医療の高度化と在院日数の短縮化が進む中で、効果的な医療連携の実践は、患者に質の高い医療を提供するための重要な要素となっています。
新人看護師からベテラン看護師まで、それぞれの立場で活用できる医療連携の実践ポイントを、詳しく解説します。
日々の業務における判断基準として、また新人教育の指針としても活用できる内容となっております。
この記事で分かること
- 医療の基本原則から実践的な連携体制
- 効果的な情報共有と連携調整の具体的な方法
- 継続支援の確立と質の向上のためのポイント
- 特殊な状況における連携方法と実践的なツールの活用法
- 事例成功のポイントと課題への対応策
対象となる医療従事者
- 医療連携室の看護師
- 病棟看護師
- 外来看護師
- 訪問看護師
- 看護管理者
- 医療連携に関わるすべての医療従事者
医療連携の基本原則

医療連携は、複数の医療機関や介護施設が協力して患者に最適な医療を提供するための重要な仕組みです。
このセクションでは、効果的な医療連携を実現するための基本的な考え方と実践方法について解説します。
医療連携の定義と意義
医療連携の本質的な意味
医療連携とは、医療機関同士が包括の機能を活用しつつ、患者に切れ目のない医療を提供することを指します。
現代の高度化した医療において、一つの医療機関だけですべての医療ニーズに対応することは困難であり、各機関が専門性を協議する役割を担うことで、より質の高い医療を実現することができます。
医療連携が生み出す価値
患者にとっては正しい医療を正しいタイミングで受けられる体制が整備され、医療機関にとっては限られた医療資源を効率的に活用することが可能となります。よって医療費の適正化にも貢献します。
連携に必要な基本姿勢
相互理解の重要性
効果的な医療連携を実現するためには、連携先の医療機関の機能や特徴を十分に理解することが重要です。
信頼関係の構築方法
連携先との幅広い関係は、日々の丁寧なコミュニケーションで大切に育てられます。情報提供の際は相手の立場に立って必要な情報を整理し、わかりやすく伝えることを心がけます。
研修会や研修会、顔の見える関係作りを進めることも大切です。
連携体制の構築
組織的な体制作り
医療連携を効果的に進めるためには、組織としての体制整備が必要です。
医療連携室などの専門配置を設置し、責任者と担当者を明確にすることで、組織的な対応が可能になります。
連携ネットワークの形成
地域の医療機関や介護施設とのネットワークを構築し、定期的に情報交換を行うことが重要です。
また、行政機関や患者支援団体とも良好な関係を築き、多角的な支援体制を整えることが求められます。
連携における経営的配慮
患者の権利尊重
医療を進める際には、常に患者の権利を最優先に考える必要があります。患者の意思決定を尊重し、十分な説明と同意のもとで連携を進めることが重要です。
個人情報の保護
患者の個人情報を正しく管理し、必要な範囲内での情報共有を心がけます。
特に、電子メディアでの情報には細心の注意を払い、セキュリティ対策を徹底します。
連携における課題への対応
コミュニケーション上の課題
連携機関との意思疎通が円滑に進まない場合には、対面の対話を増やすなど、コミュニケーション方法の見直しを行い、解決策を図ります。
効果的な情報共有

正確かつタイムリーな情報共有は、安全で質の高い医療を提供するための基盤となります。
このセクションでは、効果的な情報共有の方法と、実践における具体的なポイントについて解説します。
情報共有の基本原則
共有すべき情報の範囲と選択
医療における情報共有では、患者の診療情報や看護情報、生活関連情報など、様々な情報を適切に選択して共有することが求められます。
看護情報としては日常生活動作の状況やケアの内容、家族支援の状況などが重要となります。
また、患者の生活背景や希望する生活スタイルなども、切れ目のない支援を行っていく上で重要な情報となります。
情報の質の確保
共有する情報は正確性と信頼性が確保されている必要があります。明確に、常に最新の情報が共有できるよう心がけます。
情報共有の具体的な方法
文書による情報共有の実践
医療情報提供書や看護サマリーなどの文書による情報共有では、必要な情報を漏れなく記載することが重要です。
カンファレンスの効果的な運営
