
採血は新人看護師にとって最も緊張する医療行為の一つです。確実な技術と適切な患者対応が求められる中、多くの新人看護師が不安を感じているのではないでしょうか。
本記事では、シミュレーション練習から実践テクニック、困難症例への対応まで、採血技術向上のための具体的な方法をご紹介します。ベテラン看護師の経験に基づいた実践的なアドバイスと、最新の医療知識を組み合わせることで、確実な技術の習得をサポートします。
基本手技の確実な習得から、患者さんへの適切な配慮、感染対策まで、採血に必要な知識とスキルを網羅的に解説。新人看護師の皆さんの不安を解消し、自信を持って採血業務に取り組めるよう、段階的な上達法をお伝えします。
この記事を参考に、採血の基本をしっかりと身につけ、実践で活かしていきましょう。
この記事で分かること
- 効率的な採血技術の習得方法とシミュレーション活用術
- 採血の基本手順と実践的なコツ
- 困難事例への対応と失敗を防ぐためのポイント
- 患者さんとの信頼関係を築くコミュニケーション方法
- 最新の感染対策と安全管理の実践方法
この記事を読んでほしい人
- 採血技術の向上を目指す新人看護師
- 採血に不安を感じている看護学生
- 採血の成功率を上げたい経験の浅い看護師
- プリセプターとして新人指導に携わる看護師
採血の基本手順と重要ポイント

採血は患者さんの状態を把握するための重要な検査の一つです。確実な技術と正確な手順の習得は、患者さんの安全と採血の成功率向上に直結します。ここでは採血における基本的な手順と、各段階での重要なポイントについて詳しく解説します。
採血の準備と確認事項
採血を成功させる鍵は、入念な準備と確認にあります。必要な物品の準備から患者さんの状態確認まで、一つ一つの手順を丁寧に行うことが重要です。
患者確認の重要性
患者さんの確認は採血における最も重要な安全確認の一つです。フルネームでの確認、リストバンドの確認、採血オーダーの確認を確実に行います。また問診により、患者さんの採血に関する既往歴や特記事項も必ず確認します。
採血物品の準備
必要な物品をあらかじめトレイに準備することで、採血をスムーズに進めることができます。特に採血管の種類と順序、必要な本数は採血前に十分確認しておく必要があります。
採血手技の基本
採血の成功には正しい手技と適切な血管選択が不可欠です。ここでは実践的な採血手技の基本をお伝えします。
採血部位の選択方法
採血部位の選択は採血の成功を左右する重要な要素です。一般的に橈側皮静脈が第一選択となりますが、血管の走行や太さ、深さを十分に観察し、最適な部位を選択します。また、神経損傷のリスクを考慮し、正中神経の走行に注意を払う必要があります。
駆血帯の使用テクニック
駆血帯は穿刺部位から約10センチメートル上部に装着します。締め付ける強さは、動脈を圧迫しない程度が適切です。患者さんの腕の太さや皮膚の状態に応じて、適切な圧での装着を心がけましょう。長時間の駆血は避け、2分以内での採血完了を目指します。
消毒と穿刺の手順
消毒は穿刺部位を中心に外側に向かって円を描くように行います。アルコール綿で消毒した後は、十分な乾燥時間を確保します。穿刺時は血管に対して15~30度の角度で実施し、血管を固定しながら素早く確実に針を刺入します。
血管確保のテクニック
血管の確保は採血成功の要となります。触診による血管の確認から、適切な固定方法まで、確実な技術が求められます。
血管の触診方法
血管の触診は人差し指で軽く押さえながら行います。血管の走行、弾力、深さを確認し、最適な穿刺位置を決定します。同時に、動脈や神経の走行にも注意を払い、安全な採血部位を選択します。
血管固定の重要性
血管の固定は採血の成功率を大きく左右します。親指で皮膚を軽く引っ張り、血管が動かないよう固定します。この際、強すぎる固定は血管の虚脱を招く可能性があるため、適度な力加減が重要です。
トラブル予防と対応
採血時のトラブルを未然に防ぐためには、適切な予防措置と迅速な対応が重要です。ここでは主なトラブルとその対策について解説します。
神経損傷の予防
