看護実践における暗黙知を効果的に形式化し、チーム全体の技術力向上を実現する方法をご紹介します。また実践的な知識抽出から活用促進まで、段階的に解説していきます。
本記事では、実際の医療現場での導入事例も交えながら、具体的な実装方法をお伝えします。
この記事で分かること
- 看護現場における暗黙知の具体的な抽出方法と実践例
- 体系的な知識の整理・形式化の具体的手順とツール
- 効果的な共有・活用のためのナレッジベース構築手法
- 技術継承率を向上させるためのベストプラクティス
- 新人育成期間を短縮する実践的なアプローチと評価方法
この記事を読んでほしい人
- 看護部門の管理職
- 教育担当者・プリセプター
- 部署の技術継承に課題を感じている方
- 効率的な知識共有の仕組みを作りたい方
- デジタル化による業務効率化を検討している方
暗黙知形式化の重要性と基礎知識

日々進化する医療現場において、経験豊富な看護師が持つ「暗黙知」は、患者ケアの質を大きく左右する重要な要素です。本章では、暗黙知形式化の重要性とその基本的な考え方について、実践的な視点から解説していきます。
なぜ今、暗黙知の形式化が求められているのか
医療の高度化と専門化が進む現代において、看護師の暗黙知を効果的に共有し、活用することは、医療の質向上に不可欠な要素となっています。2025年の医療現場では、世代交代の加速や医療技術の急速な進歩により、知識・技術の継承がこれまで以上に重要な課題となっています。
医療環境の変化による影響
医療技術の進歩とデジタル化の波は、看護実践の方法を大きく変えつつあります。従来の経験だけでは対応できない新しい課題が次々と生まれ、それに伴い、ベテラン看護師の持つ暗黙知を効率的に共有・活用する必要性が高まっています。そして患者ケアの質を維持・向上させながら、新しい技術や知識を効果的に統合していくためには、体系的な知識の形式化が不可欠です。
組織的な知識管理の必要性
医療機関における人材の流動性が高まる中、個人の経験や勘に頼った知識伝達では、組織全体の看護の質を担保することが困難になってきています。そのため、暗黙知を組織の知的資産として効果的に管理・活用するための仕組みづくりが急務となっています。
暗黙知形式化がもたらすメリット
知識の形式化は、組織全体の看護の質向上に大きく貢献します。具体的には、新人教育の効率化、ケアの標準化、そして患者アウトカムの改善などが期待できます。特に注目すべき点として、技術継承の効率化による教育期間の短縮や、部署全体の看護実践力の向上が挙げられます。
教育効果の向上
形式化された知識を活用することで、新人看護師の育成プロセスがより効率的になります。従来は「見て覚える」という方法に頼っていた部分を、体系的な教育プログラムとして展開することが可能となります。これにより、教育の質のばらつきを減らし、より確実な技術習得を実現できます。
組織力の強化
暗黙知の形式化は、部署全体の看護実践力向上にも貢献します。個々の看護師が持つ優れた実践知識を共有財産として活用することで、チーム全体のケアの質を高めることができます。また、部署間での知識共有も促進され、組織全体の看護の質の標準化にもつながります。
現状の課題と対応策
多くの医療機関では、暗黙知の形式化に向けて様々な取り組みを始めていますが、その過程でいくつかの課題に直面しています。これらの課題を理解し、適切な対策を講じることが、成功への鍵となります。
時間的制約への対応
看護現場では日々の業務に追われ、知識の形式化に十分な時間を確保することが難しい状況にあります。この課題に対しては、日常業務の中で無理なく実施できる形式化の手法を採用することが重要です。例えば、カンファレンスやケースレビューの機会を活用した知識抽出などが効果的です。
標準化と個別性の両立
看護実践においては、標準化された手順と個々の患者に応じた柔軟な対応の両立が求められます。暗黙知の形式化においても、基本となる知識体系を整備しつつ、状況に応じた判断や対応の指針を含めることが重要です。
実践事例:A総合病院での取り組み

医療現場における暗黙知の形式化を具体的にイメージしていただくため、本章ではA総合病院(600床規模)での実際の取り組み事例をご紹介します。この事例を通じて、実践的な導入手順と成果について詳しく解説していきます。
背景と課題
取り組み開始のきっかけ
