
救急看護は、患者の生命を守るために迅速な判断と的確な対応が求められる、看護師にとって最も重要なスキルの一つです。
本記事では、救急の現場で必要となる初期評価からトリアージ、緊急処置、重症管理、そして家族対応まで、実践的なテクニックを網羅的に解説します。2025年の最新ガイドラインに基づき、ベテラン救急看護師の経験とノウハウを凝縮。
特に新人看護師や、救急外来配属を控えた方、スキルアップを目指す方に向けて、すぐに実践で活用できる具体的な手順とポイントをお伝えします。救急看護認定看護師を目指す方にとっても、実践的な学習の指針となる内容を提供します。
現場での判断に迷った時、すぐに参照できる実用的なガイドとしてご活用ください。
この記事で分かること
- 救急看護における初期評価からトリアージまでの具体的手順と実践テクニック
- 重症度判断に必要な観察項目と評価基準のポイント
- 緊急処置の症状別対応と準備すべき物品リスト
- 家族への説明と心理的サポートの実践的アプローチ
この記事を読んでほしい人
- 救急外来や救命救急センターに配属された看護師
- 一般病棟で急変対応のスキルアップを目指す看護師
- 救急看護認定看護師の資格取得を検討している方
- 現場での実践力を高めたい若手・中堅看護師
救急看護の基本原則

救急看護では、患者の生命を守るため迅速かつ的確な判断と行動が求められます。
本章では、救急看護の実践に不可欠な基本原則と評価手順について解説します。
初期評価の実践
初期評価は救急看護の要となる重要なステップです。適切な初期評価により、その後の治療方針が大きく変わる可能性があります。
意識レベルの評価
意識レベルはJCSとGCSの両方を用いて評価します。特にGCSでは、開眼・言語・運動の3項目を細かく観察することで、より正確な意識状態の把握が可能となります。
呼吸状態の確認
呼吸数、呼吸音、SpO2値に加え、呼吸パターンや呼吸補助筋の使用有無も重要な観察項目となります。
情報収集の実践テクニック
救急現場での情報収集は、限られた時間の中で必要な情報を漏れなく集める必要があります。患者の状態を正確に把握し、適切な治療方針を決定するための情報収集手順について解説します。
患者基本情報の収集
来院時の状況や発症時の様子、既往歴、服薬情報など、患者に関する基本的な情報を収集します。特に意識障害がある場合は、付き添いの家族や救急隊からの情報収集が重要となります。
搬送中の状態変化や処置内容についても詳細に確認することで、より適切な継続看護が可能となります。
バイタルサインの測定と記録
体温、脈拍、血圧、呼吸数、SpO2値の測定は、患者の全身状態を把握する上で最も基本的かつ重要な情報となります。測定値の記録と同時に、経時的な変化にも注目することで、状態の悪化を早期に発見することができます。
身体所見の観察
外傷の有無、皮膚の色調、冷感、発汗、浮腫など、視診と触診による身体所見の観察を行います。特に意識障害がある患者では、瞳孔所見や四肢の動きなど、神経学的所見の観察が重要となります。
検査データの確認
血液検査、心電図、画像検査などの結果を速やかに確認し、異常値の有無をチェックします。過去の検査データとの比較も重要で、慢性疾患の管理状況や治療効果の判定に役立ちます。
バイタルサイン評価の実際
バイタルサインは患者の生命徴候を示す重要な指標です。各項目の正しい測定方法と評価のポイントについて解説します。
血圧測定のテクニック
血圧測定では、測定環境や患者の体位、カフの選択など、正確な値を得るための基本的な注意点があります。また、左右差の確認や体位変換時の変動など、状況に応じた測定方法の工夫も必要となります。
トリアージ実践テクニック

救急外来におけるトリアージは、多数の患者の中から緊急度と重症度を適切に判断し、治療の優先順位を決定する重要な過程です。
本章では、効果的なトリアージの実践方法について詳しく解説します。
重症度判定の基準
トリアージでは、JTASに基づく5段階評価を基本としながら、患者の全身状態を迅速かつ正確に評価することが求められます。
