最新の心肺蘇生ガイドラインに基づき、現場で即実践できる技術とチーム連携のポイントを解説します。
2025年の最新エビデンスと実践的なテクニックを網羅的に解説した、現場の看護師のための完全ガイドとなっています。
救命の現場で必要となる知識と技術を、実践に即した形で詳しく解説していきます。
この記事で分かること
- 2025年版心肺蘇生ガイドラインの重要ポイントと具体的な実施手順
- 質の高い胸骨圧迫を実現するための詳細なテクニックと評価方法
- 効果的なチーム蘇生のための具体的な連携方法とリーダーシップスキル
- 実践的なAED使用手順と注意点、トラブルシューティング
- 様々な状況における対応方法とベストプラクティス
この記事を読んでほしい人
- 救急対応の技術向上を目指す看護師
- 院内救急対応チームのメンバーの方
- 新人教育担当の看護師
- BLS/ACLSの指導に携わる医療従事者
- 心肺蘇生法の最新情報をキャッチアップしたい方
- 院内急変対応システムの構築・改善に関わるスタッフの方
最新ガイドラインが示す効果的な心肺蘇生法

近年の医学的エビデンスの蓄積により、心肺蘇生法の実施方法と効果に関する理解が大きく進展しています。
2025年のガイドライン改訂では、特に胸骨圧迫の質と救命率の関係性について、新たな知見が示されています。
また、チーム蘇生の重要性や、早期除細動の意義についても、より具体的な推奨事項が提示されています。
2025年ガイドライン改訂の背景
医療技術の進歩と共に、心肺蘇生法の実施方法についても様々な研究が進められてきました。
特に、胸骨圧迫の質と生存率の関係性については、多くの新しい知見が得られています。
近年の大規模研究により、適切な深さと速さによる胸骨圧迫が、救命率向上に直接的な影響を与えることが明確になりました。
救命率向上への新たなアプローチ
最新の研究では、心肺蘇生の質を決定する要素として、以下の点が特に重要視されています。
まず、胸骨圧迫の質的向上です。適切な深さ(成人の場合5-6cm)での圧迫が、coronary perfusion pressure(冠灌流圧)の維持に重要であることが、複数の研究で証明されています。
最新のメタアナリシスでは、この範囲での圧迫が、1か月後の生存率を最大で15%向上させることが報告されています。
また、圧迫速度については、毎分100-120回という具体的な数値目標が設定されました。
この範囲での実施が最も効果的であることが、様々な研究結果から明らかになっています。
特に注目すべき点として、120回を超える高速の圧迫は、かえって冠灌流圧を低下させる可能性があることが新たに判明しています。
さらに、胸壁の完全な戻りの重要性も強調されています。
圧迫解除時に胸壁が完全に元の位置まで戻ることで、心臓への静脈還流が促進され、次の圧迫の効果を最大限に引き出すことができます。
最新の研究では、不完全な胸壁の戻りが、救命率を最大で20%低下させる可能性があることが報告されています。
エビデンスに基づく実施手順の確立
新たなガイドラインでは、人工呼吸と胸骨圧迫の理想的な比率についても、より詳細な推奨が示されています。
医療従事者による心肺蘇生では、30:2の比率を維持することが標準とされていますが、この比率の科学的根拠についても、より詳細な説明が加えられています。
特に、換気量の適正化と過換気の防止が重要視されており、過度の換気が静脈還流を阻害し、救命率を低下させる可能性があることが指摘されています。
最新の研究成果と臨床応用
最新の研究では、胸骨圧迫の質的評価にフィードバックデバイスを使用することの有用性も示されています。
リアルタイムで圧迫の深さや速さをモニタリングし、即座にフィードバックを得ることで、より質の高い胸骨圧迫を維持できることが明らかになっています。
特に、加速度センサーを用いたデバイスは、圧迫の深さと速さだけでなく、胸壁の戻りも正確に評価できることが特徴です。
改訂のポイントと重要な変更点
2025年の最新ガイドラインでは、これまでの知見を踏まえた上で、より具体的で実践的な推奨事項が示されています。
