
転職を考える助産師さんにとって、どの施設を選ぶべきか、年収はどうなのか、働き方はどう変わるのかなど、気になることがたくさんあります。
この記事では、助産師転職市場の最新動向から、施設別の特徴、年収比較、そして転職を成功させるためのポイントまで徹底解説します。
実際の成功事例をもとに、あなたのキャリアアップを強力にサポートする情報をお届けします。
この記事を読んでほしい人
- 現在の職場環境や待遇に不満を感じている助産師
- 出産・育児後の復職を考えている助産師
- より専門性を高めたいと考えているキャリア志向の助産師
- ワークライフバランスの改善を目指している助産師
- 転職による年収アップを検討している方
- 助産院や産科クリニックへの転職を考えている方
この記事で分かること
- 助産師の転職市場における最新動向と求人傾向
- 病院・クリニック・助産院など施設別の特徴と働き方
- 施設タイプ別の平均年収と待遇の比較データ
- 転職活動を成功させるための具体的な準備ポイント
- 面接でよく聞かれる質問と効果的な回答例
- 実際の転職成功事例と年収アップ実績
- 転職のタイミングと適切な経験年数の目安
助産師の転職市場の最新動向

助産師の仕事は、出産前後のケアから新生児のサポート、そして女性の健康管理まで幅広い専門性が求められる重要な職業です。
2025年現在、出生率の低下にもかかわらず、助産師の需要は依然として高く、特に専門性の高い助産師への需要は増加傾向にあります。
2025年の助産師求人市場の特徴
昨今の医療現場では、助産師の役割が従来の分娩介助だけでなく、女性のライフステージ全般にわたる健康支援へと拡大しています。
そのため、助産師に求められるスキルや知識も多様化しており、特に以下の分野でのスペシャリストが求められています。
不妊治療や妊活支援、産後ケア、女性特有の健康問題へのカウンセリングなど、専門性を持った助産師への需要が増加しています。また、地方では助産師不足が深刻化しており、地方病院や診療所からの求人も増えています。
求人数と雇用形態の傾向
現在の助産師求人市場では、大都市圏を中心に常勤職の募集が多く見られます。一方で、ワークライフバランスを重視した非常勤やパートタイム、夜勤専従などの多様な雇用形態も増えてきています。
特に、出産や育児を経験した助産師の復職支援として、柔軟な勤務体制を提供する施設が増加しているのが特徴です。
助産師に求められる新たな役割
近年は医療の高度化に伴い、助産師にも専門的な知識やスキルが求められるようになっています。具体的には、ハイリスク妊婦のケア、超音波検査技術、新生児蘇生法、母乳育児支援などの専門性が重視されています。
また、チーム医療の推進により、医師や看護師、その他の医療スタッフとの連携能力も重要視されています。
新型コロナウイルス後の変化
パンデミック後の医療現場では、感染対策の強化や、オンライン健康相談など新たな医療提供方法が普及しました。助産師の働き方も変化し、一部の施設ではリモートでの保健指導や相談業務を取り入れるなど、働き方の多様化が進んでいます。
施設別の特徴比較

助産師の転職先として考えられる主な施設には、総合病院、産科専門クリニック、助産院などがあります。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
総合病院での助産師の働き方
総合病院では、ハイリスク妊娠や合併症のある妊婦のケアなど、高度な医療が必要なケースを多く扱います。
そのため、幅広い知識と経験を積むことができる環境です。24時間体制での勤務が基本となり、シフト制で働くことが一般的です。
総合病院のメリット
総合病院で働くメリットは、様々な症例を経験できることです。特に大学病院などの高次医療機関では、珍しい症例や緊急性の高いケースも多く、専門的なスキルを身につけることができます。
また、チーム医療の一員として、多職種との連携を学ぶ機会も豊富です。
キャリアアップの機会も充実しており、認定助産師や専門助産師などの資格取得をサポートする制度を設けている病院も多いです。また、研修制度が充実していることも特徴で、継続的な学習が可能です。
総合病院のデメリット
一方で、総合病院では業務量が多く、時間外勤務が発生することもあります。
また、産科だけでなく婦人科の業務も担当することが多いため、業務範囲が広くなることもあります。
大規模な組織であるため、個人の裁量で業務を進めることが難しい場合もあります。
産科クリニックでの助産師の働き方
産科クリニックは、主に正常分娩を扱う施設で、妊婦健診から分娩、産後ケアまでを一貫して行います。
比較的小規模な組織であることが多く、アットホームな雰囲気の中で働くことができます。
産科クリニックのメリット