第一印象による評価
患者に接した最初の10秒間での第一印象は、トリアージにおいて非常に重要な判断材料となります。
皮膚の色調、呼吸状態、意識レベル、全身状態などを瞬時に観察し、緊急度の判断に活かします。体動の様子や表情からも、重要な情報を得ることができます。
バイタルサインによる評価
意識レベル、呼吸数、血圧、脈拍、体温などのバイタルサインは、客観的な重症度判定の基準となります。年齢や基礎疾患に応じた正常値の範囲を理解し、異常値の程度から緊急度を判断します。
症状に基づく評価
主訴となる症状の性質、持続時間、増悪因子などを確認し、緊急度の判断に反映させます。特に胸痛、呼吸困難、意識障害などの重症症状については、詳細な問診が必要となります。
症状別トリアージフロー
主要な症状ごとに、標準化されたトリアージフローを活用することで、より確実な重症度判定が可能となります。
胸痛のトリアージ
急性冠症候群を疑う症状の有無を中心に評価を進めます。放散痛の有無、随伴症状、危険因子の存在なども考慮に入れ、総合的に判断します。
緊急処置の実践

緊急処置は救急看護の中核となる技術です。
本章では、代表的な症状に対する初期対応と、確実な処置実施のためのポイントについて解説します。
症状別の初期対応手順
緊急度の高い主要症状について、エビデンスに基づいた標準的な対応手順を解説します。
呼吸不全への対応
呼吸不全を認めた場合、まず気道確保と酸素投与を行います。体位調整やモニタリングの開始、必要物品の準備など、迅速な初期対応が求められます。気道確保が困難な場合に備え、気管挿管の準備も並行して進めることが重要です。
循環不全への対応
ショック状態への対応では、末梢静脈路の確保を最優先します。必要に応じて複数の静脈路を確保し、輸液負荷や薬剤投与に備えます。心電図モニタリングと血圧測定を継続的に行い、循環動態の変化を注意深く観察します。
意識障害への対応
意識障害では、まずABCの評価と維持を行います。神経学的所見の詳細な観察と記録、頭部CTなどの画像検査の準備、必要に応じた気道確保など、状態に応じた対応を実施します。
処置時の必要物品準備
緊急処置を円滑に実施するため、状況に応じた必要物品の準備と確認が重要です。
救急カートの確認
定期的な救急カートの点検と補充を行い、緊急時に必要な物品がすぐに使用できる状態を維持します。特に薬剤の使用期限や保管状態には注意が必要です。
重症管理の実際
重症患者の管理には、継続的な観察と適切な判断に基づく迅速な対応が求められます。
本章では、効果的な重症管理の具体的な方法について解説します。
モニタリングの実践
生体情報モニターを用いた観察と記録は、重症管理の基本となります。
心電図モニタリング
不整脈や虚血性変化の早期発見のため、心電図波形の継続的な監視を行います。異常波形の特徴と緊急度の判断、記録方法について理解を深めることが重要です。アーチファクトと実際の異常波形の見分け方についても、実践的な知識が必要となります。
血行動態モニタリング
血圧、心拍数、心拍出量などの血行動態指標を総合的に評価します。特に侵襲的動脈圧モニタリングを実施している場合は、波形の特徴や測定値の信頼性についても注意深く確認します。
合併症予防の実践
重症患者では様々な合併症のリスクが高まるため、予防的なケアが重要となります。
褥瘡予防ケア
体位変換やスキンケア、栄養管理など、多角的なアプローチによる褥瘡予防を実施します。特に循環動態が不安定な患者では、体位変換時の血圧変動にも注意が必要です。
家族対応の実践
救急現場での家族対応は、患者ケアと同様に重要な看護実践の一つです。
本章では、効果的な家族対応の方法と、危機的状況における心理的サポートについて解説します。
家族への説明手順
家族への説明は、状況に応じた適切な情報提供と心理的配慮が必要です。
初期対応時の説明
来院直後の混乱した状況でも、簡潔かつ正確な情報提供を心がけます。現在の状態と実施中の処置について、専門用語を避けながら分かりやすく説明することが重要です。
