新人看護師が必ず経験するのがプリセプターです。新人看護師の教育に欠かせない制度ですが、苦手に感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、プリセプター制度には教わる側にも教える側にもメリットがあるんです。

 

そこで本記事では、プリセプター制度について、その目的やメリット・デメリット、心がけたいことや注意点について詳しく解説していきます。

 

プリセプター制度とは?

 

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プリセプター制度は、経験豊富な看護師が新人看護師を一対一で指導する制度です。この制度では、指導役の経験者を「プリセプター」、指導を受ける新人看護師を「プリセプティ」と呼びます。

 

プリセプターは、新人看護師のプリセプティとともに患者のケアをしながら指導を行うことで、実践的な指導が可能になります。

 

プリセプター制度は、教育者であるプリセプターが新人看護師の成長を支援し、臨床現場でのスムーズな適応を促進するものです。一般的には、この制度は6か月から1年程度の期間設定され、初期の臨床経験段階で導入され

 

プリセプター制度の目的

 

プリセプター制度の目的は、新人看護師への手本提供と育成です。教育担当者が臨床研修を通じてアセスメント、看護技術、対人関係、自己管理、就業規則など幅広い領域で指導します。

 

これは、新人看護師が学生時代に習得した知識や技術を実務で活かすのに苦労するケースが多いため、明確な指導者を指定し、技術や自己管理方法の伝授、仕事や対人関係のサポートを行う制度です。

 

リアリティショックや実務スキルとのギャップを埋め、新人看護師の不安を取り除くことが目的となっており、プリセプティが一人前の看護師になるまで導くことで、新人看護師の育成や職場への定着を図ります。

 

この制度は、2010年4月から新人看護師研修の努力義務化に伴い、多くの医療・介護施設で導入されています。

 

プリセプター制度の種類

 

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プリセプター制度には主に3つの種類があります。それぞれどのような内容なのかをご紹介していきます。

 

プリセプターとのマンツーマン

 

プリセプター制度の基本形です。新人看護師(プリセプティ)と経験豊富な看護師(プリセプター)が1対1でマンツーマンで業務にあたりながら、プリセプターが看護技術や日常業務、および精神的なフォローや教育を提供します。プリセプターは、看護師としてのモデルとなり、新人看護師の成長をサポートします。

 

プリセプターに加え、シニアプリセプターが付く

 

プリセプター制度では、経験豊富な看護師が新人看護師の指導・育成を担当しますが、その上に支援・補佐役としてシニアプリセプターが付き、全体的な指導・教育の進捗状況をフォローします。

 

職場によって運用は異なり、プリセプターが日常業務の指導・相談を主に行い、シニアプリセプターが実践的な技術指導を補完するケースも見られます。この連携により、新人看護師のスキル向上と適応を円滑に図り、効果的な教育体制が整えられています。

 

プリセプターに加え、メンターが付く

 

プリセプターは主に新人看護師への直接的な指導や教育を担当します。一方で、メンターは新人看護師の中長期的なキャリア支援や精神的なフォロー役としてサポートを提供します。

 

メンターは、プリセプティに寄り添う立場で、精神的・人間的な成長を手助けし、中長期的なキャリア形成をサポートします。特に、新人看護師の仕事に対する不安や悩みの解消、業務の指導や育成を担当する役割を果たします。

 

メンターは、年齢や経験が近い先輩看護師であり、経験を基に新人看護師の成長を見守り、サポートすることで、看護職への適応を助けています。このように、プリセプターとメンターが連携することで、新人看護師のスムーズな職場適応と成長が図られています。

 

プリセプター制度での指導内容

 

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プリセプター制度は、新人看護師が臨床現場で必要とされるスキルや知識を習得し、プロフェッショナルとして成長するための重要な枠組みです。この制度では、さまざまな指導内容が盛り込まれています。それぞれ解説していきます。

 

業務内容の教育・サポート・評価

 

プリセプターは新人看護師に対して、日常業務の進め方や適切なコミュニケーション方法、緊急時の対応など、業務に関する知識とスキルを丁寧に教えます。また、新人看護師が業務を行う際に必要なサポートを提供し、その後の評価を通じて成長の方向性を示します。

 

看護・介護知識などの学習支援

 

