新生児の観察は看護学生にとって最も重要なスキルの一つです。
特に母性看護学実習では、正確な観察眼と適切な記録方法の習得が求められます。
この記事では、日齢別の観察項目から異常の早期発見まで、実習で必要な知識とスキルを体系的に解説します。
この記事で分かること
- 日齢に応じた新生児観察の重要ポイントと実践手順
- バイタルサインと発達評価の正しい方法と記録のコツ
- 異常の早期発見と適切な報告の判断基準
- 実習記録の具体的な書き方とアセスメントの視点
- 日齢別の生理的変化と観察の留意点
この記事を読んでほしい人
- 母性看護学実習を控えている看護学生
- 新生児観察の基本を一から学びたい方
- 実習記録の書き方に不安がある方
- アセスメント能力を向上させたい方
- 新生児の異常を見逃さない観察力を身につけたい方
日齢別観察項目の基礎知識

新生児の観察は日齢によって注目すべきポイントが大きく変化します。
ここでは出生直後から1週間までの期間を細かく区分し、それぞれの時期に必要な観察項目と評価のポイントについて詳しく解説します。
実習時には、この基本的な知識を土台として、個々の新生児の状態に応じた観察を行うことが重要です。
出生直後(生後24時間以内)の観察とポイント
出生直後は新生児の体外生活への適応を支援する最も重要な時期です。
この時期の観察は、その後の成長発達に大きな影響を与える可能性があるため、特に慎重な観察と迅速な対応が求められます。
バイタルサインと全身状態の確認
出生直後のバイタルサインは頻回な確認が必要です。体温は腋窩で36.5〜37.2度を維持できているか、呼吸数は40〜60回/分の範囲内か、心拍数は120〜140回/分であるかを確認します。
また、SpO2値は95%以上を維持できているかも重要な観察ポイントとなります。
呼吸状態の詳細観察
呼吸の観察では、単なる回数だけでなく、呼吸の質にも注目します。
陥没呼吸やグランティングなどの異常呼吸の有無、鼻翼呼吸の有無、チアノーゼの有無を確認します。正常な新生児の呼吸は規則的で、努力呼吸を伴わないことが特徴です。
生後1日目から3日目の観察要点
この時期は生理的な体重減少が始まり、黄疸の出現も予測される重要な期間です。全身状態の変化を注意深く観察することが必要です。
体重変化と栄養摂取状況
出生体重からの減少を毎日確認します。通常は生後3日目までに出生体重の10%程度の減少がみられますが、これを超える場合は注意が必要です。
また、哺乳力や哺乳量、吸啜力の評価も重要な観察項目となります。
黄疸の評価とモニタリング
生後24〜48時間から出現する生理的黄疸の観察を開始します。
クレーマー分布に従って、頭部から下肢への進行状況を確認し、必要に応じて経皮的ビリルビン測定を実施します。
生後4日目から7日目の観察ポイント
この時期は体重が増加に転じ、生活リズムが徐々に確立される期間です。授乳パターンの確立と全身状態の安定が主な観察のポイントとなります。
体重増加と栄養評価
生後4日目以降は1日あたり20〜30gの体重増加が期待されます。
哺乳量や排泄状況とともに、体重増加のトレンドを観察することで、適切な栄養摂取が行われているかを評価します。
生活リズムの確立
睡眠覚醒のリズムが徐々に確立されていく過程を観察します。
覚醒時の反応性や活気、啼泣の特徴などから、中枢神経系の発達状態を評価します。また、授乳間隔や1回哺乳量の安定性も重要な観察項目となります。
日齢別観察の記録方法
観察内容を正確に記録することは、医療チームでの情報共有と継続的なケアの提供に不可欠です。
観察記録のポイント
時間、観察項目、具体的な数値や状態を明確に記録します。主観的な表現は避け、客観的な事実を中心に記載することが重要です。
特に異常が疑われる所見については、その程度や持続時間、随伴症状などを詳細に記録します。
継続的な評価と記録
経時的な変化を追跡できるよう、前回の観察結果と比較しながら記録を行います。
改善や悪化の傾向を把握しやすい記録方法を心がけ、必要に応じてグラフや表を活用することも効果的です。
新生児の生理的特徴と変化

