
医療現場で活躍する看護師の皆さん、これから看護師を目指す方々へ。診療科選択は、あなたのキャリアを大きく左右する重要な決断です。希望する診療科で活躍するために必要な情報を、現場の声や具体的な事例を交えながら詳しくご紹介します。
この記事で分かること
- 各診療科の具体的な業務内容と特徴
- 診療科別に必要なスキルと適性
- 診療科選択の実践的な判断基準
- 現役看護師のリアルな体験談とキャリアパス
- 診療科異動に向けた具体的な準備方法
この記事を読んでほしい人
- 診療科の異動や転職を検討している看護師
- キャリアアップを目指している看護師
- 新卒で診療科を選ぶ予定の看護師
- より専門的なスキルを身につけたい看護師
- ワークライフバランスの改善を考えている看護師
主要診療科の特徴と業務内容

診療科選択の基本となるのは、各診療科の特徴と実際の業務内容を正確に理解することです。患者様へのケアの方法や必要なスキル、働き方まで、診療科によって大きく異なります。
現場で活躍する看護師の声を交えながら、それぞれの診療科の特徴をご紹介します。
内科系診療科
内科系診療科は、薬物療法や生活指導を中心とした治療が特徴です。患者様との信頼関係を築きながら、長期的な視点でケアを提供していきます。
一般内科
一般内科では、様々な症状や疾患に対応する必要があります。患者様の状態を総合的に評価し、適切なケアを提供することが求められます。日々の業務では、バイタルサインの測定から服薬管理、患者様への生活指導まで、幅広い看護スキルを活用します。
特に重要なのは、患者様の小さな変化に気づく観察力と、それを医師に的確に報告するコミュニケーション能力です。夜勤では複数の患者様を同時に見守る必要があり、優先順位を付けた効率的な業務遂行が求められます。
消化器内科
消化器内科では、食道、胃、腸、肝臓などの消化器系疾患を専門に扱います。内視鏡検査や処置の介助が重要な業務となり、検査前後の患者様のケアも重要です。食事指導や栄養管理のスキルが特に求められ、管理栄養士との連携も欠かせません。
また、化学療法を受ける患者様も多いため、抗がん剤の取り扱いや副作用への対応も必要となります。患者様の食事摂取状況や腹部症状の観察、排泄ケアなど、細やかな観察と対応が日常的に必要です。
内科系診療科
循環器内科
循環器内科では、心臓や血管系の疾患を専門に治療します。急性心筋梗塞などの緊急性の高い症状への対応から、心不全の慢性期管理まで、幅広い看護ケアが必要です。心電図モニタリングの読解力や、各種カテーテル検査の介助技術が重要となります。
また、心臓リハビリテーションにも関わるため、運動負荷に関する知識も必要です。夜間の急変にも備える必要があり、緊張感の高い職場環境となります。
その他の内科系診療科
呼吸器内科
呼吸器内科では、肺炎や気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの患者様のケアを行います。呼吸状態の観察やアセスメント、酸素療法の管理が重要な業務となります。また、呼吸リハビリテーションや吸入指導なども行います。感染対策への配慮も特に重要な診療科です。
腎臓内科
腎臓内科では、透析患者様の管理が主な業務となります。透析技術の習得はもちろん、長期に渡る患者様との信頼関係構築が重要です。水分管理や食事指導など、生活全般に関わる指導も必要となります。
外科系診療科
外科系診療科では、手術前後の患者様のケアが中心となります。迅速な判断力と確実な技術が求められる、専門性の高い分野です。
一般外科
一般外科では、消化器系を中心とした様々な手術の周術期看護を行います。術前の準備から術後の疼痛管理、創傷ケアまで、幅広い知識と技術が必要です。また、ドレーン管理や早期離床の援助など、合併症予防のための観察と介入も重要な業務となります。
消化器外科
消化器外科では、食道がんや胃がん、大腸がんなどの手術を専門に行います。術後の消化管機能の回復過程を理解し、適切なケアを提供する必要があります。経腸栄養や中心静脈栄養の管理、ストーマケアなども重要な業務です。
心臓血管外科
心臓血管外科では、開心術や大血管手術など、高度な周術期看護が求められます。手術直後は厳密なバイタルサイン管理や循環動態の観察が必要で、ICUでの勤務経験が活かされます。術後のリハビリテーション支援も重要な役割です。