神経損傷を予防するためには、解剖学的知識に基づいた採血部位の選択が不可欠です。特に正中神経の走行には十分注意を払い、疑わしい場合は別の部位を選択します。穿刺時に患者さんが電気が走るような痛みを訴えた場合は、直ちに中止します。
血管迷入時の対応
血管迷入時は無理に針を動かさず、一旦抜針して再度穿刺を行います。同じ部位での再穿刺は避け、別の適切な血管を選択します。患者さんへの説明と同意を得ることも重要です。
効果的な練習方法
採血技術の向上には体系的な練習が不可欠です。
シミュレーターを活用した実践的なトレーニングから、先輩看護師の指導のもとで行う実地練習まで、段階的な技術習得の方法をご紹介します。
シミュレーション練習の基本
シミュレーターを使用した練習は、実際の採血に向けた重要な準備段階となります。リスクなく繰り返し練習できる環境で、基本的な技術を確実に身につけることができます。
血管モデルの活用方法
血管モデルを使用する際は、まず血管の触知から始めます。モデルの血管は実際の血管よりもわかりやすく設計されていますが、軽い力で触診することを心がけます。モデルの特性を理解しつつ、実際の血管をイメージしながら練習を進めることが重要です。
穿刺角度の習得
穿刺角度は15~30度を基本とし、血管の深さに応じて調整します。シミュレーターでは様々な深さの血管を用意し、それぞれに適した角度での穿刺を練習します。特に浅い血管と深い血管での角度の違いを実感することが大切です。
段階的な技術向上プログラム
効果的な技術習得には、基本から応用へと段階的に進む体系的なアプローチが重要です。各段階での習熟度を確認しながら、確実に技術を積み上げていきます。
基礎技術の確立
まずは血管の触診と固定から始めます。シミュレーターの前で、正しい姿勢と手の位置を確認し、血管を見つけ、適切に固定する動作を繰り返し練習します。この基本動作の習得なしには、次のステップに進むことはできません。
実践的なシナリオトレーニング
基本技術を習得した後は、様々な状況を想定したシナリオトレーニングに移ります。たとえば、細い血管、深い血管、蛇行した血管など、異なる条件での採血を練習します。また、患者さんの状態変化や不安表出などの場面も想定し、対応を学びます。
練習記録の活用
練習の効果を最大限に高めるためには、適切な記録と振り返りが重要です。成功例と失敗例の両方を詳細に記録し、改善点を明確にしていきます。
練習日誌の書き方
練習日誌には、実施した練習内容、成功率、気づいた点などを具体的に記録します。特に失敗した際の状況と原因の分析、それに基づく改善策の立案を詳しく記載することで、効果的な技術向上につながります。
フィードバックの活用
指導者からのフィードバックは貴重な学習機会です。アドバイスを受けた際は、その内容を詳細に記録し、次回の練習に活かします。また、自己評価と指導者評価の違いにも注目し、客観的な視点を養うことが重要です。
採血技術向上のための実践戦略

採血技術を確実に向上させるためには、体系的な実践戦略が必要です。
ここでは、血管アセスメントの詳細な手順から、困難症例への具体的な対応方法、さらには年齢層別の注意点まで、実践的な戦略をご紹介します。
血管アセスメントの実践
正確な血管アセスメントは、採血成功の鍵となります。視診、触診による総合的な評価を通じて、最適な採血部位を選択します。
視診によるアセスメント
血管の走行を目視で確認する際は、十分な照明のもとで実施します。皮膚の色調、血管の見え方、皮下組織の状態などを総合的に観察します。特に静脈の走行パターンや分岐の位置に注目し、最適な穿刺位置を見極めます。
触診テクニックの向上
触診は人差し指の腹を使用し、血管の弾力性、太さ、深さを丁寧に確認します。血管の走行に沿って指を滑らせながら、蛇行や分岐の状態も把握します。特に血管の深さは穿刺角度の決定に重要な要素となります。
困難症例への対応策
困難症例に遭遇した際の適切な対応は、看護師としての経験値を大きく高めます。ここでは代表的な困難症例とその対応方法について解説します。
細い血管への対応