新生児期には様々な生理的変化が短期間で起こります。
これらの変化を正しく理解し、正常な経過と異常な状態を区別できることが、質の高い看護ケアの提供につながります。
ここでは、各機能系統における生理的特徴と、日齢による変化について詳しく解説します。
呼吸器系の生理的特徴
新生児の呼吸器系は出生後急速に適応していきます。この過程を理解することは、異常の早期発見に重要です。
呼吸パターンの特徴
新生児の呼吸は成人とは異なり、不規則な周期性を示すことがあります。生後数時間は40〜60回/分の呼吸数を示し、その後安定していきます。
また、periodic breathingと呼ばれる周期性呼吸が見られることもありますが、これは正常な生理的現象です。
呼吸音の特徴
新生児の呼吸音は成人よりも大きく聴取されます。これは気道が短く、胸壁が薄いためです。
正常な呼吸音は両側で均等に聴取され、副雑音を伴わないことが特徴です。
循環器系の適応過程
胎生期から新生児期への循環動態の変化は、最も劇的な生理的適応の一つです。
心拍数と血圧の変動
出生直後は心拍数120〜140回/分を示し、啼泣時には160回/分程度まで上昇することもあります。
血圧は日齢とともに安定し、収縮期血圧60〜70mmHg、拡張期血圧30〜40mmHgの範囲で推移します。
末梢循環の評価
皮膚色や四肢の温かさ、毛細血管再充満時間(CRT)などから、末梢循環の状態を評価します。
CRTは正常では2秒以内であり、これを超える場合は循環不全を疑う必要があります。
体温調節機能
新生児の体温調節機能は未熟であり、環境温の影響を受けやすい特徴があります。
体温変動のメカニズム
褐色脂肪組織による熱産生と、皮膚血管の収縮拡張による放熱調節が主な体温調節メカニズムです。
しかし、これらの機能は未熟なため、環境温の変化に対して脆弱です。
体温管理の重要性
正常体温36.5〜37.2度を維持できるよう、室温や衣類の調整が必要です。
特に低出生体重児では、体温低下のリスクが高いため、より慎重な管理が求められます。
消化器系の発達
哺乳や消化機能は、日齢とともに成熟していきます。
哺乳機能の発達
吸啜・嚥下・呼吸の協調運動は、生後数日かけて円滑になっていきます。
初回哺乳は生後2時間以内に開始することが推奨されていますが、その後徐々に哺乳量と間隔が安定していきます。
消化吸収機能の特徴
腸管の蠕動運動や消化酵素の分泌は未熟ですが、母乳中の消化酵素を利用しながら、徐々に機能が向上していきます。
生後24〜48時間で胎便の排出が始まり、その後母乳便へと変化していきます。
神経学的発達の評価
中枢神経系の発達は、様々な原始反射や自発運動から評価します。
原始反射の観察
モロー反射、把握反射、歩行反射などの原始反射は、中枢神経系の成熟度を示す重要な指標です。
これらの反射は日齢とともに変化し、その消失時期も発達評価の重要な要素となります。
行動状態の評価
睡眠・覚醒のサイクルや、外部刺激への反応性から、神経学的な発達状態を評価します。
正常な新生児は、深睡眠から啼泣まで6段階の行動状態を示します。
効果的な発達評価方法

新生児の発達評価は、成長の適切性を判断する重要な指標となります。
系統的な評価方法を理解し、実践することで、異常の早期発見と適切な支援につながります。
このセクションでは、具体的な評価手順と観察のポイントについて詳しく解説します。
神経学的評価の基本
新生児の神経学的評価は、覚醒状態や環境条件に大きく影響されます。適切な評価のためには、これらの条件を整えることが重要です。
評価のタイミング
授乳から1〜2時間後の安定した覚醒状態で評価を行います。空腹時や睡眠時は正確な評価が困難なため、授乳直後や深睡眠時は避けます。
また、室温は25〜28度に保ち、強い光や騒音のない環境を整えることが必要です。
観察の基本姿勢
新生児に触れる前に手指消毒を行い、体温低下を防ぐため手を温めておきます。
急激な体位変換は避け、ゆっくりと丁寧に扱うことで、安定した状態での評価が可能となります。
原始反射の詳細評価