看護学校で習得した知識を実務に活かせるようサポートし、新しい医療技術や最新の治療法に関する情報を提供します。実践後のレポート提出を指示し、もし訂正部分があればプリセプターは再始動などの支援を行います。

 

看護技術習熟度の確認・評価

 

新人看護師の技術習熟度をチェックリストをもとに確認し、適切なフィードバックを提供することで、技術面での成長を促します。これにより、安全かつ効果的な看護技術を習得することが可能となります。

 

メンタル面のフォロー

 

臨床現場は高いストレスがかかる環境であり、新人看護師は適応困難な状況に直面することもあります。プリセプターはこうした状況に理解と配慮をもって対応し、メンタル面でのサポートを提供します。精神的な安定があってこそ、新人看護師は適切な判断や適応ができるため、メンタルケアは極めて重要です。

 

プリセプター制度のメリット

 

プリセプター制度は、新人看護師であるプリセプティ、先輩看護師であるプリセプターにとって数々のメリットをもたらします。これらのメリットは、スムーズな職場適応や成長、そして安心感を醸成する要因となっています。

 

プリセプティのメリット

 

まずはプリセプティのメリットは以下の通りです。

 

疑問を抱いたらその場ですぐに質問できる

 

プリセプターは直接現場で指導を行うため、プリセプティが業務中に疑問や不明点を抱いた際にすぐに質問できる環境が整っています。これにより、疑問や不安をすばやく解消できるため、安心して仕事に取り組むことができます。

 

技術や知識が身に付きやすい

 

プリセプターは経験豊富であり、臨床現場で求められる様々な技術や知識を熟知しています。プリセプティは、プリセプターの指導を受けながら実務経験を積むことで、より早く技術や知識を習得することが可能となります。実践的な指導によって、臨床スキルを高めることができるため、自信を持って看護業務に取り組めます。

 

プリセプターのサポートで精神的な負担が少ない

 

プリセプターは、新人看護師が安心して業務に取り組めるよう精神的なサポートを提供します。新人看護師は初めての実務経験で緊張や不安を抱えることが多いですが、プリセプターが適切なフォローやアドバイスを行うことで、安心感を得ることができます。

 

<看護師・ナースのリアルな声>プリセプター制度でいい思い出はありますか?

 

プリセプターのメリット

 

次にプリセプターのメリットは以下の通りです。

 

自分の能力向上もできる

 

プリセプターは新人看護師の指導を通じて、教えることで自己成長する機会を得ます。新人看護師への適切な指導やサポートは、プリセプター自身の指導力やコミュニケーションスキルの向上に繋がり、自身の能力を高める契機となります。

 

自分が持つ技術や知識の再確認ができる

 

プリセプターは新人看護師への指導を行う過程で、自身が持つ看護技術や医療知識を再評価・再確認することが求められます。これにより、プリセプターは日常業務で磨かれた技術や知識を再度精査し、新たな視点から自己成長に繋げることができます。

 

上手に教えることで自分の評価も上がる

 

。プリセプターは新人看護師に対する指導・育成が求められる役割を担いますが、適切に教育を行い成長をサポートすることで、職場内での評価や信頼が向上します。優れたプリセプターは、他者の育成を通じて組織全体の力を高めることに貢献し、自身の評価も向上させます。

 

<看護師・ナースのリアルな声>プリセプターとして印象的だった出来事を教えてください

 

プリセプター制度のデメリット

 

プリセプター制度には多くのメリットがありますが、デメリットも指摘されています。どのようなデメリットがあるか解説していきます。

 

プリセプティのデメリット

 

まずはプリセプティのデメリットは以下の通りです。

 

プリセプターを選べない

 

新人看護師が所属する職場では、プリセプターが自動的に割り当てられることが一般的であり、プリセプティが希望するプリセプターを選ぶことができない場合があります。この制度においては、自身の学びたい分野や指導方針と合致するプリセプターとマッチングできない可能性があり、学習意欲や効果的なスキル習得に影響を与える要因となります。

 

プリセプターの能力が足りない

 

