届けしています。看護師のキャリア支援と医療知識の普及を通じて、看護師さんの「はたらく」をサポートします。

 看護師の特定行為とは、高度な医療ケアを提供するための専門的な技能です。2015年に導入されたこの制度は、医療現場に革新をもたらし、看護師のキャリアに新たな可能性を開きました。

本記事では、特定行為看護師の役割、なり方、そしてそのメリットについて詳しく解説します。医療の質向上と効率化を目指す今、特定行為看護師の需要は急増しています。あなたも、この成長分野でキャリアアップを目指してみませんか?

特定行為看護師とは?

 

無料写真 医者の肖像

 

特定行為看護師とは、保健師助産師看護師法によって定められた「療養上の世話又は診療の補助」を行う看護師の中でも、高度な知識と技術が要求される特定行為を実施するために必要な資格を持つ看護師のことを指します。

 

特定行為は、21区分38行為に分類されており、これらの行為を実践するための専門的な知識と技術を身につけた看護師が担当します。

 

2015年に厚生労働省が施行した特定行為に係る看護師の研修制度により、特定行為の研修が定められ、看護師が資格を取得する際の基準が明確化されました。詳しくは厚生労働省が発表している以下の情報をご覧ください。

 

参考元:厚生労働省「特定行為区分とは

 

特定行為とは

 

特定行為は、看護師が医師や歯科医師の手順書に基づいて実践する、高度で専門的な医療行為を指します。これは、特定行為研修を受講し、必要な知識・技術を習得した看護師によって行われます。

 

特定行為の目的は、迅速かつ的確な医療を提供することと、チーム医療の推進です。2015年10月に厚生労働省によって設けられた特定行為研修制度により、看護師は特定行為を実施するための基準を満たす必要があります。

 

特定行為は診療の補助であり、看護師が手順書に従って実施するため、実践的な理解力・思考力、判断力に加えて高度かつ専門的な知識・技能が不可欠です。この研修を修了した看護師は、通称「特定看護師」と呼ばれていますが、特定看護師という正式な資格は存在しないため、注意が必要です。

 

なぜ特定看護師が必要なのか

 

超高齢社会を迎え、医療資源の限界がある中、国は入院医療の在り方の見直しと在宅医療の推進を模索しています。しかし、病床数の削減や医師・看護師の不足が深刻な課題となっています。このような状況の中で、特定看護師の役割が重要視されています。

 

特定看護師の役割拡大は、多職種協働によるチーム医療の推進に不可欠とされており、入院や在宅の場でも、医師の到着を待たず、患者の症状に応じて適切な処置を行うことが可能です。これにより、患者の症状が悪化するリスクが低減し、医療提供者と患者双方にとって大きなメリットをもたらします。

 

特定看護師の資格を持つことで、病床数の削減や医師・看護師の負担軽減にも貢献できるため、今後ますますその重要性が高まることが予想されます。

 

手順書とは

 

手順書は、医師や歯科医師が特定行為を行うための事前指示書であり、看護師がこれに基づいて特定行為を実践する際の重要なガイドとなります。特定行為は、高度で専門的な医療行為であり、手順書がなければ特定看護師でも実施することはできません。

 

医師は、患者の状態や医療の安全を考慮しつつ、特定行為が正しく実施されるように手順書を作成します。手順書には、以下の6つの重要な項目が記載されています。

 

①看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲が明示されています。

 

②診療の補助内容が具体的に記載されており、看護師がどのような行動をとるべきかが示されています。

 

③特定行為の対象となる患者が明記されています。

 

④特定行為を行う際に確認すべき事項が示されており、看護師はこれを遵守することが求められます。

 

⑤医師または歯科医師との連絡が必要とされる場合の連絡体制が明示されています。

 

⑥特定行為を実施した後に医師または歯科医師へ報告する方法についても手順書に記載されています。

 

手順書は、医師と看護師が連携して患者の安全と適切な医療を確保する上で重要な役割を担っています。それぞれの患者に適した医療が行えるよう、手順書は臨機応変に対応可能な個別性を持つことが求められます。

 

専門看護師と認定看護師の違い

 

看護師には、特定行為看護師の他に、高いレベルの知識を持ち合わせた専門看護師と認定看護師がいますが、どのような違いがあるのか解説していきます。

 

認定看護師は、看護分野において高度な技術と知識を持ち、それを活かした看護や後進の指導に従事する看護現場のスペシャリストです。日本看護協会の認定を受けた看護師であり、特定の看護分野においてハイレベルな技術と知識を有しています。

 

認定看護師の資格取得には、看護師として5年以上の実務経験が必要であり、日本看護協会が定める認定看護師教育を受講し、認定看護師認定審査に合格する必要があります。

 

