看護師として働く中で、「残業が多すぎる」「プライベートな時間が持てない」と感じたことはありませんか?
本記事では、2024年最新の看護師の残業実態を徹底解説します。残業時間の現状から、その原因、メリット・デメリット、そして残業を減らすための具体的な対策まで、あなたのワークライフバランス改善に直結する情報が満載です。
看護師の皆さんの働き方改革のヒントが見つかるはずです。
看護師の残業時間はどのくらい?

まずは、看護師はどの程度の残業をしているのでしょうか。2017年に日本医療労働組合連合会が看護師を対象に、この問題について調査をしましたが、残業をしていると回答した看護師は全体の90%にも及んでいます。詳しい結果は以下の通りです。
残業時間 | 残業している看護師の割合 |
残業なし | 10.0% |
5時間未満 | 22.2% |
10~20時間未満 | 25.0% |
20~30時間未満 | 18.7% |
30~40時間未満 | 11.7% |
40~50時間未満 | 4.7% |
50~60時間未満 | 2.1% |
60~70時間未満 | 1.0% |
70時間以上 | 0.4% |
このように、多くの看護師が残業していることがお分かりいただけると思います。それでは、勤務形態別での残業時間はどうなっているのか見ていきましょう。
日勤の残業時間
残業時間 | 勤務前残業 | 勤務後残業 |
残業なし | 20.2% | 12.1% |
約15分 | 26.7% | 14.0% |
約30分 | 33.9% | 21.8% |
約45分 | 10.4% | 8.1% |
約60分 | 7.2% | 21.3% |
約90分 | 1.2% | 13.2% |
約120分 | 0.5% | 9.5% |
準夜勤務の残業時間
残業時間 | 勤務前残業 | 勤務後残業 |
残業なし | 21.9% | 25.3% |
約15分 | 17.8% | 18.1% |
約30分 | 33.6% | 27.7% |
約45分 | 11.2% | 7.0% |
約60分 | 12.4% | 14.7% |
約90分 | 2.7% | 5.4% |
約120分 | 0.5% | 1.8% |
夜勤の残業時間
残業時間 | 勤務前残業 | 勤務後残業 |
残業なし | 23.5% | 20.3% |
約15分 | 21.9% | 15.9% |
約30分 | 35.3% | 29.1% |
約45分 | 8.9% | 9.4% |
約60分 | 8.8% | 17.3% |
約90分 | 1.4% | 6.1% |
約120分 | 0.3% | 1.8% |
どの勤務体制でもそうですが、勤務前・勤務後残業のどちらも30分前後の残業が多いことが分かります。このことからも、長い残業ではないにしろ、少なからず残業しているという実態が見て取れます。
残業が多くなる原因とは?