特に、心肺蘇生の質の向上に焦点を当てた改訂が行われ、救命率向上につながる重要な変更点が明確化されています。
胸骨圧迫に関する新基準
胸骨圧迫の質については、より具体的な基準が示されており、深さと速さの両面から詳細な指標が設定されています。
成人の場合、圧迫の深さは5-6cmを目標とし、毎分100-120回のテンポで実施することが推奨されています。
この基準は、世界各国での研究結果を統合的に分析した結果として示されました。
特に注目すべき点として、圧迫の深さについては、これまでの「少なくとも5cm」という表現から、「5-6cm」という具体的な範囲が示されるようになりました。
これは、6cmを超える過度の圧迫が、肋骨骨折などの合併症のリスクを高める可能性があることが新たに明らかになったためです。
質の評価と維持の方法
質の高い胸骨圧迫を維持するためには、定期的な評価とフィードバックが重要です。
最新のガイドラインでは、以下の評価項目が示されています。
まず、圧迫の深さについては、胸骨の動きを目視で確認するだけでなく、可能な限り客観的な測定を行うことが推奨されています。
フィードバックデバイスの使用は、特に訓練時において有用とされています。
速さについては、メトロノームや音声ガイダンスの使用が推奨されています。
特に、長時間の蘇生では、疲労により速度が変化しやすいため、定期的な確認が必要です。
また、チーム内での声かけによるペース維持も効果的な方法として紹介されています。
新たな実施手順と注意点
最新のガイドラインでは、実施手順についてもより具体的な指針が示されています。
特に、実施者の姿勢や力の入れ方について、詳細な解説が加えられました。
実施者の適切な姿勢
効果的な胸骨圧迫を行うためには、実施者の姿勢が重要です。
両腕を伸ばし、肩が患者の胸の真上に来るように位置取りを行います。この姿勢により、体重を効果的に利用した圧迫が可能となり、実施者の疲労も軽減されます。
圧迫部位の正確な選択
圧迫部位は、胸骨の下半分となります。
特に、剣状突起を避けることが重要です。最新の研究では、圧迫部位のわずかなずれが、圧迫の効果を大きく低下させる可能性があることが示されています。
まとめと実践のポイント
心肺蘇生の効果を最大限に引き出すためには、以下の点に特に注意を払う必要があります。
- 質の高い胸骨圧迫の維持
- 適切な換気の実施
- チームワークの強化
- 継続的な技術の向上
これらの要素を総合的に実践することで、より効果的な救命活動が可能となります。
効果的なチーム蘇生の実践
心肺蘇生において、個々の技術の向上
と同様に重要なのが、チームとしての効果的な連携です。
最新のガイドラインでは、チーム蘇生の質を高めるための具体的な方策が示されており、特にリーダーシップとコミュニケーションの重要性が強調されています。
救命率の向上には、チームメンバー全員が高い意識を持ち、効果的に協働することが不可欠です。
チームリーダーの役割と実践ポイント
救命現場におけるリーダーの存在は、蘇生の成功に大きく影響します。
リーダーには、状況の適切な判断と指示、チームメンバーの力を最大限に引き出すマネジメント能力が求められます。
最新のガイドラインでは、特にリーダーシップスキルの向上が重要視されています。
リーダーシップの基本姿勢
リーダーには、冷静な判断力と明確な指示出しの能力が求められます。
現場の状況を常に把握し、必要な処置や役割分担を適切に指示することで、チーム全体の効率を高めることができます。
また、チームメンバーからの報告や提案に対して、適切なフィードバックを行うことも重要な役割となっています。
コードブルー発動時の初期対応
コードブルー発動時には、まず現場の安全確認と初期評価を行います。
到着後は直ちにチームメンバーの役割分担を明確にし、必要な資器材の準備を指示します。また、記録係を指名し、時系列での正確な記録を開始することも重要です。
状況判断と意思決定プロセス
救命現場での状況判断には、多くの要素を考慮する必要があります。
患者の状態、利用可能なリソース、チームメンバーの状況など、様々な情報を総合的に判断し、最適な対応を選択することが求められます。
