
看護師としてのキャリアを積み重ねてきた方の中には、「地域医療に広く関わりたい」「予防医学の視点から人々の健康を支えたい」と考え、保健師へのキャリアアップを検討される方も多いでしょう。
本記事では、看護師から保健師への転向に必要な情報を徹底解説します。
資格取得の具体的プロセスから、実際の業務内容の違い、そして活躍事例まで、保健師を目指す看護師さんに役立つ情報を網羅しました。
2025年現在の最新情報と将来性も含め、あなたのキャリアアップを全力でサポートします。
この記事で分かること
- 看護師から保健師になるための資格取得方法と期間
- 看護師と保健師の仕事内容・スキルの違い
- 保健師として活躍するためのキャリアプラン
- 実際に転向を果たした先輩たちの体験談と具体的アドバイス
- 2025年最新の保健師を取り巻く環境と将来性
この記事を読んでほしい人
- 看護師として働きながら保健師資格の取得を検討している方
- キャリアアップの選択肢として保健師に興味がある看護師
- 予防医療や地域保健活動に関心がある医療従事者
- 看護師から保健師へのキャリアチェンジを計画している方
- 保健師の仕事内容や活動範囲について知りたい方
- ワークライフバランスの改善を目指している方
- 長期的なキャリア構築を考えている医療従事者
看護師と保健師の違い – 基本を理解しよう

看護師から保健師へのキャリアチェンジを考える際、まず両者の根本的な違いを理解することが重要です。
同じ医療・看護の分野ながら、活動範囲、アプローチ、対象者、必要なスキルセットが大きく異なります。
ここでは、それぞれの職種の特徴を詳しく比較し、あなたの適性や希望するキャリアパスと照らし合わせる材料を提供します。
活動範囲とアプローチの違い
看護師と保健師は、同じ医療分野でも活動範囲やアプローチに大きな違いがあります。
看護師が主に医療機関内で個々の患者に対して治療中心のケアを提供するのに対し、保健師は地域全体を対象に、予防を重視した公衆衛生活動を展開します。
看護師の活動範囲は主に病院や診療所などの医療施設内です。
患者さんが「すでに病気になった状態」で関わることが多く、診断された疾患に対する治療やケアが中心となります。
例えば、糖尿病患者さんの血糖コントロールのサポートや、術後の回復支援などが典型的な業務です。
一方、保健師は市区町村の保健センター、保健所、企業の健康管理室など、より広い範囲で活動します。
「病気になる前」の健康な状態から関わり、疾病予防や健康増進に重点を置きます。
例えば、地域住民全体を対象とした生活習慣病予防教室の開催や、特定の健康リスクを持つグループへの保健指導などを行います。
「看護師は病気を治す専門家、保健師は病気にならないようにする専門家」という表現がその違いを端的に表しています。
看護師が個々の患者の治療とケアに集中するのに対し、保健師は集団や地域全体の健康問題を把握し、予防的アプローチで健康課題の解決に取り組みます。
保健師の具体的な活動例としては、以下のようなものがあります:
家庭訪問による健康状態の確認と助言
乳幼児健診や成人健診の企画・実施
健康相談や健康教育プログラムの開発と実施
感染症発生時の調査と予防対策
災害時の健康支援活動
このように、保健師は「地域」という広い視点から人々の健康を支援する役割を担っています。
看護師としての経験は保健師活動の基盤となりますが、視点やアプローチ方法は大きく異なることを理解しておく必要があります。
対象者の違い
看護師と保健師では、ケアの対象者にも明確な違いがあります。
この違いを理解することで、自分がどのような形で医療・看護に関わりたいかの判断材料になるでしょう。
看護師の対象者は主に「患者個人」です。
医療機関を訪れる患者さんに対して、個別性を重視したケアを提供します。
疾患や症状に焦点を当て、その改善や管理を目的としたケアが中心です。
対象者との関わりは入院期間や通院期間に限定されることが多く、比較的短期間の関係性となることもあります。
一方、保健師の対象者は「地域住民全体」です。
赤ちゃんから高齢者まで、あらゆる年齢層の健康な人々も含めた幅広い対象に関わります。
個人だけでなく、家族や特定集団(例:母子、高齢者、職場の従業員など)、さらには地域社会全体を対象として活動します。
例えば、ある地域で糖尿病の発症率が高い場合、その地域特有の生活習慣や環境要因を分析し、地域全体への予防的アプローチを計画するといった活動を行います。
保健師の対象者とのつながりは長期的であることが特徴で、時には数年から数十年にわたって同じ地域の住民と関わり続けることもあります。
これにより、対象者の生活背景や地域の特性を深く理解した上でのケアが可能になります。
保健師がカバーする対象者の具体例:
妊産婦と乳幼児(母子保健活動)
学童・生徒(学校保健活動)
勤労世代(産業保健活動)
高齢者(介護予防、認知症予防活動)
精神保健福祉対象者(精神保健活動)
感染症リスクのある集団(感染症対策)
このように、保健師は様々なライフステージにある人々を幅広くカバーし、それぞれの特性に合わせた健康支援活動を展開しています。
看護師から保健師へのキャリアチェンジは、対象者の幅が大きく広がることを意味します。
必要なスキルと知識の違い
看護師と保健師では求められるスキルや知識にも大きな違いがあります。
両者の専門性の違いを理解することで、自分の強みを活かしつつ、新たに習得すべきスキルが明確になるでしょう。
看護師に特に求められるスキルと知識:
臨床看護技術(注射、採血、バイタルサイン測定など)
疾患別の看護過程展開能力
急変時の迅速な判断と対応能力
医療機器の操作技術
チーム医療における連携能力
個別性を重視したケアプラン作成能力
看護師の業務は医療機関内での直接的なケア提供が中心となるため、実践的な看護技術や臨床判断能力が重視されます。
また、医師や他の医療スタッフとの緊密な連携も必要です。
一方、保健師に特に求められるスキルと知識は以下の通りです:
地域診断能力(地域の健康課題を把握・分析する力)
保健指導・健康教育のスキル
行政システムの理解と活用能力
多職種連携のコーディネート力
政策立案や事業計画の能力
疫学・保健統計の知識と活用能力
地域資源の発掘と活用能力
集団や組織へのアプローチ方法
保健師は「地域全体の健康」という広い視点での活動が求められるため、個人へのケアだけでなく、集団や地域全体を対象とした施策を計画・実施するスキルが必要です。
また、行政機関で働くことが多いため、法律や制度の知識、事務処理能力も求められます。
例えば、ある地区で高齢者の転倒事故が多発している場合、看護師は転倒した個々の患者のケアに集中しますが、保健師はなぜその地区で転倒が多いのか原因を調査し、地域全体を対象とした転倒予防教室の開催や環境整備の提案などを行います。
両者に共通して求められるスキルとしては、コミュニケーション能力、アセスメント能力、エビデンスに基づいた実践能力などがありますが、それらを発揮する場面や方法には違いがあります。
看護師から保健師へのキャリアチェンジを成功させるためには、臨床での経験を活かしつつ、地域全体を視野に入れた予防的アプローチのスキルを新たに習得することが重要です。
具体的な業務比較例
看護師と保健師の業務の違いをより具体的にイメージするために、同じテーマに対する両者のアプローチ方法の違いを見てみましょう。
実際の業務内容を比較することで、保健師の役割と特徴がより明確になるでしょう。
糖尿病対策における比較
看護師の場合:
診断された糖尿病患者さんに対する個別的な療養指導
血糖測定や服薬管理などの自己管理支援
合併症予防のための足のケア指導
入院患者さんに対する食事・運動療法の実施
退院後の生活指導
保健師の場合:
地域の糖尿病有病率や危険因子の分析(地域診断)
健診結果から糖尿病予備群を特定し予防教室を計画
職場や地域での生活習慣病予防講座の開催
地域の食生活改善や運動習慣促進のための環境整備
医療機関や地域組織と連携した継続支援体制の構築
母子保健活動における比較
看護師の場合:
産科病棟での妊産婦のケア
新生児の健康状態の観察とケア
母乳育児の支援
育児不安のある母親への個別指導
退院前の生活指導
保健師の場合:
妊娠届出時から継続的な母子健康手帳の管理と相談
乳幼児健診の企画・実施と発達支援
地域の育児サークル支援や子育て環境の整備
ハイリスク家庭の早期発見と継続的な家庭訪問
地域の児童虐待予防ネットワークの構築
高齢者ケアにおける比較
看護師の場合:
入院中の高齢患者の日常生活援助
疾患の治療と症状管理
退院調整と在宅ケアへの移行支援
認知症患者への個別ケア
家族への介護指導
保健師の場合:
地域の高齢化率や要介護者数の分析
介護予防教室や認知症予防プログラムの企画運営
地域包括ケアシステムにおける多職種連携の推進
高齢者の孤立防止のための地域ネットワーク構築
災害時の要援護高齢者支援計画の策定
感染症対策における比較
看護師の場合:
感染症患者の看護ケア
院内感染対策の実施
患者・家族への感染予防指導
隔離管理と感染経路別予防策の実施
感染症診療の補助
保健師の場合:
地域の感染症発生動向調査と分析
集団発生時の疫学調査と感染源の特定
予防接種事業の企画・実施
学校や施設における感染症予防対策の指導
住民への啓発活動や健康教育
これらの例からわかるように、看護師が「すでに病気になった人」への直接的なケアを中心に活動するのに対し、保健師は「まだ健康な人も含めた地域全体」を対象に、予防と健康増進を目指した活動を展開します。
また、看護師の業務が個別性を重視した短期的な関わりが多いのに対し、保健師は地域全体を視野に入れた長期的・継続的な関わりが特徴です。
どちらがより自分の適性や志向に合っているかを考えることが、キャリア選択の重要なポイントになるでしょう。
看護師から保健師への資格取得への道筋

看護師として経験を積み、より広い視点から地域の健康に貢献したいと考えたとき、保健師資格の取得は大きな選択肢となります。
ここでは、看護師から保健師になるための具体的なステップ、必要な教育課程、期間や費用について詳しく解説します。
自分に合った方法で確実に資格取得を目指すための情報を提供します。
保健師になるための基本ルート
保健師になるためには、基本的に以下のステップが必要です。
それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
第一に、看護師資格(国家資格)の取得が必要です。
保健師になるためには、まず看護師免許を持っていることが前提条件です。
看護師資格がない場合は、看護専門学校や看護大学で教育を受け、看護師国家試験に合格する必要があります。
第二に、保健師養成課程の修了が求められます。
保健師養成課程は、文部科学省・厚生労働省が認定した大学や専門学校などの教育機関で提供されています。
課程の内容は公衆衛生看護学、疫学、保健統計学、保健医療福祉行政論などの専門科目と、地域での実習が中心となります。
第三に、保健師国家試験の合格が必須です。
保健師養成課程を修了すると、保健師国家試験の受験資格が得られます。
試験は年1回、例年2月に実施され、合格発表は3月頃です。
2025年現在の合格率は例年85%前後と比較的高めですが、働きながら学ぶ場合は計画的な学習が必要です。
最後に、保健師免許の申請・取得を行います。
国家試験合格後、都道府県知事に申請して保健師免許を取得します。
このプロセスには2〜3か月程度かかるため、就職活動のスケジュールを考慮する必要があります。
保健師資格は看護師資格の上位資格であり、保健師免許を取得すれば、保健師として働くことも、看護師として働き続けることも可能です。
多くの方は、まず看護師として臨床経験を積んだ後、保健師資格の取得を目指すことが一般的ですが、看護学生の段階から保健師養成課程を併修するルートもあります。
保健師資格取得の道筋を選ぶ際は、自分のキャリアプラン、学習にかけられる時間や費用、家庭環境などを総合的に考慮することが大切です。
次のセクションでは、現役の看護師が保健師資格を取得するための具体的な方法について詳しく説明します。
現役看護師が保健師資格を取得する方法
すでに看護師として働いている方が保健師資格を取得する方法はいくつかあります。
それぞれの特徴や利点、注意点を詳しく見ていきましょう。
1. 大学専攻科・別科での取得
多くの看護系大学では、看護師資格を持つ方向けの保健師養成課程(専攻科・別科)を設けています。
これは保健師資格取得に特化した1年間のカリキュラムで、公衆衛生看護学や地域保健活動などの専門知識と実習を集中的に学びます。
近年は働きながら学べるよう、夜間や土日開講のコースを提供する大学も増えています。
名古屋市立大学や京都橘大学、日本赤十字看護大学などが代表的な例です。
専攻科・別科の入学試験は、書類選考、筆記試験(小論文など)、面接などで構成されることが多く、臨床経験を評価する大学もあります。
このルートのメリットは、比較的短期間(1年)で集中的に学べること、保健師に特化したカリキュラムで効率的に学習できることです。