産科クリニックでは、妊娠から出産、産後までの一連のプロセスを継続的に関わることができ、妊婦さんとの信頼関係を築きやすい環境です。
また、正常分娩を中心に扱うため、自然分娩のサポートや母乳育児支援など、助産師本来の専門性を発揮できる機会が多いです。
規模が小さいため、意思決定のスピードが速く、新しい取り組みを導入しやすいという特徴もあります。また、院長との距離が近いため、自分のアイデアを提案しやすい環境でもあります。
産科クリニックのデメリット
一方で、小規模な組織であるため、人員が限られており、一人当たりの業務量が多くなることがあります。
また、緊急時の対応体制が総合病院に比べて限定的であることも考慮する必要があります。
研修制度が充実していない場合もあり、自己研鑽の機会を自ら作る必要があることもデメリットとして挙げられます。
助産院での助産師の働き方
助産院は、助産師が主体となって運営する出産施設です。自然分娩を基本理念とし、妊婦さんの意思を尊重した出産をサポートします。
医療介入を最小限に抑えた出産環境を提供することが特徴です。
助産院のメリット
助産院で働く最大のメリットは、助産師としての専門性を最大限に発揮できることです。妊婦さんとの関係性も深く、一人ひとりに寄り添ったケアを提供することができます。
また、自分の理念に基づいた助産ケアを実践できる自由度の高さも魅力です。
柔軟な働き方が可能な場合も多く、家庭との両立を図りやすい環境であることも特徴です。特に自営の助産院では、自分のペースで仕事を進めることができます。
助産院のデメリット
助産院のデメリットとしては、収入の不安定さが挙げられます。特に開業助産院の場合、分娩件数によって収入が左右されるため、経営的な視点も必要になります。
また、24時間体制でのオンコール対応が必要になることもあり、プライベートの時間が確保しにくいこともあります。
医療機関との連携が必要な場合もあり、緊急時の対応や連携体制の構築が課題となることもあります。
行政機関での助産師の働き方
近年、保健所や市町村の母子保健部門でも助産師の採用が増えています。
地域の母子保健活動や子育て支援事業などを担当し、予防的な健康支援に関わる仕事です。
行政機関のメリット
行政機関で働くメリットは、規則的な勤務時間であることが多く、ワークライフバランスを保ちやすい点です。
また、地域全体の母子保健の向上に貢献できるというやりがいもあります。長期的な視点での支援活動ができ、政策立案にも関わることができる場合もあります。
行政機関のデメリット
一方で、直接的な分娩介助の機会がないため、助産技術の維持が難しいという側面もあります。また、行政特有の制約や手続きがあり、柔軟な対応が難しいケースもあります。
年収と待遇の実態

助産師の年収や待遇は、勤務先の種類や地域、経験年数などによって大きく異なります。
ここでは、施設別の平均年収や待遇について詳しく解説します。
施設別の平均年収比較
2025年現在の助産師の平均年収は、施設によって以下のような違いがあります。
総合病院
新卒で年収400万円前後、経験5年以上で500〜550万円、10年以上のベテランになると600万円以上になることも珍しくありません。
特に大学病院や高度医療機関では、資格手当や専門性に応じた手当が充実しており、年収アップが期待できます。
産科クリニック
新卒で年収380万円前後、経験者で450〜500万円程度が一般的です。
クリニックの規模や地域によって差がありますが、夜勤手当や分娩手当が手厚い施設もあります。
助産院
雇用形態によって大きく異なり、常勤の場合は年収350〜450万円程度が多いようです。
開業助産師の場合は分娩件数によって収入が変動するため、年収300〜600万円と幅があります。
行政機関
地方公務員として働く場合が多く、新卒で年収380万円前後、経験を積むと450〜550万円程度です。
安定した収入が得られる反面、昇給幅は民間に比べて小さい傾向があります。
手当や福利厚生の違い
年収だけでなく、各種手当や福利厚生も勤務先選びの重要なポイントです。
総合病院
夜勤手当、住宅手当、家族手当などの基本的な手当に加え、認定資格手当や特殊業務手当などが充実していることが多いです。
また、大規模病院では退職金制度や福利厚生施設の利用など、充実した福利厚生が整っています。
産科クリニック
分娩手当が手厚く設定されていることが多く、分娩件数が多い施設では収入アップにつながります。
一方で、福利厚生は病院に比べるとやや簡素化されている傾向があります。
助産院
福利厚生が限定的な場合が多いですが、勤務時間の融通が利きやすいなど、働き方の自由度が高いことがメリットです。
行政機関
福利厚生が充実しており、安定した勤務環境が魅力です。また、育児休暇や介護休暇などの取得もしやすい傾向があります。