細い血管に対しては、より細いゲージの採血針を選択します。また、十分な保温により血管を怒張させることで、穿刺を容易にすることができます。穿刺時は特に慎重な血管固定が必要となります。
深部血管へのアプローチ
深部血管への穿刺では、適切な角度の調整が重要です。通常よりも大きな角度(30度程度)で穿刺を行い、血管の深さに応じて角度を調整します。また、強めの駆血により血管を浮き上がらせることも有効です。
年齢層別の注意点
年齢によって血管の状態や採血時の注意点は大きく異なります。それぞれの年齢層に適した対応を理解し、実践することが重要です。
若年層への対応
若年層は 一般的に血管が細く、弾力性が高い特徴があります。血管が動きやすいため、しっかりとした固定が必要です。また、採血への不安が強い場合も多いため、丁寧な説明と精神的なサポートも重要となります。
高齢者への配慮
高齢者の血管は脆弱で、蛇行していることが多いため、特に慎重な対応が必要です。皮膚が薄い場合は内出血のリスクも高くなるため、穿刺後の圧迫は十分な時間をかけて行います。また、認知機能に応じた説明と同意の取得も重要です。
基礎疾患がある場合の対応
糖尿病や透析患者など、基礎疾患がある場合は、それぞれの状態に応じた特別な配慮が必要です。事前の病歴確認と、適切な採血部位の選択が特に重要となります。
患者対応スキル向上ガイド

採血技術の向上において、患者さんとの適切なコミュニケーションは技術的スキルと同様に重要です。
ここでは、患者さんの不安を軽減し、円滑な採血を実現するためのコミュニケーション技術と心理的サポートについて解説します。
心理的サポートの実践
患者さんの心理状態を理解し、適切なサポートを提供することは、採血の成功率向上に直結します。不安や緊張を軽減するための具体的なアプローチを学びましょう。
初回対面時の信頼関係構築
初めて担当する患者さんとの出会いは特に重要です。明るく穏やかな口調で自己紹介を行い、これから実施する採血の手順について分かりやすく説明します。患者さんの様子を観察しながら、不安な表情や緊張が見られる場合は、より丁寧な説明を心がけます。
不安軽減のための声かけ
採血に対する不安を表出された場合は、その気持ちに共感しながら、具体的な対処方法をお伝えします。深呼吸を促したり、リラックスできる話題を提供したりすることで、緊張を和らげることができます。
コミュニケーション戦略
効果的なコミュニケーションは、患者さんの協力を得やすく、採血をスムーズに進めることができます。場面に応じた適切な対応方法を身につけましょう。
説明時の工夫
採血の手順は、専門用語を避けて分かりやすく説明します。必要に応じてジェスチャーを交えたり、イラストを使用したりすることで、より理解を深めることができます。特に高齢の方には、ゆっくりと明確な発音で説明することを心がけます。
年齢に応じたアプローチ
若年層から高齢者まで、年齢に応じたコミュニケーション方法を選択します。若い方には採血経験や不安な点を積極的に聞き出し、高齢の方には聞こえやすい声量と適切な言葉選びを心がけます。
トラブル対応の実際
採血中に発生する様々なトラブルに対して、適切な対応を取ることが必要です。ここでは具体的な場面での対応方法をご紹介します。
採血中の急変時対応
気分不良や血管迷入などのトラブルが発生した場合は、まず落ち着いた態度で状況を説明します。必要に応じて採血を中断し、患者さんの状態観察を優先します。同時に、周囲のスタッフへの応援要請も忘れずに行います。
クレーム対応の基本
採血後に痛みや内出血などの訴えがあった場合は、真摯に耳を傾け、適切な対応を行います。発生した状況を丁寧に説明し、必要な処置や経過観察について明確に伝えることが重要です。
感染管理の実践ガイド
採血における感染管理は、患者さんと医療従事者双方の安全を守る上で最も重要な要素です。最新のガイドラインに基づいた感染対策と、実践的な予防措置について詳しく解説します。
標準予防策の実践
感染対策の基本となる標準予防策について、採血時の具体的な実践方法をご紹介します。すべての血液は感染の可能性があるものとして扱い、適切な予防措置を講じることが重要です。
手指衛生のタイミング