一方、注意点としては、入学試験の準備が必要なこと、実習期間(約1ヶ月程度)は仕事との両立が難しく休職や休暇取得が必要になることが挙げられます。
実習は通常、市区町村の保健センターや保健所などで行われ、実際の保健師活動を体験することになります。
この実習が保健師の仕事内容を具体的にイメージする貴重な機会となります。
2. 大学院での取得
より高度な専門性を身につけたい場合は、看護系大学院(修士課程)で保健師養成課程を選択する方法もあります。
東京医科歯科大学大学院、大阪大学大学院、聖路加国際大学大学院などが代表的な例です。
大学院では、保健師養成課程に加えて研究活動も行うため、通常2年間のカリキュラムとなります。
地域看護学や公衆衛生看護学の専門領域を深く学ぶとともに、研究手法や統計分析なども習得します。
入学試験は専門科目、英語、小論文、面接などで構成されることが多く、研究計画書の提出が求められる場合もあります。
このルートのメリットは、保健師資格取得に加えて修士号も取得できること、研究的視点も身につけられることです。
特に将来的に教育職や研究職、行政の管理職などを目指す場合に有利です。
一方、注意点としては、2年間という比較的長い期間が必要なこと、授業料が高額になる傾向があること、研究と実習の両立が求められるため学習負担が大きいことなどが挙げられます。
多くの大学院では社会人学生を受け入れており、夜間や土日の授業、長期履修制度(2年分の学費で3〜4年かけて修了できる制度)などを設けている場合もあります。
3. 通信制課程の活用
仕事を続けながら学びやすい方法として、通信制と通学のハイブリッド型で保健師資格取得を目指せるコースもあります。
日本赤十字広島看護大学、天使大学、岐阜県立看護大学などが代表的な例です。
通信制課程では、eラーニングやテキスト学習など自宅での学習を中心に、定期的なスクーリング(対面授業)と実習で構成されます。
学習期間は1〜2年程度で、学校によってカリキュラムや開講形態が異なります。
このルートのメリットは、居住地に関わらず学習できること、働きながら無理なく学べるカリキュラムが組まれていることです。
特に地方在住で近くに保健師養成課程がない方や、家庭と仕事の両立で時間制約がある方に適しています。
一方、注意点としては、自己管理能力と学習意欲が求められること、スクーリングや実習の期間は仕事を休む必要があること、孤独な学習になりがちなことなどが挙げられます。
通信制課程を選ぶ際は、スクーリングの日程や実習期間、サポート体制などを事前によく確認することが重要です。
オンラインでの質問対応や、地域ごとの学習グループがある学校もあります。
4. 看護大学の編入学
一部の看護大学では、看護師資格を持つ方を対象とした3年次編入学制度を設けています。
この場合、大学の3〜4年次に在籍し、保健師養成課程を含む科目を履修します。
このルートは、大学卒業資格(学士)と保健師資格の両方を取得したい場合に適しています。
ただし、2年間フルタイムの大学生活が基本となるため、仕事を辞める、または大幅に時間を減らす必要があります。
新卒看護師のための選択肢
看護師免許取得直後に保健師を目指す場合は、看護大学の保健師養成課程(選択制)や、看護師免許を取得した直後に専攻科に進学する方法もあります。
臨床経験がない分、保健師としての視点を養うために追加の学習や経験が必要になる場合がありますが、若いうちに両方の資格を取得できる利点もあります。
現役看護師が保健師資格を取得する際のポイントは、自分の生活スタイルや学習スタイル、キャリアプランに合った方法を選ぶことです。
また、勤務先に教育支援制度がないか確認することも重要です。
多くの医療機関や自治体では、職員のスキルアップを支援する制度を設けています。
必要な期間と費用
保健師資格取得にかかる期間と費用は、選択するルートによって大きく異なります。
ここでは、各ルートの具体的な期間と費用の目安を解説し、予算計画の参考にしていただきます。
教育期間の比較
大学専攻科・別科:通常1年間
大学院修士課程:通常2年間(長期履修制度を利用すれば3〜4年も可能)
通信制課程:1〜2年(学校やコースによって異なる)
大学編入学:2年間
実際の修学期間は、フルタイムか働きながらかでも変わってきます。
働きながら学ぶ場合は、より長い期間をかけることも可能ですが、実習期間(約1ヶ月)は集中的に行われるため、この期間は休暇取得や休職などの調整が必要です。
費用の内訳と総額
保健師資格取得にかかる主な費用には以下のものがあります:
授業料・入学金
教材費・実習費
交通費・宿泊費(通学や実習時)
国家試験受験料(約7,000円)
免許申請料(約9,000円)
各ルートの概算費用は以下の通りです:
大学専攻科・別科:
入学金:20〜30万円
授業料:60〜120万円
その他費用:10〜20万円
合計:90〜170万円
大学院修士課程:
入学金:20〜30万円
授業料(2年分):120〜240万円
その他費用:20〜40万円
合計:160〜310万円
通信制課程:
入学金:10〜20万円
授業料:50〜100万円
スクーリング関連費用:20〜30万円
合計:80〜150万円
大学編入学:
入学金:20〜30万円
授業料(2年分):120〜200万円
その他費用:20〜30万円
合計:160〜260万円
これらの金額は2025年時点の一般的な目安であり、教育機関や地域によって異なります。
また、公立と私立でも費用に差があるため、複数の教育機関の情報を比較検討することをおすすめします。
支援制度の活用
費用面での負担を軽減するために、様々な支援制度があります:
奨学金制度:日本学生支援機構や各自治体、教育機関独自の奨学金制度があります。
勤務先の教育支援制度:多くの医療機関や自治体では、職員のスキルアップのための修学支援制度を設けています。
自治体の修学資金貸与制度:卒業後に特定の地域で一定期間働くことを条件に、修学資金を貸与(返済免除の場合も)する制度があります。
長期履修制度:標準修業年限の学費で、より長い期間をかけて学位を取得できる制度です。
教育訓練給付金:一定の条件を満たす場合、厚生労働省の教育訓練給付金が受けられる場合があります。
2025年現在、多くの自治体では保健師の人材確保のために独自の支援制度を設けています。
例えば、東京都や大阪府などの都市部では、保健師不足に対応するため、修学資金の貸与や返還免除制度を充実させているケースもあります。
また、企業の産業保健師を目指す場合は、企業が教育費を負担するケースもあります。
特に大企業では、社員の健康管理の重要性から、看護師の保健師資格取得を積極的に支援するところが増えています。
保健師資格取得を計画する際は、費用面でのサポートについても広く情報収集することをおすすめします。
自治体の保健師採用情報や、各教育機関の奨学金制度、勤務先の教育支援制度などを積極的に確認しましょう。
各教育機関の特徴比較
保健師資格取得のための教育機関を選ぶ際は、それぞれの特徴を比較検討することが重要です。
ここでは2025年現在の主な教育機関の特徴を比較します。
国公立大学の専攻科・大学院
メリット:
授業料が比較的安価(年間約54万円程度)
研究設備が充実している
保健行政との連携が強い場合が多い
特徴:
入試競争率が高い傾向にある
地域保健行政との連携実習が充実
研究重視の傾向がある
代表的な学校:
千葉大学、新潟大学、名古屋市立大学、大阪大学など
私立大学の専攻科・大学院
メリット:
社会人に配慮した時間割設定の場合が多い
実践的な教育内容が充実
就職サポートが手厚い
特徴:
授業料が比較的高額(年間約100万円程度)
独自の特色あるカリキュラムを提供
実習先の選択肢が豊富な場合が多い
代表的な学校:
聖路加国際大学、日本赤十字看護大学、天使大学など
通信制大学
メリット:
地理的制約が少ない
働きながら学びやすい
自分のペースで学習可能
特徴:
自己管理能力が求められる
スクーリング(対面授業)は集中講義形式
Web学習システムの充実度に差がある
代表的な学校:
日本赤十字広島看護大学、岐阜県立看護大学、福岡県立大学など
地域による特色
都市部の教育機関:
多様な実習先があり、様々な健康課題を学べる
最新の保健医療情報へのアクセスが容易
通学の利便性が高い
地方の教育機関:
地域に密着した保健活動を重点的に学べる
少人数教育が充実している場合が多い
地域特有の健康課題(過疎化、高齢化など)に対応した教育
2025年現在、多くの教育機関ではオンライン学習とリアル授業のハイブリッド型教育を取り入れています。
特に社会人学生向けには、平日夜間や土日開講、集中講義、e-ラーニングなど、多様な学習形態が提供されています。
教育機関を選ぶ際には、以下の点を確認するとよいでしょう:
カリキュラムの内容と特色
実習先の種類と地域
通学の便や遠隔学習の可能性
社会人学生へのサポート体制
修了生の進路や就職状況
教員の専門分野と研究内容
また、可能であれば説明会や相談会に参加し、現役の学生や修了生の声を聞くことも大切です。
教育機関によって重視する領域や教育方針が異なるため、自分のキャリアプランやライフスタイルに合った選択が成功の鍵となります。
保健師の主な活動分野とキャリアパス

保健師の魅力の一つは、様々な場所や分野で活躍できることです。
ここでは保健師の主な活動場所、それぞれの特徴、そして将来的なキャリアパスについて解説します。
自分がどのような保健師を目指したいのか、ビジョンを明確にするための情報を提供します。
活動場所による違い
保健師の活動場所は多岐にわたり、それぞれに特徴的な業務内容や働き方があります。
代表的な活動場所とその特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 行政機関(市区町村・都道府県)
行政保健師は最も一般的な就職先で、市区町村保健センターや保健所などで勤務します。
地域住民全体の健康管理や健康づくり事業の企画・実施など、幅広い業務を担当します。
具体的な業務内容は以下の通りです:
乳幼児健診や母子保健事業の実施
高齢者の介護予防や認知症対策
感染症対策や予防接種事業の運営
精神保健福祉対策
特定健診・特定保健指導
地域の健康課題の分析と対策立案
災害時の健康支援活動
市区町村保健師は、住民により身近な存在として、個別支援から地域活動まで幅広く関わります。
一方、保健所(都道府県や政令市等)の保健師は、より広域的・専門的な視点で活動し、感染症対策や精神保健、難病対策などに重点を置くことが多いです。
行政保健師の魅力は、地域全体の健康づくりに携われること、安定した雇用条件、ワークライフバランスの取りやすさなどが挙げられます。
一方で、行政特有の業務(書類作成、会議、予算管理など)も多いという特徴があります。
2025年現在、高齢化社会の進展や健康格差の拡大、感染症対策の重要性増大などを背景に、行政保健師の役割はますます重要性を増しています。
特に地域共生社会の実現に向けた取り組みや、データヘルス計画の推進など、新たな役割も増えています。
2. 企業(産業保健師)
企業の健康管理部門や健康保険組合で働く産業保健師は、従業員の健康管理や健康増進プログラムの企画・実施を担当します。
主な業務内容は以下の通りです:
定期健康診断の実施と事後指導
メンタルヘルス対策(ストレスチェックの実施など)
生活習慣病予防プログラムの企画・運営
健康経営施策の立案と実施
職場環境改善の提案
海外赴任者の健康管理
健康データ分析と効果測定
産業保健師の魅力は、健康経営という企業戦略に直接貢献できること、予防医学の知識を活かした創造的な活動ができること、比較的高い待遇が期待できることなどが挙げられます。
特に近年は、健康経営銘柄の選定や健康経営優良法人認定制度の普及に伴い、企業における産業保健師の重要性が高まっています。
2025年現在、テレワークの定着や働き方改革の進展により、新たな健康課題(デジタル疲労、コミュニケーション不足など)への対応が求められています。
また、健康データ分析や科学的根拠に基づく健康施策の立案など、より専門性の高い活動が期待されています。
大企業だけでなく、中小企業向けの外部産業保健サービスを提供する機関での活躍の場も広がっています。
3. 学校
学校保健師は、小中高等学校や大学の保健室などで勤務し、児童・生徒・学生の健康管理や健康教育を担当します。
主な業務内容は以下の通りです:
健康診断の企画・実施とフォローアップ
保健教育(性教育、生活習慣病予防など)
感染症対策と予防
メンタルヘルスケア
特別な配慮が必要な生徒への支援
保健室運営のサポート
学校環境衛生の管理
学校保健師の魅力は、子どもたちの健全な成長に直接関われること、教育的アプローチが取れること、学校のスケジュールに合わせた働き方ができることなどです。
特に養護教諭との連携により、より専門的な視点から児童・生徒の健康支援ができる点が特徴です。
2025年現在、子どものメンタルヘルス問題の増加やアレルギー疾患の管理、感染症対策など、学校における健康課題は複雑化しています。