地域による年収格差
助産師の年収は地域によっても差があります。一般的に都市部の方が地方よりも高い傾向がありますが、地方では人材不足を背景に好条件の求人も増えています。
東京や大阪などの大都市圏では平均年収が高く、経験者であれば年収550万円以上のケースも少なくありません。一方、地方都市では平均年収が400〜480万円程度と若干低めですが、生活コストを考慮すると実質的な手取り額は都市部とそれほど変わらないこともあります。
また、助産師不足が深刻な地域では、高額の就職祝い金や住宅補助などの特典を提供する施設も増えています。
キャリアステージ別の収入目安
助産師のキャリアステージによる収入の変化について見ていきましょう。
新卒から3年未満の新人期
基本給が中心となり、年収は380〜450万円程度が一般的です。
この時期は基礎的なスキルを身につける段階で、収入よりもキャリア形成を重視することが大切です。
経験3〜7年の中堅期
年収450〜550万円程度となり、専門性を高めることで収入アップが期待できます。
認定助産師や専門助産師などの資格取得も視野に入れると良いでしょう。
経験8年以上のベテラン期
年収550〜650万円以上になることもあり、管理職や専門職としてのキャリアパスが広がります。
特に管理職になると年収700万円を超えるケースもあります。
昇給の仕組みと年収アップのポイント
認定助産師や専門助産師などの専門資格を取得することで、資格手当が付く施設が多いです。特に母乳育児支援や新生児蘇生法などの専門分野のスキルは評価されやすいです。
また、管理職を目指すことも年収アップの道です。主任や師長などの役職に就くと役職手当が付き、基本給も上がる傾向があります。
さらに、転職のタイミングも重要です。一般的に3〜5年の経験を積んだ時点で転職すると、前職よりも好条件で採用されることが多いようです。特に専門性の高いスキルを持っている場合は、転職市場での評価も高くなります。
転職準備のポイント

助産師として転職を成功させるためには、計画的な準備が欠かせません。
ここでは、転職活動を始める前に準備しておくべきポイントを解説します。
転職に最適なタイミング
経験年数としては3〜5年程度の実務経験を積んだ時期が、転職市場での評価が高まるタイミングです。この時期になると基本的なスキルが身についており、なおかつ新しい環境に適応する柔軟性も持ち合わせていると評価されます。
また、年度の変わり目である1〜3月頃は求人が増える傾向があり、転職活動に適した時期と言えます。特に4月入職を前提とした求人が多く出るのは前年の12月から1月にかけてです。
さらに、認定資格や専門資格を取得した直後も、市場価値が高まるタイミングです。資格を生かせる職場への転職を検討するのに適しています。
履歴書・職務経歴書の書き方
履歴書では基本情報に加え、取得資格や専門研修の受講歴を詳しく記載することが重要です。特に助産師としての専門性を示す資格や研修は、採用担当者の目に留まりやすいです。
職務経歴書では、これまでの経験を具体的に記載します。特に分娩介助の件数や特殊な症例の経験、母親学級などの保健指導の実績など、数字を用いて具体的に示すことがポイントです。
また、チーム医療への貢献や問題解決の実績なども積極的にアピールすると良いでしょう。例えば、「分娩時の異常を早期に発見し、医師との連携によって母子ともに安全な出産に導いた経験が複数ある」といった具体例が効果的です。
応募先の選び方と情報収集
転職サイトやハローワークなどの求人情報だけでなく、先輩助産師や知人からの口コミ情報も重要です。特に内部の雰囲気や実際の働き方については、現場で働く人からの情報が貴重です。
また、施設のホームページや見学会、説明会などにも積極的に参加して、施設の方針や雰囲気を直接確認することをおすすめします。特に分娩件数や帝王切開率、母乳育児率など、施設の特徴を示す指標をチェックすると良いでしょう。
さらに、転職エージェントを活用することも効果的です。助産師専門のエージェントであれば、非公開求人の紹介や条件交渉のサポートなど、きめ細かいサービスを受けることができます。
スキルアップと資格取得のポイント
認定助産師や専門助産師などの資格取得は、専門性のアピールになると同時に、年収アップにもつながります。特に母乳育児支援や周産期医療、新生児ケアなどの専門分野の資格は評価が高いです。
また、超音波検査の技術や新生児蘇生法などの実践的なスキルも、転職市場での評価が高まるポイントです。これらのスキルは研修や講習会で学ぶことができます。
さらに、英語力やIT技術など、医療現場で活用できる付加価値のある能力も、差別化のポイントになります。特に海外の文献を読む能力や、医療情報システムを扱うスキルは、高度な医療機関での評価につながります。
