
ストーマケアは、高度な専門知識と確かな技術が求められる看護ケアの一つです。患者さんのQOL向上のためには、適切なケア技術の習得はもちろん、効果的な指導力も欠かせません。
本記事では、臨床現場ですぐに活用できる実践的なケア方法から、患者さんの生活に寄り添った指導テクニックまで、最新のエビデンスに基づいて解説します。
装具選択のポイントや、よくある合併症への対応、在宅ケアにおける工夫など、現場で本当に必要な情報を網羅的にまとめました。新人看護師の方からベテランナースまで、明日からのケアに活かせる具体的なノウハウをご紹介します。
この記事で分かること
- ストーマケアの基本的な手順と最新のケアテクニック
- 効果的なスキンケアの方法と装具選択のポイント
- 患者さんの生活に寄り添った指導方法
- セルフケア確立までの段階的な支援アプローチ
- トラブル対応と予防的ケアの実践方法
この記事を読んでほしい人
- ストーマケアを担当する看護師
- 皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)
- ストーマケアのスキルアップを目指す看護師
- 看護学生・新人看護師
- 訪問看護に携わる看護師
- 手術室看護師
ストーマ観察

ストーマの観察ポイント
観察は、ストーマケアの質を左右する重要な要素です。系統的な観察により、早期の問題発見と適切な対応が可能になります。
基本的な観察項目
ストーマの色調は健康な粘膜であれば鮮やかなピンク色を呈します。色調の変化は血流障害などの重要なサインとなります。
形状評価のポイント
ストーマの大きさと形状は、装具選択に直接影響を与える重要な要素です。定期的な測定と記録が必要です。
効果的なスキンケア
ストーマ周囲の皮膚管理は、ストーマケアの成功を左右する重要な要素です。適切なスキンケアにより合併症を予防し、患者さんのQOL向上につながります。
スキンケアの基本原則
スキンケアの基本は、清潔の保持と皮膚保護です。これらを適切に実施することで、様々なトラブルを未然に防ぐことができます。
皮膚の洗浄方法
皮膚の洗浄は体温程度のぬるま湯を使用し、優しく丁寧に行います。強くこすることは皮膚を傷つける原因となるため避けましょう。必要に応じて低刺激な洗浄剤を使用しますが、その場合は十分なすすぎが重要です。
皮膚の保護方法
皮膚保護剤の選択は、皮膚の状態や排泄物の性状を考慮して行います。皮膚保護剤は薄く均一に塗布し、十分に乾燥させてから装具を装着します。
予防的スキンケア
予防的スキンケアでは、早期発見と適切な対応が重要です。定期的な観察と評価により、問題の発生を未然に防ぐことができます。
スキンケアの評価方法
皮膚の状態は、発赤、びらん、水疱、潰瘍などの有無を確認します。また、皮膚の乾燥状態や湿潤状態についても評価を行います。
予防的ケアの実際
予防的ケアでは、適切な装具の選択と、装具交換時のケアが重要です。装具の密着性を確保しつつ、皮膚への負担を最小限に抑える工夫が必要です。
トラブル対応とケア
皮膚トラブルが発生した場合は、原因を特定し、適切な対応を行うことが重要です。
主な皮膚トラブルとその対応
皮膚炎や湿疹が発生した場合は、原因となる要因を特定し、適切なケア方法を選択します。必要に応じて皮膚保護剤や治療薬を使用しますが、医師との連携が重要です。
治療的スキンケア
治療的スキンケアでは、皮膚の状態に応じた適切な処置を行います。創傷治癒の過程を理解し、それぞれの段階に応じたケアを提供することが大切です。
スキンケア用品の選択と使用方法
スキンケア用品は、患者さんの皮膚の状態や生活環境に合わせて選択します。
スキンケア用品の種類
皮膚保護剤、皮膚保護シート、皮膚用リムーバーなど、様々なスキンケア用品があります。それぞれの特徴を理解し、適切に選択することが重要です。
適切な使用方法
スキンケア用品は、使用方法を誤ると効果が得られないばかりか、皮膚トラブルの原因となることもあります。製品の特性を理解し、適切な使用方法を守ることが大切です。
装具選択と管理

適切な装具の選択と管理は、ストーマケアの成功において最も重要な要素の一つです。患者さんの生活スタイルや身体状況に合わせた装具選択により、快適な日常生活を支援することができます。
装具の基礎知識
ストーマ装具は日々進化しており、様々な種類と特徴を持つ製品が開発されています。基本的な知識を身につけることで、適切な選択が可能になります。
装具の種類と特徴
現在使用されているストーマ装具は、大きく分けてワンピース装具とツーピース装具があります。それぞれの装具には特徴があり、患者さんの状況に応じて選択します。
装具の構造と機能