経過説明のタイミング
検査結果や治療経過について、適切なタイミングでの説明を行います。特に状態の変化があった場合は、速やかに情報を共有し、家族の不安軽減に努めます。
心理的サポートの実際
危機的状況にある家族への心理的支援は、救急看護の重要な役割です。
初期の精神的ケア
突然の出来事に直面した家族の心理状態を理解し、適切な距離感を保ちながら支援を行います。必要に応じて、待機場所の確保や飲み物の提供なども考慮します。
継続的な支援体制
長期化が予想される場合は、医療社会福祉士との連携や、地域の支援システムの活用も検討します。家族の疲労度や心理状態を継続的に観察し、必要なサポートを提供します。
ケーススタディ

実際の救急現場で経験した事例を基に、アセスメントから介入、評価までの過程を詳しく解説します。各事例から学べるポイントと改善点について考察します。
事例1:急性心筋梗塞への対応
症例概要
60歳男性、職場で突然の胸痛を自覚し救急搬送されました。来院時の胸痛はNRSで8/10、冷汗を伴う状態でした。既往歴に高血圧があり、内服加療中です。
初期対応の実際
来院直後のバイタルサインは、血圧180/100mmHg、脈拍110/分、SpO2 95%(室内気)でした。12誘導心電図でII、III、aVFの誘導でST上昇を認め、下壁梗塞と診断されました。
経過と治療
即座に心臓カテーテル検査の準備を開始し、右冠動脈の完全閉塞に対して経皮的冠動脈形成術を実施しました。処置後、症状は改善し、合併症なく経過しました。
事例2:重症喘息発作の症例
おしえてカンゴさん!Q&A
救急看護の現場で頻繁に寄せられる質問について、実践的な回答を提供します。経験豊富な救急看護認定看護師が、具体的なアドバイスとともに解説します。
Q1:トリアージの判断に自信が持てません
トリアージの判断には経験の積み重ねが重要です。JTASの基準を十分に理解し、バイタルサインや症状から総合的に判断することが基本となります。
判断に迷う場合は、必ず上級看護師に相談し、事後に判断の妥当性について振り返りを行うことで、スキルアップにつながります。
Q2:家族への説明で気をつけることは
まず、家族の心理状態を適切に把握することが重要です。専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明を行います。特に重症患者の場合、医師からの説明後のフォローも重要な役割となります。
家族の理解度を確認しながら、必要に応じて補足説明を行うことで、より効果的なコミュニケーションが可能となります。
Q3:急変時の記録について
急変時は、時系列での正確な記録が非常に重要です。
バイタルサイン、実施した処置、使用した薬剤、医師の指示内容などを、できるだけリアルタイムに記録します。タイムキーパーを決めて時間を確認しながら、簡潔かつ正確な記録を心がけます。
まとめ
本章では、これまでに解説した救急看護の実践ポイントを総括し、さらなる学習のための参考資料を紹介します。
救急看護実践のポイント総括
救急看護の実践では、正確なアセスメントと迅速な対応が求められます。初期評価からトリアージ、緊急処置、重症管理、家族対応まで、それぞれの場面で必要とされる知識と技術について理解を深めることが重要です。
今後の課題と展望
救急医療を取り巻く環境は日々変化しており、最新の知識とスキルの習得が欠かせません。特に高齢化社会における救急対応や、感染症対策を考慮した救急看護の実践など、新たな課題への対応が求められています。
最後に
救急看護には、迅速な判断力と正確な技術が求められます。本記事で解説した初期評価、トリアージ、緊急処置、重症管理、家族対応の各技術を確実に習得し、実践に活かすことで、より質の高い救急看護を提供することができます。
日々の経験を重ねながら、さらなるスキルアップを目指しましょう。
さらに詳しく学びたい方へ
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