また、特別支援教育の充実に伴い、医療的ケア児への対応など保健師の専門性を活かせる場面も増えています。
4. 医療機関
病院や診療所の地域連携部門や健診センターなどで働く保健師は、予防医療の観点から活動します。
主な業務内容は以下の通りです:
特定健診・特定保健指導の実施
生活習慣病予防外来の運営
患者教育(糖尿病教室など)
地域の医療機関や行政との連携
退院支援・在宅療養支援
地域包括ケアシステムへの参画
健康イベントの企画・実施
医療機関保健師の魅力は、臨床知識を活かしながら予防的アプローチができること、医療チームの一員として専門職と連携できること、患者さんの生活全体を視野に入れた支援ができることなどです。
2025年現在、病院完結型から地域完結型への医療の転換に伴い、医療機関においても予防や地域連携の重要性が高まっています。
地域医療構想の推進や医療介護連携の強化に向けて、医療と地域をつなぐ保健師の役割が注目されています。
5. その他の活動場所
上記以外にも、保健師の活躍の場は広がっています:
国際機関(JICA、WHO等):国際保健活動や開発途上国での健康支援
NPO・NGO:特定の健康課題に取り組む民間団体
介護保険施設:高齢者の健康管理や介護予防
研究機関:公衆衛生や地域看護に関する研究活動
教育機関:次世代の看護師・保健師の育成
それぞれの活動場所には特徴的な業務内容と魅力があります。
看護師から保健師へのキャリアチェンジを考える際は、自分の興味や強み、希望するライフスタイルに合った活動場所を選ぶことが重要です。
典型的な1日のスケジュール例
それぞれの活動場所での保健師の1日を具体的にイメージするために、典型的なスケジュール例を紹介します。
市区町村保健センター保健師の1日(母子保健担当):
8:30 出勤・朝礼・メール確認
9:00 乳幼児健診準備
10:00-12:00 乳幼児健診実施(問診・相談対応)
12:00-13:00 昼休憩
13:00-15:00 健診結果整理、フォローアップ対象者の抽出
15:00-16:00 要支援家庭への訪問(1-2件)
16:00-17:00 訪問記録作成、翌日の準備
17:15 退勤
産業保健師の1日(大手製造業):
8:30 出勤・メール確認
9:00-10:00 健康管理室での健康相談対応
10:00-12:00 職場巡視・環境チェック
12:00-13:00 昼休憩
13:00-14:00 安全衛生委員会出席
14:00-16:00 健診結果データ分析・報告書作成
16:00-17:00 健康教育プログラム企画会議
17:30 退勤
これらの例からわかるように、保健師の業務は多岐にわたり、直接的なケア提供だけでなく、計画立案、データ分析、関係機関との調整など、様々な役割を担っています。
また、勤務形態は主に日勤(平日8:30-17:15など)で、夜勤はほとんどありません。
ただし、地域のイベントや健診などで休日出勤がある場合もあります。
キャリアパスと将来性
保健師としてのキャリアは多様な展開が可能です。
経験を積むことで、より専門性の高い分野へのシフトや、管理職、教育・研究職など様々な選択肢が広がります。
専門性を深めるキャリアパス
特定分野のスペシャリストを目指すルートです。
経験を積みながら専門知識を深め、特定の健康課題に特化した実践家として活躍します。
母子保健分野:乳幼児健診や育児支援のエキスパートとして活躍
難病・障害者支援:特定疾患や障害を持つ方々の地域生活支援に特化
精神保健分野:メンタルヘルス対策の専門家として地域や職場で活動
感染症対策:感染症サーベイランスや危機管理の専門家として活躍
産業保健分野:特定業種の健康リスク管理や健康経営推進のスペシャリスト
専門性を高めるためには、経験に加えて専門的な研修や認定資格の取得が有効です。
例えば、日本看護協会の認定看護師(地域看護)や専門看護師(地域看護)、産業保健分野では労働衛生コンサルタントや産業保健指導者などの資格があります。
管理職へのキャリアパス
組織内でリーダーシップを発揮し、保健事業全体の方向性を決定する立場を目指すルートです。
市区町村:保健センター長、健康づくり課長など
保健所:保健予防課長、保健所長(医師以外の保健所長の場合)
企業:健康管理室長、健康保険組合の事業担当責任者など
医療機関:地域連携部門の責任者、保健予防センター長など
管理職を目指す場合は、保健活動の専門知識に加えて、マネジメント能力、財政・人事管理能力、政策立案能力などが求められます。
これらのスキルを習得するためには、現場での経験に加えて、行政職員向けの研修や民間のマネジメント研修、大学院での公衆衛生学修士(MPH)の取得などが有効です。
教育・研究職へのキャリアパス
次世代の保健師育成や、エビデンスに基づく保健活動の発展に貢献するルートです。
大学・専門学校:保健師養成課程の教員として後進を育成
研究機関:地域保健や公衆衛生に関する研究者として活動
シンクタンク:健康政策の立案・提言に携わる研究員
教育・研究職を目指す場合は、通常、大学院での修士号や博士号の取得が必要です。
実践経験を基盤としつつ、研究手法や教育技法を習得することが重要になります。
グローバルな活動へのキャリアパス
国際的な視野で保健活動に携わるルートです。
国際協力機構(JICA):開発途上国の保健医療支援
世界保健機関(WHO):国際的な健康課題への取り組み
国際NGO:災害支援や保健プロジェクトの実施
国際的な活動を目指す場合は、語学力(特に英語)、異文化理解能力、国際保健に関する知識が求められます。
また、公衆衛生学修士(MPH)など国際的に通用する学位の取得も有利です。
デジタルヘルス分野へのキャリアパス
2025年現在、急速に発展している分野です。
健康データの活用やデジタル技術を用いた保健活動に携わります。
健康アプリ開発企業:ヘルスケアアプリの企画・開発・評価
データヘルス関連企業:健康データ分析やAIを活用した保健指導
テレヘルス企業:遠隔での健康相談・保健指導サービス
この分野では、従来の保健師としての知識・スキルに加えて、データサイエンスやデジタルリテラシーが求められます。
また、新しいサービスモデルを創造する発想力やビジネス感覚も重要です。
2025年の保健師を取り巻く環境と将来性
保健師の職域は今後さらに拡大すると予測されています。
特に以下の分野での需要が高まっています:
地域包括ケアシステムにおける予防的アプローチの推進役
データヘルスを活用した科学的根拠に基づく保健活動の実践者
複雑な健康課題(メンタルヘルス、フレイル、認知症など)への対応
健康格差の是正や健康的な社会環境づくりの推進者
気候変動や新興感染症などの新たな健康リスクへの対応
少子高齢化や医療費増大を背景に、予防医学やヘルスプロモーションの重要性は高まる一方です。
そのため、保健師の専門性を活かしたキャリアの可能性は今後も広がり続けると考えられます。
また、保健師資格は看護師資格と併せて保有することで、両方の視点を持ったハイブリッドな専門家として重宝される傾向もあります。
キャリアの選択肢を広げるという意味でも、保健師資格取得は大きなメリットとなるでしょう。
看護師から保健師へ – 実際の移行体験

実際に看護師から保健師へキャリアチェンジした方々の体験談は、転身を考える上で貴重な参考情報となります。
ここでは、様々な分野で活躍する保健師の実例を紹介し、キャリア転換のポイントや成功のためのアドバイスを解説します。
Aさんの場合:市町村保健師への転身
看護師として総合病院で5年勤務後、地域の健康づくりに関わりたいと保健師資格を取得したAさん(30代女性)。
現在は市の保健センターで母子保健を担当しています。
転身の経緯
「病院の小児科で勤務していた時、退院後の子どもたちやその家族の生活が気になっていました。
治療が終わった後の生活支援や予防的な関わりができないもどかしさを感じていたんです。
また、夜勤のある生活から、将来的には家庭との両立がしやすい働き方も視野に入れていました。
そんな時、地域の乳幼児健診を見学する機会があり、保健師が子育て全体を支援する姿に感銘を受けたのが転機でした。」
資格取得のプロセス
「大学の専攻科(1年課程)で保健師資格を取得しました。
勤務しながらの通学は大変でしたが、病院が研修制度を利用した休職を認めてくれたので、実習期間は集中して取り組むことができました。
保健師国家試験は看護師国家試験と比べると範囲は狭いですが、法律や制度など覚えることが多く、苦労しました。
看護師としての経験を活かすために、小児保健や母子支援に関する科目は特に力を入れて学びました。」
現在の仕事内容
「市の保健センターで主に母子保健を担当しています。
乳幼児健診での問診や発達チェック、育児相談、ハイリスク家庭への訪問支援などが主な業務です。
また、産後ケア事業や子育て支援教室の企画・運営も担当しています。
看護師時代と大きく違うのは、対象が「患者」ではなく「地域に暮らす人々」であることです。
健康な状態から関わり、問題が起きないよう予防的に支援する視点が求められます。」
看護師経験が活きているポイント
「小児科での経験は子どもの健康評価や発達支援に直接活かされています。
また、病院で様々な疾患や治療を見てきた経験は、健診で異常を早期発見する際の判断力につながっています。
さらに、看護師として培った患者さんとの信頼関係構築のスキルは、短時間で家族の状況を把握し適切な支援につなぐ際に非常に役立っています。」
苦労した点
「最初は予防的視点への転換に戸惑いました。
看護師時代は目の前の症状や問題に対処することが多かったのですが、保健師の仕事は「まだ起きていない問題を予測して予防する」という発想が求められます。
また、行政特有の業務(書類作成や会議運営など)に慣れるのにも時間がかかりました。
地域全体を見る視点や、様々な関係機関と連携する調整力も、意識的に養う必要がありました。」
転身して良かったと感じること
「子どもたちの成長を長期的に見守れることにやりがいを感じています。
健診で出会った赤ちゃんが歩けるようになり、言葉を話すようになる過程に関われるのは大きな喜びです。
また、家族全体を支援できることも魅力です。
子どもだけでなく、母親のメンタルヘルスや父親の育児参加、祖父母との関係など、家族を取り巻く環境全体に目を向けた支援ができます。
ワークライフバランスの面でも、夜勤がなく規則的な生活ができるようになったことで、自分自身の健康管理もしやすくなりました。」
Bさんの場合:産業保健師としての活躍
大手製造業の健康管理室で産業保健師として活躍するBさん(40代男性)。
急性期病院の看護師を経て、働く人の健康支援に興味を持ち転身しました。
転身の経緯
「救命救急センターで10年ほど勤務していましたが、いつも「手遅れになる前に予防できなかったのか」という思いがありました。
特に生活習慣病や過労関連疾患で運ばれてくる患者さんを見るたびに、職場での予防的介入の重要性を感じていました。
また、自分自身も夜勤のある生活で体調を崩すことがあり、働く人の健康について考えるようになったのが転機です。」
資格取得のプロセス
「大学院の社会人コース(2年間)で学びました。
働きながら夜間や週末に通学するのは大変でしたが、産業保健に特化した研究ができる環境だったので、明確な目標を持って取り組めました。
修士論文では職場のメンタルヘルス対策をテーマに研究し、現在の仕事に直接活かせています。
資格取得と同時に、産業保健師として活躍するために労働衛生コンサルタントの資格も取得しました。」
現在の仕事内容
「大手製造業の健康管理室で、約2,000名の従業員の健康管理を担当しています。
具体的には、定期健康診断の企画・実施・事後措置、生活習慣病予防プログラムの運営、メンタルヘルス対策(ストレスチェックの実施や職場環境改善)、長時間労働者の健康面接、海外赴任者の健康管理などです。
また、データヘルス計画に基づく健康施策の立案や効果検証も重要な業務の一つです。
企業の健康経営推進メンバーとして、経営層への提案や報告も行っています。」
看護師経験が活きているポイント
「急性期での経験は、緊急時対応(職場での急病人発生時など)に直接活かされています。
また、様々な疾患の経過や治療についての知識は、健康リスクの早期発見や適切な受診勧奨につながっています。
さらに、看護師として培った臨床的な観察力や判断力は、健康相談や保健指導の質を高めるのに役立っています。」
苦労した点
「産業保健の専門知識(労働安全衛生法など)を習得するのに時間がかかりました。
また、病院と企業では組織文化が大きく異なるため、ビジネスの視点や経営的な発想を身につける必要がありました。
健康管理を「投資」として捉える経営的視点と、従業員の健康を守るという医療者としての視点のバランスを取ることも難しかったです。
さらに、データ分析や施策の効果検証など、エビデンスに基づいた活動が求められるため、統計的な知識やITスキルも習得する必要がありました。」
転身して良かったと感じること
「予防的な関わりによって健康リスクの改善が実感できることにやりがいを感じています。
