高齢化が進む中、今注目の施設にサービス付き高齢者向け住宅があります。介護施設への就職・転職を検討している看護師の選択肢の一つにもなっており、実際に転職を果たし活躍している看護師も多くいます。
そこで本記事は、今後需要が高くなると予想されているサービス付き高齢者向け住宅の仕事内容について解説していきます。働くメリットや収入についても細かく解説しますので、転職を考えている看護師、または復職を目指す看護師は参考にしてください。
近年注目されているサービス付き高齢者向け住宅とは?

サービス付き高齢者向け住宅、通称「サ高住」とは、高齢者の安心・安全な居住を支援するために設計された施設です。地域包括ケアシステムの一環として2011年に導入され、その後日本全国で普及しています。介護・医療の連携を基盤に、バリアフリー構造の住宅であり、高齢者が快適に生活できるよう様々なサービスを提供しています。
サービス付き高齢者向け住宅の特徴
それでは、サービス付き高齢者向け住宅にどんな特徴があるのかご紹介していきます。
1.機能的な住空間
専用部分の床面積が25㎡以上で、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室が備えられています。バリアフリー構造により、高齢者が快適に生活できる環境が提供されています。
2.サービスの付帯
入居者には、少なくとも安否確認や生活相談などのサービスが提供されます。日中は医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士などの専門家が常駐し、見守りサービスが行われます。
3.利用契約形態
一般的な高齢者向け施設と異なり、賃貸借契約となります。住まいとケアが別になるため、個別で介護サービスなどを必要に応じて契約することができます。これにより、自分のニーズに合わせて自由度の高い生活を選択できます。
4.登録件数の増加
ービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が増加する日本において需要が高まっており、登録件数は増加傾向にあります。令和5年5月末時点で28万2547件の登録があり、今後も増加が見込まれています。
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の安心・安全な生活を支える施設であり、機能的な住空間と必要なサービスの提供が特徴です。将来的にも需要が増加することから、その重要性はますます高まっています。
サービス付き高齢者向け住宅の登録状況や最新の統計情報については、厚生労働省のウェブサイトで確認できます。
サービス付き高齢者向け住宅の種類
サービス付き高齢者向け住宅には、「一般型」と「介護型」の2種類のタイプがあります。それぞれ内容が異なるので解説していきます。
一般型
一般型のサービス付き高齢者向け住宅は、全体の93%を占めるタイプです。このタイプの施設では、入居者が自分のペースで自立した生活を送ることができ、外出も自由です。さまざまなイベントが定期的に開催され、他の入居者との交流が促進されるため、活発で充実した生活が期待できます。
・自立した生活:入居者は自分のペースで生活できるため、自立した生活を送ることが可能です。
・交流とイベント:施設内では様々なイベントが開催され、入居者同士が交流できる環境が整っています。
・外出の自由:入居者は自由に外出することができ、地域の外での活動も可能です。
ただし、一般型のサービス付き高齢者向け住宅に入居するには、自立した生活が送れることが前提となります。介護や看護が必要になった場合は、外部のサービスを利用するか、他の適した施設への移動が必要です。また、食事の提供がない施設も存在するため、事前に確認が重要です。
一般型のサービス付き高齢者向け住宅は、自立した生活を重視し、交流と外出の機会を提供することで、入居者の生活の質を向上させる施設となっています。
介護型
介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、全体のわずか7%程度を占めるタイプです。入居するためには「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける必要があり、一般型とは異なり、要介護・要支援の認定を受けている高齢者が利用できる施設です。
・要介護・要支援の高齢者向け:介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、一般型と異なり、要介護・要支援の認定を受けている高齢者が利用できる施設です。食事、入浴、排泄などの介助が提供され、有料老人ホームと同等の介護・看護サービスが受けられます。
・自由度の低さ:一般型と比較して、外出や面会に制限がある傾向があります。利用者のストレス要因となることも考慮されるため、自由度は低くなります。
一般型とは異なり、介護型は要介護・要支援の高齢者向けのサービス付き高齢者向け住宅であり、自由度が低い反面、高度な介護・看護サービスを受けることができます。入居を考える際には、自身のニーズやライフスタイルに合わせて適切なタイプの施設を選ぶことが重要です。
介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、介護付き有料老人ホームと同等の介護サービスを受けられる住まいとなります。
サービス付き高齢者向け住宅の配置基準
サービス付き高齢者向け住宅では、適切なケアとサービスを提供するために、一定の配置基準が定められています。配置基準は、一般型と介護型で異なる特徴があります。
