看護学生の皆様にとって、実習というものは大きなイベントです。何をするにも緊張や不安を抱き、どのように準備をしていけばいいのか、実際にどんな風に実践していけばいいのか悩みが多いはずです。
本記事では、実習に向けた準備から実践、評価まで、経験豊富な指導者の知見と先輩たちの体験談を交えながら、看護学生の皆さんに実践的なガイドラインをお届けします。
この記事で分かること
- 実習の事前準備から展開までの具体的な手順と時系列チェックリスト
- 実習記録の効率的な作成方法とよくある間違いの対処法
- 実習評価で高評価を得るための具体的な取り組み方
- 各実習分野(成人・小児・母性・精神)での特徴と注意点
この記事を読んでほしい人
- これから初めての臨地実習を控えている看護学生の方
- 実習記録の書き方に不安を感じている方
- 実習評価を向上させたい方
- より効果的な実習準備の方法を探している方
実習準備の具体的な進め方

看護学校での臨地実習は、学内で学んだ理論を実践の場で活かす重要な機会です。
この章では、実習開始前の2ヶ月間でどのように準備を進めていけばよいのか、具体的な手順とポイントをご説明します。
実習前の準備計画
実習を成功に導くためには、計画的な準備が不可欠です。
ここでは時期別の準備内容と、効果的な学習方法についてご紹介します。
実習2ヶ月前からの準備
実習要項をじっくりと読み込み、実習の全体像を把握することから始めます。
実習目標、行動目標、評価基準などを確認し、自分なりの学習計画を立てていきましょう。
特に重要なのは、受け持ち患者の対象となりやすい疾患について、事前に病態生理や看護計画を学習しておくことです。
実習要項の確認ポイント
実習要項には実習を進める上で重要な情報が記載されています。
特に注目すべき点として、実習目的と目標、実習スケジュール、必要な準備物品、提出物の期限などがあります。これらの情報を見落とさないよう、チェックシートを作成して確認することをお勧めします。
基礎知識の復習と強化
解剖生理学や病態生理学の復習は、実習での学びを深めるための土台となります。
特に実習先の診療科に関連する系統の復習を重点的に行いましょう。教科書や参考書だけでなく、視覚的な学習教材も活用することで、理解を深めることができます。
重点的に復習する項目
解剖生理の基本的な知識に加えて、疾患の病態、検査データの見方、主な治療法について体系的に整理していきます。
また、看護過程の展開方法についても、事例を用いながら復習を進めていくことが重要です。
看護技術の事前練習
実習では様々な看護技術が求められます。
学内演習で学んだ技術を確実なものにするため、空き時間を利用して練習を重ねることが大切です。特にバイタルサイン測定や清潔ケアなど、基本的な技術は繰り返し練習することで自信を持って実施できるようになります。
実習記録の効率的な作成法

実習記録は学びの整理だけでなく、評価の重要な要素となります。
この章では、記録の基本的な書き方から、評価者の目線で見た効果的な記述方法まで、実践的なポイントをお伝えします。
記録の基本構造を理解する
看護記録は患者さんの状態を正確に伝え、適切なケアを提供するための重要なツールです。基本となるSOAP形式での記録方法から、実習記録特有の注意点までを詳しく解説します。
SOAP記録の書き方のポイント
主観的データ(S)には患者さんからの訴えを、客観的データ(O)にはバイタルサインや観察結果を記載します。
アセスメント(A)では得られた情報を分析し、計画(P)では具体的な看護介入を記述します。それぞれの項目で押さえるべきポイントと記述例をお伝えします。
観察データの具体的な記述方法
観察したデータを具体的かつ客観的に記述することは、看護記録の基本です。
たとえば「痛みあり」という曖昧な表現ではなく、「右下腹部に持続する鈍痛を訴える、NRS:6/10」というように、具体的な状況を記載することが重要です。
看護計画立案のプロセス