例えば、メタボリックシンドロームの従業員向けに開発した運動プログラムで、多くの参加者に改善が見られた時は大きな達成感がありました。
また、企業の健康経営推進に直接貢献できることも魅力です。
健康施策が経営指標の改善(休職率低下など)につながった際は、保健師の存在価値を実感します。
キャリア面では、看護師時代よりも専門性を評価されやすく、裁量権も大きいと感じています。」
Cさんの場合:国際保健分野への挑戦
国際協力機構(JICA)で活躍するCさん(30代女性)。
総合病院での7年間の看護師経験を経て、国際保健の道へ転身しました。
転身の経緯
「学生時代から国際協力に興味があり、看護師として経験を積んだ後は海外で活動したいという夢がありました。
総合病院で内科・外科・救急と様々な分野を経験し、基礎的な臨床スキルを習得した後、青年海外協力隊として2年間アフリカの医療施設で活動する機会を得ました。
その経験から、一時的な医療支援だけでなく、持続可能な保健システム構築の重要性を実感し、帰国後に保健師資格を取得して国際保健の道に進むことを決意しました。」
資格取得のプロセス
「大学院の国際保健学専攻(2年間)で学びました。
保健師養成課程に加えて、国際保健や公衆衛生学を専門的に学べるカリキュラムを選びました。
修士課程では、開発途上国の母子保健システム強化をテーマに研究し、フィールドワークも経験しました。
また、英語力強化のため、海外の短期研修プログラムにも積極的に参加しました。
保健師資格取得後は、公衆衛生学修士(MPH)の取得も目指しています。」
現在の仕事内容
「JICAの保健医療チームで、主にアジア地域の母子保健プロジェクトの企画・運営に携わっています。
具体的には、開発途上国の保健システム強化支援、現地保健師や助産師の育成プログラムの開発、地域保健活動のモニタリング評価などです。
年に数回、現地に赴いて進捗確認や技術指導を行うほか、日本での研修受け入れ時には講師も担当しています。
また、国際会議やセミナーでの発表も重要な業務の一つです。
最近は、デジタル技術を活用した遠隔保健指導システムの構築にも取り組んでいます。」
看護師経験が活きているポイント
「臨床での実践経験があることで、現地医療関係者との共通言語を持ち、信頼関係を築きやすいです。
また、限られた資源の中で優先順位をつけて対応する能力は、救急看護の経験が直接活きています。
さらに、様々な背景を持つ患者さんとのコミュニケーション経験は、異文化環境での活動に大いに役立っています。」
苦労した点
「国際的な活動には高度な語学力が求められるため、専門的な英語力の習得に苦労しました。
また、各国の保健医療システムや文化的背景への理解を深めるのにも時間がかかります。
さらに、国内での看護・保健活動とは異なり、政治的・経済的要因も考慮した活動計画が必要なため、より広い視野でものを見る力を養う必要がありました。
頻繁な海外出張もあり、プライベートとの両立も課題でしたが、オンラインツールの活用などで対応しています。」
転身して良かったと感じること
「一国の保健システム改善に関わることで、より広い範囲で人々の健康に貢献できることにやりがいを感じています。
例えば、母子保健プロジェクトで支援した地域の乳児死亡率が改善した時は、この仕事の意義を強く実感しました。
また、国際的なネットワークが広がり、様々な国や機関の専門家と協働できることも魅力です。
キャリア面では、看護師・保健師としての専門性に加えて、国際保健の視点を持つことで、活躍の場がさらに広がったと感じています。」
成功するキャリア転換のためのアドバイス
実際に看護師から保健師へのキャリアチェンジを果たした方々の体験から、転換成功のためのポイントをまとめました。
資格取得を検討している看護師の方は、ぜひ参考にしてください。
1. 看護師経験を強みに変える
看護師としての経験やスキルは、保健師活動においても大きな強みとなります。
自分の臨床経験をどのように保健師活動に活かせるか、具体的にイメージしておくとよいでしょう。
「私は小児科看護師の経験を活かして、乳幼児健診での異常の早期発見に自信を持って取り組めています。
臨床で様々なケースを見てきたからこそ、『この子はちょっと様子が違う』という微妙な変化にも気づけるんです。」(Aさん)
「急性期病院での経験は、産業保健の現場でも非常に役立っています。
特に、循環器疾患や脳血管疾患のリスク評価において、臨床での知見が健康指導の質を高めています。」(Bさん)
2. 予防的思考を意識的に育てる
看護師から保健師へのシフトで最も重要なのは、「治療」から「予防」へと思考の軸を移すことです。
日常的に予防的視点で考える習慣をつけましょう。
「看護師時代から、『この患者さんはどうすれば入院せずに済んだか』『この病気はどうすれば予防できたか』と考えるようにしていました。
そうした思考訓練が、保健師になってからの予防的視点の基盤になっています。」(Bさん)
「保健師養成課程の実習中は、目の前の個人だけでなく、その人が属する家族や地域の特性も含めてアセスメントする練習を意識的に行いました。
この習慣が、今の地域診断能力につながっています。」(Aさん)
3. 地域や集団を見る視点を養う
保健師は個人だけでなく、家族・集団・地域全体を対象とします。
広い視野でものを見る力を意識的に養いましょう。
「新聞やニュースを見る際も、健康問題の背景にある社会的要因や環境要因に注目するようにしています。
例えば、地域の高齢化率や産業構造、交通アクセスなどが健康状態にどう影響しているかを考えると、地域を見る目が養われます。」(Aさん)
「統計データを読み解く力は保健師には必須です。
私は保健師を目指すと決めてから、健康に関する統計やレポートを積極的に読むようにしました。
地域の健康課題を数字から読み取る訓練が役立っています。」(Cさん)
4. 行政システムや法制度への理解を深める
特に行政機関で働く保健師には、行政の仕組みや関連法規の知識が不可欠です。
早い段階から関連知識を身につけておくとよいでしょう。
「保健師国家試験の勉強を始める前から、関連法規の本を読んでいました。
保健師活動の法的根拠となる『地域保健法』『健康増進法』『母子保健法』などの基本は押さえておくと、実習や就職後にスムーズに業務に入れます。」(Aさん)
「行政の仕組みや予算の流れを理解することは、効果的な保健事業を展開するために重要です。
私は自治体のホームページで事業計画や予算書を読んだり、市の健康福祉計画を調べたりして勉強しました。」(Bさん)
5. 実習や現場見学の機会を最大限活用する
保健師養成課程での実習は、理論と実践をつなぐ貴重な機会です。
積極的に質問し、現場の保健師の動きを観察しましょう。
「実習先では、『なぜその方法を選んだのか』『どのような根拠に基づいているのか』など、保健師の判断プロセスを積極的に質問しました。
実践の背景にある思考を理解することで、単なる技術の模倣ではなく、応用力が身につきます。」(Cさん)
「可能であれば、実習先以外の保健師活動も見学させてもらうといいでしょう。
私は自分の住んでいる自治体の保健師に連絡して、健康教室や健診の見学をさせてもらいました。
様々な現場を見ることで、保健師活動の幅広さを実感できます。」(Aさん)
6. ネットワークづくりを大切にする
保健師活動は多職種連携が基本です。
人とのつながりを大切にし、ネットワークを広げる意識を持ちましょう。
「養成課程の同級生や実習先で出会った保健師とのつながりは、貴重な財産です。
私は卒業後も定期的に情報交換会を開き、各自治体や職場での取り組みや課題を共有しています。
このネットワークが、新しいアイデアや解決策のヒントになることも多いです。」(Aさん)
「看護師時代の人脈も大切にしています。
産業保健師として働く今も、医療機関との連携は重要で、以前の職場の同僚に相談することもあります。
専門分野の異なる人とのつながりが、視野を広げてくれます。」(Bさん)
7. 継続的な学習を習慣にする
保健・医療・福祉の制度や社会情勢は常に変化しています。
最新情報をキャッチアップする習慣をつけましょう。
「保健師は常に新しい健康課題や制度変更に対応する必要があります。
私は毎月最低1冊は専門書を読み、年に数回は研修に参加するようにしています。
特に『公衆衛生看護学雑誌』や『保健師ジャーナル』などの専門誌は定期購読しています。」(Aさん)
「デジタルヘルスや健康経営など、新しい分野の知識も積極的に取り入れています。
オンライン講座やウェビナーを活用すれば、忙しい中でも継続的に学べます。
常に学び続ける姿勢が、保健師としての専門性を高める鍵だと思います。」(Bさん)
これらのアドバイスを参考に、計画的にキャリア転換を進めることで、看護師から保健師への移行をスムーズに実現できるでしょう。
看護師としての経験を活かしながら、新たな視点とスキルを身につけ、より広い視野で人々の健康をサポートできる保健師を目指してください。
看護師と保健師の給与・働き方比較

キャリア選択において、給与や働き方は重要な検討ポイントです。
看護師と保健師ではどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは2025年現在の実態に基づき、両者を比較してみましょう。
給与面での比較
看護師と保健師の給与水準は、勤務先や経験年数、地域によって異なりますが、一般的な傾向としては以下のような比較ができます。
年収・月給の比較
看護師(病院勤務)の平均年収は450〜600万円程度です。
基本給に加えて、夜勤手当や各種手当(資格手当、職務手当など)が加算されます。
特に夜勤手当は収入を大きく左右する要素で、月8回の夜勤で5〜8万円の追加収入となるケースが一般的です。
経験年数によって基本給は上昇し、10年目以上のベテラン看護師では600万円を超えることも珍しくありません。
保健師(行政機関勤務)の平均年収は400〜550万円程度です。
公務員として地方公務員給与表に基づいて給与が決まり、経験年数や役職に応じて昇給します。
夜勤はほとんどないため夜勤手当はありませんが、地域手当や扶養手当、住居手当などの各種手当が加算されます。
役職(係長、課長補佐、課長など)に就くと給与が大幅に上昇し、管理職クラスでは600万円以上になることもあります。
保健師(企業勤務・産業保健師)の平均年収は450〜650万円程度です。
企業規模や業種によって差が大きく、大手企業では600万円以上、外資系企業ではさらに高額になるケースもあります。
企業の場合は成果報酬や賞与の変動幅が大きく、会社の業績や個人の評価によって年収が左右されます。
専門的な資格(労働衛生コンサルタントなど)を持っていると、給与アップにつながることが多いです。
保健師(医療機関勤務)の平均年収は430〜550万円程度です。
病院の保健部門や健診センターなどで勤務する場合、看護師よりもやや低めの設定になることが多いですが、夜勤がない分、時給換算では同等か高くなるケースもあります。
賞与・昇給の特徴
看護師(病院勤務)の賞与は通常年2回で、合計3〜5ヶ月分が一般的です。
昇給は毎年あるものの、頭打ちになりやすい傾向があり、管理職(師長など)にならないと大幅な給与アップは期待しにくいケースもあります。
保健師(行政機関勤務)の賞与は通常年2回で、合計4〜4.5ヶ月分が一般的です。
公務員の給与体系に沿って毎年昇給があり、長期的に見ると安定した収入増加が期待できます。
また、役職への昇進ルートが比較的明確で、経験を積むことでキャリアアップの可能性が高まります。
保健師(企業勤務)の賞与は企業によって大きく異なり、好業績の企業では年間5〜6ヶ月分以上になることもあります。
成果主義を導入している企業も多く、個人の実績や貢献度によって評価され、昇給や賞与に反映されます。
長期的なキャリアでの収入比較
長期的なキャリアで比較すると、以下のような傾向が見られます:
看護師:キャリア初期は夜勤手当などで総支給額が高い傾向にありますが、中堅以降は専門性を高めるか管理職になるかしないと、給与の伸びが緩やかになるケースが多いです。
保健師(行政):キャリア初期は看護師よりやや低めですが、長期的には安定した昇給があり、管理職になると給与水準が大きく上がります。
30年以上の長期キャリアでは、行政保健師の方が生涯賃金で上回るケースも少なくありません。
保健師(企業):キャリア初期から比較的高い給与水準で、企業によっては看護師を上回ります。
専門性を高めることでさらなる給与アップが期待でき、管理職になるとより高収入が見込めます。
ただし、企業の業績や雇用環境に左右される面もあります。
働き方の違い
給与面だけでなく、働き方の違いも重要な検討ポイントです。
ライフスタイルやワークライフバランスの観点から比較してみましょう。
勤務形態
看護師(病院勤務):
24時間体制のシフト勤務が基本
日勤(8:30〜17:00など)、準夜勤(16:30〜1:00など)、深夜勤(0:30〜9:00など)の交代制
土日祝日の勤務あり、年間休日数は105〜120日程度
夜勤回数は月4〜8回が一般的