装具の構造は、皮膚保護性、装着性、フィット感など、様々な機能を考慮して設計されています。それぞれの部分の役割を理解することが重要です。
装具選択の基準
装具の選択には、様々な要因を考慮する必要があります。患者さんの状態や生活環境を総合的に評価し、最適な装具を選択します。
患者アセスメント
年齢、体型、活動性、手指の機能など、患者さんの身体的特徴を評価します。また、仕事や趣味などの生活習慣も重要な考慮要素となります。
ストーマの状態評価
ストーマの形状、突出度、位置などの物理的特徴を評価します。また、排泄物の性状や量も装具選択の重要な判断材料となります。
装具の管理方法
適切な装具の管理により、装具の機能を最大限に活かし、トラブルを予防することができます。
装具交換の時期と方法
装具交換の時期は、装具の種類や患者さんの状態により異なります。適切な交換時期を見極め、確実な手技で行うことが重要です。
装具の保管と準備
装具は適切な環境で保管し、必要数を常に確保しておく必要があります。温度や湿度にも注意を払い、品質を維持することが大切です。
トラブルシューティング
装具使用中に発生する可能性のある問題とその対処方法について理解しておくことが重要です。
よくある問題と対策
装具のリークや皮膚トラブルなど、日常的に発生する可能性がある問題について、その原因と対策を理解しておく必要があります。
緊急時の対応
予期せぬトラブルが発生した際の対応方法について、患者さんと家族に十分な説明を行い、必要な準備をしておくことが重要です。
新しい装具の動向
装具の技術は日々進歩しており、新しい製品や改良版が続々と登場しています。最新の情報を把握し、患者さんに適切な情報提供ができるようにしましょう。
最新の装具情報
新製品や改良された装具について、その特徴と適応について理解を深めることが大切です。メーカーからの情報収集も重要な要素となります。
将来の展望
今後の装具開発の方向性や期待される新技術について理解することで、より良いケアの提供につながります。
生活指導の実践

ストーマを造設された患者さんが自分らしい生活を送るためには、適切な生活指導が不可欠です。患者さんの生活スタイルや環境に合わせた、きめ細やかな指導を行うことで、QOLの向上を支援することができます。
日常生活の指導
日常生活における具体的な注意点や工夫について、患者さんの理解度に合わせて段階的に指導を行います。
清潔管理
入浴やシャワーの方法、装具交換時の清潔保持など、日常的な清潔管理について具体的に説明します。特に入浴時の注意点や工夫について、実践的なアドバイスを提供します。
衣類の選択
ストーマ装具が目立たず、快適に過ごせる衣類の選び方について指導します。季節や場面に応じた適切な衣類選択のポイントを説明します。
食事と栄養管理
適切な食事管理は、ストーマケアの重要な要素です。患者さんの好みや生活習慣を考慮しながら、必要な指導を行います。
食事の基本
消化管ストーマの場合、排泄物の性状に影響を与える食品について説明します。また、適切な水分摂取の重要性についても指導を行います。
食事の工夫
排泄物の臭気対策や、ガス発生を抑える食事の工夫など、具体的なアドバイスを提供します。
運動と活動
適度な運動は、心身の健康維持に重要です。安全に運動を行うための具体的な指導を行います。
運動の選択
ストーマ装具を装着していても安全に行える運動について説明します。運動強度や時間の調整方法についても具体的にアドバイスします。
日常活動の注意点
仕事や家事など、日常的な活動を行う際の注意点について指導します。必要に応じて動作の工夫や補助具の使用についても説明します。
社会生活への復帰支援
患者さんが自信を持って社会生活に復帰できるよう、具体的な支援を行います。
職場復帰の支援
職場での装具交換や緊急時の対応など、実践的なアドバイスを提供します。必要に応じて職場環境の調整についても提案を行います。
社会活動の支援
趣味や外出など、患者さんが望む社会活動が継続できるよう、具体的な支援を行います。
心理的サポート
ストーマ造設に伴う心理的な変化に対して、適切なサポートを提供します。
不安への対応
ストーマ造設後に生じる様々な不安や心配に対して、傾聴と共感を基本としたサポートを行います。
自己受容の支援
患者さんが新しい生活に適応し、前向きに取り組めるよう、段階的な支援を行います。
セルフケア支援
ストーマケアの最終目標は、患者さんが自立したセルフケアを確立することです。患者さんの状態や理解度に合わせた段階的な支援により、確実なセルフケア能力の習得を目指します。
セルフケア支援の基本
セルフケア支援は、患者さん一人一人の状況に合わせて個別化する必要があります。