転職活動のスケジュール管理
転職活動を成功させるためには、計画的なスケジュール管理が重要です。一般的な転職活動のスケジュールは以下の通りです。
転職準備期間(3〜6ヶ月前)
情報収集、スキルアップ、資格取得などを行い、履歴書・職務経歴書の準備を始めます。
転職活動開始(2〜3ヶ月前)
求人検索を始め、応募書類を提出します。同時に複数の施設に応募することで、選択肢を広げることができます。
面接・条件交渉(1〜2ヶ月前)
面接対策を行い、条件交渉に臨みます。この時期は現職との両立が難しくなるため、有給休暇を活用するなどの工夫が必要です。
退職手続き(1ヶ月前)
内定が決まったら、現職への退職届の提出を行います。引継ぎも計画的に進めましょう。
このスケジュールはあくまで目安であり、個人の状況や求人状況によって調整が必要です。特に人手不足の施設では、短期間での採用決定もあり得ます。
面接対策

助産師の転職面接では、専門性や人間性、コミュニケーション能力などが重視されます。
ここでは、面接で成功するためのポイントを解説します。
よく聞かれる質問と効果的な回答例
助産師の面接でよく聞かれる質問と、その効果的な回答例を紹介します。
「なぜ当院を志望されたのですか?」
回答例:「貴院の自然分娩を尊重する方針に共感し、助産師としての専門性を発揮できる環境だと感じたためです。また、妊婦さんに寄り添ったケアを大切にされている点も、私の助産観と合致しています。」
「これまでの経験で最も印象に残っているケースを教えてください。」
回答例:「初産婦さんで陣痛が長引いていたケースで、適切なポジショニングと精神的サポートにより自然分娩に導くことができました。この経験から、助産師としての判断力と心理的サポートの重要性を実感しています。」
「あなたの強みは何ですか?」
回答例:「私の強みは母乳育児支援のスキルです。前職では母乳外来を担当し、多くの母親の授乳トラブルを解決してきました。また、新生児の観察力にも自信があり、異常の早期発見に貢献できると考えています。」
「チーム医療についてどのように考えていますか?」
回答例:「チーム医療は互いの専門性を尊重し、情報共有を密に行うことが重要だと考えています。前職では、定期的なカンファレンスを通じて医師や看護師と連携し、妊婦さんにとって最適なケアを提供できるよう心がけていました。」
「今後のキャリアプランを教えてください。」
回答例:「短期的には母乳育児支援の認定資格取得を目指し、専門性を高めたいと考えています。長期的には、若手助産師の育成にも関わり、チーム全体のスキルアップに貢献したいと思っています。」
面接での印象アップのコツ
身だしなみは清潔感を重視し、過度な装飾は避けましょう。医療職としての信頼感を与える服装が適切です。
また、コミュニケーション能力をアピールするために、質問に対して具体例を交えながら分かりやすく回答することが重要です。特に患者さんとのコミュニケーション事例などを交えると効果的です。
さらに、施設の理念や方針について事前に調査し、自分の助産観と重ね合わせて志望動機を説明できると好印象を与えます。「貴院の自然分娩を大切にする方針に共感しています」など、具体的な言及が効果的です。
面接での注意点とNG回答
前職の悪口や不満を口にするのは避けましょう。「前の職場は人間関係が悪かった」などの否定的な発言は、コミュニケーション能力に問題があると判断される可能性があります。
また、給与や休日などの待遇面ばかりを質問するのも避けた方が良いでしょう。もちろん重要な情報ですが、最初の面接では仕事内容や職場環境についての質問を中心にすると良いです。
さらに、専門的な質問に対して曖昧な回答をするのもNGです。「分からない」と正直に答えた上で、「ぜひ学びたい」という姿勢を示すことが重要です。過度な自己アピールも避けましょう。「私は完璧な助産師です」など、謙虚さに欠ける発言は印象を悪くする可能性があります。
好印象を与える自己PR
自分の強みや専門性を簡潔に伝えることが重要です。例えば「私は5年間の総合病院での経験を通じて、ハイリスク妊婦のケアに強みがあります」など、具体的な経験に基づいた自己PRが効果的です。
また、数字を用いて実績を示すと説得力が増します。「前職では年間約100件の分娩介助を担当し、その中で自然分娩率95%を達成しました」など、具体的な数字で表現すると良いでしょう。
さらに、自己PRと志望動機をつなげることで一貫性のあるアピールになります。「私のハイリスク妊婦へのケア経験を、貴院の周産期医療の充実に活かしたいと考えています」など、施設にとってのメリットを示すと良いでしょう。
給与交渉のコツ
給与交渉は内定が出た後、または最終面接の段階で行うのが適切です。最初の面接で給与の話を持ち出すのは避けましょう。