一般型の配置基準
一般型のサービス付き高齢者向け住宅では、日中に少なくとも1名以上の「ケアの専門家」が常駐することが求められています。
ケアの専門家には、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、介護職員初任者研修課程修了者などが含まれます。ただし、特に看護師が常駐する義務はありません。
介護型の配置基準
一方、介護型のサービス付き高齢者向け住宅では、要介護・要支援の認定を受けた高齢者のケアを重視しており、介護福祉士や看護師などのスタッフが常駐しています。日中に少なくとも1名以上のスタッフが配置されます。
配置されるスタッフには、医療法人、社会福祉法人、指定居宅サービス事業者に従事する者、医師、看護師、准看護師、介護支援専門員、介護職員初任者研修修了者などが含まれます。
配置スタッフの割合
老人保健健康推進事業の実態調査によると、中心となるスタッフの保有資格の上位は以下の通りです。
介護職員初任者研修(29.9%)
介護福祉士(21.5%)
看護師(13.2%)
ケアマネージャー(12.2%)
社会福祉士(4.7%)
保健師(0.2%)
こうした配置基準とスタッフの資格により、サービス付き高齢者向け住宅では適切なケアとサービスが提供され、高齢者の安心した生活が支えられています。
他の介護施設との違い

このような介護施設は、サービス付き高齢者向け住宅以外にも有料老人ホームや介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどさまざまありますが、そのような施設とどのような違いがあるのか解説していきます。
対象者の違い
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の安心した生活をサポートするための施設です。入居対象は、60歳以上または介護認定を受けている60歳未満の方で、自立から軽度の介護が必要な方々が中心です。介護型の場合は要介護度5の方も受け入れ可能です。
入居者全体の平均要介護度は1.76であり、これは現在の状況です。将来的には高齢者の数が急増することが予想されるため、入居者全体の要介護度が引き上がる可能性も考えられます。このような背景から、今後も様々なニーズに対応するため、サービスの充実や多様化が進んでいます。
また、認知症の方の受け入れに対応しており、認知症のある方々に対しても、安心して生活できる環境や適切な支援が提供されます。認知症に関する理解とサービスの充実も特徴の一つといえるでしょう。
契約形態の違い
はじめに解説したように、サービス付き高齢者向け住宅は「賃貸借契約」が一般的です。入居者は部屋を借りる権利を得ます。必要なサービスはオプションとして外部に依頼し、別途費用を支払う必要があります。
一方、高齢者向け施設では、「利用権方式」の契約形態が一般的です。入居者は施設が提供するサービスを受ける権利を得ると同時に、利用料を支払います。この契約形態により、住まいとケアが一体となり、サービスの提供が可能となります。
サービス付き高齢者向け住宅は「賃貸借契約」であるため、別途介護サービスなどが必要になった場合は、個別で契約する必要があります。これに対し、一般的な高齢者向け施設は「利用権方式」を採用しており、サービス提供が契約に含まれています。
住まいとケアが一体となるため、利用者は必要なサービスを選択しながら自由度の高い生活を送ることができます。
<看護師・ナースのリアルな声>他の医療機関とここが違うということを教えてください
サービス付き高齢者向け住宅での看護師の仕事内容

サービス付き高齢者向け住宅での看護師の役割と仕事内容は、高齢者の健康管理や安全確保、生活の質の向上など多岐にわたります。以下に、主な仕事内容について詳しく説明します。
安否確認
看護師は、入居者の健康状態や安全確保のため、定期的に安否確認を行います。入居者が元気で過ごしているか、異常がないかをチェックし、必要に応じて医師や他の関係者に連絡を取ります。また、不安や症状の変化に対しても適切な対応を行います。
生活相談
入居者やその家族とコミュニケーションをとり、生活に関する相談や不安、健康上の問題についてサポートを提供します。生活環境の適応や介護サービスの利用、健康管理などに関するアドバイスを行い、安心して生活できるよう支援します。
緊急対応
看護師は、突発的な緊急事態に迅速に対応する役割があります。急病やケガ、体調不良などが発生した際には、適切な処置や医療対応を行い、緊急時の安全確保を図ります。
医療行為
看護師は、医師の指示のもとで、入居者の健康状態をモニタリングし、処方薬の管理や投薬、健康診断の実施など医療行為を担当します。入居者の健康管理に関する専門知識と技術を活かし、適切な医療を提供します。
身体介護・生活援助
日常生活において、入居者が快適に過ごせるよう身体介護や生活援助を行います。入浴介助、排泄介助、食事・飲水の補助、歩行支援など、入居者の日常生活をサポートし、健康的な生活を維持する役割を担います。
健康教育と予防活動
入居者に対して健康教育を行い、予防活動を推進します。栄養指導や運動プログラムの提供、予防接種の実施などを通じて、健康促進に努めます。
連携と報告
他の職種や関係機関との連携を図りつつ、入居者の健康状態やケア内容を適切に報告・記録します。チームで連携し、入居者一人ひとりに最適なケアプランを策定・実施します。
<看護師・ナースのリアルな声>サービス付き高齢者向け住宅の仕事で困ることはありますか?
