
経験豊富な看護師の知見を基に、日々の看護実践に欠かせない患者情報の収集方法を徹底解説いたします。
情報収集の基本から応用まで、現場ですぐに活用できる具体的な手順とテクニックをお伝えします。
本記事では、単なる情報収集の方法論だけでなく、収集した情報を効果的に分析し、質の高い看護ケアにつなげるためのノウハウもご紹介します。
この記事で分かること
- 系統的な情報収集の具体的な手順と実践テクニック
- 観察ポイントの明確化と効率的な情報収集方法
- 患者とのコミュニケーションを通じた効果的な情報収集術
- 収集した情報の分析・活用方法と適切な記録の取り方
- 多職種連携における効果的な情報共有の方法
この記事を読んでほしい方
- 情報収集の効率化を目指している看護師
- アセスメント力を向上させたい看護師
- 患者理解をより深めたい看護師
- 記録業務の改善を検討している看護師
- 多職種連携における情報共有スキルを磨きたい看護師
系統的な情報収集の基本
患者さんの状態を正確に把握し、適切なケアを提供するためには、系統的な情報収集が不可欠です。
このセクションでは、効率的かつ確実な情報収集の基本的な考え方と具体的な方法をご説明します。
フォーカスアセスメントの活用
重点観察項目の設定方法
患者の主訴や診断に基づいて、優先的に収集すべき情報を特定していきます。
呼吸器症状がある患者さんであれば、呼吸数、呼吸音、酸素化、咳嗽の性状などが重要な観察項目となります。
これらの項目を予め明確にすることで、効率的な情報収集が可能になります。
系統別アセスメントの進め方
呼吸器系、循環器系、消化器系など、身体の各システムに沿って情報を収集することで、見落としを防ぐことができます。
特に急性期の患者さんの場合は、バイタルサインを含む重要な生理学的パラメーターを優先的に確認します。
情報収集の優先順位付け
緊急度に基づく優先順位
生命に直結する情報を最優先とし、次いで治療やケアに直接影響する情報、背景情報という順で収集を進めます。
特に急変の可能性がある患者さんでは、バイタルサインや意識レベルなどの重要な情報から収集を開始します。
経時的変化の把握
患者さんの状態は刻々と変化するため、定期的な再評価が重要です。前回の観察時からの変化を意識しながら情報を収集することで、状態の変化を早期に察知することができます。
情報源の選択と活用
直接的情報収集の方法
患者さんとの対話や身体診察を通じて、一次情報を収集します。この際、患者さんの心理状態や疲労度に配慮しながら、必要な情報を効率的に得ることが重要です。
また、非言語的コミュニケーションからも多くの情報を得ることができます。
間接的情報源の活用
電子カルテ、検査データ、他職種からの情報など、様々な二次情報源を効果的に活用します。これらの情報を統合することで、より包括的な患者理解が可能になります。
標準化された評価ツールの使用
スケールとツールの選択
疼痛評価スケール、褥瘡リスクアセスメントツール、転倒リスクアセスメントツールなど、状況に応じた適切な評価ツールを選択します。
これらの標準化されたツールを用いることで、客観的な評価が可能になります。
評価結果の解釈と活用
各評価ツールの特性と限界を理解し、結果を適切に解釈することが重要です。得られた結果は、ケアプランの立案や他職種との情報共有に活用します。
記録と共有の基本原則
正確な記録の方法
収集した情報は、具体的かつ客観的に記録します。主観的情報と客観的情報を明確に区別し、時系列に沿って記録することで、情報の追跡と共有が容易になります。
効果的な情報共有の手段
カンファレンスや申し送りの際に、収集した情報を効果的に共有する方法を身につけます。特に重要な情報や変化点については、確実に伝達されるよう工夫が必要です。
この系統的な情報収集の基本を押さえることで、より効率的で質の高い看護実践が可能になります。
効果的な観察テクニック
効果的な患者観察は、質の高い看護ケアの基盤となります。このセクションでは、客観的データと主観的情報の収集方法、そしてそれらを組み合わせた総合的な観察テクニックについて詳しく解説します。
客観的データの収集
バイタルサインの測定技術
正確なバイタルサイン測定のためには、適切な測定方法と判断基準の理解が重要です。
体温は測定部位による特性を理解し、脈拍は規則性や強さにも注目します。血圧測定では、カフ幅の選択や測定肢位にも配慮が必要です。
フィジカルアセスメントの実施手順
視診、触診、打診、聴診を系統的に行うことで、より詳細な身体情報を得ることができます。特に呼吸音の聴取では、部位による正常音の違いを理解し、副雑音の有無を確認します。
主観的情報の収集
効果的な問診テクニック