また、交渉の際は現在の年収や希望条件を明確に伝えることが重要です。「現在の年収は○○万円で、転職に際しては○○万円程度を希望しています」と具体的な数字を示すと交渉がスムーズに進みます。
交渉の際は柔軟性も大切です。基本給だけでなく、住宅手当や資格手当、夜勤手当などの諸手当も含めた総合的な待遇で判断することも検討しましょう。また、研修制度や休暇制度など、金銭以外の待遇面も重要な判断材料になります。
転職成功事例の紹介

実際の転職成功事例を紹介することで、具体的なイメージを持っていただけるでしょう。
ここでは、様々な背景を持つ助産師の転職事例を紹介します。
総合病院から産科クリニックへの転職事例
Aさん(30歳、助産師経験7年)の事例
Aさんは大学病院で7年間勤務した後、地域の産科クリニックへ転職しました。
大学病院ではハイリスク妊婦のケアを中心に経験を積み、NCPRやBLSなどの資格も取得していました。
転職の動機
より妊婦さんと深く関わりたいという思いと、夜勤負担の軽減でした。大学病院では3交代制の勤務で月8回程度の夜勤があり、体力的な負担を感じていました。
転職先のクリニックでは
妊婦健診から分娩、産後ケアまで一貫して担当することができ、妊婦さんとの関係性も深まりました。夜勤は月4回程度に減り、オンコール体制も導入されているため、体力的な負担も軽減されました。
年収は大学病院時代の580万円から550万円とやや減少しましたが、夜勤負担の軽減とワークライフバランスの改善を考えると、満足度は高いとのことです。
クリニックから助産院への転職事例
Bさん(35歳、助産師経験10年)の事例
Bさんは産科クリニックで8年勤務した後、地域の助産院へ転職しました。
クリニックでは正常分娩を中心に年間100件以上の分娩介助を担当し、豊富な経験を積んでいました。
転職の動機
医療介入を最小限に抑えた自然分娩をサポートしたいという思いでした。クリニックでは方針として計画無痛分娩が多く、自分の助産観との間にギャップを感じていました。
転職先の助産院では
妊婦さんの意思を尊重した自然分娩をサポートする環境があり、自分の理念に沿った助産ケアを実践できるようになりました。
また、院長の助産師から伝統的な助産技術も学び、専門性を更に高めることができました。
年収はクリニック時代の500万円から420万円に減少しましたが、やりがいと満足度は格段に上がりました。将来的には独立開業も視野に入れているとのことです。
産休・育休後の職場復帰と転職事例
Cさん(32歳、助産師経験8年)の事例
Cさんは総合病院で6年勤務した後、出産・育児のため1年間の育児休暇を取得しました。
転職の動機
育児休暇後は時短勤務での復帰を希望しましたが、夜勤免除の条件を得ることができず、子育てとの両立に不安を感じていました。
そこで、Cさんは子育て支援が充実している産科クリニックへの転職を決意しました。転職先のクリニックでは、時短勤務や夜勤免除の制度が整っており、子育て中のスタッフも多く理解が得られやすい環境でした。
育児休暇中から始め、複数の施設を見学した上で、自宅から近く、子育て支援制度が充実しているクリニックを選びました。転職エージェントを活用することで、非公開求人も含めて多くの選択肢の中から最適な職場を見つけることができました。
転職先では
年収は総合病院時代の530万円から時短勤務のため420万円に減少しましたが、子どもが小学校に上がるタイミングでフルタイム勤務に戻す計画を立てています。
「子育てと仕事の両立ができる環境を見つけられて本当に良かった」と語っています。
行政機関への転職事例
Dさん(40歳、助産師経験15年)の事例
Dさんは大学病院で10年、産科クリニックで5年勤務した後、地域の保健センターに転職しました。
臨床現場では豊富な経験を積んでいましたが、より予防的な観点から母子保健に関わりたいと考えるようになりました。
転職の動機
地域全体の母子保健の向上に貢献したいという思いと、年齢を重ねるにつれて夜勤や緊急対応の負担を感じるようになったことでした。
転職先の保健センターでは
妊婦健診や乳児健診、母親学級などを担当し、地域の母子の健康支援に関わっています。
臨床経験を活かした保健指導が好評で、「病院では聞けなかった具体的なアドバイスが参考になる」と利用者からの評価も高いです。
年収はクリニック時代の550万円から公務員としての480万円に減少しましたが、規則的な勤務時間と休日の確保、長期的な雇用の安定性にメリットを感じているとのことです。
助産師のキャリアパスと専門性

助産師としてのキャリアを考える上で、様々な選択肢があります。
ここでは、長期的なキャリアパスや専門性を高める方法について解説します。
助産師のキャリアステージ
助産師としてのキャリアは、一般的に以下のようなステージに分けられます。