採血の前後における手指衛生は感染予防の基本です。患者対応の前後、手袋の着脱時、血液曝露のリスクがある行為の前後で、適切な手指衛生を実施します。手指消毒剤を使用する際は、十分な量を手指全体に擦り込み、乾燥させることが重要です。
個人防護具の適切な使用
手袋やマスク、必要に応じてゴーグルなどの個人防護具を適切に使用します。特に手袋の着用は必須であり、サイズの合った清潔な手袋を使用します。また、手袋を外す際は内側が表に出ないよう注意深く行います。
針刺し事故防止対策
針刺し事故は医療従事者にとって重大なリスクとなります。事故予防のための具体的な対策と、万が一の際の対応について解説します。
安全器材の使用方法
安全機能付き採血針の正しい使用方法を習得することが重要です。使用後は直ちに安全機能を作動させ、針先を収納します。この際、急がず確実に操作を行い、針先を見ながら安全装置を作動させることが大切です。
事故発生時の対応手順
万が一針刺し事故が発生した場合は、直ちに流水で十分に洗い流し、上司に報告します。その後、職場の針刺し事故対応マニュアルに従って、必要な検査や予防措置を実施します。事故の状況を詳細に記録し、再発防止に活用します。
医療廃棄物の適切な処理
採血に使用した医療廃棄物の適切な処理は、院内感染予防の重要な要素です。廃棄物の分別から最終処分まで、正しい手順を理解し実践することが必要です。
廃棄物の分別方法
使用済みの採血針や血液の付着した物品は、専用の廃棄容器に適切に分別します。廃棄容器は定められた場所に設置し、容量の8割を超えないように管理します。特に針類は絶対にリキャップせず、直接専用容器に廃棄します。
廃棄物処理の記録管理
医療廃棄物の処理状況を適切に記録し、定期的な監査を実施します。廃棄物の種類、量、処理日時などを正確に記録し、トレーサビリティを確保することが重要です。
採血業務の質向上

採血業務の質を向上させるためには、個人の技術向上だけでなく、業務全体の効率化とチーム連携の強化が重要です。
ここでは、採血室での具体的な業務改善方法とチーム連携の実践について解説します。
採血室のワークフロー改善
効率的な採血業務の実現には、適切なワークフローの確立が不可欠です。待ち時間の短縮や患者満足度の向上につながる具体的な改善策をご紹介します。
業務の時間配分
朝の採血ピーク時には、経験豊富なスタッフを重点的に配置します。また、採血オーダーの優先順位を適切に判断し、効率的な患者さんの呼び込みを行います。緊急検査への対応も考慮し、柔軟な人員配置を心がけます。
物品管理の効率化
採血に必要な物品は使用頻度に応じて適切に配置し、スムーズに取り出せるよう工夫します。在庫管理は定期的に行い、不足が生じないよう適切な補充タイミングを設定します。特に採血管や針などの重要物品は、使用期限も含めた綿密な管理が必要です。
チーム連携の強化
採血業務の質向上には、チームメンバー間の円滑なコミュニケーションと協力体制が欠かせません。効果的なチーム連携の方法についてお伝えします。
情報共有の徹底
朝のカンファレンスでは、その日の採血予定者の特記事項や注意点を共有します。また、困難症例や新しい採血手技についての情報も積極的に共有し、チーム全体のスキルアップにつなげます。
相互サポート体制
採血困難例に遭遇した際は、速やかに他のスタッフに支援を要請できる体制を整えます。また、新人スタッフへのサポートも重要で、困ったときにすぐに相談できる環境づくりを心がけます。
業務改善の実践
継続的な業務改善には、現状の課題を明確にし、具体的な改善策を実行することが重要です。PDCAサイクルを活用した改善活動を進めていきましょう。
改善活動の進め方
まず現状の課題を具体的に洗い出し、優先順位をつけて改善策を検討します。実施した改善策の効果を定期的に評価し、必要に応じて修正を加えていきます。スタッフからの改善提案も積極的に取り入れ、より良い業務環境を目指します。
特殊な状況での採血テクニック
採血業務において、小児や高齢者、特殊な状態の患者さんへの対応は特別な配慮と技術が必要です。
ここでは、それぞれの状況に応じた具体的な採血テクニックと注意点について解説します。