保健師(行政機関勤務):
主に日勤(8:30〜17:15など)で規則的
基本的に夜勤はなし
土日祝日は原則休み、年間休日数は120〜130日程度
健診や地域行事などで休日出勤する場合もあるが、振替休日取得が基本
保健師(企業勤務):
基本的に日勤(9:00〜17:30など)
夜勤はほとんどなし
土日祝日は基本的に休み、年間休日数は120〜140日程度
企業によってはフレックスタイム制や在宅勤務制度あり
保健師(医療機関勤務):
主に日勤だが、病院の診療時間に合わせた勤務もあり
夜勤はほとんどないが、早番・遅番などの変則勤務の可能性あり
土日祝日の勤務は施設による(健診センターなどは土曜診療あり)
ワークライフバランス
看護師は不規則な勤務形態のため、プライベートの予定を立てにくく、身体的負担も大きいという特徴があります。
特に夜勤による生活リズムの乱れは、長期的には健康面での影響も懸念されます。
一方、まとまった連休が取りやすい(例:夜勤明け後3日休みなど)というメリットもあります。
保健師は規則的な勤務時間で夜勤がないため、生活リズムが安定しやすく、プライベートとの両立がしやすい傾向にあります。
特に子育て中の看護師が保健師に転向するケースも少なくありません。
行政機関の場合は、年次有給休暇の取得率も比較的高い傾向にあります。
ただし、保健師の業務は地域や集団を対象とするため、業務範囲が広く、責任も重大です。
特に感染症の流行時や災害時などは緊急対応が必要となり、一時的に業務が増大することもあります。
2023年のコロナ禍では、多くの保健師が感染症対策の最前線で奮闘し、過重労働となるケースも見られました。
仕事の特性
看護師の仕事は、即時的な対応や短期的な成果が求められることが多く、ケアの結果がすぐに見えやすいという特徴があります。
患者さんの状態改善や「ありがとう」という言葉など、目に見える形で成果やフィードバックが得られることが多いです。
一方、保健師の仕事は中長期的な関わりが中心で、成果が表れるまで時間がかかることもあります。
例えば、生活習慣病予防教室の効果は数年後にしか数値として現れないこともあります。
「予防」の成果は見えにくく、「何も起こらないこと」が成功である場合も多いため、達成感を得るまでに時間がかかることがあります。
また、看護師は医師の指示のもとで業務を行うことが多いのに対し、保健師はより自律的に活動計画を立て実施する機会が多いです。
自ら判断し行動する裁量が大きい分、責任も重大になります。
専門性の発揮と成長機会
看護師は臨床現場で専門的なスキルを磨き、認定看護師や専門看護師などの資格取得によってキャリアアップできます。
臨床現場での経験を積むことで、特定の疾患や治療に関する深い知識と技術を習得できます。
保健師は地域全体の健康課題に取り組むための幅広い知識とスキルが求められます。
特定の分野(母子保健、高齢者保健、精神保健など)に特化することもできますが、基本的には「広く浅く」よりも「広く深く」の専門性が求められます。
また、政策立案や事業評価など、マネジメント能力を発揮する機会も多いです。
どちらの職種を選ぶかは、自分の適性や価値観、希望するライフスタイルに合わせて検討することが大切です。
また、看護師と保健師の資格を併せ持つことで、ライフステージに合わせて働き方を選択できるメリットもあります。
2025年の保健師需要と将来性
2025年現在、保健師を取り巻く環境と社会的需要は大きく変化しています。
今後のキャリア選択の参考として、保健師の将来性と需要動向を見ていきましょう。
高まる予防医療の重要性
少子高齢化社会の進展に伴い、予防医療や地域包括ケアの重要性が高まっています。
医療費の増大を抑制するためにも、疾病予防や健康増進の取り組みが政策的にも推進されており、その中心的役割を担う保健師の専門性への期待は大きくなっています。
特に以下の分野で保健師の需要が増加しています:
高齢者の介護予防・フレイル対策:
団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題を背景に、健康寿命延伸のための予防活動の重要性が高まっています。
保健師には、高齢者の自立支援や介護予防事業の企画・運営、効果検証などの役割が期待されています。
メンタルヘルス支援:
働き方改革の推進や新しい生活様式の定着に伴い、メンタルヘルス問題への取り組みが重視されています。
職場のストレス対策や地域でのこころの健康支援など、メンタルヘルス分野での保健師の活躍の場が広がっています。
母子保健・子育て支援:
少子化対策として、安心して子どもを産み育てられる環境づくりが進められています。
妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援体制(子育て世代包括支援センターなど)において、保健師は中核的な役割を担っています。
健康格差対策:
地域や社会経済状況による健康格差の是正が重要な課題となっています。
社会的弱者へのアウトリーチ活動や、地域全体の健康水準を底上げする取り組みにおいて、保健師の地域診断能力や連携力が必要とされています。
デジタルヘルスの進展と保健師の役割
2025年現在、デジタル技術の進展により保健活動のあり方も変化しています。
健康データ活用:
パーソナルヘルスレコード(PHR)の普及や自治体・企業のデータヘルス計画の推進により、データに基づく効果的な保健活動が求められています。
保健師には、健康データの分析・解釈能力や、エビデンスに基づく保健指導スキルが期待されています。
オンライン保健指導:
遠隔での健康相談や保健指導が一般化し、時間や場所の制約を超えたサービス提供が可能になっています。
保健師には、デジタルツールを活用した効果的なコミュニケーション能力が求められています。
AIと保健師の協働:
AI技術の発展により、ルーティン業務の自動化や健康リスク予測の精度向上が進んでいます。
保健師は、AIでは代替できない対人支援や複雑な健康課題への対応など、専門性の高い業務に注力できるようになっています。
新たな健康課題への対応
2025年現在、社会環境の変化に伴い新たな健康課題も生じています。
感染症対策:
COVID-19の経験を踏まえ、感染症危機管理体制の強化が進められています。
保健師には、平時からの感染症サーベイランスや健康危機管理能力が求められています。
気候変動と健康:
気候変動に伴う健康リスク(熱中症、感染症の拡大など)への対応が重要課題となっています。
保健師には、環境保健の視点から地域の脆弱性評価や対策立案を行う役割が期待されています。
多文化共生社会での健康支援:
外国人居住者の増加に伴い、言語や文化の壁を超えた健康支援の必要性が高まっています。
保健師には、多様な背景を持つ人々への配慮や、異文化コミュニケーション能力が求められています。
保健師の採用動向
2025年現在の保健師の採用動向としては、以下のような傾向が見られます:
行政機関:
団塊世代の保健師の大量退職に伴う人材確保のため、多くの自治体で保健師の採用を増やしています。
特に政令市や中核市では、保健所機能強化のための保健師増員が進んでいます。
専門性の高い経験者採用も増加傾向にあります。
企業:
健康経営の普及に伴い、産業保健師の需要が拡大しています。
大企業だけでなく、中小企業向けの産業保健サービスを提供する機関での採用も増えています。
デジタルヘルス関連企業やヘルスケアベンチャーでも、医療専門職として保健師の採用が増加しています。
医療機関:
地域包括ケアシステムの推進に伴い、医療機関と地域をつなぐ役割として保健師の採用が増えています。
特に予防医療に力を入れる医療機関では、保健師の専門性を活かした新たな部門やサービスの展開が見られます。
その他:
研究機関やシンクタンク、ヘルスケア系ベンチャーなど、保健師の活躍の場は多様化しています。
特に健康データ分析や保健事業の効果検証など、エビデンスに基づく活動の専門家として需要が高まっています。
総じて、看護師から保健師へのキャリアチェンジは、将来性の高い選択肢と言えるでしょう。
予防医療の重要性が高まる社会において、保健師の専門性と活躍の場はさらに広がっていくことが予想されます。
ただし、求められる能力やスキルも高度化しているため、継続的な学習と専門性の向上が不可欠です。
保健師資格取得に向けた効果的な学習方法

保健師国家試験の合格を目指すには、効率的で効果的な学習方法が鍵となります。
ここでは、特に働きながら学ぶ看護師の方に向けて、試験合格と実践力養成の両方を意識した学習のポイントを紹介します。
合格への学習戦略
保健師国家試験は例年2月に実施され、合格率は85%前後と比較的高めです。
しかし、働きながら学ぶ場合は時間的制約があるため、効率的な学習計画が重要です。
重点的に学ぶべき科目
保健師国家試験では主に以下の科目が出題されます。
それぞれの重要度と学習のポイントを解説します。
公衆衛生看護学:
試験の中心となる最重要科目です。
個人・家族・集団・組織の支援方法、地域診断の手法、活動計画立案のプロセスなどが出題されます。
特に、母子保健、成人保健、高齢者保健、精神保健など、対象別の保健活動については重点的に学習する必要があります。
理論を暗記するだけでなく、事例を通じて考える訓練が大切です。
疫学・保健統計:
データ分析や地域診断に必須の科目で、計算問題も出題されます。
疫学指標(有病率、罹患率など)の意味と算出方法、統計的検定の基本的な考え方、調査研究の方法論などを押さえておく必要があります。
苦手意識を持つ人も多い分野ですが、過去問を解きながら計算方法を身につけると理解しやすくなります。
保健医療福祉行政論:
制度や法律の知識が問われる科目です。
地域保健法、健康増進法、母子保健法、介護保険法など、保健師活動の根拠となる法律の目的や内容を理解しておく必要があります。
また、保健医療福祉の実施体制や財政についても出題されます。
頻繁に改正される分野なので、最新情報のアップデートが重要です。
健康教育・保健指導:
保健師の重要な活動である健康教育や保健指導の理論と方法が問われます。
行動変容の理論、健康信念モデル、グループワークの手法、個別指導と集団指導の特徴など、基本的な理論を押さえておくことが大切です。
実習での経験と結びつけて理解すると記憶に定着しやすくなります。
公衆衛生学・環境保健:
地域の健康課題を理解するための基礎知識として、人口動態や疾病構造、環境要因などが出題されます。
看護師国家試験で学んだ内容と重複する部分もありますが、より公衆衛生的な視点での理解が求められます。
効率的な学習計画の立て方
働きながら学ぶ場合は、限られた時間を有効活用する学習計画が不可欠です。
効率的な学習のためのポイントを紹介します。
学習期間の設定:
養成課程修了後、試験までの集中学習期間を2〜3ヶ月確保するのが理想的です。
特に12月〜2月の期間は、過去問演習と弱点補強に集中できるようにスケジュールを調整しましょう。
勤務先に試験勉強のための休暇や時短勤務などの制度がないか確認することも検討してください。
科目別学習時間の配分:
重要度と自分の理解度に応じて、科目ごとの学習時間を配分します。
一般的には以下のような配分が目安です:
公衆衛生看護学:40%
疫学・保健統計:20%
保健医療福祉行政論:20%
健康教育・保健指導:10%
公衆衛生学・環境保健:10%
弱点科目は早めに対策を始め、得意科目は試験直前の確認に時間を充てるなど、メリハリをつけた学習が効果的です。
学習方法の工夫:
インプット(情報を取り入れる)とアウトプット(問題を解く)のバランスを意識しましょう。
教科書や参考書で基礎知識を固めた後は、過去問や模擬試験で知識の定着度を確認します。
特に保健師国家試験は状況設定問題が多いため、知識を実際の状況に適用する訓練が重要です。
典型的な学習の流れとしては、以下のステップが効果的です:
基礎知識の確認(教科書、テキスト)
要点整理とノート作成
過去問演習(5年分程度)
苦手分野の重点復習
模擬試験による総合演習
直前期の重要ポイント確認
学習時間の確保と工夫
看護師として働きながら学ぶ場合、学習時間の確保が大きな課題となります。
効率的に時間を活用するためのコツを紹介します。
隙間時間の活用:
通勤時間や休憩時間など、短い時間でも積極的に活用しましょう。
電車内では暗記カードで用語チェック、待ち時間には過去問アプリで1問だけ解くなど、細切れ時間の積み重ねが大きな差になります。
スマートフォンやタブレットで学習できる教材を活用すると便利です。
音声教材の活用:
通勤中や家事をしながらでも学習できる音声教材は強い味方です。
法律の条文や重要項目を自分で録音して繰り返し聞くことで記憶の定着を図ることもできます。
最近は保健師国家試験対策の音声講義も増えているので、活用するとよいでしょう。
学習仲間づくり:
同じ目標を持つ仲間と一緒に学ぶことで、モチベーション維持につながります。
実際に集まって勉強会を開くだけでなく、オンラインのグループチャットで進捗報告や疑問点の共有をする方法も効果的です。