新人期(1〜3年目)
基本的な助産技術の習得と実践力の向上を目指す時期です。先輩助産師の指導を受けながら、正常分娩の介助や妊婦健診、産後ケアなどの基礎的なスキルを身につけます。
中堅期(4〜7年目)
基礎的なスキルを習得した上で、専門分野を深める時期です。母乳育児支援や新生児ケア、ハイリスク妊婦のケアなど、特定の分野での専門性を高めることが重要です。
また、後輩の指導役も担うようになります。
ベテラン期(8年目以降)
豊富な経験を基に、チームのリーダーとしての役割を担う時期です。
管理職への道を選ぶか、専門職としてのキャリアを深めるか、または教育者としての道を選ぶかなど、多様なキャリアパスが考えられます。
それぞれの時期に応じて、目標設定とスキルアップの方向性を定めることが重要です。
専門性を高めるための資格と研修
助産師としての専門性を高めるために取得できる資格や研修について紹介します。
認定助産師
日本助産評価機構が認定する資格で、アドバンス助産師とも呼ばれます。
専門性の高い助産ケアを提供できる助産師として認められるもので、5年ごとの更新が必要です。
専門助産師
特定の分野で高度な知識と技術を持つ助産師として認定される資格です。不妊症看護、遺伝看護、新生児集中ケアなどの分野があります。
その他の関連資格
母乳育児支援のためのIBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)、新生児蘇生法のためのNCPR(新生児蘇生法)資格、BLS(一次救命処置)資格などがあります。
また、大学院への進学も専門性を高める一つの方法です。修士課程や博士課程で研究を行うことで、エビデンスに基づいた実践力を高めることができます。
管理職を目指すキャリアパス
主任助産師になるためには、一般的に8年以上の臨床経験が必要です。主任としてチームをまとめる力やリーダーシップ、コミュニケーション能力が求められます。主任になると、基本給の上昇に加えて役職手当が付くことが多いです。
次に、副師長や師長を目指す場合は、管理者としての研修を受けることも重要です。看護管理や医療安全、医療経済など、幅広い知識が求められます。師長になると年収700万円以上になることも多く、病院の運営方針にも関わる重要な立場です。
管理職を目指す場合は、日々の業務の中でもリーダーシップを発揮する機会を積極的に求め、経験を積むことが重要です。また、院内の委員会活動などにも積極的に参加し、組織運営の経験を積むことも有効です。
教育者・研究者としてのキャリア
助産師学校や看護大学の教員になるためには、一般的に修士以上の学位が必要です。臨床経験に加えて、教育方法や研究方法についての知識も求められます。教員になると、次世代の助産師の育成に関わることができ、社会的な貢献度も高いです。
研究者としてのキャリアを目指す場合は、大学院での研究活動を通じて博士号の取得を目指すことが一般的です。研究テーマとしては、周産期医療の質向上、母乳育児支援の方法論、女性の健康支援など、幅広い分野があります。
また、臨床と教育・研究を両立させるキャリアパスもあります。例えば、病院に所属しながら大学の非常勤講師を務めたり、臨床研究を行ったりすることで、実践と理論の両面から助産学の発展に貢献することができます。
独立開業のためのステップ
開業するためには十分な臨床経験が必要です。一般的には10年以上の経験が望ましいとされています。特に分娩介助の豊富な経験と、異常の早期発見・対応能力が重要です。
また、開業資金の準備も重要です。一般的な助産院の開業には、場所や規模にもよりますが、500万円から2000万円程度の資金が必要とされています。助成金や融資制度を利用する方法もあります。
独立開業は大きなチャレンジですが、自分の理念に基づいた助産ケアを提供できる喜びも大きいです。「少しずつ準備を進めながら、将来の開業に向けて計画を立てている」という助産師も多いです。
施設別の働き方の違いと選び方

助産師の働き方は施設によって大きく異なります。
ここでは、各施設のメリット・デメリットを比較しながら、自分に合った職場の選び方について解説します。
ワークライフバランスを重視する場合
ワークライフバランスを重視する場合、以下のような選択肢があります。
クリニックの日勤常勤
多くの産科クリニックでは、日勤のみの常勤勤務という選択肢があります。夜間は当直制またはオンコール体制となるため、規則正しい生活が送りやすい傾向があります。ただし、分娩が進行している場合は時間外の勤務が発生することもあります。
行政機関
保健所や市町村の母子保健部門での勤務は、平日日勤のみというケースが多く、休日も確保されています。子育て中の助産師にとって働きやすい環境と言えるでしょう。
パートタイムや非常勤