小児採血の実践テクニック
小児の採血は、患者さんの体格や心理状態に合わせた特別な配慮が必要です。年齢に応じた適切なアプローチと、確実な採血技術の実践方法をご紹介します。
年齢別の対応方法
乳幼児期の採血では、保護者の協力を得ながら安全な体位保持を行います。プレパレーションを活用し、子どもの理解度に合わせた説明を心がけます。学童期では、本人の協力を得られるよう、分かりやすい言葉での説明と励ましが重要です。
採血時の固定方法
小児の採血では確実な固定が特に重要です。年齢や体格に応じて、適切な固定具や保護者の協力を得ながら、安全な体位を確保します。啼泣や体動がある場合も、慌てることなく安全な採血を心がけます。
高齢者採血の注意点
高齢者の採血では、血管の脆弱性や認知機能の低下など、様々な要因を考慮する必要があります。安全で確実な採血を実現するためのポイントをお伝えします。
血管選択のコツ
高齢者の血管は蛇行や硬化が見られることが多いため、十分な観察と触診が重要です。皮膚の脆弱性も考慮し、内出血のリスクが低い部位を選択します。必要に応じて温罨法を活用し、血管を怒張させることも効果的です。
認知機能低下への対応
認知症のある患者さんでは、穏やかな口調で繰り返し説明を行い、安心感を与えることが大切です。必要に応じて家族の同席を依頼し、協力を得ながら安全な採血を実施します。
特殊状態への対応
透析患者さんや化学療法中の患者さんなど、特殊な状態にある方への採血には、それぞれの状況に応じた配慮が必要です。
透析患者の採血
シャント肢からの採血は原則として避け、非シャント肢から採血を行います。血管の状態が不良な場合は、主治医と相談の上、適切な採血部位を決定します。採血後の止血にも特に注意を払います。
化学療法中の患者対応
化学療法中の患者さんでは、免疫力の低下を考慮した感染対策の徹底が重要です。末梢静脈の状態が不良な場合は、中心静脈ポートからの採血も検討します。患者さんの体調にも十分な配慮が必要です。
トラブルシューティング詳細ガイド
採血業務において、様々なトラブルに遭遇することは避けられません。
ここでは、発生頻度の高いトラブルとその対処法、さらには予防策について詳しく解説します。適切な対応により、患者さんの安全を確保し、スムーズな採血業務を実現することができます。
採血困難例への実践的アプローチ
採血困難例に遭遇した際の具体的な対応方法について、実践的なアプローチをご紹介します。経験豊富な看護師の知見を基に、効果的な対処法をお伝えします。
血管確保が困難な場合
細い血管や見えにくい血管の場合は、まず保温によって血管を怒張させることを試みます。温かいタオルで採血部位を温めることで、血管の視認性が向上します。また、駆血帯の圧も適切に調整し、血管の怒張を促します。
血管の脆弱性への対応
高齢者や長期治療中の患者さんでは、血管が脆弱になっていることがあります。このような場合は、より細いゲージの針を選択し、慎重な穿刺を心がけます。内出血予防のため、穿刺後の圧迫も十分な時間をかけて行います。
合併症対策と予防
採血に伴う合併症を予防し、発生時に適切に対応することは、患者さんの安全を守る上で極めて重要です。代表的な合併症とその対策についてお伝えします。
神経損傷への対応
神経損傷を疑う症状が出現した場合は、直ちに採血を中止します。電気が走るような痛みや放散痛を訴えた際は、速やかに針を抜去し、状況を詳しく記録します。必要に応じて医師に報告し、経過観察を行います。
血管迷入時の対処
血管迷入が生じた場合は、無理に針を動かすことは避けます。一度抜針し、別の適切な血管を選択して再度穿刺を行います。この際、患者さんへの十分な説明と同意取得を忘れずに行います。
緊急時の対応マニュアル
緊急時には冷静な判断と迅速な対応が求められます。状況に応じた適切な対応ができるよう、基本的な手順を確認しておきましょう。
迷走神経反射への対応
気分不良や冷汗、血圧低下などの症状が出現した場合は、直ちに採血を中止し、安静を保ちます。バイタルサインの確認を行いながら、必要に応じて下肢挙上位をとります。状況に応じて医師への報告も必要です。