互いに教え合うことで理解が深まり、孤独感も軽減されます。
定期的な復習:
週末にまとめて復習する時間を確保し、その週に学んだ内容を整理すると記憶の定着率が高まります。
特に実習や演習で学んだ内容は、実体験と結びついているため記憶に残りやすく、テキストの内容を理解する助けにもなります。
環境の整備:
集中して学習できる環境を整えることも重要です。
自宅で集中しにくい場合は、図書館や自習室、カフェなど、自分に合った学習場所を見つけましょう。
また、スマートフォンの通知をオフにするなど、集中を妨げる要素を排除することも大切です。
体調管理:
働きながらの学習は体力的にも負担が大きいため、睡眠や栄養を十分に取ることが重要です。
無理なスケジュールを組むよりも、自分のペースで継続できる計画を立てましょう。
短時間でも毎日続けることが、結果的には効率的な学習につながります。
効果的な過去問演習の方法
保健師国家試験の合格には、過去問演習が非常に効果的です。
ただ単に問題を解くだけでなく、以下のような方法で取り組むとより学習効果が高まります。
分野別の演習:
まずは分野ごとに過去問を解き、各分野の理解度を確認します。
正答率の低い分野を重点的に復習することで、効率的に弱点を克服できます。
時間を計った演習:
本番と同じ時間配分で解く練習をすることで、時間管理能力を養います。
保健師国家試験は1問あたり約1.5分の計算となるため、この感覚に慣れておくことが重要です。
誤答分析:
間違えた問題については、なぜ間違えたのかを分析します。
知識不足なのか、問題の読み違えなのか、選択肢の判断ミスなのかを確認し、同じミスを繰り返さないように注意します。
解説の活用:
問題の解説をしっかり読み込み、関連知識も含めて理解を深めます。
特に正解した問題でも、他の選択肢が誤りである理由まで理解しておくと、類似問題に対応する力が身につきます。
問題の作成:
学んだ内容から自分で問題を作ってみることも、理解を深める効果的な方法です。
特に状況設定問題を作成することで、知識の応用力が養われます。
過去問は単なる試験対策だけでなく、実践的な判断力を養うための教材でもあります。
問題を通じて「保健師としてどのような判断や行動が求められるか」を考えながら取り組むことが大切です。
現場で求められる実践力を養うために
保健師国家試験に合格することはもちろん重要ですが、実際の保健師活動で求められる実践力を養うことも同様に大切です。
特に看護師から保健師へのキャリアチェンジを考えている方は、臨床とは異なる視点やスキルを意識的に習得する必要があります。
地域診断能力を磨く
保健師活動の基盤となる「地域診断」の能力を養うために、以下のような取り組みが効果的です。
データ分析の訓練:
自分が住んでいる地域や勤務している地域の健康統計データを実際に分析してみましょう。
人口動態統計や健診データなどから、その地域の健康課題を抽出する練習をすることで、データからの課題抽出能力が身につきます。
多くの自治体ではホームページ上で健康に関する統計情報を公開しています。
地域踏査の実践:
休日などを利用して実際に地域を歩き、住民の生活環境を観察する「地域踏査」を行ってみましょう。
交通アクセス、商店の分布、高低差、公共施設の位置など、住民の健康に影響する環境要因を観察することで、生活者の視点を養うことができます。
社会資源の把握:
地域にどのような健康支援資源(医療機関、福祉施設、住民組織など)があるかを調べ、マッピングしてみましょう。
これらの資源がどのように連携し、あるいは連携の隙間があるかを分析することで、地域のネットワーク構築に必要な視点が身につきます。
健康課題の優先順位付け:
地域の健康課題を抽出した後、「緊急性」「重要性」「改善可能性」などの観点から優先順位をつける訓練をしましょう。
限られた資源の中で効果的な保健活動を展開するためには、優先順位づけの能力が不可欠です。
実践的な保健指導スキルを習得する
保健師の重要な役割である「保健指導」のスキルを高めるためには、以下のような取り組みが有効です。
行動変容理論の理解と活用:
ヘルスビリーフモデル、ステージ変容モデル、自己効力感理論など、健康行動の変容に関する理論を学び、日常生活での実践を観察しましょう。
例えば、家族や同僚の健康行動の変化を理論に当てはめて分析してみると、理解が深まります。
指導技術の練習:
ロールプレイを通じて保健指導の技術を練習することが効果的です。
学習仲間と交互に保健師役と対象者役を演じ、フィードバックを受けることで、自分の指導スタイルの強みと弱みを認識できます。
コミュニケーション能力の向上:
傾聴、共感、オープンクエスチョン、要約など、効果的なコミュニケーション技法を意識的に日常会話の中で使ってみましょう。
特に「指導」ではなく「支援」の姿勢で対話する練習が重要です。
教材作成の練習:
健康教育の媒体(パンフレット、スライドなど)を実際に作成してみることで、わかりやすく情報を伝える能力が養われます。
専門用語を使わず、対象者の理解度に合わせた表現を工夫することがポイントです。
地域活動への参加
実際の保健師活動に近い経験を積むためには、地域の健康関連活動に参加することが有効です。
ボランティア活動:
健康祭りや介護予防教室、子育てサロンなどのボランティアに参加することで、地域住民との関わり方や地域の健康課題を直接体験できます。
特に看護師としての専門性を活かせるボランティア活動は、保健師活動への橋渡しとなります。
住民組織との交流:
食生活改善推進員、健康推進員などの住民組織の活動に参加し、住民主体の健康づくりの実際を学びましょう。
保健師は住民組織の支援と協働が重要な役割の一つであり、その活動内容を知ることは貴重な経験となります。
地域の健康課題への関心:
地域で開催される健康講座や公開講演会に参加し、地域の健康課題や取り組みを知ることも大切です。
また、自治体の健康づくり計画や報告書を読むことで、政策レベルでの保健活動の視点を養うことができます。
NPOやサークル活動への参加:
特定の健康課題(障害者支援、認知症ケアなど)に取り組むNPOやサークル活動に参加することで、当事者視点や地域でのサポート体制についての理解が深まります。
保健師との交流
現役保健師から直接学ぶ機会を積極的に作ることも重要です。
セミナーや研修会への参加:
保健師を対象としたセミナーや研修会に参加し、現場の最新情報や課題を知ることができます。
また、研修会は現役保健師とのネットワークを広げる貴重な機会でもあります。
インタビューの実施:
可能であれば、様々な分野で活躍する保健師にインタビューを行い、仕事の実際やキャリア形成のプロセスを聞いてみましょう。
特に転職組の保健師からは、キャリアチェンジの具体的なアドバイスが得られることが多いです。
SNSやオンラインコミュニティの活用:
保健師のSNSグループやオンラインコミュニティに参加することで、気軽に情報交換や質問ができます。
現場の生の声を聞くことができ、最新の動向もキャッチできます。
実習先との関係維持:
養成課程での実習先との関係を大切にし、実習後も情報交換や相談ができる関係を築いておくと良いでしょう。
就職活動の際にも有利になることがあります。
これらの活動を通じて、教科書だけでは学べない保健師活動の実際や、現場ならではの工夫、やりがいなどを知ることができます。
また、将来的なネットワーク構築にもつながるため、積極的に取り組むことをおすすめします。
おすすめの学習リソース
保健師国家試験の合格と実践力養成のためには、効果的な学習リソースの活用も重要です。
ここでは特に評価の高い教材や学習方法を紹介します。
基本テキストと参考書
公衆衛生看護学テキスト(各社出版):
出版社ごとに特色があるため、自分の学習スタイルに合ったものを選ぶとよいです。
日本看護協会出版会、医学書院、メヂカルフレンド社などが代表的です。
説明がわかりやすく、図表が豊富なものを選ぶと理解しやすいでしょう。
国家試験対策問題集:
「クエスチョン・バンク」や「保健師国家試験予想問題集」など、過去問に準拠した問題集は必須アイテムです。
解説が詳しいものを選び、なぜその答えが正解なのかを理解することが重要です。
法律・制度解説書:
「公衆衛生がみえる」「保健師になるための法律と制度要点」など、法律や制度をわかりやすく解説した本も役立ちます。
法改正に対応した最新版を使用することが大切です。
実践書:
「地域診断から始める保健師活動」「保健指導ガイドライン」など、実践的なスキルを解説した本も、実際の活動をイメージするのに役立ちます。
事例が豊富に掲載されているものを選ぶと理解しやすいでしょう。
2025年現在の最新情報を反映しているアプリが利用できるため、スマートフォンやタブレットでの学習も効果的です。
保健師国家試験対策アプリや、オンライン講座などを活用すると、隙間時間の学習が容易になります。
オンライン学習ツール
2025年現在、様々なオンライン学習ツールが充実しています。
特に以下のようなツールが効果的です:
eラーニングシステム:
「保健師国試対策ビデオ講座」などの動画講義は、苦手分野の理解を深めるのに役立ちます。
繰り返し視聴できる点や、自分のペースで学習できる点が魅力です。
過去問演習アプリ:
スマートフォンで過去問を解けるアプリは、通勤時間などの隙間時間を有効活用できます。
正答率や苦手分野の分析機能があるものを選ぶと、効率的な学習が可能です。
デジタル暗記カード:
重要用語や法律の要点を暗記するのに便利なデジタル暗記カードアプリも活用できます。
自分でカードを作成する過程も学習になります。
オンライン学習コミュニティ:
同じ目標を持つ仲間と情報交換できるオンラインコミュニティも心強い味方です。
モチベーション維持にも役立ちます。
AIチューター:
2025年現在では、AIを活用した学習支援システムも充実しています。
苦手分野を分析して個別の学習プランを提案してくれるツールも効果的です。
これらのデジタルツールは、特に働きながら学ぶ方にとって時間と場所の制約を超えた学習を可能にします。
ただし、オンラインだけでなく、実際の書籍や筆記による学習も併用するとより記憶に定着しやすくなります。
グループ学習の活用
一人での学習に加えて、グループでの学習も非常に効果的です。
特に以下のような活動が役立ちます:
定期的な勉強会:
同じ職場や養成課程の仲間と定期的に勉強会を開き、苦手分野を教え合うことで理解が深まります。
オンラインでのリモート勉強会も効果的です。
模擬試験の共同実施:
グループで模擬試験を実施し、その後に解答・解説を行うことで、多角的な視点が得られます。
互いの解釈や考え方を共有することで思考の幅が広がります。
事例検討会:
実際の保健師活動の事例を検討する会を開くことで、実践的な判断力が養われます。
「この状況ではどう判断するか」を議論することで、多様な視点を学ぶことができます。
スキルアップワークショップ:
保健指導のロールプレイや地域診断の演習などを共同で行うことで、実践的なスキルが磨かれます。
互いにフィードバックを行うことで、自分では気づかない強みや課題が明確になります。
グループ学習は知識の共有だけでなく、モチベーション維持や心理的サポートの面でも大きな意義があります。
特に働きながらの資格取得は孤独感を感じることもありますが、同じ目標を持つ仲間との交流がその解消に役立ちます。
継続的な学習のコツ
保健師資格取得という目標達成のためには、継続的な学習が不可欠です。
長期間のモチベーション維持のためのコツを紹介します:
明確な目標設定:
「保健師になって何をしたいのか」という具体的なビジョンを持つことで、学習の意義が明確になります。
短期・中期・長期の目標を設定し、進捗を確認しながら進めることが効果的です。
学習記録の活用:
学習内容や時間を記録することで、自分の成長を実感できます。
学習管理アプリやノートを活用し、可視化することがモチベーション維持につながります。
自己褒美システム:
小さな目標達成ごとに自分へのご褒美を設定することで、学習へのモチベーションが高まります。
例えば、「この章を終えたら好きな映画を見る」など、自分が楽しめるご褒美を計画しましょう。
学んだ内容の実践:
学習した内容を実際の看護業務や日常生活に活かすことで、学びの意義を実感できます。
例えば、健康教育の理論を家族の生活習慣改善に活用するなど、実践を通じた学びも大切です。
ストレス管理:
長期間の学習は精神的にも体力的にも負担がかかります。
適度なリフレッシュや休息を取り入れ、学習のペースを調整することも重要です。
保健師資格取得は、看護師としてのキャリアに新たな選択肢を広げる貴重な機会です。
効果的な学習方法を活用し、無理なく着実に目標に近づいていきましょう。
資格取得後も学び続ける姿勢が、保健師としての専門性を高め、やりがいのあるキャリアにつながります。
2025年の保健師を取り巻く最新トレンド

社会環境の変化や技術の進化に伴い、保健師を取り巻く環境も大きく変化しています。
ここでは2025年現在の最新動向を紹介し、これからの保健師活動の展望を解説します。