患者さんの訴えを正確に把握するため、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを適切に使い分けます。特に痛みの評価では、部位、性質、強さ、増悪因子などを具体的に確認します。
非言語的コミュニケーションの観察
表情、姿勢、声のトーン、身振り手振りなど、患者さんの非言語的な表現からも多くの情報を得ることができます。
これらの観察は、特に言語的コミュニケーションが困難な患者さんの場合に重要です。
モニタリング機器の活用
各種モニターの読み方
心電図モニター、パルスオキシメーター、人工呼吸器などの医療機器から得られるデータの解釈方法を理解します。
数値の変化だけでなく、波形の特徴にも注目することで、より詳細な状態把握が可能になります。
アラーム管理と対応
モニタリング機器のアラーム設定は、患者さんの状態に応じて適切に調整します。アラーム発生時は、機器の不具合なのか、患者さんの状態変化なのかを適切に判断することが重要です。
経時的変化の観察
トレンド分析の方法
バイタルサインや各種データの経時的変化を分析することで、患者さんの状態の推移を把握します。数値の変動傾向を理解し、異常の早期発見につなげます。
状態変化の予測
過去のデータと現在の状態を比較分析することで、今後起こりうる変化を予測します。予測に基づいて、必要な予防的介入を計画することができます。
観察記録の工夫
SOAP形式による記録
主観的データ(S)、客観的データ(O)、アセスメント(A)、プラン(P)の形式で記録することで、情報の整理と共有が容易になります。
特にアセスメントでは、収集した情報の統合と解釈が重要です。
記録の効率化テクニック
重要な情報を簡潔かつ正確に記録するため、標準化された用語や略語を適切に使用します。ただし、誤解を招く可能性のある略語は避けることが重要です。
効果的な観察テクニックを身につけることで、より確実な患者アセスメントが可能になります。
デジタルツールを活用した情報収集

近年の医療現場では、様々なデジタルツールが導入され、情報収集の効率化が進んでいます。
このセクションでは、電子カルテやモバイル端末などのデジタルツールを活用した、最新の情報収集手法についてご説明します。
電子カルテの効果的活用
データベース機能の使いこなし
電子カルテに蓄積された過去の診療情報や看護記録を効率的に検索・参照することで、患者さんの経過を包括的に把握することができます。
キーワード検索機能やフィルター機能を活用することで、必要な情報へ素早くアクセスすることが可能です。
テンプレート機能の活用
頻繁に使用する観察項目や評価内容をテンプレート化することで、記録の効率化と標準化を図ることができます。ただし、個別性を損なわないよう、必要に応じてカスタマイズすることが重要です。
モバイル端末の活用技術
ベッドサイド端末の使用方法
ベッドサイドで直接データを入力できるモバイル端末を活用することで、記憶違いや転記ミスを防ぐことができます。
特にバイタルサイン測定値や患者さんの訴えなど、その場で記録が必要な情報に有効です。
医療用アプリケーションの活用
医療者向けの各種アプリケーションを活用することで、アセスメントツールやガイドラインへの迅速なアクセスが可能になります。
ただし、使用するアプリケーションの信頼性と安全性を確認することが重要です。
デジタル機器を用いた測定・記録
自動測定機器の活用
自動血圧計や体温計などのデジタル機器を活用することで、測定値の自動記録が可能になります。これにより、転記作業が削減され、記録の正確性が向上します。
データの統合管理
各種測定機器からのデータを一元管理することで、患者さんの状態変化を視覚的に把握することができます。グラフ化機能などを活用することで、経時的な変化がより分かりやすくなります。
情報セキュリティの配慮
個人情報保護の実践
デジタルツールを使用する際は、パスワード管理や画面の覗き見防止など、基本的なセキュリティ対策を徹底します。特に患者さんの個人情報を扱う際は、細心の注意を払うことが必要です。
データバックアップの重要性
システムトラブルに備えて、重要な情報の定期的なバックアップと、紙媒体での記録保管も考慮します。
特に重要な観察項目については、システムダウン時の対応手順を事前に確認しておきます。
システムトラブル時の対応
代替手段の確保
システムダウン時に備えて、紙媒体での記録用紙や連絡体制を整備しておきます。特に重要な患者情報については、定期的にプリントアウトを行うなどの対策が必要です。
円滑な移行手順
システム復旧後のデータ統合がスムーズに行えるよう、一時的な紙媒体での記録方法を標準化しておきます。これにより、情報の欠落や混乱を最小限に抑えることができます。