アナフィラキシー対策
消毒薬などによるアレルギー反応に備え、緊急時の対応手順を常に確認しておきます。症状出現時は速やかに医師に報告し、必要な処置を行える体制を整えておくことが重要です。
おしえてカンゴさん!Q&A
採血に関する疑問や不安について、経験豊富な看護師が実践的なアドバイスをお答えします。新人看護師の皆さんからよく寄せられる質問を中心に、具体的な対応方法をご紹介します。
Q1:採血の成功率を上げるコツを教えてください
採血の成功率向上には、基本に忠実な技術の積み重ねが重要です。まずは血管の走行を十分に理解し、触診による血管の状態確認を丁寧に行います。シミュレーション練習を定期的に行い、基本的な手技を確実に身につけることをお勧めします。
また、採血前の患者さんの状態確認と、適切な説明による緊張緩和も成功率向上のポイントとなります。
Q2:採血時の内出血を防ぐにはどうすればよいですか
内出血予防には、適切な圧迫止血が鍵となります。採血後は5分以上かけて十分な圧迫を行い、患者さんの凝固機能や投薬状況に応じて圧迫時間を延長します。
また、穿刺時の角度や深さにも注意を払い、血管を貫通しないよう気をつけます。圧迫後は必ず止血確認を行い、内出血の有無をチェックすることが大切です。
Q3:患者さんが緊張している場合の対応を教えてください
患者さんの緊張を和らげるためには、まず穏やかな口調で声かけを行い、安心感を与えることが重要です。採血の手順を分かりやすく説明し、必要に応じて深呼吸を促します。
また、採血中は患者さんの表情や様子に気を配り、適切なタイミングで声かけを行うことで、不安の軽減を図ることができます。
Q4:採血後の静脈炎を予防するポイントは何ですか
静脈炎予防には、清潔操作の徹底と適切な穿刺技術が重要です。消毒は十分な時間をかけて行い、針先が確実に血管内に入っていることを確認します。
また、太い血管を選択し、できるだけ一回で採血を完了することも予防につながります。採血後は患者さんに異常が生じていないか、必ず確認を行います。
Q5:困難症例でも採血がスムーズにできる方法を教えてください
困難症例への対応には、事前の十分なアセスメントが重要です。まず患者さんの採血歴や血管の状態を確認し、必要に応じて保温などの準備を行います。
血管が見えにくい場合は、駆血帯の圧を調整したり、穿刺部位を軽くたたいて血管を怒張させたりする工夫が効果的です。経験のある先輩看護師に相談し、アドバイスを得ることも大切です。
まとめ
本記事では、新人看護師の皆さんに向けて、採血技術の向上に必要な知識と実践的なスキルについて詳しく解説してきました。
採血技術の習得には時間と練習が必要ですが、基本に忠実な技術の積み重ねと、患者さんへの適切な配慮により、確実に上達していくことができます。
実践のポイント
採血技術の向上には、基本手技の確実な習得が不可欠です。シミュレーション練習を通じて基本的な手技を身につけ、実践での応用力を養っていくことが重要です。
また、患者さんとの信頼関係構築や感染対策など、採血に関連する様々な要素にも十分な注意を払う必要があります。
今後の課題
採血技術は経験を重ねることで着実に向上していきます。日々の実践の中で、新しい知識や技術を積極的に吸収し、常により良い看護を提供できるよう努めていくことが大切です。
また、チーム内での情報共有や相互支援を通じて、組織全体の技術向上を図ることも重要です。
採血技術の向上には、基本手技の確実な習得と継続的な練習が欠かせません。本記事で解説した実践的なテクニックや注意点を参考に、日々の業務で着実にスキルを磨いていってください。
特に新人看護師の皆さんは、一つひとつの経験を大切にしながら、確実な技術を身につけていくことが重要です。
より詳しい看護技術や実践的なアドバイスについては、【ナースの森】看護師専門サイトをご覧ください。経験豊富な先輩看護師たちによる実践的なアドバイスや、スキルアップに役立つ情報が満載です。
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