サービス付き高齢者向け住宅ではたらく看護師の給料は?
どのような業務を行うのか分かりましたが、気になるのはやはりお給料ですよね。サービス付き高齢者向け住宅のお給料事情はどのようになっているのかご紹介していきます。
給料水準
サービス付き高齢者向け住宅で働く看護師の給料水準は、厚生労働省による調査結果や求人情報などから明らかになっています。しかし、サ高住ごとに異なる要因が給与に影響を与えるため、平均的な給与を把握するのは難しい面もあります。
厚生労働省の調査結果に基づく平均給与
施設を運営する事業所の規模や入居者の医療依存度、夜勤有無などにより、看護師の給料は変動します。厚生労働省が公表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護施設で働く看護師の平均月給は310,960円です。
また、月給32万円以上の高い給与設定の求人も多く見受けられます。実際の求人情報から見ると、高収入を示す求人が多く、民間企業が運営するため、サービスが充実し収益の大きい施設では高い給与が設定されている傾向があります。
サービス付き高齢者向け住宅での看護師の給料は、施設の規模やサービス内容、地域性などさまざまな要因によって異なります。看護師として働く際には、給与だけでなく、労働環境や福利厚生、キャリアパスなども総合的に考慮することが重要です。
夜勤について
サービス付き高齢者向け住宅における看護師の夜勤有無は、施設ごとに異なります。厳密な法的な決まりではないため、夜勤の有無は事業所の方針によって定められています。
夜勤の有無は事業所の判断に委ねられている
サービス付き高齢者向け住宅は、厳密に看護師を24時間常駐させる義務はありません。従って、看護師を夜間に配置するかどうかは、事業所が独自の判断で決定します。
施設の強みとしての夜間看護体制
一部では、夜間にも看護師を配置することで、入居者が安心して過ごせる環境を提供しています。夜間に看護師が常駐することは、施設の強みともなり得ます。
確認が必要な事項
夜勤の有無は施設によって異なるため、求人票や面接の際に夜勤について確認することが重要です。入職前に、自身の働き方やライフスタイルに適した夜勤の有無を確認することで、働く環境をより良く選ぶことが可能です。
サービス付き高齢者向け住宅で働く際には、夜勤の有無や体制について事前に確認することが大切です。自身の希望や適性に合った働き方を見つけるために、入念な情報収集が必要となります。
サービス付き高齢者向け住宅で働くメリット

次に、サービス付き高齢者向け住宅ではタラ悪うえでのメリットについてご紹介します。
身体的な負担が少ない
一般的な病院や介護施設に比べて、身体的な負担が少ない傾向があります。看護業務や介護業務は、入居者の健康状態や要支援度合いにより異なりますが、比較的軽度の介護が求められるため、過度な負担を抱えることが少ないです。
入居者と長く付き合える
入居者と長期間にわたり関わる機会が多くあります。これにより、入居者の個性や生活リズムを理解しやすくなり、信頼関係を築きやすくなります。長期的な付き合いから、入居者のニーズに合わせた的確なサポートが可能となります。
必要なスキル水準が低い
サービス付き高齢者向け住宅での看護や介護は、一般病院などでの看護や介護と比較して、必要なスキル水準が比較的低い傾向があります。これにより、看護・介護の経験が浅い新人看護師や介護士にも、比較的入りやすい環境が提供されています。
<看護師・ナースのリアルな声>サービス付き高齢者向け住宅勤務でここがいいと思うことは?