デジタルツールを効果的に活用することで、情報収集の効率化と質の向上を図ることができます。
多職種連携における情報共有

質の高い医療を提供するためには、看護師、医師、その他の医療専門職との効果的な情報共有が不可欠です。
このセクションでは、多職種間での円滑な情報共有を実現するための具体的な方法と注意点についてご説明します。
効果的な情報伝達方法
SBAR手法の活用
状況(Situation)、背景(Background)、評価(Assessment)、提案(Recommendation)の順で情報を整理して伝えることで、簡潔かつ的確な情報共有が可能になります。
特に医師への報告時には、この手法が効果的です。
優先度の明確化
緊急性の高い情報は、速やかに共有する必要があります。患者さんの状態変化や異常値などは、適切なタイミングで確実に伝達することが重要です。
カンファレンスでの情報共有
事前準備の重要性
効果的なカンファレンスのために、関連データの整理や問題点の明確化など、事前準備を十分に行います。参加者全員が議論に参加できるよう、必要な資料を準備することも大切です。
進行と時間管理
限られた時間で効率的に情報共有を行うため、議題の優先順位付けと時間配分を適切に行います。特に重要な案件については、十分な討議時間を確保することが必要です。
申し送りのベストプラクティス
重要事項の確実な伝達
勤務交代時の申し送りでは、継続的な観察が必要な項目や、実施すべきケアについて漏れなく伝達します。特に注意が必要な患者さんの情報は、確実に引き継ぐことが重要です。
双方向のコミュニケーション
申し送りを受ける側からの質問や確認を促し、情報の理解度を確認します。特に指示内容や注意事項については、復唱などで確実な伝達を確認します。
記録を通じた情報共有
標準化された記録形式
多職種間で共有される記録は、統一された形式で作成することで、情報の解釈や活用がしやすくなります。必要な情報が必要な場所に記載されるよう、記録様式を工夫します。
記録内容の充実
他職種が必要とする情報を意識して記録を作成します。特に患者さんの反応や変化については、具体的な記載を心がけることが重要です。
チーム医療における役割分担
職種間の連携強化
各職種の専門性を理解し、それぞれの役割を尊重しながら情報共有を行います。互いの専門知識を活かしながら、より良いケアを提供することが可能になります。
情報共有の責任所在
誰が誰に、どのような情報を、いつまでに伝えるのかを明確にします。特に重要な情報については、確実な伝達ルートを確立しておくことが必要です。
多職種間での効果的な情報共有により、より質の高い医療の提供が可能になります。
特殊な状況における情報収集
患者さんの状態や背景によって、標準的な情報収集が困難な場合があります。
このセクションでは、認知症、言語障害、小児、高齢者など、特別な配慮が必要な状況での効果的な情報収集方法についてご説明します。
認知症患者からの情報収集
コミュニケーション方法の工夫
認知症の患者さんとのコミュニケーションでは、ゆっくりと分かりやすい言葉を使用し、一度に多くの質問を避けることが重要です。また、患者さんの反応を見ながら、適切なペースで会話を進めていきます。
非言語的サインの観察
表情や仕草、声のトーンなど、非言語的なコミュニケーションからも多くの情報を得ることができます。特に痛みや不快感の評価では、行動観察が重要な手がかりとなります。
言語障害のある患者への対応
コミュニケーションツールの活用
文字盤やコミュニケーションボード、タブレット端末などの補助ツールを活用することで、より円滑な情報収集が可能になります。患者さんの残存機能に応じて、適切なツールを選択することが重要です。
家族からの情報収集
言語障害のある患者さんの場合、家族や介護者から普段の様子や変化について詳しく情報を得ることが重要です。特に生活習慣や好みなどの情報は、より良いケアの提供に役立ちます。
小児患者からの情報収集
年齢に応じたアプローチ
発達段階に合わせた言葉遣いや説明方法を選択します。幼児の場合は遊びを通じた観察が効果的で、学童期では本人からの直接的な情報収集も可能になります。
保護者との協力関係
小児患者の場合、保護者からの情報も非常に重要です。普段の様子や変化、生活習慣などについて、詳しく聞き取りを行います。また、保護者の不安や心配事にも配慮することが大切です。
高齢者特有の注意点
包括的な情報収集
高齢者の場合、複数の疾患や症状を抱えていることが多いため、身体面だけでなく、精神面や社会面も含めた包括的な情報収集が必要です。また、薬剤の使用状況や副作用の有無なども重要な情報となります。