多職種カンファレンスや退院前カンファレンスでは、参加者全員が意見交換できる環境を整えることが重要です。
事前に議題や目的を明確にし、必要な資料を準備することで、効率的な情報共有が可能になります。
効果的な情報共有の実践例
入院時の情報共有プロセス
入院時に患者の全体像を把握するため、複数の情報源から情報を収集します。
元医療機関からの情報、患者本人や家族からの聴取内容、初期アセスメントの結果などを統合し、チーム全体で共有します。
入院中の継続的な情報共有
患者の状態変化や治療経過について、定期的な記録と報告を行います。電子カルテシステムの活用により、短時間での情報共有が可能となります。
情報セキュリティの確保
個人情報保護の具体的な方策
患者の個人情報を扱う際は、プライバシーの保護を最優先に考えます。
文書の取り扱いや保管方法、電子データの管理について明確なルールを設定し、職員全員が遵守できるような定期研修を実施します。
情報漏洩防止の対策
電子メディアでの情報共有を行う際は、セキュリティ対策を徹底的に行います。パスワード設定やアクセス権の管理、通信の暗号化など、具体的な防止策を定期的に実施します。
情報共有における課題解決
コミュニケーションギャップの解消
定期的にフィードバックを行い、情報共有の方法や内容の継続的な改善を図ります。
連携調整の実践

医療における調整業務は、患者の治療生活を支える連携が重要となります。
このセクションでは、効果的な調整を行うための具体的な方法と、実践における重要なポイントについて解説します。
連携調整の基本プロセス
ニーズアセスメントの実施方法
調整の第一歩は、患者の医療ニーズと社会的ニーズを正確に把握することです。入院時から退院後の生活を見据えたアセスメントを行い、必要な支援内容を明確にします。
医療面では治療内容や看護ケアの必要性を評価し、生活面では日常生活動作や介護力、居住環境などの情報を収集します。
支援計画の策定手順
アセスメントで得た情報をもとに、具体的な支援計画を立てます。資源についても検討し、必要なサービスを取り入れていきます。
具体的な連携調整の手順
入院前からの準備
入院予定の場合は、入院前から連携調整を開始します。
紹介元医療機関との連絡調整、必要な診療情報の収集、入院環境の準備など、事前に必要な調整を行います。
必要な医療行為や服薬情報については、詳細な確認を行います。
入院中の継続的な調整
入院中は患者の状態変化に応じて、連携の内容を適宜見直します。治療経過や回復状況を確認しながら、退院後の生活を見据えた調整を進めます。また介護施設との連絡を取り、受け入れ体制を整えます。
多方面と連携の手法
チーム医療の推進
効果的な調整を行うためには、院内の多方面との密接な協力が予定されています。
医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカーなど、各分野の専門性を協議した意見交換を行い、総合的な支援計画を作成します。
院外機関との調整
地域の医療機関や介護施設との連携では、それぞれの施設の特徴や受入れ基準を十分に理解した上で調整を進めます。
連携調整における留意点
タイム管理
連携調整には適切なタイミングが重要です。 入院初期から退院支援を視野に入れた調整を開始し、段階的に必要な準備を進めます。
特に、介護保険サービスの調整や入所の場合は、十分な準備期間を確保いたします。
リスク管理の実践
調整を行う際は、想定されるリスクについても十分な連携を検討します。
医療行為の継続性、急変時の対応体制、介護力の確保など、安全な療養生活のために必要な対策を検討します。
問題解決とフォローアップ
問題発生時の対応
調整の過程で問題が発生した場合は、当面の連携状況確認と対応策の検討を行います。関係者間で情報を共有し、必要に応じて修正や代替案の検討を行います。
継続的なモニタリング
連携調整後も定期的なフォローアップを行い、支援内容が適切に実施されるか臨時確認します。必要に応じて調整内容の見直しや追加支援を検討し、切れ目のない支援の実現を目指します。
調整能力の向上
知識とスキルの習得
定期的な研修参加や自己学習、必要な知識とスキルの習得に努めます 。
継続支援の確立

医療において、一時的な支援だけでなく、継続的な支援体制を確立することは患者の長期的な健康管理において重要です。