一方の専門看護師は、熟練した看護技術を駆使して実践する専門職の一つであり、看護職の教育や医師と患者、地域の機関との調整役も担います。彼らは高水準の看護を効率的に提供するための技術と知識を深め、卓越した看護実践が可能であると認められた看護師です。

 

専門看護師は、日本看護協会専門看護師認定審査に合格し、特定の看護分野で卓越した実践能力を有していると認められた者を指します。この資格を取得するには、看護師として5年以上の実践経験が求められます。

 

また、専門看護師として認定されるためには、看護系の大学院で修士課程を修了し、必要な単位を取得することが必要です。修士課程修了後は、専門看護師認定審査に合格することで資格を取得することができます。

 

<看護師・ナースのリアルな声>まわりの特定行為看護師の活躍ぶりを教えてください

 

特定行為看護師になるメリット

 

無料写真 アジアの医師チームは、患者分析のx線フィルムを調べて、手術のためのbextソリューションを見つけ、健康アイデアの概念を扱います

 

それでは、特定行為看護師になることでどのようなメリットがあるのか解説していきます。

 

必要な処置を素早く提供できる

 

特定行為看護師になることのメリットの一つは、必要な処置を素早く提供できることです。特定行為看護師は、医師の指示や到着を待つことなく、手順書に基づいて必要な医療行為を迅速に行えます。

 

これにより、患者の状態が急変した際や高度な医療処置が必要な状況でも、即座に対応できる能力があります。タイムリーに医療を提供することで、患者の回復を早め、苦痛を軽減することが可能です。

 

特に高度なケアが求められる状況や在宅療養の際には、このスピーディな対応が非常に重要です。また、医師の負担も軽減され、効率的なチーム医療が実現できます。

 

特定行為看護師の活躍は、現代の医療現場において非常に重要であり、特に高齢化社会の進展に伴い、その重要性はますます高まっています。患者の最適なケアと効率的な医療提供を実現するために、特定行為看護師の存在は欠かせないものとなっています。

 

活躍できる職場が広がる

 

特定看護師として働くことで、業務の幅が広がります。特定行為研修を受けた看護師は、手順書に基づき特定の医療行為を実施できるため、これにより在宅医療や急性期医療など様々な分野での活躍の場が広がります。

 

将来的なキャリアアップや転職の際にも強みとなり得る資格であるため、特定看護師のニーズが増加しており、転職時に有利になることが期待されます。ただし、特定行為に関して研修を受けていない場合や、手順書がない場合は、特定行為を行うことはできないため、注意が必要です。

 

診療報酬加算の対象になる

 

2022年の診療報酬改定において、特定看護師の活用が評価され、診療報酬の加算対象となりました。

 

特定看護師が専門的な研修を受けている場合や、医師が手順書を作成したケースで、訪問看護における褥瘡(じょくそう)ケアを行った際に加算が行われる仕組みとなっています。これにより、特定看護師の専門的な知識とスキルを活かし、診療の質を向上させることが目指されています。

 

給与アップが見込める

 

特定看護師資格を持つことで、給与面での優遇が期待されます。特定看護師の需要が高まる中、企業や医療機関は優秀な特定看護師を引き留めるために給与の面で手厚いサポートを行っています。特定行為研修を修了することで、看護師の給与がアップするケースや、研修期間中も勤務扱いで給与が支給されるなどの支援が行われています。

 

厚生労働省が2025年までに約10万人以上の特定看護師を養成する目標を掲げていることから、今後も特定看護師の処遇改善が期待されます。需要の増加に伴い、特定看護師の給与水準が向上する可能性が高く、転職活動においても有利に働くことが期待されます。

 

<看護師・ナースのリアルな声>特定行為看護師になって良かったことを教えてください

 

患者のメリット

 

特定看護師が特定の医療行為を提供することで、患者の症状が迅速に改善され、苦痛が軽減されるメリットがあります。患者は医師の指示を待つことなく、適切な医療を受けることができるため、回復のスピードが速まり、症状の不快感が軽減されるといえます。

 

医師のメリット

 

医師の働き方改革が重要視される中、医師の業務負担を軽減することが必要です。医師は多忙であり、即座に現場に赴くことが制限されています。特定看護師へ明確な指示を与え、彼らを信頼することで、医師の業務負担を軽減し、治療の遅れを最小限に抑えるメリットが得られます。

 

<看護師・ナースのリアルな声>特定行為看護師がいて良かったと感じたことを教えてください

 

特定行為看護師になるためには

 

無料写真 市内のミディアムショットスマイリー女性

 