生活機能の評価
日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)の評価を通じて、生活機能の状態を把握します。これらの情報は、退院支援や在宅ケアの計画立案に重要な役割を果たします。
文化的・言語的な配慮
異文化理解の重要性
様々な文化的背景を持つ患者さんに対しては、その文化的価値観や習慣を理解し、尊重することが重要です。特に、宗教的な制約や生活習慣については、十分な配慮が必要です。
通訳サービスの活用
言語の異なる患者さんの場合、医療通訳サービスを活用することで、より正確な情報収集が可能になります。通訳を介したコミュニケーションでは、専門用語の使用を避け、簡潔な表現を心がけます。
特殊な状況における情報収集では、患者さんの個別性を理解し、適切な方法を選択することが重要です。
トラブルシューティング

看護実践における情報収集では、様々な課題や困難に直面することがあります。
このセクションでは、よくある問題とその具体的な解決策、さらに予防的なアプローチについてご説明します。
一般的な課題と解決策
時間的制約への対応
業務多忙な中での効率的な情報収集が求められる場合、優先順位を明確にし、必要な情報を確実に収集することが重要です。
また、チームメンバーと協力して情報を共有し、重複した収集を避けることで、時間の効率化を図ることができます。
情報の信頼性確保
患者さんから得られる情報が曖昧または矛盾する場合には、複数の情報源から確認を行います。
また、客観的なデータと主観的な情報を照らし合わせることで、より正確な状況把握が可能になります。
コミュニケーション上の問題
意思疎通が困難な場合の対応
患者さんとの意思疎通が難しい場合は、非言語的コミュニケーションや補助ツールの活用を検討します。
また、家族や介護者からの情報収集を強化することで、必要な情報を補完することができます。
感情的な状況での対応
不安や怒りを抱えている患者さんからの情報収集では、まず感情を受け止め、共感的な態度で接することが重要です。
落ち着いた環境を整え、十分な時間を確保することで、より円滑な情報収集が可能になります。
システムトラブルへの対応
電子カルテ障害時の対策
システムダウン時に備えて、重要な情報の紙媒体でのバックアップや、代替的な記録方法を事前に準備しておきます。
また、システム復旧後のデータ統合手順も明確にしておく必要があります。
データ入力ミスの防止
入力ミスを防ぐため、データの入力後に必ず確認を行います。特に重要なデータについては、ダブルチェックの体制を整えることで、より確実な情報管理が可能になります。
予防的アプローチ
リスク予測と対策
過去のインシデントや課題を分析し、起こりやすい問題を事前に予測します。それに基づいて、予防的な対策を講じることで、トラブルの発生を最小限に抑えることができます。
標準化された手順の確立
情報収集の手順を標準化し、チーム内で共有することで、一貫性のある情報収集が可能になります。
また、定期的な見直しと更新を行うことで、より効果的な手順の確立を目指します。
改善活動の実施
課題の分析と対策立案
定期的にカンファレンスを開催し、情報収集における課題を共有・分析します。チーム全体で改善策を検討し、実践することで、より効果的な情報収集体制を構築することができます。
評価とフィードバック
改善策の実施後は、その効果を評価し、必要に応じて修正を加えます。スタッフからのフィードバックを積極的に収集し、より実践的な解決策の開発につなげていきます。
トラブルシューティングの経験を積み重ねることで、より効果的な情報収集が可能になります。
法的・倫理的配慮

医療における情報収集では、患者さんの権利を守り、法的・倫理的な観点からの適切な配慮が不可欠です。
このセクションでは、個人情報保護や守秘義務の具体的な実践方法、さらに電子記録における注意点についてご説明します。
個人情報保護の実践
基本的な注意事項
患者さんの個人情報を取り扱う際は、必要最小限の情報収集を心がけ、収集目的を明確にすることが重要です。また、収集した情報は適切に管理し、不必要な拡散を防ぐ必要があります。
情報管理の具体策
診療記録や看護記録の保管場所を適切に管理し、アクセス権限を明確にします。特に紙媒体の記録は施錠可能な場所での保管が必要であり、電子記録についてもパスワード管理を徹底します。
守秘義務と情報共有
守秘義務の範囲
医療従事者には職業上の守秘義務があり、患者さんの情報を適切に保護する責任があります。ただし、患者さんの利益のために必要な範囲での情報共有は認められており、その判断基準を理解することが重要です。