アセスメント
患者さんの身体機能、認知機能、生活環境などを総合的に評価し、適切な支援計画を立案します。視力や手指の巧緻性など、セルフケアに影響を与える要因について詳細に確認を行います。
目標設定
患者さんと共に具体的な目標を設定します。実現可能な小さな目標から始め、段階的にステップアップしていくことで、確実な習得を目指します。
段階的な指導方法
セルフケアの習得には、適切な段階付けと繰り返しの練習が重要です。
基本手技の習得
装具交換の手順や皮膚ケアなど、基本的な手技から指導を始めます。一つ一つの動作を確実に習得できるよう、丁寧な説明と実践的な指導を行います。
応用技術の習得
基本手技を習得した後、様々な状況での対応方法について指導を行います。予期せぬ状況への対処方法なども含めて、実践的な指導を行います。
モチベーション維持
セルフケアの習得には時間がかかるため、モチベーションの維持が重要です。
成功体験の共有
小さな成功体験を積み重ねることで、自信とやる気を引き出します。達成できた項目を具体的に伝え、前向きな気持ちを支援します。
継続的な支援
定期的な確認と励ましにより、患者さんの意欲を維持します。必要に応じて目標の見直しや支援方法の調整を行います。
評価と改善
セルフケアの習得状況を定期的に評価し、必要な改善を行います。
評価方法
具体的な評価項目を設定し、客観的な評価を行います。患者さん自身による自己評価も重要な要素となります。
継続的なフォロー
セルフケアが確立された後も、定期的な確認とフォローアップを行います。新たな問題や課題が生じた際には、適切な支援を提供します。
合併症予防と対策

ストーマケアにおいて、合併症の予防と早期発見は重要な課題です。適切な予防策と対応により、患者さんのQOL低下を防ぐことができます。
主な合併症とその特徴
ストーマ関連の合併症は、早期に発見し対応することで重症化を防ぐことができます。
皮膚障害
皮膚障害は最も頻度の高い合併症です。装具の密着不良や排泄物との接触により、様々な皮膚トラブルが発生する可能性があります。早期発見と適切なケアが重要となります。
ストーマ周囲の合併症
ストーマ周囲のヘルニアや陥没、狭窄などの合併症は、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。定期的な観察と評価が必要です。
予防策の実践
効果的な予防策を実践することで、多くの合併症を防ぐことができます。
日常的な予防ケア
適切な装具の選択と確実な装着、定期的な観察により、多くの合併症を予防することができます。特に皮膚保護は重要な要素となります。
生活指導による予防
適切な生活習慣の指導により、合併症のリスクを軽減することができます。運動や食事など、日常生活における注意点を具体的に説明します。
早期発見と対応
合併症の早期発見には、計画的な観察と評価が重要です。
観察のポイント
定期的な観察により、わずかな変化も見逃さないようにします。特にストーマの色調変化や周囲皮膚の状態には注意が必要です。
適切な報告と連携
異常を発見した場合は、速やかに医師や専門家に報告し、適切な対応を行います。多職種との連携により、効果的な治療とケアを提供します。
在宅ケアの実際
在宅でのストーマケアは、病院とは異なる環境での対応が求められます。患者さんとご家族が安心して在宅生活を送れるよう、きめ細やかな支援を提供することが重要です。
在宅環境の整備
在宅でのストーマケアを成功させるためには、適切な環境整備が不可欠です。
ケア環境の確保
装具交換のための専用スペースの確保や、必要な設備の設置など、安全で効率的なケアが行える環境を整えます。照明や手洗い設備などにも配慮が必要です。
物品の管理
必要な装具や物品を適切に保管し、緊急時にも対応できるよう準備を整えます。定期的な在庫確認と補充の方法についても具体的に指導します。
在宅での工夫
在宅特有の課題に対応するため、様々な工夫が必要となります。
生活動線の確保
トイレや洗面所との位置関係を考慮し、効率的な動線を確保します。特に夜間の対応を考慮した環境整備が重要です。
家族との協力体制
家族の理解と協力を得ながら、継続的なケアを実現します。必要に応じて家族への指導も行い、支援体制を整えます。
訪問看護での支援
訪問看護師は、在宅でのストーマケアを支援する重要な役割を担います。
定期的な評価
定期訪問により、ストーマの状態や患者さんの生活状況を評価します。必要に応じてケア方法の見直しや新たな提案を行います。
緊急時の対応
予期せぬトラブルが発生した際の対応方法について、あらかじめ患者さんとご家族に説明し、安心感を提供します。
症例検討