デジタルヘルスと保健師の役割
デジタル技術の発展は保健師活動にも大きな変革をもたらしています。
新たな技術を活用した保健師活動の最新トレンドを見ていきましょう。
オンライン保健指導の普及
COVID-19パンデミックを契機に急速に普及したオンライン保健指導は、2025年現在では標準的な保健活動の一つとなっています。
ビデオ会議システムを活用した個別保健指導や健康教室が一般化し、時間や距離の制約を超えたサービス提供が可能になりました。
特に働き盛り世代や子育て世代など、時間的制約がある対象者へのアクセスが向上しています。
保健師には対面とオンラインそれぞれの特性を理解し、効果的に組み合わせる「ハイブリッド型支援」のスキルが求められるようになりました。
例えば、初回面談は対面で信頼関係を構築し、フォローアップはオンラインで行うなど、対象者のニーズや状況に合わせた柔軟な支援が標準となっています。
オンライン保健指導では、画面共有機能を活用した視覚的な説明や、チャット機能を用いた質問対応など、デジタルならではのコミュニケーション手法が発展しています。
また、録画機能を活用した振り返りや情報共有も効果的な手法として定着しています。
ウェアラブルデバイスとPHRの活用
ウェアラブルデバイス(活動量計、心拍計、血糖モニターなど)やスマートフォンアプリから得られる健康データを活用した保健指導が一般化しています。
個人の健康データを継続的に収集・分析し、よりパーソナライズされた保健指導を提供することが可能になりました。
例えば、日々の活動量や睡眠パターンのデータを基に、個人の生活習慣に合わせた具体的なアドバイスが提供できるようになっています。
パーソナルヘルスレコード(PHR)の普及により、個人が自身の健康情報を一元管理し、医療機関や保健師と共有できる環境も整いつつあります。
保健師はこれらのデータを活用して、より科学的根拠に基づいた保健指導を行うことが求められています。
一方で、テクノロジーリテラシーの差による健康格差拡大が懸念されており、デジタルデバイドに配慮した支援も保健師の重要な役割となっています。
高齢者やデジタル機器に不慣れな方々への支援として、操作方法の教育や代替手段の提供などが行われています。
AIと保健師の協働
人工知能(AI)技術の発展により、保健師活動においてもAIとの協働が進んでいます。
健康リスク予測AIの活用:
健診データや生活習慣情報から将来の疾病リスクを予測するAIシステムが実用化され、優先的に支援すべき対象者の抽出や個別化された予防プランの立案に活用されています。
保健指導支援AI:
個人の特性や行動変容ステージに合わせた効果的なアプローチを提案するAIシステムが、保健師の意思決定をサポートしています。
例えば、過去の成功事例からパターンを学習し、類似ケースに対する効果的な介入方法を提案するなどの活用が進んでいます。
業務効率化AI:
データ入力や報告書作成などの事務作業を支援するAIが導入され、保健師がより専門性の高い支援活動に集中できる環境が整いつつあります。
これらのAI技術は保健師の「代替」ではなく「拡張」と位置づけられ、AIが得意とするデータ分析と、保健師が得意とする対人支援スキルの融合が重視されています。
保健師には、AIの提案を批判的に評価し、倫理的・文脈的判断を加えて最終決定する能力が求められるようになっています。
2025年の保健師には、これらのデジタル技術の特性と限界を理解し、適切に活用するデジタルリテラシーが不可欠となっています。
一方で、技術に頼りすぎず、対象者との信頼関係構築やエンパワメントという保健師活動の本質は変わらないという認識も重要視されています。
地域包括ケアシステムにおける保健師の位置づけ
少子高齢化が進む日本社会において、地域包括ケアシステムの構築は重要な政策課題となっています。
このシステムにおける保健師の役割と最新動向を見ていきましょう。
医療・介護・予防の連携コーディネーター
地域包括ケアシステムにおいて、保健師は医療・介護・予防の連携を促進するコーディネーターとしての役割が強化されています。
多職種連携の推進役:
医師、看護師、介護職、リハビリ専門職、社会福祉士など様々な専門職との連携を促進するハブとしての機能を担っています。
地域ケア会議やサービス担当者会議などの場で、予防的視点からの助言や提案を行う役割が期待されています。
シームレスなケア移行の支援:
入院から在宅復帰、在宅から施設入所など、ケアの場が移行する際の調整役として、切れ目のない支援を実現する役割を担っています。
特に近年は、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の推進役としても期待されており、本人の意思を尊重したケア継続の支援に取り組んでいます。
地域課題の可視化と解決策の提案:
地域診断の手法を用いて、地域の健康・福祉課題を可視化し、関係者と共有しながら解決策を提案する役割も担っています。
データ分析に基づく科学的根拠と、現場の実態把握に基づく質的情報の両面から、効果的な地域支援策を提案することが求められています。
介護予防と自立支援の推進
超高齢社会において、健康寿命の延伸は最重要課題の一つです。
保健師は介護予防と自立支援の中心的推進者として位置づけられています。
フレイル予防の取り組み:
加齢に伴う心身の機能低下(フレイル)の予防が重視され、早期発見・早期対応のためのシステム構築に保健師が関わっています。
フレイルチェックの普及や、地域の通いの場の創出・支援など、予防的アプローチの企画・運営を担当しています。
住民主体の介護予防活動支援:
「地域づくりによる介護予防」の理念のもと、住民自身が主体となった活動を支援する役割が強化されています。
住民ボランティアの育成や、自主グループの立ち上げ支援など、地域の互助機能を高める取り組みを展開しています。
科学的根拠に基づく介護予防プログラム:
EBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)の考え方が浸透し、効果検証を伴う介護予防プログラムの企画・実施が求められています。
保健師には、最新の研究成果を踏まえたプログラム開発と、地域特性に合わせたカスタマイズ能力が期待されています。
認知症フレンドリーコミュニティの構築
認知症高齢者の増加に伴い、認知症の人が住みやすい地域づくり(認知症フレンドリーコミュニティ)の推進が重視されています。
認知症予防と早期発見:
認知機能低下の予防や早期発見のための取り組みの企画・運営を担当しています。
脳活性化プログラムや、認知症初期集中支援チームとの連携による早期支援体制の構築などが行われています。
認知症サポーターの養成:
地域住民に対する認知症の正しい理解促進と、認知症の人やその家族を支援する認知症サポーターの養成に関わっています。
さらに、養成したサポーターが実際に活躍できる場の創出も重要な役割となっています。
認知症の人と家族の伴走者:
認知症の診断から地域生活の継続まで、本人と家族に寄り添い続ける「伴走者」としての役割も期待されています。
特に初期段階での相談支援や、利用可能なサービスへのつなぎ役として機能しています。
社会参加の促進:
認知症の人が地域社会の一員として活躍できる場の創出も新たな取り組みとして注目されています。
例えば、認知症カフェの運営支援や、認知症の人が講師となる認知症サポーター養成講座など、当事者参画型の活動が広がっています。
地域包括ケアシステムにおける保健師の役割は、単なるサービス調整にとどまらず、地域全体の予防力を高め、住民主体の健康づくり・支え合いの仕組みを構築することにあります。
2025年の保健師には、地域診断能力、多職種連携力、住民との協働力など、コミュニティアプローチの専門家としてのスキルがより一層求められています。
新たな活躍フィールド
従来の活動分野に加えて、社会環境の変化に伴い保健師の新たな活躍の場が広がっています。
ここでは、注目されている新領域を紹介します。
SDGsと健康の社会的決定要因への取り組み
持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health: SDH)への取り組みが重視されるようになり、保健師の活動領域も拡大しています。
ヘルスインオールポリシー:
「すべての政策に健康の視点を」という考え方に基づき、保健医療分野だけでなく、住宅、交通、教育、環境など様々な政策分野に健康の視点を取り入れる動きが進んでいます。
保健師は健康影響評価(Health Impact Assessment)の専門家として、各種政策の健康影響を評価し、政策立案に参画する機会が増えています。
健康格差対策:
社会経済状況による健康格差の是正が重要課題となり、特に社会的に脆弱な立場にある人々への支援強化が進んでいます。
保健師は、データ分析と現場感覚を組み合わせて健康格差の実態を把握し、効果的な対策を提案・実施する役割を担っています。
コミュニティエンパワメント:
地域住民自身が健康課題を認識し、解決に向けて行動する力を高める「コミュニティエンパワメント」の手法が注目されています。
保健師は、地域の潜在力を引き出し、住民主体の健康づくり活動を支援するファシリテーターとしての役割を強化しています。
気候変動と健康
気候変動による健康影響への対応も、保健師の新たな活動領域として重要性を増しています。
熱中症対策:
気温上昇に伴う熱中症リスクの増大に対応し、予防啓発や早期発見・対応システムの構築に取り組んでいます。
特に高齢者や乳幼児など脆弱性の高い集団を対象とした予防活動が強化されています。
感染症リスク管理:
気候変動に伴う感染症の流行パターン変化に対応するサーベイランスと予防対策の強化が進んでいます。
蚊媒介感染症の北上や、新たな感染症リスクの出現に備えた地域の健康危機管理体制の構築に保健師が関わっています。
レジリエントコミュニティの構築:
気候変動に伴う災害の増加に備え、地域の回復力(レジリエンス)を高める取り組みも保健師の重要な役割となっています。
特に災害時要配慮者の把握と支援計画の策定、平時からの地域防災力向上のための啓発活動などが行われています。
プラネタリーヘルスの視点
地球環境と人間の健康を一体的に捉える「プラネタリーヘルス」の考え方が浸透し、より広い視野での保健活動が展開されています。
サステナブルな生活様式の推進:
環境負荷が少なく健康にも良い生活様式(植物性食品中心の食生活、アクティブモビリティの推進など)の普及啓発に取り組んでいます。
個人の健康と地球環境の両方にメリットがある「コベネフィット」の観点からの保健指導が進んでいます。
エコヘルスの推進:
人間・動物・環境の健康を一体的に捉える「One Health(ワンヘルス)」や「エコヘルス」の概念に基づく活動も広がっています。
特に都市部では、緑地空間の創出と活用による健康増進など、環境と健康を結びつけた取り組みが注目されています。
国際協力の新たな形:
気候変動や環境問題は国境を越えた課題であり、国際的な協力の中で保健師の専門性を発揮する機会も増えています。
例えば、国際機関やNGOとの協働による環境変化に対応した地域保健システム構築支援などの取り組みが行われています。
デジタルディバイド対策と情報リテラシー支援
デジタル社会の進展に伴い、情報格差(デジタルディバイド)への対応も保健師の新たな役割となっています。
高齢者等のデジタルリテラシー向上支援:
オンライン診療やPHRなどのデジタルヘルスサービスを利用できるよう、高齢者等へのデジタル機器活用支援を行っています。
地域の通いの場などを活用したスマートフォン教室の開催や、個別サポートなどの取り組みが広がっています。
ヘルスリテラシー向上支援:
インターネット上の膨大な健康情報の中から信頼できる情報を見極める力(ヘルスリテラシー)の向上支援も重要な役割です。
健康情報の批判的評価方法の普及啓発や、信頼できる情報源の紹介などを行っています。
デジタルヘルスの公平性確保:
デジタル技術の活用による健康格差の拡大を防ぐため、オンラインとオフラインのサービスを適切に組み合わせた「ハイブリッド型支援」の設計が求められています。
特に社会的に孤立しがちな高齢者や障害者、外国人住民などへの配慮が重視されています。
これらの新たな活動領域は、保健師に従来の専門性に加えて、より広い視野と新たなスキルを求めています。
一方で、「地域の健康課題を把握し、予防的アプローチで解決する」という保健師の本質的な役割は変わらず、むしろその重要性が再認識されている状況と言えるでしょう。
看護師から保健師へのキャリアチェンジを考える際には、これらの新たな領域にも目を向け、自分の興味や強みを活かせる分野を探ることも大切です。
看護師さんからのQ&A「おしえてカンゴさん!」
保健師を目指す看護師の皆さんから寄せられる代表的な質問とその回答をQ&A形式でご紹介します。
現場の経験と最新情報に基づいた「カンゴさん」からのアドバイスをぜひ参考にしてください。
Q1: 看護師から保健師になるのにかかる期間はどれくらいですか?