多くの施設でパートタイムや非常勤としての勤務も可能です。特に子育て中や介護中の助産師にとって、時間的制約の中でも専門性を活かせる働き方です。
また、近年は働き方改革の影響で、大規模病院でもワークライフバランスを重視した勤務体制を導入するところが増えています。例えば、夜勤の負担軽減や時短勤務の制度を充実させるなどの取り組みが見られます。
ワークライフバランスを重視する場合は、面接時に勤務体制や残業の状況、育児支援制度などについて具体的に質問することをおすすめします。
キャリアアップを重視する場合
キャリアアップや専門性の向上を重視する場合は、以下のような選択肢が考えられます。
高度周産期医療センター
ハイリスク妊婦や新生児のケアを専門とする施設では、高度な医療技術や知識を習得することができます。NICUやMFICUなど、専門的な部署での経験は、キャリアアップにつながります。
大学病院
研究や教育の機会が多く、最新の医療に触れることができます。また、認定看護師や専門看護師の取得をサポートする制度が充実していることも多いです。
教育機関や研究施設
助産師学校や大学の教員、または研究機関での勤務は、教育者・研究者としてのキャリアを積むことができます。大学院での学位取得と併せて検討すると良いでしょう。
キャリアアップを重視する場合は、研修制度や資格取得支援、学会参加のサポートなどが充実している施設を選ぶと良いでしょう。面接時には、これらの制度について詳しく質問することをおすすめします。
年収を重視する場合
年収を重視する場合は、以下のような選択肢が考えられます。
大規模総合病院の管理職
主任や師長などの管理職は、役職手当が付くため年収が高くなる傾向があります。キャリアの積み重ねが必要ですが、年収700万円以上も可能です。
高度医療機関での専門職
専門性の高い分野で働く場合、資格手当や特殊業務手当などが加算され、年収アップにつながります。認定助産師や専門助産師などの資格を取得するとさらに有利です。
人手不足地域での勤務
地方や過疎地域では、人材確保のために好条件の求人を出していることがあります。住宅手当や特別手当など、基本給以外の待遇が充実していることも多いです。
年収を重視する場合は、基本給だけでなく、各種手当や賞与、退職金制度なども含めた総合的な待遇を確認することが重要です。また、転職時には前職での年収を基準に交渉することも有効です。
専門性を活かせる職場の選び方
自分の強みや専門性を明確にすることが重要です。母乳育児支援に強みがあるなら母乳育児に力を入れている施設、ハイリスク妊婦のケアに興味があるなら高度周産期医療センターなど、マッチングを考えることが大切です。
また、施設の理念や方針と自分の価値観が合致しているかも重要なポイントです。例えば、自然分娩を尊重したいなら、医療介入を最小限に抑える方針の施設を選ぶと良いでしょう。さらに、職場見学や説明会に参加して、実際の雰囲気や働き方を確認することもおすすめします。実際に働いている助産師の様子や、利用者の評判なども参考になります。
専門性を活かせる職場を見つけるためには、複数の施設を比較検討することが重要です。転職エージェントを活用すれば、自分の条件に合った施設を効率よく探すことができます。
おしえてカンゴさん!Q&A

ここでは、助産師の転職に関してよくある質問にお答えします。
実際の悩みや疑問を解決するヒントになれば幸いです。
Q:助産師の転職に最適な経験年数は?
A:一般的には3〜5年程度の経験を積んでからの転職が理想的です。この時期になると基本的な助産技術が身についており、なおかつ新しい環境への適応力も持ち合わせています。
各施設で求められる経験年数は異なりますが、新卒から1〜2年目の段階では基本的なスキルの習得が優先され、転職市場での評価はやや低くなる傾向があります。
ただし、特定の専門分野での経験が豊富であれば、経験年数が少なくても評価されるケースもあります。例えば、NICU経験者やハイリスク妊婦のケア経験者は、経験年数が短くても専門性が評価されることがあります。
Q:助産師の転職先として人気の施設は?
A:2025年現在、助産師の転職先として人気が高いのは、ワークライフバランスの取れた産科クリニックや、助産師外来を積極的に展開している総合病院です。特に、助産師の裁量権が広く、専門性を活かせる環境が整っている施設は人気が高いです。
また、近年は産後ケア施設や子育て支援センターなど、分娩介助以外の場でも助産師の専門性を活かせる職場への転職も増えています。これらの施設は夜勤がないか少ないことも人気の理由です。
一方、地方の中小病院や診療所は人手不足が深刻で、好条件の求人を出していることもあります。勤務地に融通が利く方は、地方での勤務も視野に入れると選択肢が広がります。
Q:転職活動中の面接での服装は?