救急部門・集中治療
救急部門と集中治療室は、重症患者様や緊急性の高い症例に対応する、高度な専門性が求められる部門です。24時間体制での迅速な対応と、チーム医療の中核としての役割を担います。
救急外来
救急外来では、様々な症状や重症度の患者様に対応します。トリアージ能力や急変時の対応力が特に重要で、限られた情報の中で適切な判断を下す必要があります。
多発性外傷や急性心筋梗塞、脳卒中など、生命の危機に直結する症例も多く、高度な観察力とアセスメント能力が求められます。また、救急車やドクターヘリでの搬送時の対応も重要な業務となります。
ICU/CCU
ICU(集中治療室)やCCU(冠状動脈疾患集中治療室)では、24時間体制での濃厚な看護ケアを提供します。人工呼吸器の管理や、様々な医療機器のモニタリング、薬剤投与の管理など、高度な医療技術が必要です。また、重症患者様のご家族への精神的サポートも重要な役割となります。
専門診療科
小児科
小児科では、新生児から思春期までの子どもたちの看護を担当します。年齢や発達段階に応じたコミュニケーション能力が特に重要で、家族への支援も欠かせません。また、予防接種や成長発達の評価、急性疾患への対応など、幅広い知識が必要です。夜間の急変にも備える必要があり、保護者との信頼関係構築も重要です。
産婦人科
産婦人科では、妊娠・出産に関わる周産期看護と、婦人科疾患の看護を行います。分娩時の対応や新生児のケア、母乳育児支援など、専門的なスキルが求められます。また、不妊治療や婦人科手術の周術期看護も重要な業務です。女性特有の健康問題に対する深い理解と、デリケートな対応が必要とされます。
精神科
精神科では、統合失調症やうつ病、認知症など、様々な精神疾患を抱える患者様のケアを行います。治療的コミュニケーションや行動制限の適切な実施、自殺予防など、特殊な看護技術が必要です。また、デイケアや作業療法など、社会復帰に向けた支援も重要な役割となります。
手術室
手術室では、手術の準備から術中看護、術後の引き継ぎまでを担当します。無菌操作や医療機器の取り扱い、麻酔覚醒時の観察など、高度な専門知識と技術が求められます。また、緊急手術への対応も必要で、チーム医療の要として的確なコミュニケーション能力も重要です。
外来
外来では、初診から慢性疾患の定期診察まで、多様な患者様に対応します。限られた時間内での適切なトリアージや、患者様の状態把握、検査・処置の介助など、効率的な業務遂行が求められます。また、在宅療養指導や地域連携など、継続看護の視点も重要となります。
患者様の生活背景を理解し、適切な指導やサポートを提供する必要があります。
診療科選択のポイント

診療科選択は、あなたのキャリアを大きく左右する重要な決断です。
ここでは、自分に合った診療科を見つけるための具体的な方法と、考慮すべきポイントについてご紹介します。
自己分析方法
看護師としての強み
まず自身の看護実践における得意分野を見極めることが重要です。患者様とのコミュニケーションが得意なのか、緊急時の対応力に自信があるのか、それとも細やかな観察力が強みなのか。これまでの経験を振り返り、具体的なエピソードとともに整理していきましょう。
実際の看護場面で、どのような状況で力を発揮できたのか、同僚から評価された点は何かなど、客観的な視点で分析することが有効です。
価値観と働き方
自分が看護師として大切にしたい価値観を明確にすることも重要です。急性期の救命看護に携わりたいのか、それとも慢性期の患者様との長期的な関わりを持ちたいのか。また、ワークライフバランスについても考慮が必要です。
夜勤の頻度や勤務時間帯、休日の取得状況など、各診療科の特徴と自身の生活スタイルの調和を図ることが、長期的なキャリア形成につながります。
キャリアプラン設計
専門性の追求
将来的にどのような看護師を目指したいのか、キャリアビジョンを描くことが大切です。専門看護師や認定看護師などの資格取得を考えている場合は、それに適した診療科を選択することが望ましいでしょう。例えば、がん看護専門看護師を目指す場合は、腫瘍内科や外科での経験が有効です。
スキルアップの機会