このセクションでは、効果的で継続的な支援の方法と、支援の質を確保するための具体的な取り組みについて解説します。
継続支援の体制構築
支援体制の基本構造
継続支援を効果的に行うためには、組織的な支援体制の構築が必要です。担当者の明確な役割分担、連絡体制の整備、記録システムの確立など、基本的な体制を整えることから始めます。
特に、担当者がいない場合のバックアップ体制を確実に構築することで、切れ目のない支援を実現します。
多方面連携体制の確立
継続支援では、様々な分野が協力して患者を支援することが重要です。
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカーなど、それぞれの専門性を活かした支援体制を構築し、定期的なカンファレンスや情報共有を行い、支援の方向性を確認します。
具体的なサポート方法
定期的なフォローアップの実施
継続支援では、計画的なフォローアップが重要です。患者の状態や生活環境に応じて、訪問、電話、外来での面談など、適切な方法を選択します。
支援の頻度は患者のニーズや状態に応じて柔軟に調整し、必要なサポートを提供します。
状況変化への対応方法
患者の状態は時間とともに変化することが予想されます。そのため、定期的なアセスメントを行い、支援内容を適宜見直します。
特に、急性期の状態変化や緊急時の対応については、事前に具体的な手順を定めておきます。
サポートの質の確保
評価基準の設定
継続支援の質を確保するためには、明確な評価基準を設定することが重要です。患者の健康状態、QOL、満足度など、多角的な視点から評価を行います。分析し、支援の改善に活用します。
質改善活動の展開
継続支援の質を向上させるため、定期的な事例検討会やマニュアルの見直しを行います。
特に、困難事例については多方面で検討を行い、支援方法の改善につなげます。そのための研修も計画的に実施します。
記録と評価システム
支援記録の管理方法
継続支援の記録は、支援の質を保証する重要な要素です。
支援内容、患者の反応、評価結果などを定められた形式で記録し、チーム内で共有します。電子カルテシステムを活用することで、効率的な記録管理が可能となります。
評価結果の活用方法
定期的な評価結果は、支援の効果を確認し、必要な改善を行うために活用します。評価結果は客観的なデータとして、支援方法の改善や新たな支援プログラムの開発に相談します。
地域連携強化
地域資源の活用方法
継続支援を充実させるためには、地域の医療・介護資源を効果的に活用することが重要です。地域の医療機関、介護施設、支援団体とのネットワークを構築し、必要に応じて適切な資源を紹介します。
評価と改善

医療の質を向上させるためには、定期的な評価と改善活動が必要です。
このセクションでは、効果的な評価方法と、評価結果に基づく具体的な改善プロセスについて解説します。
評価の実施
評価指標の設定方法
医療の評価を適切に行うためには、明確な評価指標の設定が重要です。
連携の適時性については患者の待機時間や連携調整に慎重な時間を測定し、情報共有の正確性については伝達エラーの発生頻度や情報の完全性を評価します。
また、患者満足度調査を定期的に実施し、患者視点での評価も行います。
データ収集と分析手法
評価に必要なデータを効率的に収集するため、電子カルテシステムやデータベースを活用します。収集したデータは統計的手法を用いて分析し、連携における課題や改善点を明確にします。
系列での変化や部門間での比較を行うことで、より具体的な改善につながります。
改善活動の展開
PDCAサイクルの実践
評価結果に基づく改善活動は、PDCAサイクルに従って体系的に実施します。
まずは現状の課題を明確にし、具体的な改善目標を設定します。次に改善計画を立てて、実行に移します。実行後は効果を測定し、必要に応じて計画を修正します。
具体的なプロセス改善
改善活動では、優先順位の高い課題から順に解決します。情報共有における課題が検討された場合は、情報共有ツールの見直しやマニュアルの改訂を行います。
また、職員の能力向上が必要な場合は、対象を絞ったトレーニングを実施します。
組織的な取り組み
改善チームの運営
効果的な改善活動を推進するため、多方面で改善チームを設置します。チームメンバーは定期的に会議を開催し、評価結果の分析や改善策の検討を行います。また活動の進捗管理も担当します。