最後に、特定行為看護師になるための方法について解説していきます。特定行為看護師を目指すには条件もありますので、その点だけ注意しましょう。

 

学習内容

 

特定行為看護師になるためには、特定行為研修を受講する必要があります。この研修は、共通科目と区分別科目に分かれています。共通科目は、全特定行為区分に共通する基本的な知識や技術を学ぶもので、合計時間数は250時間です。臨床病態生理学、フィジカルアセスメント、臨床薬理学などが含まれます。

 

一方、区分別科目は、特定行為区分ごとに必要な知識や技術を学ぶもので、時間数は区分ごとに異なります。例えば、呼吸器や創傷管理に関連する科目があります。

 

特定行為研修は厚生労働省が指定した学校や病院で受講し、筆記試験に合格することで特定行為看護師になることができます。なお、2020年の法改正により、一部の特定行為はパッケージ化され、研修が免除されることもあります。

 

詳しくは厚生労働省が発表している以下の内容をご覧ください。

 

参考元:厚生労働省「【特定行為に係る看護師の研修制度】指定研修機関について

 

特定行為研修を受講することで、特定行為看護師として必要な知識や技術を習得し、専門性を高めることができます。共通科目と区分別科目を学ぶことで、幅広い領域での専門的な看護実践が可能となります。

 

受験資格

 

特定行為研修の受講資格は、特定行為研修を実施する指定研修機関によって異なります。基本的な受験資格として、看護師免許を有することが求められます。ただし、それ以外にも受講資格に関する要件が設けられる場合があります。

 

例えば、「3~5年以上の看護実務経験」や「上司や施設長の推薦書の提出」が求められることもあります。受講を希望する指定研修機関の受講要項を確認し、必要な受験資格を満たしているか確認した上で、申し込みを行いましょう。

 

受講場所

 

特定行為研修は、厚生労働大臣が指定した特定研修機関で実施されます。2021年2月現在、全国に272機関が指定されています。これらの研修機関は、地域や施設の種類によって分布が異なります。

 

都道府県別に見ると、特に東京や神奈川などの都心部に多くの指定機関があります。また、施設の種類別にみると、病院(診療所を含む)が全体の約60%を占めるなど、多岐にわたる種類の施設で受講が可能です。

 

特定行為研修を受ける際には、自身の居住地や希望する施設の種類を考慮しつつ、適した研修機関を選択することが大切です。看護師の特定行為研修 ポータルサイトを利用することで、特定行為区分や希望する都道府県を指定して、研修機関を効果的に探すことができますので、ぜひ活用してみてください。

 

参考元:厚生労働省「特定行為研修を行う指定研修機関等の状況

 

受講にかかる費用

 

受講にかかる費用は、選択する特定研修機関や研修区分によって異なります。例えば、日本看護協会主催の特定行為研修では、受講料が452,000円~1,032,000円程度になります。この他、研修を受ける医療機関によっては、資格手当の補助なども用意されていることがあります。

 

特定行為研修は、厚生労働省の助成制度の対象となっており、具体的には以下の2つの制度が利用可能です。

 

1.教育訓練給付制度(一般教育訓練)

 

2.人材開発支援助成金

 

受講料に不安がある場合は、これらの助成制度を活用することで受講費用の一部をカバーできる可能性があります。また、支援制度や助成金については、各指定研修機関の募集要項を確認することで詳細を把握できます。受講を検討する際には、受講料だけでなく支援制度の活用も含め、総合的な経済的視点から検討することが重要です。

 

詳しくは以下のサイトから確認してください。

 

参考元:厚生労働省「これからの医療を支える看護師の特定行為研修

 

<看護師・ナースのリアルな声>特定行為看護師を目指すうえで大変だったことは?

 

<看護師・ナースのリアルな声>特定行為看護師を目指している人にエールをお願いします

 

まとめ

 

この記事では、今注目されている特定行為看護師について詳しく解説してきました。

 

看護師の特定行為研修制度は、看護師が高度な医療行為を患者に提供するため、2015年に導入され、厚生労働省は2025年までに10万人以上の特定看護師を養成する目標を掲げています。

 

しかしながら、2021年3月時点での修了者数は目標の4%にとどまる4,393名です。特定行為は看護師国家試験でも出題され、看護師の基本的なスキルとなっており、今後の需要は高まると考えられますが、現場での認識がまだまだ不十分な可能性もあります。

 

特定行為研修は、看護師としてのスキルアップだけでなく、キャリアアップや転職にも有利な資格とされています。研修には時間と費用がかかるため、将来を見据えて計画的に受講することを検討することが重要です。

 

今後確実に需要が高まる資格ですので、興味がある方はぜひ目指してみてはいかがでしょうか。

コメントを残す

*