原始反射は中枢神経系の成熟度を示す重要な指標です。各反射の誘発方法と正常反応を理解することが必要です。
モロー反射の評価
仰臥位で頭部を軽く持ち上げ、突然支えを外します。
正常では、上肢の外転・伸展(第1相)と内転・屈曲(第2相)が見られます。反応の左右差や、反応の強さにも注目します。
把握反射の評価
手掌または足底に軽く触れることで誘発されます。
正常では指が屈曲し、把握する動きが見られます。把握力の強さや持続時間も評価のポイントとなります。
筋緊張の評価方法
筋緊張は神経学的成熟度を反映する重要な指標です。適切な評価には、統一された手技と判断基準が必要です。
受動的運動による評価
四肢の関節を他動的に動かし、その抵抗感を評価します。
正常な新生児では、軽度の抵抗感があり、極端な弛緩や緊張がないことが特徴です。特に、頸部の筋緊張は重要な評価項目となります。
自発運動の観察
自然な状態での四肢の動きを観察します。
正常では、滑らかで対称的な動きが見られます。ぎこちない動きや、片側性の動きは異常を示唆する可能性があります。
感覚機能の評価
視覚、聴覚、触覚などの感覚機能の評価は、神経学的発達の重要な指標となります。
視覚機能の評価
赤色の玩具を用いて追視の有無を確認します。
正常な新生児は、明暗を識別し、動く物体に対して一時的な追視が可能です。瞳孔反射や赤色反射の確認も重要です。
聴覚機能の評価
突然の音刺激に対する驚愕反応や、声かけに対する反応を観察します。過剰な反応や、反応の欠如は異常を示唆する可能性があります。
行動状態の評価
新生児の行動状態は、中枢神経系の機能を反映します。
行動状態分類
ブラゼルトンの分類に基づき、以下の6段階で評価します。
深い睡眠、浅い睡眠、まどろみ、静かな覚醒、活発な覚醒、啼泣の各状態を観察し、状態間の移行のスムーズさも評価のポイントとなります。
刺激への反応性
外部刺激に対する反応の質と強さを評価します。過敏な反応や、極端に鈍い反応は注意が必要です。
また、状態の変化に伴う自己制御能力も重要な評価項目となります。
発達評価の記録方法
観察結果を正確に記録することは、継続的な評価と他者との情報共有に不可欠です。
記録の要点
日時、評価時の状態、各評価項目の結果を具体的に記載します。
特に異常が疑われる所見については、その性質と程度を詳細に記録します。また、評価時の環境条件や児の状態も併せて記録することが重要です。
フィジカルアセスメントの具体的手順

新生児のフィジカルアセスメントは、系統的かつ丁寧に行うことが重要です。
ここでは、頭部から足趾までの観察手順と、各部位における正常所見および異常所見について詳しく解説します。
また、適切な手技と評価のポイントについても説明します。
全身状態の評価
全身状態の評価は、フィジカルアセスメントの最初のステップとなります。新生児の一般状態から多くの情報を得ることができます。
体位と姿勢の観察
新生児の正常な姿勢は、四肢を軽度屈曲させた状態です。自然な状態での体位、左右差の有無、異常な姿勢保持などを観察します。
また、自発運動の対称性や円滑さも重要な評価項目となります。
皮膚の色調と性状
皮膚色は末梢循環状態を反映します。全身のチアノーゼや黄疸の程度、蒼白の有無などを観察します。
また、皮膚の張りや湿潤状態、異常な発疹や母斑の有無も確認します。
頭部の評価手順
頭部の評価は、形状から大泉門まで、慎重な観察と触診が必要です。
頭蓋の形状評価
頭蓋の形状は、分娩経過を反映することがあります。頭囲測定とともに、形状の左右対称性、骨の重なりの程度を評価します。
また、産瘤や頭血腫の有無も確認します。
大泉門の触診
大泉門は菱形で、正常では軽度陥凹している状態です。緊満や著しい陥凹がないか、また、その大きさや性状を慎重に触診します。
顔面部の観察
顔面部の観察では、形態異常の有無と各器官の機能を評価します。
眼の診察
眼球の大きさや位置、眼間距離の異常の有無を観察します。また、結膜の色調、強膜の黄染の程度、瞳孔反射なども確認します。
口腔内の評価
口唇の色調や形状、口蓋裂の有無を確認します。また、舌小帯の付着位置や口腔内の粘膜色も重要な観察項目です。