職員参画の促進
改善活動を組織全体に浸透させるため、現場職員からの改善提案を積極的に募集します。提案された改善案は改善チームで検討し、実現可能なものから順次実施します。そして成果を職員にフィードバックすることで、モチベーションの向上を図ります。
信頼性向上
ベストプラクティスの共有
成功した改善事例は、組織内で共有し、標準化を図ります。定期的な報告会や事例集の作成を行い、効果的な実践方法を広く普及させます。また、他施設の優れた取り組みも積極的に取り入れます。
特殊な状況における連携

医療に関して、緊急時や災害時などの特殊な状況下では、通常とは異なる対応が求められます。
このセクションでは、残念な特殊な状況下での効果的な連携方法について解説します。
緊急時の連携
緊急時対応の基本体制
緊急時に適切な対応を行うためには、事前の対策が必要です。
24時間対応可能な連絡体制を構築し、関係者分担金を作成する体制を明確に整備します。また、緊急時対応マニュアルを作成し、定期的な見直しと更新を行います。
緊急時連絡網は常に最新の状態にして、関係者全員が即座に確認できる場所に保管します。
具体的な対応手順
場合によっては、状況の迅速な把握と適切な判断が求められます。
まず、患者の状態を正確に評価し、必要な医療行為の内容を見極めます。次に、適切な医療機関への搬送を手配します。同時に、受け入れ体制の確認を行います。搬送中も継続的な状態観察を行い、必要に応じて医療機関への情報提供を行います。
災害時の連携
災害時の体制整備
災害発生時に備え、事前の準備と体制を整えます。災害対策本部の設置場所や指揮系統を明確にし、情報収集・伝達の手段を確保します。
また、患者の安否確認方法や医療継続支援の手順についても、具体的な計画を立てておきます。
災害時の対応手順
災害発生時には、まず患者の安否確認と状態評価を行います。
医療継続が必要な患者については、代替の医療機関や避難所での支援体制を確保します。関係機関と連携しながら対応します。
特殊な医療ニーズへの対応
高度医療機器利用時の連携
在宅人工呼吸器や在宅酸素療法など、高度な機器を使用している患者への支援では、機器メーカーや保守管理業者との連携が重要です。バックアップ体制についても事前に確認します。
終末期医療における連携
終末期医療では、患者や家族の意思を尊重しつつ、正しい医療とケアを提供します。
在宅での生活を希望する場合は、訪問診療医や訪問看護とのの緊密な連携を構築します。24時間の支援体制を確保していきます。
パンデミック連携時
感染対策今後の連携
感染症の流行時には、標準予防策を徹底しながら必要な連携を継続します。
オンラインでの情報共有や遠隔での支援を活用し、接触機会の低減を図ります。その中で、連携方法を柔軟に変更できる体制を整えます。
教育・研修

医療の質を維持・向上させるためには、継続的な教育・研修が準備されています。
このセクションでは、効果的な教育・研修プログラムの企画・運営方法と、実践的な内容学習について解説します。
職員教育の基本構造
新人教育プログラム
医療に連携する新人職員に対しては、基礎的な知識とスキルを段階的に習得できるプログラムを提供します。
基本概念から始まり、具体的な業務手順、コミュニケーション技術まで、実践的な内容は多岐に及びます。実際に研修しながら実務経験を積むことで、確実なスキル習得を目指します。
継続教育の実施方法
経験者の継続教育では、より専門的な知識スキルやスキルの向上を図ります。
医療制度の改正や新しい連携ツールの導入など、最新情報の習得を目指して支援します。また問題解決能力を養成します。
研修プログラムの展開
期間研修の企画運営
期間研修では、組織のニーズに合わせた独自のプログラムを展開します。
多分野合同の研修、チーム医療の実践力を高めます。また、シミュレーション研修やロールプレイを取り入れることで、実践的なスキルの進歩を図ります。
外部研修の活用方法
外部研修への参加によって、他施設の優れた実践例や最新の知見を学ぶ機会を提供します。研修参加後は、学んだ内容を組織内で共有し、業務改善について相談します。また連携施設との合同研修を企画し、顔の見える関係づくりを推進します。
教育効果の評価
学習達成度の評価方法
