
看護師といえば女性というイメージが強いですが、割合は少ないですが男性看護師として活躍されている方も多くいます。現在も、看護師を目指して勉強中の学生や、どんな仕事をするのかと興味を持たれている学生も多くいるでしょう。
その一方でよく聞くのが「男性は看護師を目指さない方がいい」「看護師だけはやめておけ」という声です。そんなことを聞くと、実際どうなんだろうと悩んでしまうのは当然ですよね。
そこで本記事では、なぜそのような声が聞かれるのかを解説していきます。男性看護師として働くメリットや男性が活躍している職場などもご紹介していきますので、これから看護師を目指す男性の方は、ぜひ参考にしてください。
男性看護師の割合はどのくらい?

看護師を目指す男性が増えているとはいえ、実際の男性看護師の割合は9.1%、女性看護師の割合は90.9%となっており、圧倒的に女性の方が多い職業だということが分かります。
参考元:厚生労働省「令和2衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
とはいえ、この調査からもわかるように、男性看護師の人数は右肩上がりで増えており、2010年から比べるとわずか数年間の間に、約倍の人数になっていることが分かります。
男性看護師の平均年収
毎年、厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査では、以下のような結果が出ています。
年齢 | 男性看護師の年収 |
20歳~24歳 | 月収 約27.8万円 / 年収 約375.6万円 |
25歳~29歳 | 月収 約33万円 / 年収 約484.7万円 |
30歳~34歳 | 月収 約36万円 / 年収 約519.8万円 |
35歳~39歳 | 月収 約36.8万円 / 年収 約539.4万円 |
40歳~44歳 | 月収 約38.5万円 / 年収 約572.7万円 |
45歳~49歳 | 月収 約40万円 / 年収 約579.7万円 |
50歳~54歳 | 月収 約41.1万円 / 年収 約599.9万円 |
55歳~59歳 | 月収 約36.5万円 / 年収 約527.6万円 |
60歳~64歳 | 月収 約33.1万円 / 年収 約461.1万円 |
65歳~69歳 | 月収 約26.6万円 / 年収 約422.2万円 |
ちなみに女性看護師の平均収入は以下の通りです。
年齢 | 男性看護師の年収 |
20歳~24歳 | 月収 約29.7万円 / 年収 約402.6万円 |
25歳~29歳 | 月収 約33.4万円 / 年収 約476万円 |
30歳~34歳 | 月収 約32.8万円 / 年収 約469.5万円 |
35歳~39歳 | 月収 約34.3万円 / 年収 約500.6万円 |
40歳~44歳 | 月収 約35.7万円 / 年収 約522.1万円 |
45歳~49歳 | 月収 約38.4万円 / 年収 約564.1万円 |
50歳~54歳 | 月収 約38.2万円 / 年収 約564.1万円 |
55歳~59歳 | 月収 約39.3万円 / 年収 約581.5万円 |
60歳~64歳 | 月収 約34.5万円 / 年収 約481.4万円 |
65歳~69歳 | 月収 約29.1万円 / 年収 約393.9万円 |
参考元:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
こちらの調査からもわかるように、ある程度の収入があることが分かります。令和3年の調査時よりも平均年収はアップしており、今後も増加傾向になることが予想されています。
ただし、勤務先の病院によって収入は大きく異なるため、同じ男性看護師でも100万円前後の収入差が現れることもあります。そのため、収入を気にされる場合は、就職活動中にしっかり把握することが必要です。
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男性が看護師はやめといたほうがいいといわれる理由

それでは、なぜ男性は看護師になるのをやめた方がいいといわれるのでしょうか。それには、女性特有の職場というだけでなく、それ以外の理由もあるようです。
女性看護師よりも給料が低く肩身が狭い
上記の資料からもわかるように、若い男性看護師は、一般的に女性看護師に比べて給料が低いという格差が存在します。これは、看護職が長らく女性が多く従事する職種とされてきたため、男性看護師への支払いが十分でない傾向があるためです。
給料の低さは、男性看護師のモチベーションや職業選択への影響を与えています。また、周囲の社会的な見方や肩身の狭さも、男性看護師が抱える問題の一つです。
キャリアプランが描きにくい
男性看護師がキャリアプランを描くことが難しいとされる一因は、看護職の中でのステップアップや昇進の機会が限られていることが挙げられます。管理職や指導的な役割に就く機会が限られているため、将来的なキャリアの展望が不透明であると感じることがあります。
また、女性の看護師のキャリアアップがフォーカスされることはよくありますが、男性看護師のキャリアアップがクローズアップされる機会が極端に少ないため、未来像を描くことができないのも、男性看護師の職業選択に影響を与える要因となっています。
身体的にも精神的にもハード
看護師の仕事は、身体的・精神的な負担が非常に大きい職業です。特に急性期の病院や救急医療機関では、高いストレス環境での勤務が求められます。