時間的制約がある中での意思決定には、以下の要素が特に重要となります。
効果的な指示出しの技術
明確で具体的な指示を出すことは、チーム蘇生の成功に直結します。指示を出す際は、実施者を明確に指名し、具体的な行動を示すことが重要です。
「誰かが」ではなく「〇〇さん、お願いします」というように、特定の個人に対して指示を出すことで、責任の所在が明確になります。
指示内容の明確化
指示は具体的かつ実行可能な形で出す必要があります。
例えば、「アドレナリン1mgを投与してください」という具体的な指示を出し、実施後は必ず完了報告を求めます。
また、次の行動についても予告することで、チームメンバーが先を見据えた準備を行うことができます。
特殊状況でのチーム対応
救命現場では、様々な特殊状況に遭遇することがあります。それぞれの状況に応じた適切な対応が求められます。
夜間帯の対応と課題
夜間帯は、通常よりも少ない人員での対応を迫られることが多くなります。
このような状況では、より効率的な役割分担と、応援要請のタイミングが重要となります。
特に、初期対応チームは、応援が到着するまでの間、限られたリソースで最大限の効果を上げる必要があります。
限られたリソースでの対応
人員が限られている場合は、優先順位を明確にし、必要不可欠な処置に集中します。
例えば、質の高い胸骨圧迫の維持を最優先とし、他の処置は応援の到着を待って実施するなど、状況に応じた柔軟な対応が求められます。
多職種連携が必要な場面
複数の診療科や職種が関わる場面では、より複雑なチーム連携が必要となります。
それぞれの専門性を活かしながら、効果的な連携を実現するためには、明確なコミュニケーションと役割分担が不可欠です。
チームパフォーマンスの評価と改善
効果的なチーム蘇生を実現するためには、定期的な評価と改善が不可欠です。
特に、シミュレーショントレーニングを通じた技術向上と、実際の症例からの学びが重要となります。
評価指標の設定
チームパフォーマンスを客観的に評価するため、具体的な指標を設定します。
胸骨圧迫の質、気道確保のスピード、薬剤投与のタイミングなど、測定可能な指標を用いて評価を行います。
また、チームワークの質を評価する指標として、コミュニケーションの頻度や正確性なども重要な要素となります。
定量的評価の実施
シミュレーショントレーニング時には、以下の項目について定量的な評価を行います。
- 心停止認識から胸骨圧迫開始までの時間
- 胸骨圧迫の中断時間
- 指示から実施までの時間
- コミュニケーションの正確性
- 役割交代の円滑さ
改善プロセスの確立
評価結果に基づき、具体的な改善策を立案し実行します。改善のプロセスは以下の手順で進めます。
- 現状分析:評価データの収集と分析
- 課題特定:改善が必要な項目の明確化
- 対策立案:具体的な改善策の検討
- 実行計画:改善策の実施スケジュール作成
- 効果測定:改善後の評価実施
データに基づく質の改善
チーム蘇生の質を継続的に向上させるためには、客観的なデータの収集と分析が重要です。
特に、以下の項目についてデータを収集し、定期的な分析を行います。
パフォーマンス指標のモニタリング
主要なパフォーマンス指標を定期的にモニタリングし、トレンドを分析します。特に注目すべき指標には以下のようなものがあります。
- 心拍再開率
- 神経学的予後良好な生存率
- 胸骨圧迫の質的指標
- チーム連携の評価スコア
継続的な質の改善
チーム蘇生の質を継続的に向上させるためには、システマティックな評価と改善の取り組みが必要です。
定期的なケースレビューを通じて、チームとしての強みと課題を明確にし、具体的な改善策を立案していきます。
フィードバックシステムの確立
効果的なフィードバックを行うため、以下のような仕組みを整備します。
- 定期的なデブリーフィングセッション
- パフォーマンス評価レポートの作成
- 改善提案の収集システム
- 成功事例の共有プラットフォーム
具体的な改善事例の共有
実際の改善事例を共有することで、チーム全体の学習を促進します。
例えば、コミュニケーション方法の改善により中断時間が短縮された事例や、役割分担の最適化により処置の効率が向上した事例などを、具体的なデータとともに共有します。