各診療科で習得できる看護技術や知識を考慮することも重要です。新しい医療技術や治療法に触れる機会が多い診療科なのか、基本的な看護技術を幅広く経験できる環境なのか。自身のスキルアップ目標に合わせた選択が、将来の可能性を広げることにつながります。
適性判断の基準
身体的・精神的負荷
各診療科の業務特性による身体的・精神的負荷を考慮することが重要です。例えば、救急部門では緊急対応による精神的緊張が高く、外科病棟では術後管理による身体的負荷が大きくなります。自身の体力や精神力と照らし合わせ、持続可能な環境を選択することが、長期的なキャリア形成には欠かせません。
チーム医療との相性
診療科によって、チーム医療の在り方や他職種との連携方法が異なります。手術室では麻酔科医やサージカルナースとの緊密な連携が必要であり、リハビリテーション科では理学療法士や作業療法士との協働が重要となります。
自身のコミュニケーションスタイルや仕事の進め方との相性を考慮することで、より効果的なチーム医療の実践が可能となります。
学習環境と成長機会
診療科選択では、その環境での学習機会や成長可能性も重要な判断基準となります。教育体制が整っているか、先輩看護師からの指導を受けやすい雰囲気があるか、研修や勉強会の機会は充実しているかなど、自身の成長をサポートする環境が整っているかを確認することが大切です。
ケーススタディ

実際に診療科を選択・異動された看護師の方々の体験談をご紹介します。
それぞれの選択理由や準備過程、直面した課題とその克服方法など、リアルな経験から学べるポイントを詳しく見ていきましょう。
内科から救急看護への転向
Aさんの場合(経験年数:5年)
一般内科で3年の経験を積んだ後、救急外来への異動を決意したAさん。内科での経験中、急変時の対応に関わるたびにやりがいを感じ、より専門的な救急看護のスキルを身につけたいと考えました。異動に向けて、まず救急看護認定看護師の先輩に相談し、必要な知識や技術について具体的なアドバイスを受けました。
休日を利用してBLSやACLSの資格を取得し、救急領域の勉強会にも積極的に参加。約1年の準備期間を経て、救急外来への異動を実現しました。現在は、内科での経験を活かしながら、より専門的な救急看護の実践に携わっています。
外科から手術室への専門性追求
Bさんの場合(経験年数:8年)
外科病棟で6年間勤務し、手術前後の患者ケアを行ってきたBさん。手術室看護により興味を持ち、専門的なスキルを磨くため手術室への異動を決意しました。準備として、手術室看護認定看護師が主催する勉強会に参加し、基礎知識の習得に努めました。
また、手術室見学を重ね、実際の業務の流れや必要なスキルを具体的に理解。外科病棟での経験を活かしつつ、新たな環境での看護実践にチャレンジしています。
産婦人科でのキャリア構築
Cさんの場合(経験年数:10年)
新卒で産婦人科に配属され、そのまま専門性を深めてきたCさん。助産師の資格も取得し、現在は産婦人科病棟のリーダーとして活躍しています。専門性を極めることで、患者様により質の高いケアを提供できると考え、同じ診療科でのキャリアアップを選択。
研修や学会参加を通じて最新の知識を習得し、若手看護師の指導も行っています。
ICUから訪問看護へのキャリアチェンジ
Dさんの場合(経験年数:12年)
ICUで7年間勤務した後、ワークライフバランスの見直しを機に訪問看護への転向を決意したDさん。ICUでの急性期看護の経験を活かしつつ、在宅での看護実践に必要な知識を習得するため、訪問看護の研修に参加。また、在宅医療に関する資格取得にも取り組みました。
現在は、重症度の高い在宅患者様のケアにICUでの経験を活かしながら、新たなやりがいを見出しています。
精神科での専門性向上
Eさんの場合(経験年数:15年)
一般病棟で5年間の経験を積んだ後、精神科看護に興味を持ち異動を決意したEさん。準備期間中は精神看護専門看護師から指導を受け、精神科特有のコミュニケーション技術や患者アセスメントについて学習。現在は精神科認定看護師の資格も取得し、患者様の心理的サポートやチーム医療の調整役として活躍しています。
おしえてカンゴさん!よくある質問

診療科選択に関して、看護師の皆さんからよく寄せられる質問にカンゴさんが丁寧にお答えします。
実践的なアドバイスと共に、皆さんの不安や疑問を解消していきましょう。
キャリアアップと異動について
Q:診療科の異動は難しいですか?