患者の重い体重の移動や急患の緊急対応、不規則な勤務時間など、これらの要因が男性看護師にとって身体的負担となる可能性があります。また、感情的にも患者やその家族との関わりが深く、それによる精神的な負担も考慮されます。
女性の割合が多く人間関係がストレスになる
看護職は、女性が多く従事する職業とされており、男性看護師はその中で少数派となります。このため、男性看護師は女性多数の職場で働くことが多く、これが人間関係においてストレスの要因となる可能性があります。
異性との職場でのコミュニケーションや人間関係の構築において、適応不足や課題が発生することが考えられます。
仲間を見つけられない
看護師の職場では、女性看護師の比率が高く、男性看護師は少数派であることが一般的です。この状況が男性看護師にとって孤立感や適応困難さをもたらす可能性があります。
同性の仲間が少ないことで、コミュニケーションや助け合いの機会が限られるため、職場での適応に影響を与える可能性があります。
お局的な上司がいる
職場環境での上司や同僚との関係は、働く環境に大きな影響を与えます。特に女性の上司やリーダーのもとで働くことになった場合、「お局的な上司」が存在することがあります。
その場合、彼女たちの意向や影響力が強く、これがチーム全体の雰囲気や男性看護師のモチベーションに影響を与える可能性があります。また、女性特有の人間関係の複雑さも男性看護師が直面する課題の一つです。
患者に女性看護師の方がいいと言われる
一部の患者、特に女性の患者は、女性看護師を受け入れやすく、生理的なケアやプライバシーの配慮において、女性看護師を選好することがあります。
看護師の業務には、体位交換や移乗介助、着替えや清拭、入浴介助、排泄介助など、男性看護師だと羞恥心がわいてしまうようなケアを必要とする場合があります。そのため、男性看護師は敬遠されがちになってしまいます。
勤務できる診療科や現場が限られる
男性看護師が勤務できる診療科や現場が限定されることも、彼らが直面する問題の一つです。例えば、産婦人科や訪問入浴、ツアーナースなどの職場では、採用されるk都がほぼないのが現状です。
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男性看護師として働くメリットとは?

このように、看護師になるのはやめた方がいいといわれる理由が多くある一方、男性看護師には多くのメリットがあるのも特徴です。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
雇用が比較的安定している
看護師は、医療機関で常に需要のある職種であり、雇用の安定性が高い特徴を持っています。急性期病院や慢性期ケア、リハビリテーションセンター、訪問看護、介護施設など、多岐にわたる分野で活躍することができます。医療や介護の需要は年々増加しており、これからも看護師の需要は拡大していくことが予測されています。
スキル・資格取得によって収入アップを狙える
看護師は、スキルや資格の取得によって収入を増やすことが可能です。たとえば、認定看護師・専門看護師・保健師・ケアマネジャー・公認心理師・臨床心理士など、専門知識や技術を持つ看護師は高い報酬を得ることができます。
また、経験を積むことで昇進し、管理職や教育者として働くことも可能です。さらに、近年は福祉系の需要も高くなってきており、介護福祉士の資格を取得するのもおすすめです。
やりがいを得られる
看護師は、患者と直接関わることが多いため、回復や健康の改善に貢献することができます。患者のケアを通じて生まれるやりがいは非常に大きなもので、自身の仕事が他人の健康と生活に影響を与えることを実感できます。患者の笑顔や感謝の言葉は、看護師にとって非常に励みとなります。
男性看護師が必要とされる場面がある
男性看護師は、特定の状況や患者において必要とされるケースがあります。例えば、体重の重い患者の移動や、男性患者が受ける特定のケアなど、男性看護師の存在が重要です。また、性別に関係なく、多様な視点やアプローチが求められる現代社会で、男性看護師の多様性が注目されています。
職場の雰囲気を改善できる
男性看護師の参入により、職場環境やチームの多様性が高まります。男女のバランスが取れた職場は、異なる視点やアプローチを持つことができ、より良いケアやチームワークが生まれる可能性があります。これが職場の雰囲気を改善し、働きやすい環境を作り出す助けになるでしょう。
男性看護師として働くことには、多くのメリットがあります。看護師としてのやりがいや成長、安定した雇用、多様なキャリアパスがあり、社会的な貢献も大きいです。これらのメリットを活かしながら、男性看護師は現代の医療・看護の世界で重要な役割を果たしていけるでしょう。
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男性看護師が活躍できる職場
男性看護師は、多様な診療科や現場で活躍できるプロフェッショナルとして、需要が高まっています。男性看護師の能力や視点は、特定の診療科や状況で非常に重要であり、以下の職場で特に活躍することが期待されます。
精神科
精神科は、精神的な疾患や心理的な問題に対するケアを提供する重要な診療科です。男性看護師は、コミュニケーションスキルやエンパシーを活かし、患者との信頼関係を築くことができます。また、身体的なケアだけでなく、精神的なサポートも提供することが求められるため、男性看護師の多面的な能力が評価されます。
救急科・救命・救急センター