効果的なチーム蘇生の実践
心肺蘇生において、個々の技術の向上と同様に重要なのが、チームとしての効果的な連携です。
最新のガイドラインでは、チーム蘇生の質を高めるための具体的な方策が示されており、特にリーダーシップとコミュニケーションの重要性が強調されています。
救命率の向上には、チームメンバー全員が高い意識を持ち、効果的に協働することが不可欠です。
チームリーダーの役割と実践ポイント
救命現場におけるリーダーの存在は、蘇生の成功に大きく影響します。
リーダーには、状況の適切な判断と指示、チームメンバーの力を最大限に引き出すマネジメント能力が求められます。
最新のガイドラインでは、特にリーダーシップスキルの向上が重要視されています。
リーダーシップの基本姿勢
リーダーには、冷静な判断力と明確な指示出しの能力が求められます。
現場の状況を常に把握し、必要な処置や役割分担を適切に指示することで、チーム全体の効率を高めることができます。
また、チームメンバーからの報告や提案に対して、適切なフィードバックを行うことも重要な役割となっています。
コードブルー発動時の初期対応
コードブルー発動時には、まず現場の安全確認と初期評価を行います。
到着後は直ちにチームメンバーの役割分担を明確にし、必要な資器材の準備を指示します。また、記録係を指名し、時系列での正確な記録を開始することも重要です。
状況判断と意思決定プロセス
救命現場での状況判断には、多くの要素を考慮する必要があります。
患者の状態、利用可能なリソース、チームメンバーの状況など、様々な情報を総合的に判断し、最適な対応を選択することが求められます。
時間的制約がある中での意思決定には、以下の要素が特に重要となります。
効果的な指示出しの技術
明確で具体的な指示を出すことは、チーム蘇生の成功に直結します。
指示を出す際は、実施者を明確に指名し、具体的な行動を示すことが重要です。
「誰かが」ではなく「〇〇さん、お願いします」というように、特定の個人に対して指示を出すことで、責任の所在が明確になります。
指示内容の明確化
指示は具体的かつ実行可能な形で出す必要があります。
例えば、「アドレナリン1mgを投与してください」という具体的な指示を出し、実施後は必ず完了報告を求めます。
また、次の行動についても予告することで、チームメンバーが先を見据えた準備を行うことができます。
メンバーの役割と連携のコツ
チーム蘇生の成功には、各メンバーが自身の役割を理解し、適切に遂行することが不可欠です。
また、他のメンバーの動きを把握し、必要に応じてサポートすることも重要な要素となります。
役割分担の最適化
効果的なチーム蘇生を行うためには、各メンバーの経験と能力に応じた適切な役割分担が必要です。
特に、胸骨圧迫、気道確保、薬剤投与など、専門性の高い処置については、熟練者が担当することが望ましいとされています。
各役割の具体的な実施内容
胸骨圧迫担当者は、質の高い圧迫を維持することに専念します。
気道確保担当者は、適切な換気の維持と気道管理を行います。記録係は、全ての処置と時間を正確に記録し、定期的にチーム全体に経過時間を伝えます。
バックアップ体制の確立
各役割に対して、バックアップ要員を設定しておくことが重要です。
特に、長時間の蘇生が予想される場合は、交代要員の確保が不可欠となります。また、予期せぬ事態に備えて、複数の役割をこなせるようなクロストレーニングも推奨されています。
コミュニケーション技術の向上
効果的なチーム蘇生には、適切なコミュニケーションが不可欠です。特に、クローズドループコミュニケーションの実践が重要視されています。
情報共有の基本原則
救命現場での情報共有には、明確さと簡潔さが求められます。
特に重要な情報については、全てのチームメンバーが確実に共有できるよう、大きな声ではっきりと伝える必要があります。
また、情報を受け取った側は、必ず復唱して確認することが推奨されています。
クローズドループコミュニケーションの実践
指示を出す際は、実施者の名前を呼び、具体的な行動を指示します。
指示を受けた側は、その内容を復唱して確認し、実施後は必ず完了報告を行います。