実際の症例を通じて、ストーマケアの実践的なアプローチを学びます。ここでは、代表的な症例とその対応方法について解説し、日々のケアに活かせるポイントをご紹介します。
症例1:高齢者のストーマケア
認知機能の低下がある80代の患者さんのケース から、高齢者特有の課題と対応方法を学びます。
症例の概要
長年の糖尿病による視力低下と手指の巧緻性低下がある方のストーマケアです。セルフケアの確立に向けて、様々な工夫と支援が必要となりました。
具体的な支援内容
視覚補助具の活用や、装具交換手順の簡略化など、患者さんの状態に合わせた工夫を行いました。ご家族の協力も得ながら、安全なケア方法を確立することができました。
症例2:就労中の若年患者
30代の会社員の方のケースから、社会生活との両立における課題と解決策を考えます。
症例の概要
営業職として活躍する方の職場復帰に向けたケアです。活動的な生活スタイルに合わせた装具選択と管理方法が課題となりました。
支援のポイント
防水性と密着性を重視した装具の選択や、職場での緊急対応キットの準備など、具体的な対策を講じました。その結果、スムーズな職場復帰を実現することができました。
症例3:合併症を伴うケース
皮膚障害と傍ストーマヘルニアを併発した症例から、複雑な状況での対応方法を学びます。
症例の経過
複数の合併症により、装具選択と皮膚ケアに苦慮したケースです。多職種との連携により、状況の改善を図ることができました。
改善のための取り組み
皮膚・排泄ケア認定看護師と皮膚科医との協働により、適切なケア方法を確立しました。装具の工夫とスキンケアの徹底により、合併症の管理が可能となりました。
チーム医療の実践
ストーマケアの質を高めるためには、多職種が協働するチーム医療が不可欠です。それぞれの専門性を活かしながら、患者さんを中心とした効果的なケアを提供することが重要です。
多職種連携の実際
効果的なチーム医療を実現するためには、各職種の役割を理解し、適切な連携を図ることが重要です。
チームメンバーの役割
医師、看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、管理栄養士、理学療法士など、各職種がそれぞれの専門性を活かしてケアに参加します。必要に応じてソーシャルワーカーや臨床心理士なども加わり、総合的な支援を行います。
連携の実践方法
定期的なカンファレンスや情報共有により、患者さんの状態や課題について話し合います。それぞれの視点からの意見を集約し、より良いケア方法を検討します。
情報共有の重要性
チーム医療において、適切な情報共有は非常に重要な要素です。
記録と伝達
ケアの内容や患者さんの状態変化について、正確な記録と適切な情報伝達を行います。統一した評価基準を用いることで、客観的な状態把握が可能となります。
継続的な評価
定期的なケアカンファレンスにより、支援内容の評価と見直しを行います。必要に応じて新たな職種との連携を図り、よりよいケアの提供を目指します。
おしえてカンゴさん!(Q&A)
現場で実際によくある疑問や課題について、経験豊富な看護師が分かりやすく解説します。日々の実践で活用できる具体的なアドバイスをお届けします。
ストーマケアの基本
Q:装具交換の適切なタイミングを教えてください
装具交換は、一般的に2〜3日ごとが目安となります。ただし、患者さんの状態や生活習慣、使用している装具の種類によって個人差があります。皮膚の状態や装具のフィット感を確認しながら、適切なタイミングを見極めることが重要です。
スキンケアについて
Q:皮膚保護材の使用方法について詳しく教えてください
皮膚保護材は、清潔で乾燥した皮膚に薄く均一に塗布します。完全に乾燥させてから装具を装着することで、より効果的な皮膚保護が可能となります。使用する製品の特性を理解し、適切な使用方法を守ることが大切です。
生活指導のポイント
Q:入浴時の注意点を教えてください
入浴は装具を付けたままでも可能です。ただし、長時間の入浴は装具の密着性に影響を与える可能性があるため、15〜20分程度を目安とすることをお勧めします。入浴後は装具周囲をしっかり乾燥させることが重要です。
まとめ
ストーマケアは患者さん一人一人に合わせた個別的なアプローチが重要です。
本記事で解説した実践的なケア技術と指導方法を、日々の看護実践にお役立てください。より詳しい情報や、実践に役立つ技術の動画、先輩ナースの体験談は、【ナースの森】看護師専門サイトでご覧いただけます。
さらに詳しく学びたい方へ
【ナースの森】では、本記事で紹介したストーマケアの実践テクニックに加え、以下のようなコンテンツをご用意しています。
■ 【ナースの森】看護師のためのサイト