A総合病院では、2024年度の看護部方針として「看護の質の標準化と継承」を掲げていました。特に救急病棟において、ベテラン看護師の退職に伴う技術継承の課題が顕在化していたことから、暗黙知の形式化プロジェクトがスタートしました。
具体的な課題状況
現場では新人看護師の技術習得に従来の2倍の時間がかかるようになっていました。また、夜勤帯での緊急対応において、スタッフ間で対応にばらつきが見られるという課題も抱えていました。さらに、経験年数10年以上のベテラン看護師が今後5年間で30%減少する見込みとなっており、早急な対策が必要な状況でした。
実装プロセスと具体的な取り組み
準備段階での取り組み
まず、看護部教育委員会を中心に、3ヶ月間の準備期間を設けました。この期間中、プロジェクトチームを結成し、現状分析と目標設定を行いました。特に重要視したのは、現場の負担を最小限に抑えながら、効果的に知識を抽出・形式化する方法の確立でした。
知識抽出の実践方法
ベテラン看護師の暗黙知を抽出するため、独自の「シャドーイング&リフレクション」方式を採用しました。これは、若手看護師がベテラン看護師に1日密着し、その行動や判断を詳細に記録します。その後、両者でふりかえりを行い、重要な判断ポイントや技術のコツを言語化していく方法です。
デジタルツールの活用
知識の記録と共有には、病院既存の電子カルテシステムと連携可能なナレッジベースを構築しました。スマートフォンやタブレットからもアクセス可能な環境を整備することで、必要な時に必要な情報にアクセスできる体制を整えました。
具体的な成果と効果測定
技術継承率の向上
プロジェクト開始から1年後、新人看護師の技術習得期間が平均40%短縮されました。特に、急変時の対応や複雑な処置における習熟度が大きく向上し、プリセプターの指導負担も軽減されています。
看護の質の標準化
夜勤帯での緊急対応における判断基準が明確化され、スタッフ間でのケアの質のばらつきが減少しました。インシデントレポートの分析では、判断の遅れや対応の迷いに起因するインシデントが60%減少したという結果が得られています。
職員満足度の変化
形式化された知識を活用することで、若手看護師の業務に対する自信が向上しました。職員アンケートでは、「業務に対する不安が軽減した」という回答が80%を超え、離職率も前年比で30%改善しています。
課題と改善策
運用上の課題への対応
知識の更新頻度や内容の質の管理について、当初いくつかの課題が発生しました。これに対し、定期的な内容レビューの仕組みを構築し、現場の声を反映しやすい改善サイクルを確立しています。
今後の展開
現在は、この取り組みを他の病棟へも展開している段階です。各部署の特性に応じたカスタマイズを行いながら、病院全体での知識共有の仕組みとして発展させていく計画です。
成功のポイント
現場主導の推進体制
プロジェクトの成功の鍵となったのは、現場のスタッフが主体的に参加できる体制づくりでした。特に、各シフトのリーダー層を「ナレッジファシリテーター」として任命し、日常的な知識抽出と共有を促進する役割を担ってもらいました。
段階的な実装アプローチ
一度にすべての変更を導入するのではなく、まずは優先度の高い領域から段階的に実働を進めました。これにより、現場の負担を抑えながら、着実に成果を積み上げることができました。
部署別導入ガイドライン

医療現場における暗黙知の形式化は、各部署の特性や課題に応じて適切にカスタマイズすることが重要です。
本章では、主要な部署ごとの具体的な導入方法と、実際の運用例についてご紹介します。それぞれの部署の特徴を活かした効果的な知識共有の仕組みづくりについて、詳しく解説していきます。
救急外来での実践例
緊急対応における暗黙知の抽出
救急外来では、患者の容態が刻々と変化する中で、迅速かつ適切な判断が求められます。ベテラン看護師は、わずかな変化や兆候から、先を見据えた対応を行っています。このような暗黙知を形式化するため、特にトリアージナースの判断プロセスに注目して記録を行っています。
知識共有の具体的方法
救急外来では、シフト交代時のカンファレンスを活用した知識共有を実施しています。特に印象的な症例について、ベテラン看護師の判断ポイントを共有し、その場で質疑応答を行うことで、実践的な知識の伝達を図っています。
評価と改善の仕組み
毎月のケースレビューでは、対応が難しかった症例を取り上げ、チーム全体で振り返りを行っています。この過程で抽出された重要なポイントは、デジタルナレッジベースに追加され、継続的な改善を行っています。
病棟での展開方法