プリセプターは経験豊富な看護師であることが求められますが、中には十分な指導経験や教育力を持っていない場合があります。プリセプターの指導が不適切であると、プリセプティの適切な技術習得や適応に影響が出る可能性があります。十分な教育力を持つプリセプターが割り当てられない場合、教育効果が十分に得られないという問題が生じます。

 

<看護師・ナースのリアルな声>プリセプター制度のここがつらかったという経験を聞かせてください

 

プリセプターのデメリット

 

次にプリセプターのデメリットは以下の通りです。

 

単純に負担が大きくなる

 

プリセプターは新人看護師の指導や教育、フォローアップを担当する役割を担います。このため、通常の業務と並行して新人看護師の教育に時間やエネルギーを費やす必要があり、負担が増大する可能性があります。特に繁忙期や人手不足の場合には、この負担がさらに顕著になることがあります。

 

サポート体制が整っていないケースがある

 

プリセプター制度が十分に機能するためには、適切なサポート体制が整備されていることが重要です。しかし、実際には組織や施設によっては、プリセプターが適切な支援を受けることが難しいケースがあると言えます。十分なリソースや時間、教育プログラムが提供されない場合、プリセプターの負担が増え、指導の質や新人看護師の成長が阻害される可能性があります。

 

<看護師・ナースのリアルな声>プリセプターとして失敗したことを教えてください

 

プリセプターに求められるもの

 

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新人看護師の指導者としてプリセプターに選ばれるということは、自分のステップアップのチャンスでもあります。厚生労働省では、ステップアップに求める人物像を公表しているので、そちらを詳しく解説していきます。

 

必要なスキル

 

プリセプターになるために特別なスキルは必要ありませんが、誰でもなれるわけではなく、一般的には3〜5年目の看護師が勤めることが多くなっています。また、コミュニケーション力も必要になるため、看護スキルだけでなく指導力を持ち合わせた看護師が選ばれます。

 

求められる能力

 

プリセプターとしての役割を果たすためには、さまざまな能力が求められます。これらの能力を備えることで、新人看護師の適切な指導や育成を行い、彼らが安心して成長できる環境を提供することが可能となります。厚生労働省では以下の5点を指導者の条件としてあげています。

 

教育的指導ができる

 

プリセプターは、新人看護師に対して教育的な指導を行う役割を担います。これには、看護の基本から専門知識まで幅広い領域での指導が含まれます。新人看護師が理解しやすく、効果的な学びを得られるよう、教育的アプローチを選択し、指導する能力が求められます。

 

コミュニケーションがとれる

 

プリセプターは新人看護師と頻繁にコミュニケーションを取りながら、意見交換や情報提供を行います。適切かつ明確なコミュニケーションをとることで、新人看護師の理解を深め、信頼関係を築くことが重要です。

 

状況を把握しともに問題解決を図れる

 

プリセプターは、現場の状況や新人看護師の理解度、スキルレベルを把握する能力が求められます。また、問題が発生した際に適切に対処し、解決策を提供する力も重要です。状況を的確に判断し、適切なアドバイスや指導を行うことが求められます。

 

新人看護研修のプログラムを作れる

 

プリセプターは、新人看護師向けの研修プログラムを作成する能力が求められます。このプログラムは、基本的な看護技術から臨床判断力の醸成、コミュニケーションスキルの向上など幅広い要素を含むものであり、組織や状況に応じて適切にカスタマイズする力が求められます。

 

臨床実践能力を評価できる

 

プリセプターは、新人看護師の臨床実践能力を適切に評価する能力が求められます。看護技術の実施方法、臨機応変な対応、医療チームとの連携など多岐にわたる要素を客観的に評価し、適切なフィードバックを提供することが必要です。

 

これらの能力を総合的に持つことで、プリセプターは新人看護師の育成に貢献し、より優れた看護職者の育成に向けた基盤を築くことができます。プリセプター制度は、組織や医療機関において非常に重要な役割を果たすものであり、その役割を遂行するための能力の向上が期待されています。

 

プリセプターになったら心がけたいこと

 

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プリセプターになる際に心がけるべきポイントは、新人看護師の育成と成長をサポートすることが中心です。新人看護師の成長は、看護の質や患者の安全に深く関わるため、プリセプターの役割は非常に重要です。ここからは、プリセプターになった際に心がけるべきポイントを詳しく説明します。

 