キャリアアップや家庭の事情などで診療科異動を考えることは珍しくありません。多くの病院では定期的な異動制度があり、看護部に希望を出すことができます。ただし、人員配置の都合や経験年数などの条件もあるため、希望がすぐに通るとは限りません。
異動を希望する場合は、上司との面談で具体的な希望を伝え、必要なスキルの習得に向けて計画的に準備を進めることをお勧めします。
Q:新しい診療科での業務に不安があります。どのように準備すればよいですか?
まずは希望する診療科の先輩看護師に相談し、必要なスキルや知識について具体的なアドバイスをもらうことが有効です。また、関連する研修や勉強会への参加、資格取得の準備など、できることから始めていきましょう。異動前に一日見学を行える病院も多いので、実際の業務の流れを確認することも重要です。
スキルアップと専門性について
Q:専門・認定看護師を目指すには、特定の診療科での経験が必要ですか?
専門・認定看護師の資格取得には、それぞれの分野で一定期間の実務経験が必要です。例えば、がん看護専門看護師を目指す場合は、がん患者の看護経験が重要になります。資格取得を考えている場合は、早めに希望する分野の要件を確認し、キャリアプランを立てることをお勧めします。
Q:夜勤の少ない診療科はありますか?
外来や透析室、手術室など、基本的に日勤のみの診療科もあります。ただし、緊急手術や時間外透析への対応など、診療科の特性に応じた勤務体制があります。また、夜勤専従制度を導入している病院もあるので、自身の希望する働き方に合わせて選択することができます。
適性と職場環境について
Q:自分に合った診療科を見つけるコツはありますか?
まずは自身の強みや興味のある分野を明確にすることが大切です。患者様との関わり方や業務の特性、チーム医療の在り方など、各診療科の特徴を理解した上で判断しましょう。また、実際に働いている先輩看護師の話を聞くことで、より具体的なイメージを持つことができます。
Q:ブランクがありますが、復職時の診療科選択で気をつけることはありますか?
ブランクがある場合は、以前の経験を活かせる診療科や、段階的にスキルを取り戻せる環境を選ぶことをお勧めします。多くの病院では復職支援プログラムを用意しているので、それらを活用しながら、無理のないペースで職場に慣れていくことが大切です。
また、外来や療養型病棟など、比較的業務の流れが安定している診療科から始めることも一つの選択肢です。
Q:診療科によって給与や待遇に違いはありますか?
基本給は病院の給与規定に基づいて決められますが、夜勤手当や特殊勤務手当など、診療科特有の手当が設定されている場合があります。例えば、ICUや手術室などでは特殊勤務手当が付くことが多く、夜勤の多い診療科では夜勤手当が収入に大きく影響します。
待遇面では、休暇の取得しやすさや研修機会の充実度なども診療科によって異なる場合があります。
まとめ

診療科選択は、看護師としてのキャリアを左右する重要な決断です。各診療科の特徴や業務内容を理解し、自身の適性や目指すキャリアパスと照らし合わせることで、より充実した看護実践が可能となります。
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