看護計画は患者さんの状態や必要なケアを明確にするための重要なツールです。問題の明確化から具体的な介入方法の検討まで、論理的な思考過程を記録に反映させる方法をご紹介します。
目標設定の具体的方法
看護計画における目標は具体的で評価可能なものである必要があります。
「状態が改善する」という漠然とした表現ではなく、「3日以内に深呼吸時の痛みがNRS:3以下に軽減する」というように、具体的な指標を含めた目標設定の方法を解説します。
評価・考察の書き方
実施したケアの効果を適切に評価し、その考察を記録することは、看護の質の向上につながります。実施した看護介入の結果を客観的に評価し、次の計画につなげるための記録方法について説明します。
実践的な看護技術の習得
臨地実習では、学内で学んだ看護技術を実際の臨床現場で実践することが求められます。
この章では、基本的な看護技術の確認から応用まで、実習で必要となる技術の習得方法について詳しく解説します。
バイタルサイン測定の実践
バイタルサイン測定は看護師の基本的かつ重要な技術です。正確な測定と適切な判断ができるよう、測定手順と注意点を詳しく説明します。
体温測定の技術
体温測定では測定部位による特徴を理解することが重要です。腋窩温測定の場合、体温計の当て方や測定時間、正確な値を得るためのポイントについて、実践的な手順をお伝えします。
また、電子体温計と水銀体温計それぞれの特徴と使用上の注意点についても解説します。
正確な測定のためのポイント
腋窩の確実な密閉と測定時の患者さんの体位、測定値の確認方法など、正確な測定結果を得るための具体的なテクニックについて説明します。
特に注意が必要な高齢者や新生児の場合の測定方法についても触れていきます。
血圧測定の実際
血圧測定は技術的な正確さに加えて、測定値の解釈も重要となります。カフの選択から装着方法、聴診器の使用テクニック、測定値の読み取り方まで、細かな手順と注意点を解説します。
聴診器使用のコツ
聴診器の正しい装着方法からコロトコフ音の聴取方法まで、躓きやすいポイントについて、実践的なアドバイスを提供します。
また、デジタル血圧計と水銀血圧計それぞれの特徴と使用方法の違いについても説明します。
清潔ケアの基本と応用
清潔ケアは患者さんの快適さを保つだけでなく、感染予防の観点からも重要な看護技術です。基本的な手順から応用的なテクニックまでを詳しく解説します。
全身清拭の実践
全身清拭は患者さんの状態に合わせた実施方法の工夫が必要です。準備から実施、後片付けまでの一連の流れと、患者さんの負担を最小限に抑えるためのテクニックについて説明します。
ケーススタディ:実習での成功例と学びのポイント
実習での成功例や課題克服の事例を通じて、より具体的な実習への取り組み方を学んでいきましょう。
ここでは4つの異なる実習場面での経験と、そこから得られた学びをご紹介します。
Case A:内科病棟での実習経験
内科病棟での実習を成功に導いた新人看護学生Aさんの経験から、効果的な実習準備と実践方法について見ていきます。
実習前の取り組み
Aさんは実習開始2ヶ月前から計画的な準備を開始しました。
特に疾患の病態理解に重点を置き、実習病棟で多く見られる疾患について、病態生理から看護計画まで体系的に学習を進めました。
また、基本的な看護技術の練習も毎日30分程度行い、技術に対する自信を養いました。
効果的だった学習方法
教科書による学習に加えて、動画教材を活用した技術練習や、グループ学習での事例検討など、様々な学習方法を組み合わせることで、より深い理解につながりました。
Case B:手術室実習での学び
手術室という特殊な環境での実習を通じて、多くの学びを得たBさんの事例を紹介します。
環境への適応方法
手術室特有の清潔概念や行動規制について、事前学習と現場での実践を通じて理解を深めました。特に感染管理の観点から、手洗いや装備の着脱について入念な練習を重ねました。
コミュニケーションの工夫
手術室という緊張感のある環境下でのコミュニケーションについて、声の大きさや簡潔な報告方法など、実践的なスキルを身につけました。