適切な情報共有の方法
多職種間での情報共有は、患者さんのケアに必要な範囲内で行います。カンファレンスや申し送りの際も、場所や声の大きさに配慮し、プライバシーの保護を徹底します。
電子記録における法的配慮
電子カルテの運用基準
電子カルテの使用においては、アクセス権限の設定や操作履歴の管理が重要です。また、代行入力を行う場合は、入力者と指示者を明確に記録する必要があります。
データの保存と管理
法定保存期間を遵守し、適切なバックアップ体制を整備します。また、データの改ざん防止機能や監査証跡の確保など、システムの安全性を確保することが重要です。
インフォームドコンセント
適切な情報提供
患者さんの自己決定権を尊重し、必要な情報を分かりやすく提供します。特に検査や処置の際は、目的や方法、予想されるリスクについて十分な説明を行います。
同意の確認と記録
患者さんの同意を得る際は、理解度を確認しながら進め、同意の過程を適切に記録します。また、同意を撤回する権利があることも説明しておくことが重要です。
プライバシーへの配慮
物理的な環境整備
診察や処置の際は、カーテンやパーテーションを適切に使用し、プライバシーを確保します。また、会話の際も周囲への配慮を忘れずに行います。
情報提供時の配慮
電話での情報提供や、家族への説明の際は、患者さんの意向を確認し、適切な場所と方法を選択します。また、面会制限など、患者さんのプライバシー保護に関する希望にも配慮します。
法的・倫理的配慮を適切に行うことで、患者さんとの信頼関係を築き、より質の高い看護ケアを提供することができます。
ケーススタディ
これまで解説してきた情報収集の理論と技術を、実際の臨床場面でどのように活用するのか、具体的な事例を通じて学んでいきましょう。
このセクションでは、様々な状況における情報収集の実践例を詳しく解説します。
急性期における情報収集
救急搬送時の初期評価
救急搬送された70歳の男性Aさんの事例です。意識レベルJCS1、胸痛を主訴に来院されました。
バイタルサインや症状の確認に加え、発症時の状況や既往歴など、重要な情報を短時間で収集する必要がありました。
救急隊からの情報、家族からの聞き取り、電子カルテの確認を並行して行い、必要な情報を効率的に収集しました。
情報の優先順位付け
この事例では、生命に直結する情報を最優先に収集し、その後、より詳細な情報収集を行いました。特に、胸痛の性状や随伴症状、既往歴などの情報は、緊急度の判断に重要な役割を果たしました。
慢性期における継続的な情報収集
糖尿病患者の生活習慣評価
2型糖尿病で通院中の50歳の女性Bさんの事例です。
血糖コントロールが不安定な状態が続いていたため、生活習慣や服薬状況について詳細な情報収集を行いました。
日々の食事内容、運動習慣、服薬状況などを、患者さんの生活リズムに合わせて段階的に確認していきました。
長期的な変化の把握
定期的な面談を通じて、生活習慣の改善状況や自己管理の課題を継続的に評価しました。
特に、仕事や家庭環境の変化が血糖コントロールに与える影響について注目して情報を収集しました。
退院支援における情報収集
在宅療養に向けた環境調整
脳梗塞後のリハビリテーション目的で入院していた80歳の女性Cさんの事例です。
退院に向けて、自宅環境、家族のサポート体制、利用可能な社会資源などについて、多職種と協力しながら包括的な情報収集を行いました。
家族を含めた支援体制の構築
主介護者となる娘さんの生活状況や介護力の評価、さらに地域の介護サービスの利用可能性について情報を収集しました。また、自宅での生活をイメージした具体的な課題の抽出も行いました。
精神科領域における情報収集
信頼関係の構築過程
統合失調症で入院中の30歳の男性Dさんの事例です。
初期の情報収集は困難を伴いましたが、時間をかけて信頼関係を構築し、段階的に必要な情報を収集していきました。
特に、症状の変化や日常生活での課題について、患者さんの視点を尊重しながら情報を集めました。
多面的な情報収集
患者さんからの直接的な情報に加え、行動観察、他患者さんとの交流状況、家族からの情報など、様々な角度から情報を収集し、総合的な評価を行いました。
これらのケーススタディを通じて、状況に応じた情報収集の方法と、収集した情報の活用方法について理解を深めることができます。
看護師さんからのQ&A「おしえてカンゴさん!」
情報収集に関して、現場の看護師さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。実践的なヒントとして、ぜひ活用してください。
情報収集の基本に関する質問
Q1:効率的な情報収集のコツは?