救急医療では、迅速で正確な判断と対応が求められます。男性看護師は体力や技術的なスキルに優れていることが多く、救急現場での重要な役割を果たすことができます。急変する状況に対して冷静に対応し、チームで連携して患者に最適なケアを提供することが求められます。
整形外科
整形外科では、骨折や関節の問題などに対する手術やリハビリテーションが主な治療です。男性看護師は、患者の身体的なケアだけでなく、手術前後のサポートやリハビリテーションのプロセスで重要な役割を果たすことができます。また、患者の動きや体位変換に力が必要なケースが多く、男性看護師の体力が活かされます。
リハビリテーション科
リハビリテーション科では、患者が病気やけがから回復し、日常生活に戻るための支援が行われます。男性看護師は、リハビリテーションプロセスの一環として、患者の身体的なサポートや運動療法、筋力トレーニングなどを担当することができます。
手術室
手術室では、手術の準備や手術中のサポート、手術後の患者のケアなどが行われます。男性看護師は、手術室の特殊な環境でチームと連携し、手術のスムーズな進行や患者の安全なケアを担当することが求められます。
男性看護師が円滑に働くためのポイント

はじめにご紹介したように、看護師の割合は女性に比べ圧倒的に少ないです。しかし、看護師はチーム力が問われる場面が多い仕事です。女性看護師と良好な関係を築くことが、やりやすい環境を整えることにつながります。
そこで、ここからは男性看護師が円滑に働くためのポイントについてご紹介していきます。
男女の境界線を作らない
男性看護師が円滑に働くためには、男女の境界線を意識的に作らないことが重要です。医療現場では、多くの人々が共同で働いています。性別を超えてチームとして協力し、お互いの専門知識や経験を尊重することが必要です。
女性を見下したり、女性だからという理由で仕事を依頼するのもいけません。男性看護師ならではの仕事を任せられるのは仕方ありませんが、常に同じ目線で仕事をしていくことが重要です。
身だしなみを心がける
看護職では、清潔感や適切な身だしなみが求められます。男性看護師も服装や髪型、清潔感を心がけることが重要です。専門職としてのプロ意識を示すことで、信頼される存在となり、患者やチームメンバーと円滑なコミュニケーションを築くことができます。
悪口やいじめに加担しない
職場での悪口やいじめは、職場環境を悪化させ、チームの連携を壊します。男性看護師は、悪口やいじめに加担せず、対立を避けるようにし、適切なコミュニケーションを心がけ、問題が発生した際には適切な手続きや上司へ報告することが必要です。これは女性看護師にも同じことがいえます。
女性の体調を理解する
女性には女性特有の体調変化があります。生理の影響でホルモンバランスが崩れたり、体調がすぐれないこともあります。このような体調を理解してあげるのも、大事なコミュニケーションの一つとなります。
【体験談】男性看護師が看護師になってよかったと感じた体験談をご紹介
最後に男性看護師になってよかったと思えた体験談をいくつかご紹介したいと思います。女性看護師が、男性看護師がいてよかったという体験談も合わせてご紹介していきます。
女性看護師編
「患者さんは身体的にも重たく、対応が困難な状態でした。そこで、男性看護師が手際よく力強くサポートしてくれたおかげで、安心してケアに集中することができました。」(愛知県・30代)
「男性看護師は優しい方が多いので、チームの雰囲気を良好に保ってくれます。彼らの優しさや力強さは、殺伐とした雰囲気を和らげてくれ、円滑なチームワークを築く要因となっています。」(静岡県・30代)
「男性看護師の判断やアイディアは、ケアの質を向上させる一翼を担っていると思う」(大阪府・40代)
男性看護師編
「ある日、高齢の患者さんから『あなたのような優しい看護師さんにケアしてもらえて、本当に助かっています』と言われました。その言葉を聞いた瞬間、看護師としての使命感とやりがいを強く感じました。患者さんの笑顔と感謝の言葉が、私の日々の励みとなり、看護師としての選択を後悔することはありません。」(東京都・20代)
「女性看護師の仲間たちから、患者のケアや力仕事を任せてもらえることが多いです。そのたびに感謝の言葉をいただくことが多く、やりがいを感じています。自分の力を最大限に活かし、チームで協力して患者さんのケアに当たることで、看護師としての存在意義を感じています。」(大阪府・30代)
「男性看護師として働く中で、多様な役割を担う機会が増えました。特に力仕事や患者さんの移動など、男性ならではの役割を果たすことで、チーム全体の効率が向上し、患者さんへのケアがスムーズに進んでいます。患者さんへの貢献が実感でき、看護師としての成長を感じています。」(長野県・30代)
<看護師・ナースのリアルな声>これから看護師を目指す男性に向けたアドバイスをお願いします
まとめ
この記事では、男性看護師にフォーカスした内容をお送りしました。
現在も多くの男性看護師が活躍しており、これから目指そうと努力している男性も多くいます。確かに、「やめておいた方がいい」といわれる理由も多くありますが、一方では多くのメリットもあることから、やりがいと充実感の中で活躍している男性看護師もたくさんいます。
看護現場は、患者さんや高齢者の身体を支える力仕事も多く、男性看護師が重宝されやすいです。また、高齢社会である日本では、今後も男性看護師の需要は高まっていくでしょう。円滑に仕事をしていくためには、性別の垣根を超え、理解を深めながら支えあって仕事をしていくことが大切です。
人の命を救う仕事に性別は関係ありません。皆さんも立派な男性看護師を目指し、ぜひ頑張ってください。