胸部の評価
胸部の評価では、呼吸状態と心機能の両面から観察を行います。
呼吸状態の評価
呼吸数、呼吸の規則性、呼吸様式を観察します。陥没呼吸やグランティングの有無、呼吸音の左右差なども重要な評価項目となります。
心音と心拍の評価
心音の聴取では、リズムの規則性、雑音の有無を確認します。また、心拍数と心音の強さ、左右差なども評価します。
腹部の観察
腹部の評価は、消化器系の機能評価として重要です。
腹部触診の手順
腹部は柔らかく、陥凹や膨満がない状態が正常です。臍部の状態、腸蠕動音の聴取、腹部の緊満度なども評価します。
臍部の観察
臍帯脱落前後の状態、臍の清潔状態、感染徴候の有無を慎重に観察します。臍ヘルニアの有無とその程度も確認します。
四肢の評価
四肢の評価では、形態と機能の両面から観察を行います。
上肢の評価
上肢の形態、運動範囲、筋緊張を評価します。また、末梢の血行状態、手指の形態異常の有無も確認します。
下肢の評価
股関節の開排制限の有無、下肢の長さの左右差、足底の形状などを評価します。また、足背動脈の触知も重要です。
記録の実践的アプローチ

適切な看護記録は、医療チームでの情報共有と継続的なケアの質を保証する重要な要素です。
ここでは、新生児観察における効果的な記録方法とそのポイントについて、実践的な視点から解説します。
SOAP記録の基本構造
看護記録はSOAP形式で記載することで、情報を系統的に整理し、アセスメントの過程を明確に示すことができます。
主観的情報(S:Subjective)の記載
母親からの情報や、新生児の啼泣の特徴、哺乳意欲などの主観的な観察内容を記載します。
授乳時の様子や、母親が気づいた変化なども、重要な情報として記録します。
客観的情報(O:Objective)の記載
バイタルサインや体重変化、皮膚色、活動性など、測定可能な客観的データを記録します。
数値データは単位を明記し、経時的な変化が分かるように記載することが重要です。
効果的なアセスメント記録
アセスメントは観察した情報を統合し、看護上の問題を明確化する重要な過程です。
アセスメント(A:Assessment)の書き方
観察された情報を関連付け、その意味を解釈します。
例えば、体重減少率と哺乳量、排泄状況を関連付けて栄養状態を評価するなど、総合的な判断を記載します。
計画(P:Plan)の立案
アセスメントに基づいて具体的な看護計画を立案します。短期目標と長期目標を設定し、具体的な看護介入の内容を明記します。
時系列記録の重要性
新生児の状態は短時間で変化することがあるため、時系列での記録が特に重要です。
経時的変化の記録方法
観察時刻を明確に記載し、前回の観察結果との比較を含めて記録します。
特に、バイタルサインや哺乳量などの数値データは、変化のトレンドが分かるように記載します。
継続看護への配慮
次の勤務者に必要な情報が確実に伝わるよう、特に注意が必要な点や観察のポイントを明確に記載します。
異常所見の記録
異常所見を発見した場合の記録は、特に重要性が高く、詳細な記載が必要です。
異常所見の具体的記載
異常の程度、範囲、持続時間などを具体的に記載します。また、発見時の状況や、随伴症状の有無なども明記します。
対応内容の記録
異常所見に対して実施した対応と、その後の経過を時系列で記録します。報告先や指示内容なども含めて記載します。
記録の質向上のポイント
看護記録の質を高めるために、以下のポイントに注意して記載します。
記録の客観性維持
主観的な表現を避け、観察した事実を具体的に記載します。比較対象がある場合は、その基準を明確にして記録します。
記録の簡潔性と正確性
必要な情報を漏れなく、かつ簡潔に記載します。医療用語は正確に使用し、略語は施設の規定に従って使用します。
異常の早期発見

新生児の異常を早期に発見することは、重大な合併症を予防し、適切な治療介入のタイミングを逃さないために極めて重要です。
ここでは、日常的な観察の中で注目すべき異常所見とその評価方法、さらに適切な報告のタイミングについて解説します。