優先順位を明確にし、システマティックに情報を収集することが重要です。まずバイタルサインや重要な症状などの基本情報を確実に収集し、その後、より詳細な情報へと段階的に進めていきましょう。
特に急性期の場合は、生命に関わる情報を最優先に収集する必要があります。
Q2:記録の時間を短縮するには?
電子カルテのテンプレート機能を活用し、よく使用する項目や定型文をあらかじめ登録しておくと効率的です。
また、重要な情報はメモを取るなどして、後で思い出す手間を省くことができます。記録は簡潔かつ具体的に行い、必要な情報を漏れなく記載することを心がけましょう。
コミュニケーションに関する質問
Q3:患者さんとの信頼関係を築くには?
まずは患者さんの話に耳を傾け、共感的な態度で接することが大切です。急かさず、患者さんのペースに合わせてコミュニケーションを取ることで、より正確な情報を得ることができます。
また、非言語的コミュニケーションにも注意を払い、患者さんの心理状態を理解するよう努めましょう。
Q4:家族からの情報収集のポイントは?
家族の不安や心配事にも配慮しながら、患者さんの普段の様子や生活習慣について具体的に聞き取りを行います。
特に在宅療養を視野に入れる場合は、家族の介護力や生活環境についても詳しく情報を収集する必要があります。
特殊な状況への対応
Q5:認知症患者さんからの情報収集で困ったときは?
短い質問を心がけ、一度に多くの情報を求めすぎないことが重要です。
また、家族や介護者からの情報も積極的に収集し、患者さんの普段の様子や変化について把握するようにします。行動観察からも多くの情報が得られますので、注意深く観察を行いましょう。
Q6:言語の異なる患者さんへの対応は?
医療通訳サービスの活用を検討しましょう。
また、コミュニケーションボードやタブレット端末の翻訳機能なども活用できます。非言語的コミュニケーションも重要な情報源となりますので、表情やジェスチャーにも注意を払いましょう。
システムトラブル時の対応
Q7:電子カルテがダウンしたときは?
紙媒体での記録に切り替え、必要な情報を確実に記録します。
システム復旧後、記録した情報を電子カルテに入力する際は、情報の漏れや誤りがないよう注意深く確認を行います。特に重要な情報については、ダブルチェックを行うことをお勧めします。
これらの質問と回答を参考に、より効果的な情報収集を実践してください。
まとめ
効果的な患者情報の収集は、質の高い看護ケアを提供するための基盤となります。
系統的なアプローチ、デジタルツールの活用、多職種連携、そして様々な状況に応じた柔軟な対応が重要です。
特に、法的・倫理的配慮を忘れずに、患者さん一人ひとりの個別性を大切にした情報収集を心がけましょう。
より詳しい看護実践のヒントやキャリアに関する情報は、【はたらく看護師さん】をご覧ください。
当サイトでは、臨床での困りごとや悩みに対する解決策、キャリアアップのためのアドバイスなど、現場で活躍する看護師さんに役立つ情報を豊富に取り揃えています。
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