この一連の流れを確実に実施することで、情報の伝達ミスを防ぐことができます。
チームパフォーマンスの評価と改善
効果的なチーム蘇生を実現するためには、定期的な評価と改善が不可欠です。
特に、シミュレーショントレーニングを通じた技術向上と、実際の症例からの学びが重要となります。
シミュレーショントレーニングの活用
定期的なシミュレーショントレーニングを通じて、チームとしての対応力を向上させることができます。
特に、予期せぬ事態への対応や、複数の処置が同時に必要となる場面での練習が効果的です。
デブリーフィングの重要性
シミュレーション後のデブリーフィングでは、良かった点と改善点を具体的に共有します。
特に、コミュニケーションの質や、チームワークの面での気づきを重視し、次回の実践に活かすことが重要です。
継続的な質の改善
チーム蘇生の質を継続的に向上させるためには、システマティックな評価と改善の取り組みが必要です。
定期的なケースレビューを通じて、チームとしての強みと課題を明確にし、具体的な改善策を立案していきます。
AED使用の最新プロトコル

AED(自動体外式除細動器)の適切な使用は、心肺蘇生において極めて重要な役割を果たします。
最新のガイドラインでは、より早期のAED装着と、質の高い胸骨圧迫の継続を両立させることの重要性が強調されています。
早期除細動の重要性
心室細動や無脈性心室頻拍に対する除細動は、1分遅れるごとに救命率が7-10%低下するとされています。
そのため、できるだけ早期にAEDを装着し、適応がある場合には躊躇なく除細動を行うことが推奨されています。
AED装着のタイミング
心停止を認識したら、直ちにAEDの準備を開始することが重要です。
特に院内では、心停止の認識から3分以内のAED装着を目標とすることが推奨されています。ただし、AEDの準備中も質の高い胸骨圧迫を継続することが必要です。
パッド貼付位置の最適化
AEDパッドの貼付位置は、除細動の効果を左右する重要な要素です。
右上胸部(鎖骨下)と左下側胸部(心尖部)の位置に、皮膚との密着性を確保しながら貼付します。
特に、発汗の多い患者さんの場合は、十分に水分を拭き取ってから貼付することが重要です。
解析から除細動までの対応
AEDが心電図の解析を開始したら、患者さんから離れ、周囲の安全確認を行います。
除細動が必要と判断された場合は、周囲への注意喚起を行った上で、ショックボタンを押します。その後、直ちに胸骨圧迫を再開することが重要です。
効果的な使用手順
AEDを効果的に使用するためには、機器の特性を理解し、適切な手順で操作を行うことが重要です。
特に、操作に伴う胸骨圧迫の中断時間を最小限に抑えることが求められます。
安全確認の徹底
除細動を行う際は、患者さんや周囲の医療者の安全確保が最優先となります。
特に、酸素投与中の場合は、除細動時に酸素が患者さんの胸部に直接当たらないよう注意が必要です。
また、金属製のベッド柵など、導電性の物質との接触にも注意が必要です。
トラブルシューティング
実際の使用場面では、様々なトラブルが発生する可能性があります。
パッドの粘着不良や機器の動作不具合など、想定される問題とその対処方法について、事前に理解しておくことが重要です。
パッド貼付時の注意点
ペースメーカーやICDを植え込んでいる患者さんの場合、これらの機器から8cm以上離してパッドを貼付する必要があります。
また、経皮的薬剤パッチが貼付されている場合は、これを除去してからAEDパッドを貼付します。
機器トラブルへの対応
AEDが正常に機能しない場合や、予期せぬエラーが発生した場合でも、質の高い胸骨圧迫を継続することが最も重要です。
バックアップのAEDを準備しながら、基本的な蘇生処置を継続します。また、定期的な機器点検により、このようなトラブルを未然に防ぐことが推奨されています。
実践的なケーススタディ
実際の救命現場では、様々な状況に応じた臨機応変な対応が求められます。
ここでは、実際の現場で起こりうる具体的なケースを通じて、効果的な対応方法について詳しく解説していきます。
Case A:夜間病棟での心停止対応