呼吸器系の異常徴候
新生児の呼吸状態の変化は、全身状態を反映する重要な指標となります。
呼吸困難のサイン
呼吸数の異常(頻呼吸:70回/分以上、徐呼吸:30回/分未満)、陥没呼吸、うなり声、鼻翼呼吸などが見られた場合は、呼吸困難のサインとして immediate(即時)に報告が必要です。
また、チアノーゼの有無とその範囲についても注意深く観察します。
無呼吸発作への対応
15秒以上の呼吸停止、特に心拍数の低下や皮膚色の変化を伴う場合は、無呼吸発作として認識し、直ちに対応が必要です。
発作の持続時間、回数、随伴症状を詳細に記録します。
循環器系の異常評価
循環動態の変化は、新生児の状態悪化を示す重要なサインとなります。
心拍数異常の評価
頻脈(180回/分以上)や徐脈(100回/分未満)が持続する場合は要注意です。
特に、努力呼吸や活気の低下を伴う場合は、重大な病態を示唆する可能性があります。
末梢循環不全の徴候
四肢冷感、蒼白、チアノーゼ、毛細血管再充満時間の延長(3秒以上)などが見られる場合は、循環不全を疑い、速やかな報告が必要です。
体温異常への対応
体温管理は新生児看護の基本であり、異常の早期発見が重要です。
低体温の評価
腋窩温36.5度未満の場合は低体温として扱います。特に36.0度未満の場合は、保温対策の強化と原因検索が必要です。低体温が持続する場合は、感染症や他の基礎疾患の可能性も考慮します。
発熱への対応
37.5度以上の発熱が見られた場合は、感染症の可能性を考慮し、他の症状(哺乳力低下、活気不良など)の有無も含めて評価します。
黄疸の評価
生理的黄疸と病的黄疸の鑑別は重要です。
病的黄疸の判断
生後24時間以内の黄疸出現、急激な増強、7日以上の遷延、顔面以外への急速な進展などは、病的黄疸を疑う所見です。
経皮的ビリルビン値の測定結果と合わせて評価します。
核黄疸のリスク評価
高ビリルビン血症が進行すると、核黄疸のリスクが高まります。傾眠傾向、反り返り、高調乳首音などの症状に注意が必要です。
消化器系の異常
哺乳力低下や嘔吐などの消化器症状は、重要な異常サインとなります。
哺乳力低下の評価
突然の哺乳力低下、吸啜力の低下、嘔吐の出現などは、全身状態悪化の初期症状となることがあります。
1回哺乳量や24時間総哺乳量の変化にも注意が必要です。
腹部症状の観察
腹部膨満、腸蠕動音の異常、胆汁性嘔吐などが見られた場合は、消化器系の重篤な疾患を疑い、速やかな報告が必要です。
ケーススタディ

実際の新生児観察事例を通じて、アセスメントの視点と対応方法を学びます。
以下では、典型的なケースと、注意が必要なケースについて詳しく解説します。
各事例では、観察内容、アセスメント、実施した対応、その後の経過を具体的に示します。
Case A:生理的な経過をたどる新生児
正常な経過の中で見られる生理的な変化と、それに対する適切な観察・対応を示す事例です。
患児情報
在胎39週5日、経腟分娩、出生体重3,200g、アプガースコア8/9点の正期産児です。出生後の初回観察から退院までの経過を追って説明します。
経過と観察内容
生後24時間:体重3,120g(-2.5%)、体温37.0度、呼吸数48回/分、心拍数134回/分、SpO2 98%。哺乳力良好で、1回30〜40mlの母乳を3時間おきに摂取しています。皮膚色良好、啼泣力も十分です。
Case B:軽度黄疸を認めた新生児
新生児黄疸の評価と管理の実際を示す事例です。
経過観察のポイント
生後3日目に顔面から体幹にかけて黄疸が出現。経皮的ビリルビン値12.8mg/dl。活気良好で哺乳力も維持されています。体重減少率は8%で許容範囲内です。
対応と評価
黄疸の程度は光線療法の適応基準には達していませんが、6時間ごとの経過観察を実施。母乳分泌も良好で、適切な哺乳間隔が保てています。
Case C:哺乳力低下を認めた新生児
哺乳力低下の早期発見と適切な対応の重要性を示す事例です。
発見時の状況
生後2日目の深夜、通常40mlの哺乳量が20ml程度に低下。体温37.8度、多呼吸傾向(呼吸数65回/分)を認めました。
対応と経過