教育・研修の効果を測定するため、定期的な評価を実施します。
知識テストやスキルチェック、学習目標の達成度を確認します。また、実践における行動進捗を観察し、実践的な成果を評価します。
プログラムの活動改善
研修参加者からのフィードバックや評価結果をもとに、プログラムの内容や実施方法を継続的に改善します。 特に、現場のニーズや課題については即実践的な内容となるよう、定期的な見直しを行います。
自己学習のサポート
学習環境の整備
職員の自己学習を支援するために、必要な資料や学習ツールを整備します。
オンライン学習システムを導入し、時間や場所に制限のない学習機会を提供します。また、専門書や文献へのアクセスを確保し、自己研鑽を支援します。
実践のためのツール集

医療連携を効果的に実践するためには、正しいツールの活用が重要です。
このセクションでは、日常業務で活用できる具体的なツールとその使用方法について解説します。
アセスメントツール
初期評価シートの活用
患者の状態を含めて評価するため、標準化された初期評価シートを使用します。
医療ニーズ、介護ニーズ、社会的背景など、多角的な視点からアセスメントを行うことができます。これらは適宜、追加・修正し、より効果的なアセスメントを実現します。
継続評価の実施方法
定期的な評価を行うための継続評価シートでは、経時的な変化を把握することができます。
評価結果を数値化することで、支援の効果を客観的に測定し、必要な調整を行うこと、また、評価結果をグラフ化することで、変化の傾向を視覚的に確認することができます。
記録管理ツール
連携記録シートの構成
連絡内容、対応状況、今後の予定など、必要な情報を系統的に記録することができます。それによって、情報の共有と検索を効率的に行うことができます。
進捗管理表の運用
連携業務の進捗状況を把握するため、専用の管理表を使用します。
期日管理、担当者確認、実施状況など、必要な情報を一覧で確認することができます。それによって、効率的な業務管理を実現します。
情報共有ツール
連携シートの標準化
関係機関との情報共有を協議するために、標準化された連携シートを使用します。
共有すべき情報の項目を明確にし、必要な情報が確実に伝達されるよう工夫します。まずは適切な情報記載を支援します。
付録:事例集
医療連携の実践において、具体的な事例から学ぶことは非常に重要です。
このセクションでは、実際の連携事例、成功のポイントや課題への対応方法について解説します。
A. 成功事例
A.1 急性期から回復期への移行事例
80歳代の脳梗塞患者さんの事例では、発症直後からの適切な連携調整により、回復期リハビリテーション病院への転院を実現しました。
入院時から退院支援看護師が介入し、初期からリハビリテーション、またご家族との定期的な面談をしながら、今後の治療方針について丁寧な医療連携を行いました。
A.2 在宅医療への移行事例
医療依存度の高い70歳代の患者さんの在宅移行では、訪問診療医、訪問看護、介護支援専門員との緊密な連携により、安全な在宅療養を実現しました。医療行為の手順を確認し、ご家族への指導も計画的に実施しました。
B. 問題事例
B.1 複雑な医療ニーズへの対応事例
人工呼吸器を使う40歳代の神経難病患者さんの事例では、医療機器メーカーや在宅医療機器供給会社との連携が課題となりました。
バックアップ体制の整備など、きめ細かな調整を行うことで、安全な在宅療養を実現しました。
B.2 多分野連携の課題解決事例
認知症を合併する90歳の独居高齢者の事例では、医療と介護の連携における意見の相違が課題となりました。他分野での情報共有と役割分担の明確化を図りました。
C. 事例からの学び
C.1 成功要因の分析
成功事例に共通する課題として、初期からの介入と関係者との密な情報共有が挙げられます。
また、患者・家族の心構えを丁寧に確認し、それを支援計画に反映させることの重要性、定期的なカンファレンスの開催や、標準化された情報共有ツールの活用も、効果的な連携の実現に貢献しています。
C.2 課題への対応策
困難な事例から得られた教訓として、予測される課題への事前対応の重要性が挙げられます。
特に、医療依存度の高い患者の在宅移行では、具体的な対応手順の確認と関係者間での意見調整が必要です。定期的な話し合いを設定し、それぞれの専門性を協議した解決策を検討することが効果的です。