夜間の限られたスタッフ体制の中で発生した心停止症例について、初期対応から救命までの流れを見ていきます。
この事例では、特に少人数での効率的なチーム運営がポイントとなりました。
状況設定と初期対応
夜勤帯、内科病棟において70代男性患者が心停止となった事例です。
発見時の勤務者は看護師2名、准看護師1名の計3名でした。21時30分、ナースコール対応時に心停止を発見し、直ちに応援要請と蘇生処置を開始しました。
初動時の人員配置
最初に患者を発見した看護師Aは、直ちに応援要請を行いながら、近くにいた看護師Bに心停止の発生を報告しました。
看護師Bは直ちにAEDを取りに向かい、准看護師Cが胸骨圧迫を開始する体制を素早く確立しました。
蘇生処置の実際
心停止発見から1分以内に胸骨圧迫が開始され、2分後にはAEDが装着されました。
当直医到着までの約7分間、看護師チームで質の高い蘇生処置を継続することができました。
Case B:外来での心停止対応
外来診察の待合室で発生した心停止症例について、初期対応から救急搬送までの流れを解説します。
この事例では、一般来院患者が存在する中での適切な対応が求められました。
初期対応と環境整備
内科外来の待合室で60代女性が突然倒れた事例です。外来看護師が即座に反応確認を行い、心停止を認識しました。
周囲の患者の協力を得ながら、速やかに処置スペースを確保しました。
多職種連携の実際
外来スタッフ、医師、医療クラークなど、様々な職種が連携してチーム蘇生を展開しました。
特に、医療クラークによる的確な記録と、他の患者さんへの対応が、円滑な蘇生活動に貢献しました。
Case C:透析室での心停止対応
透析治療中に発生した心停止について、特殊環境下での対応のポイントを解説します。
この事例では、透析装置が存在する中での蘇生処置の展開が特徴的でした。
透析室特有の対応
透析治療中の50代男性が心室細動となった事例です。
透析スタッフと救急チームの連携により、透析回路の適切な操作と蘇生処置を並行して実施することができました。
専門機器への配慮
透析装置の緊急停止手順を熟知していたスタッフの存在が、迅速な対応を可能にしました。
また、透析回路の取り扱いに精通した臨床工学技士との連携が、安全な処置の実施に不可欠でした。
Case D:手術室からの病棟帰室直後の心停止
手術後の病棟帰室直後に発生した心停止症例について、周術期特有の注意点を含めて解説します。
この事例では、手術部門と病棟の連携が重要なポイントとなりました。
術後管理と急変対応
全身麻酔下での手術を終えた40代女性が、病棟帰室後20分で心停止となった事例です。
手術室スタッフと病棟スタッフの迅速な連携により、効果的な蘇生処置を展開することができました。
術後特有の留意点
手術直後の特殊性を考慮した対応が必要でした。
特に、手術創部への配慮と、麻酔からの覚醒状態の評価を踏まえた処置の選択が重要となりました。
また、手術室と病棟間の密接な情報共有が、適切な対応を可能にしました。
実践的なトレーニング方法

心肺蘇生の技術を確実に習得し、維持するためには、計画的で効果的なトレーニングが不可欠です。
ここでは、現場で実践可能な具体的なトレーニング方法について解説していきます。
トレーニングの計画と実施
効果的なトレーニングを実現するためには、適切な計画立案と実施方法の選択が重要です。
特に、参加者の経験レベルや、現場のニーズに合わせたプログラムの設計が求められます。
基本スキルの習得方法
胸骨圧迫や人工呼吸などの基本的なスキルは、段階的な練習により着実に習得することができます。
まずは個々の技術を丁寧に練習し、その後でそれらを組み合わせた総合的なトレーニングへと進むことが効果的です。
シミュレーターを用いた実践
高機能シミュレーターを活用することで、より実践的なトレーニングが可能となります。
圧迫の深さや速さをリアルタイムでフィードバックする機能を活用し、質の高い胸骨圧迫の習得を目指します。
評価方法とフィードバック
トレーニングの効果を最大限に高めるためには、適切な評価とフィードバックが重要です。
参加者の技術レベルを客観的に評価し、具体的な改善点を示すことで、効果的な学習が可能となります。