日常的なケアにおける知識抽出
病棟では、日々の患者ケアの中で培われる観察眼や判断力が重要です。特に褥瘡予防や早期離床支援など、長期的な視点での看護実践における暗黙知を重点的に形式化しています。
チーム制を活用した知識共有
病棟では、チーム制を活用した知識共有を実践しています。経験豊富な看護師と若手看護師をペアにし、日常的なOJTの中で知識伝達を行う仕組みを構築しています。
継続的な評価システム
患者アウトカムの変化を定期的に分析し、形式化された知識の有効性を評価しています。特に入院期間や合併症発生率などの指標を用いて、取り組みの効果を可視化しています。
ICU/手術室での実践
高度専門知識の形式化
ICUや手術室では、高度な医療機器の取り扱いや、複雑な治療プロトコルへの対応が求められます。これらの専門的な知識と経験を、わかりやすく形式化することに重点を置いています。
リアルタイムの知識共有
術中や急変時など、即座の判断が必要な場面での知識共有を重視しています。デジタルデバイスを活用し、その場で必要な情報にアクセスできる環境を整備しています。
多職種連携における知識共有
手術室やICUでは、多職種との連携が不可欠です。医師や臨床工学技士との協働場面における暗黙知も、積極的に形式化の対象としています。
外来部門での取り組み
患者教育における知識形式化
外来では、短時間で効果的な患者指導を行うためのスキルが重要です。ベテラン看護師による患者教育の手法を、具体的な事例とともに形式化しています。
効率的な情報収集と共有
限られた診察時間の中で必要な情報を収集し、多職種で共有するためのノウハウを体系化しています。特に、患者の生活背景や服薬状況の聞き取りにおける工夫点を重点的に記録しています。
継続支援のための知識活用
慢性疾患患者の長期的な支援において、効果的な介入のタイミングや方法に関する知識を蓄積し、チーム全体で活用できる形に整理しています。
部署間連携の促進
知識共有プラットフォームの活用
各部署で形式化された知識を、病院全体で共有・活用するためのプラットフォームを構築しています。部署の垣根を越えた知識の相互活用を促進し、組織全体の看護の質向上を図っています。
定期的な交流機会の創出
部署間での定期的な事例検討会を開催し、それぞれの部署での成功事例や課題を共有しています。この過程で、新たな気づきや改善のヒントが生まれることも多くあります。
導入時の注意点
段階的な展開の重要性
各部署での導入は、現場の状況に応じて段階的に進めることが重要です。特に、日常業務への影響を最小限に抑えながら、効果的な知識形式化を実現するための工夫が必要です。
柔軟な運用体制の構築
部署の特性や規模に応じて、形式化の方法や共有の仕組みを柔軟にカスタマイズすることが成功の鍵となります。定期的な見直しと改善を行いながら、最適な運用方法を確立していくことが重要です。
デジタルツールの活用

看護現場における暗黙知の形式化を効果的に進めるために、最新のデジタルツールを活用することで、より効率的な知識の共有と活用が可能となります。
本章では、具体的なツールの選定から実践的な活用方法まで、詳しく解説していきます。
ナレッジベースの構築方法
システム設計の基本方針
現場のニーズに合わせたナレッジベースを構築するためには、使いやすさと情報の整理しやすさを重視する必要があります。デジタルツールの導入により、必要な情報へのアクセスが容易になり、日々の業務の中で自然に知識の共有と活用が行えるようになります。
データベース構造の最適化
形式化された知識を効果的に管理するために、検索性と更新性を重視したデータベース構造を採用しています。キーワードによる横断的な検索や、部署別・症例別など、多角的な視点からの情報アクセスを可能にしています。
アクセス権限の設定
情報セキュリティに配慮しつつ、必要な職員が必要な情報にアクセスできる権限設定を行っています。特に、個人情報を含む事例などについては、適切なアクセス制限を設けることで、安全な情報共有を実現しています。
具体的なツール選定と活用
モバイルデバイスの活用
スマートフォンやタブレット端末を活用することで、ベッドサイドやナースステーションなど、様々な場所から必要な情報にアクセスできる環境を整備しています。これにより、実践の場での即時的な知識活用が可能となっています。
音声入力システムの導入
忙しい業務の中でも効率的に情報を記録できるよう、音声入力システムを導入しています。特に、カンファレンスや振り返りセッションでの議論内容を、リアルタイムでテキスト化することで、重要な気づきや知見を確実に記録しています。