参考資料
医療の実践において参考となる法規制や連携に関する文献、用語について整理しました。
1. 関連法規・制度
1.1 医療関連法規
医療法、健康保険法、介護保険法などの基本的な法規について、医療連携に関連する主要な条文と解釈を収集しています。
特に、2024年の医療法改正における連携強化に関する規定については、実務への影響を考慮して解説を加えています。
1.2 診療報酬制度
医療に行う診療報酬の算定要件と留意事項について解説しています。
おしえてカンゴさん!医療連携Q&A

皆様からいただいた医療連携に関する質問にお答えします。
日々の実践でお困りのポイントについて、具体的な解決方法をご紹介します。
Q1:医療室連携の新人看護師です。他院との連絡調整で気を付けてください。
カンゴさん:医療連携の基本は「正確」で「迅速」です。
まずは、連絡する前に必要な情報を整理しましょう。患者さんの基本情報、近況、依頼内容など、重要な情報をメモしてください。また、相手先の医療機関の特徴や受入れ基準についても事前に確認しておくことをお勧めします。
連絡の際は、最初に自己紹介と所属を明確に伝えます。また、相手の回答は必ずメモを取り、内容を復唱して確認するようにしましょう。疑問点があれば、その場で確認することが重要です。
なお、連絡内容は必ず記録に残し、リーダーに報告することも忘れずに。 最初は緊張するかもしれませんが、基本的な手順を押さえることで、スムーズな連携が可能になりますよ。
Q2:退院調整がうまくいかない場合が多いですが、どうすれば良いですか?
カンゴさん:退院調整の成功の鍵は「早期介入」と「多方面連携」です。
入院時から退院後の生活をイメージし、必要な支援を検討していきましょう。まず、入院時のアセスメントで退院調整が必要なケースを抽出します。高齢者、医療依存度の高い患者さん、社会的支援が必要な方などは、早めに介入することをお勧めします。
次に、病棟カンファレンスで多方面と情報共有を行い、退院に向けた課題を明確にします。医師、リハビリスタッフ、MSW、退院調整看護師など、それぞれの専門的な視点からアセスメントを行うことで、より良い支援計画が立てられます。
特に重要なのは、患者さんとご家族の意向確認です。退院後の生活イメージや不安な点について、じっくりと話を聞いてみましょう。必要に応じて退院前カンファレンスを開催し、関係者全員で支援方針を共有することも効果的です。
Q3:在宅医療への移行で、訪問看護ステーションとの連携のコツを教えてください。
カンゴさん:在宅医療への移行では、「詳細な情報提供」と「顔の見える関係づくり」が重要です。
まず、看護サマリーには在宅での治療の記載に必要な情報を具体的にしましょう。 医療行為の方法、使用物品、生活リズム、介護力など、実践的な情報が役に立ちます。工夫点や注意点は、在宅での看護ケアに直接活かせる貴重な情報となります。
また、退院前カンファレンスでは、実際のケアの場面を訪問看護師に見てもらうことをお勧めします。例えば、医療行為の手順や患者さんの反応など、言葉では伝わりにくい部分を実際に見てみていただくことで、より確実な引き継ぎが可能になります。
退院後も、必要に応じて電話での情報交換を行い、患者さんの状態変化や新たな課題について共有することが大切です。
Q4:電子カルテでの情報共有がうまくいきません。効率的な方法はありますか?
カンゴさん:電子カルテでの情報共有は、「標準化」と「視認性」がポイントです。
まず、記録テンプレートを活用しましょう。 必要な情報項目を標準化することで、必要な情報が漏れなく記載できます。
また、多分野カンファレンの内容は、決定事項を中心に検討することをお勧めします。目標設定、役割分担、次回の評価期間など、実践に必要な情報を明確に記載します。電子カルテのメッセージ機能も効果的に活用しましょう。
まとめ
医療連携は、患者さんに質の高い医療を提供するための重要な取り組みです。この記事で解説した基本原則と実践方法を活用し、効果的な連携体制の構築を目指しましょう。
特に、情報共有の確実性、連携調整の適切性、継続支援の重要性を意識しながら、日々の実践に取り組むことが大切です。
より詳しい実践方法や、キャリアアップに関する情報は、【はたらく看護師さん】でご覧いただけます。最新情報を随時更新中です。