A: 一般的には1〜2年の追加教育が必要です。
大学の専攻科・別科なら1年、大学院なら2年程度です。
通信制を活用すれば、働きながら資格取得を目指すことも可能ですが、実習期間(約1ヶ月)は集中的に時間が必要なので、休暇取得などの調整が必要です。
看護師経験が長い方向けに、実習期間が短縮される特例措置を設けている教育機関もありますので、各学校の募集要項をよく確認するとよいでしょう。
Q2: 臨床経験が浅くても保健師になれますか?
A: はい、臨床経験の年数に関わらず保健師になることは可能です。
保健師養成課程の入学条件として「〇年以上の臨床経験」を設けている教育機関もありますが、多くの学校では新卒看護師でも出願可能です。
ただし、実践的な視点で保健師活動を行うためには、ある程度の臨床経験があると有利な面も多いです。
特に地域住民の健康問題を医学的視点で理解したり、医療機関との連携を円滑に進めたりする上で、臨床経験は大きな強みとなります。
経験が浅い場合は、保健師になってからも継続的に学び、実践の中でスキルを磨いていくことが大切です。
Q3: 看護師と保健師では給料はどちらが高いですか?
A: 一概には言えませんが、夜勤手当がある看護師の方が総支給額は高くなる傾向があります。
ただし、保健師(特に公務員)は福利厚生が充実しており、長期的なキャリアで考えると安定しています。
具体的には、看護師(病院勤務)の平均年収は450〜600万円程度、保健師(行政機関)は400〜550万円程度です。
企業の産業保健師は比較的高給の傾向があり、大手企業では600万円以上になることもありますが、企業規模によって差があります。
また、保健師は管理職への昇進機会が比較的多く、キャリア後半では逆転するケースも少なくありません。
給与だけでなく、ワークライフバランスや仕事のやりがいなど、総合的に判断することをおすすめします。
Q4: 保健師の仕事は看護師より楽ですか?
A: 「楽」というより「違い」があると考えるべきです。
保健師は身体的負担や夜勤はないものの、地域全体の健康課題に取り組む責任や行政事務作業、多職種連携など、別の形の負担があります。
またイベントや健診などで休日出勤がある場合もあります。
成果が見えるまで時間がかかることも多く、目に見える形での達成感を得にくい面もあります。
さらに、感染症流行時や災害時には緊急対応が必要となり、一時的に業務が激増することもあります。
自分の適性や希望する働き方に合わせて選択することをおすすめします。
Q5: 保健師として働くのに向いている人はどんな人ですか?
A: 以下のような特性を持つ方は保健師に向いていると言えるでしょう:
予防的視点で物事を考えられる方:すでに起きた問題への対応だけでなく、「問題が起きないようにするには」と考えられる方に向いています。
コミュニケーション能力が高く、多様な人と関わることが好きな方:様々な背景や価値観を持つ住民や関係機関と協働する機会が多いため、柔軟なコミュニケーション能力が重要です。
地域や社会全体の健康に関心がある方:個人の健康だけでなく、地域全体の健康水準向上に関心を持ち、社会的要因にも目を向けられる方に向いています。
長期的な視点で成果を待つことができる方:保健師の活動は成果が表れるまで時間がかかることも多いため、粘り強く取り組める忍耐力が求められます。
企画力や調整力を発揮したい方:健康施策の企画・立案や、多機関・多職種の調整役として活躍したい方に向いています。
自律的に活動できる方:医師の指示のもとで動く看護師と異なり、保健師はより自律的な判断と行動が求められます。
これらの特性はすべて備えている必要はなく、看護師経験を通じて培った強みを活かしながら、足りない部分は意識的に伸ばしていくことも可能です。
Q6: 保健師資格を取った後も看護師として働くことはできますか?
A: もちろん可能です。
保健師資格を持っていても、看護師として働く選択肢は残ります。
実際、両方の資格を活かして複数の職場で働く方や、ライフステージに合わせて職場を変える方も少なくありません。
例えば、子育て期間中は日勤の保健師として働き、子どもが独立した後に臨床看護に戻るというキャリアパターンを選ぶ方もいます。
看護師としての臨床経験を持ちながら保健師の視点も持つことは、どちらの現場でも強みになります。
特に医療機関の地域連携部門や退院支援部門では、両方の視点を持つ人材が重宝されています。
Q7: 保健師の資格試験は難しいですか?
A: 合格率は例年85%前後と比較的高めです。
ただし、働きながら学ぶ場合は時間管理が課題になります。
出題範囲は看護師国家試験に比べると狭いですが、公衆衛生看護学や疫学・保健統計学など看護師国家試験とは異なる分野もあるため、計画的な学習が必要です。
特に法律や制度に関する知識は頻繁に改正されるため、常に最新情報を確認することが重要です。
過去問を活用した演習と、苦手分野の集中的な復習を組み合わせることで、効率的に対策を進めることができます。
なお、特定の養成課程を修了することが受験資格となるため、独学だけでの受験はできない点に注意が必要です。
Q8: 産休・育休後に保健師として復帰するのは看護師より簡単ですか?
A: 一般的には保健師の方が復帰しやすい環境が整っていると言えます。
その理由としては、以下のような点が挙げられます:
勤務形態の安定性:主に日勤のみで夜勤がないため、子育てとの両立がしやすい傾向があります。
休業中の知識・技術の変化が比較的少ない:臨床現場に比べて、医療技術や機器の変化に直接影響される度合いが少ないため、ブランクによる不安が比較的小さいです。
時短勤務制度の充実:特に行政機関では、育児短時間勤務制度が整備されていることが多く、段階的な復帰が可能です。
ただし、保健師の場合も担当地区や業務内容の変更、法制度改正への対応など、復帰時の課題はあります。
自治体や企業によっても環境は異なるため、復帰前に職場の状況を確認し、必要に応じて研修機会を設けてもらうなどの準備をすることをおすすめします。
Q9: 保健師として海外で働くことはできますか?
A: はい、可能です。
海外で保健師として活躍する主なルートとしては、以下のようなものがあります:
国際協力機構(JICA):青年海外協力隊や専門家として途上国の保健医療支援に携わることができます。
母子保健や感染症対策、地域保健システム強化などの分野で活動機会があります。
国際機関:WHO(世界保健機関)やUNICEF(国連児童基金)などの国際機関で、公衆衛生専門家として働く道もあります。
ただし、通常は修士号以上の学位や専門的経験が求められることが多いです。
国際NGO:国境なき医師団やセーブ・ザ・チルドレンなどの国際NGOでも、保健医療スタッフとして活動できます。
海外日系企業:海外に進出している日系企業の健康管理室で、産業保健師として働く機会もあります。
海外で働くためには、語学力(特に英語)や異文化コミュニケーション能力、国際保健に関する知識が必要です。
また、国によっては現地の保健師資格や看護師資格の取得が必要な場合もあるため、希望する国の資格制度を事前に調査することをおすすめします。
大学院での国際保健学の学位取得や、短期の海外研修への参加なども、キャリア形成の助けになるでしょう。
Q10: 保健師として起業することは可能ですか?
A: はい、保健師としての専門性を活かした起業は可能であり、近年は独立して活躍する保健師も増えています。
具体的な起業の形態としては、以下のようなものがあります:
産業保健コンサルタント:中小企業向けに産業保健サービスを提供する事業が増えています。
複数の企業と契約し、健康診断の実施・事後指導、メンタルヘルス対策、健康経営支援などを行います。
健康教育講師:健康セミナーや研修の講師として独立する道もあります。
企業や自治体、学校などからの依頼で健康教育を提供します。
訪問型保健指導サービス:糖尿病や高血圧などの生活習慣病を持つ方への訪問型の保健指導サービスを提供する事業もあります。
医療機関と連携し、退院後の生活支援などを行います。
デジタルヘルス系起業:健康管理アプリの開発や、オンライン保健指導サービスなど、デジタル技術を活用した起業も増えています。
起業に際しては、保健師としての専門性に加えて、経営知識やマーケティング能力も必要になります。
また、事業内容によっては「医療法」や「健康保険法」など、関連法規の理解も重要です。
まずは副業から始めたり、起業経験のある先輩保健師に相談したりしながら、段階的に準備を進めることをおすすめします。
Q11: 保健師になって後悔したことはありますか?
A: 保健師へのキャリアチェンジにも、もちろんプラス面とマイナス面があります。
現役保健師から聞かれる「後悔した点」としては、以下のようなものがあります:
専門的な医療知識・技術が維持しにくい:臨床現場を離れることで、最新の医療技術や処置のスキルが低下することへの不安を感じる方は少なくありません。
成果が見えにくい:予防活動は「何も起こらないこと」が成功である場合も多く、目に見える形での達成感が得られにくいことにストレスを感じる方もいます。
行政特有の制約:特に行政保健師の場合、予算や人員の制約、組織の縦割り構造などで思うような活動ができないことへのもどかしさを感じることがあります。
給与面での不満:夜勤手当がなくなることで収入が減少することに不満を感じる方もいます。
ただし、これらの「後悔」は個人の価値観や職場環境によって大きく異なります。
多くの保健師は、広い視野で活動できることや、予防的アプローチの重要性、ワークライフバランスの改善などにやりがいを感じています。
転職前に現役保健師の話を聞いたり、実際の職場を見学したりすることで、ミスマッチを防ぐことができるでしょう。
Q12: 将来的に保健師の需要はどうなりますか?
A: 今後も保健師の需要は堅調に推移すると予測されています。
需要を後押しする主な要因としては、以下のようなものが挙げられます:
予防医療の重視:医療費抑制の観点から、疾病予防や健康増進への投資が増加しています。
特に生活習慣病予防や介護予防は国の重点政策であり、保健師の専門性が求められる分野です。
高齢化の進展:高齢者の健康支援や介護予防、在宅医療の推進など、地域包括ケアシステムにおいて保健師の役割が重要視されています。
健康経営の普及:企業における従業員の健康管理の重要性が認識され、産業保健師の需要が拡大しています。
特に中小企業向けの外部産業保健サービスの需要が高まっています。
健康危機管理の強化:COVID-19パンデミックの経験を踏まえ、感染症対策や災害時の健康支援体制の強化が進められており、保健師の需要増加につながっています。
デジタルヘルスの進展:健康データ活用やオンライン保健指導など、デジタル技術を活用した新たな保健活動の場も広がっています。
また、団塊世代の保健師の大量退職に伴う人材確保の必要性も高まっています。
ただし、地域や分野によって需要の偏りがあるため、就職先を検討する際には各地域の状況を確認することをおすすめします。
総じて、看護師から保健師へのキャリアチェンジは、将来性の高い選択肢と言えるでしょう。
まとめ – 看護師から保健師へのキャリアップ成功のために
看護師から保健師へのキャリアチェンジは、予防医療の視点を持ち、より広い範囲で人々の健康を支援できる素晴らしい選択肢です。
資格取得には1〜2年の追加教育が必要ですが、臨床経験を活かしながら新たな専門性を身につけることで、活躍の場が大きく広がります。
ワークライフバランスの改善や長期的なキャリア構築も魅力です。
保健師としての道を検討する際は、【はたらく看護師さん】のキャリア支援サービスをぜひご活用ください。
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