画像・動画の活用
処置や看護技術の手順について、写真や動画を活用した記録を行っています。特に、微細な手技や観察ポイントなど、言葉だけでは伝えにくい内容を、視覚的な情報として共有することで、より確実な技術伝達を実現しています。
データ分析による効果測定
活用状況の可視化
ナレッジベースの利用状況を定量的に分析することで、どのような情報が現場で必要とされているかを把握しています。アクセスログの分析により、コンテンツの改善や新たな知識形式化の必要性を見出しています。
効果指標の設定
知識形式化の効果を測定するため、具体的な指標を設定しています。新人育成期間の短縮率や、インシデント発生率の変化など、複数の視点から取り組みの成果を評価しています。
継続的な改善サイクル
データ分析の結果に基づき、定期的なコンテンツの見直しと更新を行っています。現場からのフィードバックと利用データの分析を組み合わせることで、より実践的で有用な知識ベースへと発展させています。
運用上の工夫点
マニュアルの整備
デジタルツールを効果的に活用するため、わかりやすい操作マニュアルを整備しています。特に、不慣れな職員でも容易に利用できるよう、具体的な操作手順を示した簡潔なガイドを提供しています。
サポート体制の確立
システムの利用に関する質問や困りごとに対応するため、専門のサポート担当者を配置しています。技術的な問題から運用面での相談まで、幅広いサポートを提供することで、円滑な活用を促進しています。
今後の展望
AI技術の活用可能性
将来的な発展として、AI技術を活用した知識抽出や分析の自動化を検討しています。パターン認識や自然言語処理技術により、より効率的な知識の形式化と活用が期待されています。
システムの発展性
医療技術の進歩や現場のニーズの変化に応じて、柔軟にシステムを拡張できる設計を採用しています。新たな機能の追加や、他システムとの連携など、将来的な発展に対応できる基盤を整備しています。
実践的な導入ステップ

暗黙知の形式化を成功に導くためには、計画的かつ段階的なアプローチが重要です。
本章では、準備段階から実践、評価に至るまでの具体的なステップについて、実際の医療現場での経験を踏まえて解説していきます。
準備段階での注意点
現状分析の実施
効果的な暗黙知の形式化を進めるためには、まず現場の実態を正確に把握することが重要です。現在の知識共有の方法や課題、スタッフの意識調査などを通じて、取り組むべき優先課題を明確にしていきます。
推進体制の構築
プロジェクトを効果的に推進するため、適切な体制づくりが不可欠です。看護部門の管理職や教育担当者、現場のリーダー的存在の看護師など、多様な立場のメンバーで構成されるチームを編成していきます。
目標設定とスケジュール策定
具体的な数値目標と達成までのタイムラインを設定します。新人育成期間の短縮率や、技術継承の成功率など、測定可能な指標を用いて、取り組みの効果を評価できる体制を整えていきます。
段階的な実装プロセス
パイロット部署での試行
全部署での一斉導入ではなく、まずは特定の部署でパイロット的に取り組みを開始します。この過程で得られた知見や課題を整理し、本格展開に向けた改善点を明確にしていきます。
スタッフの意識醸成
暗黙知の形式化の意義や効果について、具体的な事例を交えながら丁寧に説明を行います。特に、ベテラン看護師の協力を得ることが重要で、その経験や知識が組織の貴重な資産となることを理解してもらいます。
実践的な知識抽出セッション
定期的なカンファレンスや振り返りの機会を設け、実践的な知識の抽出を行います。特に成功事例や困難事例について、詳細な分析と討論を行い、重要なポイントを明確化していきます。
モニタリングと改善サイクル
効果測定の実施
定期的に取り組みの効果を評価し、必要な改善を行います。特に、新人看護師の成長過程や、チーム全体の看護実践力の向上について、具体的な指標を用いて測定していきます。
フィードバックの収集
現場のスタッフから定期的にフィードバックを収集し、運用面での課題や改善要望を把握します。特に、日常業務への影響や、形式化された知識の活用しやすさについて、詳細な意見を集めていきます。
継続的な改善活動
収集したフィードバックと効果測定の結果を基に、継続的な改善を行います。特に、現場の負担軽減と効果の最大化のバランスを考慮しながら、運用方法の最適化を図っていきます。