パフォーマンス評価の実際
実技評価では、技術の正確性だけでなく、状況判断やコミュニケーション能力なども含めた総合的な評価を行います。
評価項目を明確にし、具体的なフィードバックを提供することで、参加者の着実な成長を支援します。
効果的なデブリーフィング
トレーニング後のデブリーフィングでは、良かった点と改善点を具体的に示すことが重要です。
参加者自身の気づきを促しながら、建設的な議論を展開することで、より深い学びを実現することができます。
継続的な技術維持
心肺蘇生の技術は、定期的な練習なしには維持が困難です。
そのため、短時間でも頻繁にトレーニングを行う機会を設けることが推奨されます。
特に、日常業務の中で短時間のスキルチェックを実施することは、技術の維持に効果的です。
セルフトレーニングの推進
個人で実施可能なトレーニング方法について、具体的な実施方法を示すことも重要です。
簡易的なトレーニング用具を活用し、空き時間を利用した自主練習を促進することで、全体的な技術レベルの向上を図ることができます。
おしえてカンゴさん!よくある質問

現場の看護師の皆さんから寄せられる、心肺蘇生に関する具体的な疑問や質問について、エビデンスに基づいた回答とともに解説していきます。
実践的な観点から、特に重要な点について詳しく説明します。
基本技術に関する質問
胸骨圧迫の交代のタイミングについて
質問:胸骨圧迫の交代は、どのようなタイミングで行うのが最適でしょうか。具体的な目安を教えてください。
回答:胸骨圧迫の質を維持するため、2分を目安に交代することが推奨されています。
ただし、疲労を感じた場合は、2分を待たずに交代を申し出ることが重要です。
交代の際は、できるだけ中断時間を短くするよう、次の担当者が準備を整えてから交代することをお勧めします。
人工呼吸の必要性について
質問:心肺蘇生において、人工呼吸は必ず必要なのでしょうか。省略しても良い場合はありますか。
回答:医療従事者による心肺蘇生では、人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせが標準とされています。
特に、低酸素による心停止や小児の心停止では、人工呼吸が重要な役割を果たします。
ただし、感染防護具の準備が整うまでの間は、胸骨圧迫のみを継続することが推奨されています。
機器使用に関する質問
AEDパッドの貼り方について
質問:AEDパッドの貼り付け位置で、特に注意すべき点を教えてください。
回答:パッドと皮膚の密着が最も重要です。発汗がある場合は、十分に拭き取ってから貼付します。
また、ペースメーカーやICDが植え込まれている場合は、これらの機器から8cm以上離して貼付する必要があります。
経皮薬剤パッチが貼付されている場合は、これを除去してからAEDパッドを貼付します。
チーム蘇生に関する質問
効果的なコミュニケーションについて
質問:チーム蘇生において、最も重要なコミュニケーションのポイントは何でしょうか。
回答:クローズドループコミュニケーションの実践が最も重要です。
具体的には、指示を出す際は実施者を明確に指名し、指示を受けた側は必ず復唱して確認を行います。
また、実施後は必ず完了報告を行うことで、確実な情報共有が可能となります。
特殊状況への対応
着衣がある場合の対応について
質問:患者さんの着衣がある場合、どのように対応すべきでしょうか。
回答:心停止を認識したら、躊躇せずに必要な範囲で着衣を除去します。
特に、AEDパッドを貼付する部位の衣服は、はさみなどを用いて素早く除去することが推奨されています。
ただし、患者さんの尊厳に配慮し、必要最小限の範囲にとどめることも重要です。
まとめ
2025年の最新ガイドラインに基づく心肺蘇生法について、具体的な実施方法からチーム連携のポイントまで詳しく解説してきました。
特に重要なのは、質の高い胸骨圧迫の維持と、効果的なチームワークの実現です。
これらの知識と技術を、ぜひ現場での救命活動に活かしてください。
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