Case C:精神科病棟での実践例
精神科での実習においては、特にコミュニケーションスキルの重要性を学んだCさんの経験をご紹介します。
患者さんとの関係構築
傾聴と共感的理解を基本としながら、適切な距離感を保つことの重要性について学びました。また、患者さんの言動の背景にある思いを理解することの大切さも実感しました。
Case D:小児病棟での経験と課題克服
小児看護特有の難しさとその克服方法について、Dさんの経験から学びます。
発達段階に応じた関わり方
年齢や発達段階によって異なるアプローチ方法について、具体的な実践例を通じて理解を深めました。特に遊びを取り入れたコミュニケーション方法が効果的でした。
家族への支援方法
小児看護では患児だけでなく、家族全体を看護の対象として捉えることの重要性を学びました。保護者の不安への対応や、家族を含めた看護計画の立案方法について、実践的な学びを得ることができました。
メンタルヘルス管理と指導者とのコミュニケーション

臨地実習では技術的な面だけでなく、精神的なストレスマネジメントも重要な課題となります。
この章では、実習中のメンタルヘルス管理と、指導者との効果的なコミュニケーション方法について解説します。
実習中のストレス管理
実習期間中は様々なストレスに直面することがあります。
ここでは具体的なストレス対処法と、心身の健康を保つためのセルフケア方法についてお伝えします。
日々のストレスケア方法
実習中は身体的な疲労に加えて、精神的な緊張も大きくなります。毎日の休息時間の確保や、効果的なリフレッシュ方法について、実践的なアドバイスをご紹介します。
睡眠の質を高めるコツ
充実した実習を継続するためには、質の良い睡眠を確保することが不可欠です。就寝前のルーティン作りや、睡眠環境の整え方など、具体的な工夫について説明します。
指導者との効果的なコミュニケーション
実習指導者との良好な関係構築は、実習を成功に導く重要な要素です。適切なコミュニケーション方法と、効果的な質問の仕方についてご説明します。
報告・連絡・相談の基本
実習中の報告・連絡・相談(ホウレンソウ)は、医療現場で求められる基本的なスキルです。
タイミングや内容、伝え方のポイントについて、具体的な例を交えながら解説します。
効果的な質問方法
指導者への質問は学びを深める重要な機会です。質問のタイミングや内容の整理方法、効果的な質問の仕方について、実践的なテクニックをお伝えします。
指導を受ける際の心構え
指導を受ける際は、謙虚な姿勢と積極的な学習意欲が重要です。指導内容をメモに取る習慣や、フィードバックを建設的に受け止める方法について説明します。
フィードバックの活かし方
指導者からのフィードバックは、自己の成長につながる貴重な機会です。指摘された点を今後の実習にどのように活かしていくか、具体的な方法をご紹介します。
各実習分野特有の注意点
看護実習は分野によって特徴や求められる知識・技術が大きく異なります。
この章では、主要な実習分野それぞれの特徴と、実習を成功に導くためのポイントについて詳しく解説します。
成人看護学実習での注意点
成人看護学実習では、様々な疾患や年齢層の患者さんを受け持つことになります。疾患の理解と看護過程の展開が特に重要となる分野です。
急性期看護の特徴
手術前後の患者さんや急性期疾患の患者さんを受け持つことが多い急性期看護では、バイタルサインの変化や症状の観察が特に重要です。また、術後の早期離床支援や疼痛管理など、専門的な知識と技術が求められます。
周手術期看護のポイント
手術前の不安への対応から、術後の観察、リハビリテーションまで、時期に応じた適切な看護介入が必要となります。特にリスクアセスメントと予防的な関わりが重要です。
小児看護学実習での要点
小児看護では、子どもの発達段階に応じたコミュニケーションと看護介入が求められます。また、家族を含めた看護の視点が特に重要となります。
発達段階別の関わり方