成功のための重要ポイント
現場主導の推進
形式化の取り組みは、現場のスタッフが主体的に参加できる形で進めることが重要です。特に、日々の業務の中で自然に知識の共有と活用が行える仕組みづくりを心がけていきます。
柔軟な運用体制
各部署の特性や状況に応じて、柔軟に運用方法を調整できる体制を整えます。特に、業務の繁忙期への配慮や、スタッフの習熟度に応じた支援体制の構築が重要となります。
長期的な維持・発展
継続的な教育支援
形式化された知識を効果的に活用するため、継続的な教育支援を行います。特に、新入職者への導入教育や、定期的なスキルアップ研修の実施が重要となります。
システムの進化
医療技術の進歩や現場のニーズの変化に応じて、知識体系を適宜更新していきます。特に、新しい治療法や看護技術の導入に合わせて、関連する知識の形式化を進めていきます。
おしえてカンゴさん!よくある質問コーナー
看護現場での暗黙知の形式化に関して、現場の看護師の皆様からよく寄せられる質問にお答えします。ベテラン看護師の知識や経験を効果的に共有・活用するためのヒントとなる情報を、実践的な視点からご紹介いたします。
導入に関する質問
知識形式化の期間について
質問:暗黙知の形式化には、どのくらいの期間が必要でしょうか。
カンゴさん:基本的な形式化の仕組みを構築するまでには、6~12ヶ月程度を見込むことをお勧めします。ただし、これは部署の規模や現状の課題によって変動します。まずは優先度の高い領域から着手し、段階的に範囲を広げていく方法が効果的です。特に最初の3ヶ月は準備期間として、現状分析とスタッフの意識向上に十分な時間を確保することが重要です。
必要な人員体制
質問:プロジェクトを進めるために、どのような体制を整えればよいでしょうか。
カンゴさん:プロジェクトの中核となるコアメンバーとして、看護部管理職1名、教育担当者1~2名、各部署のリーダー的存在の看護師2~3名程度の体制をお勧めします。特に重要なのは、現場を熟知したベテラン看護師の参画です。彼らの経験と知見を活かしながら、実践的な形式化を進めることができます。
実戦に関する質問
日常業務との両立
質問:忙しい業務の中で、どのように時間を確保すればよいでしょうか。
カンゴさん:既存のカンファレンスや申し送りの時間を活用することをお勧めします。特に、通常の業務フローの中に知識抽出の機会を組み込むことで、過度な負担を避けることができます。例えば、インシデントレポートの振り返り時に、ベテラン看護師の判断プロセスを詳しく聞き取るなど、既存の機会を有効活用する工夫が効果的です。
効果的な知識抽出方法
質問:ベテラン看護師の暗黙知を、どのように引き出せばよいでしょうか。
カンゴさん:具体的な事例を基に、「その時どのような状況判断をしたのか」「なぜその対応を選択したのか」といった観点で掘り下げていくことが効果的です。特に、成功事例だけでなく、ヒヤリハット事例なども含めて振り返ることで、より実践的な知識を抽出することができます。
評価と改善に関する質問
効果測定の方法
質問:取り組みの成果を、どのように評価すればよいでしょうか。
カンゴさん:新人看護師の技術習得期間の変化や、インシデント発生率の推移など、具体的な指標を設定することをお勧めします。また、定期的なスタッフアンケートを実施し、知識共有の仕組みに対する満足度や改善要望を把握することも重要です。これらの定量的・定性的データを組み合わせることで、より正確な効果測定が可能となります。
運用に関する質問
更新頻度の目安
質問:形式化した知識は、どのくらいの頻度で更新すべきでしょうか。
カンゴさん:基本的には四半期ごとの定期見直しと、必要に応じた随時更新の併用をお勧めします。特に、新しい医療機器の導入や処置手順の変更があった場合は、速やかに内容を更新することが重要です。また、現場からのフィードバックを随時受け付ける仕組みを設けることで、タイムリーな更新が可能となります。
まとめ
看護実践における暗黙知の形式化は、組織全体の看護の質を向上させる重要な取り組みです。段階的な導入と現場の実情に合わせたカスタマイズにより、確実な技術継承と効率的な人材育成を実現することができます。本記事で紹介した方法を参考に、各施設の状況に合わせたナレッジマネジメントの構築を進めていただければ幸いです。
さらに詳しく知りたい方へ
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