A:助産師の転職面接では、清潔感のあるビジネスカジュアルまたはスーツが適切です。派手な色や柄は避け、落ち着いた色合いのものを選びましょう。アクセサリーは控えめにし、メイクも自然な印象を心がけることが重要です。
特に医療職は清潔感が重視されるため、髪型や爪の手入れなども含めて、全体的な印象に気を配ることが大切です。面接会場によっては移動時間が長いこともあるため、シワになりにくい素材の服を選ぶのもポイントです。
なお、オンライン面接の場合も同様に、きちんとした服装で臨むことが望ましいです。また、照明や背景にも気を配り、プロフェッショナルな印象を与えるよう心がけましょう。
Q:転職後に後悔しないためのポイントは?
A:転職後に後悔しないためには、事前の情報収集と自己分析が重要です。まず、転職の動機を明確にし、何を優先するか(給与、勤務環境、キャリアアップなど)をしっかりと考えましょう。
また、可能であれば職場見学や説明会に参加し、実際の雰囲気を確認することをおすすめします。現場で働いているスタッフの様子や施設の設備なども、重要な判断材料になります。
さらに、転職前に気になる点(夜勤の頻度、研修制度、育児支援制度など)を具体的に質問しておくことも大切です。曖昧な回答で済ませず、可能な限り具体的な情報を得るようにしましょう。複数の施設を比較検討することも重要です。一つの施設だけでなく、複数の選択肢を持つことで、より自分に合った環境を見つけることができます。
Q:産休・育休後の復帰と転職、どちらが良い?
A:産休・育休後の復帰と転職、どちらが良いかは個人の状況や優先事項によって異なります。まず、現職に復帰するメリットとしては、環境や人間関係が既知であること、キャリアの継続性が保たれることなどが挙げられます。特に育児との両立に理解がある職場であれば、復帰後の適応もスムーズかもしれません。
一方、転職のメリットとしては、育児と両立しやすい勤務条件(時短勤務、夜勤免除など)を新たに交渉できることや、自宅近くの職場を選べることなどがあります。特に現職での両立が難しいと感じる場合は、転職を検討する価値があるでしょう。
決断のポイントとしては、現職での育児支援制度の充実度、時短勤務や夜勤免除の可能性、通勤時間、保育施設の状況などを総合的に考慮することが重要です。また、転職を検討する場合は、育休中から情報収集を始め、復帰前に計画的に準備を進めることをおすすめします。
Q:助産師の転職で失敗しがちなポイントは?
A:給与条件だけで判断してしまうことです。年収が高くても、夜勤頻度や残業が多いと実質的な時給は低くなることもあります。総合的な労働条件を確認することが重要です。施設の理念や方針を確認せずに転職してしまうことも失敗の原因になります。例えば、自然分娩を大切にしたい助産師が、無痛分娩や帝王切開率の高い施設に転職すると、価値観の不一致に悩むことになります。
また、人間関係や職場の雰囲気を軽視することも問題です。技術的な面だけでなく、チームワークや職場の文化も重要な要素です。可能であれば職場見学や先輩助産師との面談の機会を設けることをおすすめします。
さらに、将来のキャリアプランを考慮せずに転職を決めることも注意が必要です。目先の条件だけでなく、長期的なキャリア形成の観点からも転職先を検討することが重要です。
Q:地方から都市部への転職のポイントは?
A:生活コストの違いを考慮することが重要です。都市部は家賃や生活費が高く、同じ年収でも手取りの実質価値は下がることがあります。特に住居費は大きな差があるため、住宅手当の有無も重要なチェックポイントです。
都市部の医療機関は専門性が高く分業化されていることが多いため、地方で幅広く経験していた業務が限定される可能性があります。例えば、総合病院では産科と婦人科が明確に分かれていることが多いです。自分のキャリアプランに合った部署を選ぶことが大切です。
また、都市部の医療機関は競争率が高いため、専門的なスキルや資格があると有利です。転職前に認定資格の取得や専門的な研修を受けておくと、転職活動がスムーズになります。都市部は交通事情が複雑で通勤時間が長くなることも考慮すべきポイントです。職場と住居の位置関係を考えた上で転職先を選ぶことをおすすめします。
まとめ
この記事では、助産師の転職に関する包括的な情報をお届けしました。2025年現在の助産師の転職市場は、出生率の低下にもかかわらず、専門性の高い助産師への需要は依然として高い状況です。特に女性のライフステージ全般にわたる健康支援へと助産師の役割が拡大していることが特徴です。
助産師の転職は、キャリアアップやライフスタイルの変化に合わせた新たなステージへの挑戦です。この記事が、あなたの理想の職場探しの一助となれば幸いです。十分な情報収集と自己分析を行い、自分らしく輝ける職場を見つけてください。
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