年齢や発達段階によって、コミュニケーション方法や看護技術の提供方法を適切に選択する必要があります。遊びを取り入れた関わりや、子どもの理解力に合わせた説明方法についても学んでいきます。
母性看護学実習の特徴
母性看護学実習では、妊娠期から産褥期までの母子の健康管理と支援が中心となります。生理的な経過をたどる対象者への関わり方を学ぶことが特徴です。
周産期看護の基本
妊婦健診から分娩期のケア、産褥期の母子支援まで、それぞれの時期に応じた観察点とケアの方法について学びます。特に母子の愛着形成を促す支援が重要となります。
精神看護学実習のポイント
精神看護学実習では、therapeutic useシュ オブ セルフを基本としたコミュニケーションが特に重要です。患者さんとの信頼関係の構築と適切な距離感の保持が求められます。
治療的関係の構築方法
患者さんとの関係性を築く際には、傾聴と共感的理解を基本としながら、専門職としての適切な距離感を保つことが重要です。また、患者さんの言動の背景にある思いを理解することも求められます。
安全管理の重要性
精神科特有のリスクマネジメントについても学びます。患者さんの安全を確保しながら、その人らしい生活を支援するための具体的な方法について理解を深めます。
看護師さんからのQ&A「おしえてカンゴさん!」

実習に関して、看護学生の皆さんからよく寄せられる質問について、経験豊富な看護師が丁寧にお答えします。実践的なアドバイスと共に、実習を成功に導くためのヒントをご紹介します。
実習記録に関する質問
実習記録は多くの学生さんが不安を感じる部分です。効率的な記録方法と、よくある課題への対処法についてお答えします。
Q1:実習記録はいつ書くのがベストですか?
その日のうちに記録を完成させることをお勧めします。実習中にメモを取り、その日の実習が終わってから2時間以内に記録をまとめ始めることで、より正確な記録を作成することができます。
また、翌日の実習準備の時間も確保できます。
Q2:看護計画の立案で困っています。どうすればよいですか?
看護計画は患者さんの個別性を重視しながら、科学的根拠に基づいて立案することが重要です。教科書的な内容をそのまま書くのではなく、受け持ち患者さんの状態や生活習慣を考慮した具体的な計画を立てましょう。
患者さんとの関わりについて
Q3:患者さんとのコミュニケーションが上手くいきません。
最初は緊張するのが当たり前です。まずは挨拶から始めて、天候や季節の話題など、簡単な会話から徐々に信頼関係を築いていきましょう。
患者さんの表情や反応を観察しながら、コミュニケーションを深めていくことが大切です。
Q4:認知症の患者さんへの対応で気をつけることは?
認知症の患者さんとのコミュニケーションでは、ゆっくりと分かりやすい言葉で話しかけ、急がせることなく患者さんのペースに合わせることが重要です。
また、その日の状態に合わせて柔軟に対応することも必要です。
技術面での不安解消
Q5:採血の見学が不安です。どう準備すればよいですか?
採血の手順と解剖学的な知識を事前に復習しておくことで、見学時の学びが深まります。特に採血部位の血管の走行や、注意が必要な神経の位置などを確認しておきましょう。
心構えとメンタル面について
Q6:失敗が怖くて積極的に動けません。
失敗を恐れるあまり、行動できないのは多くの学生が経験することです。指導者に「今の私にできることは何か」を確認し、できることから少しずつ挑戦していくことをお勧めします。
まとめ
本記事では、看護学校での実習を成功に導くための具体的な準備から実践までを詳しく解説してきました。実習では十分な事前準備と積極的な学習姿勢が重要です。
基礎知識の習得、実習記録の適切な記載、そして患者さんとの信頼関係構築を意識しながら、充実した実習期間を過ごしていただければと思います。
より詳しい看護技術や実践的なアドバイスについては、【はたらく看護師さん】の他の記事もぜひご覧ください。
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