バイタルサイン測定と全身観察を実施。医師に報告し、血液検査で感染症の評価を行いました。早期の抗生剤投与により、症状は改善に向かいました。
Case D:体重減少が目立つ新生児
体重減少の評価と管理について示す事例です。
観察内容
生後3日目、出生体重3,000gから2,640g(-12%)まで減少。哺乳回数は適切だが、1回量が少なく、母乳分泌も十分ではありませんでした。
支援内容
搾乳指導と補足哺乳を開始。母児同室時間を調整し、授乳姿勢の指導も実施。その結果、体重減少に歯止めがかかり、増加に転じました。
おしえてカンゴさん!(Q&A)

新生児観察に関する疑問や不安について、実習でよく聞かれる質問をQ&A形式で解説します。
実践的な視点から、具体的な対応方法やポイントを説明します。
基本的な観察に関する質問
Q1:新生児の体温測定の正しい方法を教えてください。
A:新生児の体温測定は腋窩で行います。測定時は必ず腋窩を完全に閉じ、5分間測定します。
正常値は36.5〜37.2度です。測定値が異常な場合は、必ず再測定を行い、継続的な観察が必要です。
Q2:啼泣の様子からどのようなことがわかりますか。
A:啼泣は新生児の重要なコミュニケーション手段です。高音で甲高い泣き方は痛みを、弱々しい泣き方は全身状態の低下を示唆することがあります。
また、泣き方の変化や持続時間も重要な観察ポイントとなります。
発達評価に関する質問
Q3:原始反射の評価時期はいつが適切ですか。
A:原始反射の評価は、新生児が落ち着いた状態で、空腹時を避けて行います。
通常、授乳から1〜2時間後が最適です。評価時は必ず両側で確認し、左右差の有無にも注目します。
Q4:筋緊張の正常・異常の判断基準を教えてください。
A:正常な新生児は、四肢を軽度屈曲位に保ち、適度な抵抗感があります。
極端な筋緊張亢進や低下、左右差が見られる場合は異常を疑い、医師に報告する必要があります。
記録に関する質問
Q5:バイタルサインの記録で特に注意することは何ですか。
A:測定値に加えて、測定時の状況(啼泣の有無、覚醒状態など)も必ず記載します。
異常値の場合は再測定値と、その後の経過観察内容も記録します。継時的な変化がわかるように記載することが重要です。
Q6:アセスメントの記載で悩んでいます。どのように書けばよいですか。
A:観察した客観的事実を基に、それらの関連性を考察します。例えば「体重減少と哺乳量の関係」「黄疸の進行状況と活動性の変化」など、複数の観察項目を関連付けて評価を行います。
異常の早期発見に関する質問
Q7:無呼吸発作を疑うのはどんな時ですか。
A:15秒以上の呼吸停止、特にチアノーゼや徐脈を伴う場合は無呼吸発作として対応が必要です。
発作時の状況、持続時間、回数、随伴症状を詳細に記録し、速やかに報告します。
Q8:黄疸の観察で特に注意することは何ですか。
A:部位による進行(頭部から下肢への進展)、増強速度、皮膚以外の部位(眼球結膜など)の黄染も重要です。
生後24時間以内の黄疸出現や、急激な増強は病的黄疸の可能性があります。
家族への対応に関する質問
Q9:母親から育児に関する質問を受けた場合、どう対応すればよいですか。
A:まず母親の不安や疑問を十分に傾聴します。その上で、観察に基づく客観的な情報を提供し、必要に応じて指導者に相談します。
母親の経験や思いを尊重しながら、専門的な助言を行うことが重要です。
Q10:退院指導で特に強調すべきポイントは何ですか。
A:体温管理、適切な授乳方法、黄疸の観察、異常時の連絡方法などが重要です。
特に、医療機関を受診すべき症状(発熱、哺乳力低下、活気不良など)については、具体的に説明します。
まとめ
新生児の観察は、系統的なアプローチと正確な記録が重要です。
日齢による生理的変化を理解し、適切な観察項目と評価方法を身につけることで、異常の早期発見につながります。
特に実習では、指導者に積極的に質問しながら、多くの症例を経験することが大切です。
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