他の新人と比べない

 

新人看護師は、それぞれ異なる性格や経験を持っています。彼らの成長のペースや学習スタイルも異なります。比較や競争心を持つのではなく、一人ひとりの個性や強みを理解し、それぞれのペースで成長するようサポートすることが大切です。

 

ミスをしたらしっかりとフォローする

 

ミスや失敗は誰にでも起こり得るものです。新人看護師がミスを犯した際には、非難や叱責ではなく、原因究明や対策、未来への教訓として共有することが必要です。また、一緒にミスから学び、改善する姿勢を示すことで、新人看護師が安心して自己成長できる環境を作ります。

 

一人で抱え込まない

 

プリセプターは新人看護師のサポート役であり、一人で全てを解決することは不可能です。困難な状況や問題が発生した際には、他のスタッフや上司、チームと連携し、助けを求めることが重要です。協力体制の中で問題を解決し、新人看護師と共に成長することが目指すべき姿です。

 

後輩と一緒にレベルアップをしようという意識をもつ

 

プリセプターは指導するだけでなく、自身も学び続ける姿勢を示すことが重要です。新しい知識や技術、ケアの方法などを共有し、後輩と共にレベルアップを図る意識を持ちましょう。相互の学び合いやフィードバックを通じて、お互いの成長をサポートすることが大切です。

 

対等な立場で接する

 

新人看護師との信頼関係を築くためには、対等な立場で接することが重要です。尊敬や敬意は大切ですが、同時にオープンで対話の場を提供し、意見交換ができる雰囲気を作ることが必要です。丁寧で親しみやすい態度で接し、意見を尊重する姿勢を示すことで、新人看護師が安心して質問や疑問を出すことができる環境を作りましょう。

 

若い世代の特徴を知っておく

 

若い世代の特徴や傾向を理解することで、効果的な指導やコミュニケーションが可能となります。例えば、テクノロジーに慣れ親しんでいることや、自己表現の重視、ワークライフバランスの重視などがあります。これらの特徴を踏まえ、適切な指導やフィードバックを提供することで、新人看護師との信頼関係を構築しやすくなります。

 

プリセプターとして注意しなければいけないこと

 

プリセプターとして、新人看護師の育成や指導に従事する際には、避けるべき行動や態度があります。これらは新人看護師の自信や成長を妨げる可能性があるため、注意が必要です。最後に、プリセプターとして注意しなければいけないことについて詳しく説明します。

 

ダメ出しばかりする

 

新人看護師がミスや失敗を犯すことは避けられないものですが、プリセプターがその度にダメ出しや叱責を行うのは避けるべきです。ミスをただ指摘するだけでなく、なぜそのようなミスが起きたのか、改善するためにはどうすれば良いかを共に考えることが重要です。

 

質問に冷たい態度をとる

 

新人看護師が質問をすることは学びの一環であり、成長に必要な行動です。しかし、プリセプターが冷たい態度で質問に対応すると、新人看護師は質問をためらったり、学びの機会を逃したりする可能性があります。質問に丁寧に応え、信頼関係を築くことが大切です。

 

業務を急がせる

 

新人看護師は経験が浅く、業務に慣れていないため、プリセプターが急かす態度をとることは避けるべきです。むしろ、適切なペースで業務を進めるようサポートし、必要な指導やフォローを提供することで、新人看護師の安心感と成長を促すことが重要です。

 

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まとめ

 

この記事では、プリセプター制度について詳しく解説してきました。

 

プリセプター制度は、先輩看護師が新人看護師をマンツーマンで教育・指導する制度です。この制度には、双方にメリットがあります。プリセプティは直接的な指導を受けることで知識や技術の習得が容易であり、プリセプターは教えることで自らの成長につながります。

 

ただし、マンツーマン指導が基本とはいえ、新人看護師の教育はチーム全体で責任を持って行うべきです。1人で解決できない問題が発生した際は、遠慮せずに周囲に相談し、協力して解決することが重要です。

 

プリセプターに任命されると責任感が増し、精神的に厳しい状況になることもあるかもしれませんが、一人で抱え込まず、チーム全体で新人看護師の成長をサポートしましょう。そして、お互いが成長できる環境を共同で作り上げていきましょう。