サービス付き高齢者向け住宅で働くデメリット
多くのメリットがある分、もちろんデメリットもあります。
責任の重さを感じる
入居者の健康や生活に深く関与するため、責任の重さを感じることがあります。入居者の安全や健康に対する責任は重大であり、そのためには適切な判断や行動が求められます。この責任の重さは、精神的な負担となる場合があります。
医療スキルが伸びない
一部のサービス付き高齢者向け住宅では、医療行為を行うことがありますが、一般的な病院やクリニックと比べると医療スキルの伸びが限られることがあります。慢性的な疾患や急変時の対応など、医療の幅広い経験が得られないことがデメリットとされます。
他職種との連携が必要
看護師や介護職だけでなく、ソーシャルワーカーや管理栄養士、生活相談員など多職種が連携して入居者のケアを行います。このため、他職種との連携が重要となりますが、異なる職種の専門知識や意識の違いから調整が難しい場面もあります。
刺激が少ない環境
入居者の健康状態や活動範囲に制約があるため、外部との接触や多様な刺激が限られることがあります。刺激が少ない環境での勤務となるため、モチベーションの維持が難しい場合があります。
<看護師・ナースのリアルな声>サービス付き高齢者向け住宅勤務でここがつらいと思うことは?
サービス付き高齢者向け住宅がおすすめの看護師の特徴

最後に、サービス付き高齢者向け住宅に向いている看護師の特徴をご紹介していきます。これから復職を目指す方にもおすすめの業種になりますので、ぜひ参考にしてください。
患者にしっかり向き合いたい人
サービス付き高齢者向け住宅では、入居者との信頼関係を築くことが非常に重要です。入居者とのコミュニケーションを通じて、彼らの健康状態や生活に対する希望・ニーズを把握し、最適なケアを提供することが求められます。入居者一人ひとりとしっかり向き合い、心のケアも含めてサポートする看護師が重要です。
ブランクがある人
ブランクがある看護師にもサービス付き高齢者向け住宅での勤務はおすすめです。一般病院やクリニックとは異なり、生活補助が多くの割合を占めるため、時間をかけて以前の感覚を取り戻すことができます。また新しい環境での仕事を通じて、看護の幅広い経験を積むことができ、今後のキャリアアップにもつながるでしょう。
少ない人数で仕事をしたい人
サービス付き高齢者向け住宅では、比較的少人数のチームで働くことが多いです。これにより、チーム全体で連携しやすく、入居者一人ひとりの状態やニーズを把握しやすくなります。少ない人数で密接なコミュニケーションを取りながら働くことが得意な看護師にとって、この環境は向いているでしょう。
柔軟性と適応力がある人
入居者の状態やニーズが日々変化するため、柔軟性と適応力が求められます。急な状況変化に対応し、的確な判断と行動ができる看護師が重要です。また、施設内のルールや制度も変わる可能性があるため、これに素早く適応できることも必要とされます。
<看護師・ナースのリアルな声>今後、サービス付き高齢者向け住宅で働こうと思っている看護師にアドバイスをお願いします
まとめ
この記事では、今注目を集めているサービス付き高齢者向け住宅の業務について詳しく解説してきました。
サービス付き高齢者向け住宅は自立した高齢者向けの介護施設です。看護師として働く際は、身体的負担が少なく自由度が高いが、責任は重い面も。メリットとデメリットを比較し、適した働き方を選択することが重要です。
他の高齢者施設と異なり、住まいを提供しつつ一部の医療行為や健康管理を行う業務内容になるので、初めて介護に関わる看護師にも適しており、自身のスキルや働き方に合った施設を選ぶ際の参考になるでしょう。
この記事を参考に、自分自身のスキルレベルや働き方に合うサービス付き高齢者向け住宅を見つけてみてはいかがでしょうか。