医療現場において患者のケアを担当する看護師は、病院やクリニックの運営に欠かせない存在です。しかし、看護師が直面する問題の一つに、多くの場合における残業があげられます。その背後には様々な原因が存在し、残業が多くなることにより、看護師の負担やストレスに影響を及ぼしています。
まずは、なぜ看護師は残業が多くなるのか、その原因について説明していきます。
人員不足
医療機関における人員不足は慢性的なものになっています。高齢化や患者の重症化により、多くの医療機関で人手不足に陥っており、国も看護職員確保対策を行っていますが、その成果は目に見えて解消されていない状況です。
そのため、看護師の数が必要な患者数に対して十分でないため、必然的に業務の遂行に時間がかかり、残業が発生します。特に急患や重症患者の増加など、予期せぬ事態に対応するための余裕が不足している場合、看護師たちは残業を余儀なくされることがあります。
急患や患者が急変した時の対応
医療現場では予測困難な状況が発生することがあります。急患や患者の状態急変に対応するためには、迅速にかつ適切な処置が求められます。
緊急時のサポート体制がしっかりととられている医療機関であれば残業する必要はありませんが、そのような医療機関はわずかです。これにより、本来の業務時間を超える時間を費やすことが不可避となり、残業が増える原因となります。
研修や勉強会への参加
看護師は専門職として、常に最新の知識や技術を習得する必要があります。しかし、そのためには研修や勉強会への参加が欠かせません。
本来であれば、業務の一つとみなされる研修や勉強会なので、業務時間内に行われるべきですが、実際は難しく勤務時間外に行われることがほとんどです。そのため、研修や勉強会へ参加するには業務外の時間を割かなければならず、結果的に残業時間が増加することがあります。
看護記録などの作成
患者の状態や処置内容を正確に記録することは、医療の質を保つ上で重要です。しかし、記録作業は時間を要するものであり、看護師たちは日々の業務の合間に記録を行う必要があります。
看護記録のチェックや記入、研修レポートの作成、看護計画の作成など数多くの書類業務も行う必要があり、多忙な業務の中での記録作業は、なかなか難しく、結局業務終了後に残業して作成しなければいけないということがよくあります。
手術の準備やサポート
手術室での業務も看護師の重要な役割の一つです。手術の準備やアシストには時間と集中力が必要であり、手術日程によっては予定外の残業が発生することがあります。
手術中の看護業務は、患者の安全を確保するために欠かせないものであり、残業を減らすための改善策が模索されています。
残業が多い職場で働くメリット
残業が多い職場で働くことに後ろ向きな考えを持つ看護師もいますが、残業が多いことにより多くのメリットがあるのも事実です。どんなメリットがあるかご紹介していきます。
給与の向上
残業時間が多い職場では、残業手当がつく分、基本給にプラスされる手当が増え、給与はかなりの高額になります。
経験とスキルの習得
忙しい環境下での勤務は、看護師としてのスキルや経験を短期間で高めるチャンスです。急患対応や多様なケースに対応する能力が向上し、将来のキャリアに活かすことができるでしょう。
チームとの連帯感
同じく忙しい状況に立ち向かうことで、同僚との連帯感や協力意識が高まることがあります。そのような状況は、職場内のコミュニケーションを向上させ一体感を生むことができ、最高のチームワークが出来上がり、やりがいを感じることにもつながるでしょう。
残業が少ない職場で働くメリット
看護師の中には、残業の少ない環境で仕事をしたいと考えている方も多いでしょう。それでは、残業が少ない職場で働くことにより、どんなメリットが生まれるか解説していきます。
生活バランスが保たれる
残業が少ない職場では、プライベートな時間をしっかり確保しやすくなります。家庭や趣味、休養に充てる時間が増え、メンタル面のリフレッシュが図りやすくなります。
健康な身体で仕事ができる
過度の残業は身体への負担を増やし、ストレスや疲労が蓄積されるリスクがあります。残業が少ない職場では、健康を維持しながら看護業務に取り組むことができます。
新しい勉強に時間を割ける
残業が少ない環境では、業務により集中できる時間が増えます。看護の知識やスキルをより深く勉強するための勉強に時間を割くことが可能です。
残業を減らすための対策

近年は、国の政策として働き方改革が推奨され、それは医療機関も例外ではなく改革されつつあります。その一つが看護師の残業問題です。医療機関においては、看護師の残業や過酷な労働環境を改善するために、仕事と生活の調和を意味する「ワークライフバランス」を重視する取組みが行われている施設が増えています。
このようなことから、これまで看護師の残業が多かった病院でも、様々な取り組みが行われていますのでご紹介していきます。
職場環境の改善
職場環境は看護師が業務を遂行する上で重要な要素です。快適な職場環境を整備することで、看護師のモチベーション向上やストレス軽減につながり、残業の削減をすることができます。
例えば、情報共有や連携が円滑に行われることで、業務の効率が向上し、残業の発生が減少します。そのためチームミーティングやコミュニケーションツールを活用する施設が増えています。
また、適切な設備や備品の提供、作業スペースの最適化などを行うことで、業務の効率化とストレス軽減に力を入れている医療機関も多くなっています。
勤務形態の見直し
看護師の勤務形態を見直すことで、適切な人員配置を実現し、残業を減少させることが可能になるということで、適切なシフトパターンやローテーションを導入し、過重な勤務を避ける医療機関が増えています。また、休暇の取得を奨励し、働き方の多様化を推進する現場も増えつつあるようです。
さらに、業務に無駄が発生していないか、協力体制をとって時間を短縮できる業務はないかなどを見直しつつ、正社員とパートタイムの看護師のバランスを調整することで、ピーク時の人員不足を解消し、残業の頻度を減少させる試みも行われています。
業務改善のためのシステムづくり
効率的に業務をこなすため、業務をサポートするシステムを導入する医療機関も増えています。
デジタル化されたカルテや音声入力システム、業務支援ツールを導入することで、情報の共有や記録作業の効率化を図る試みが行われています。また、時間を節約したり、業務の流れを見直し、無駄なステップや手間を削減することで、作業時間の短縮と業務効率の向上を実現している機関もあります。
残業が多い科と少ない科
医療現場において、残業が多い科と少ない科が存在します。急変や突発的な事態への対応が求められる科ほど、残業が多くなる傾向があります。一方で、定期的な業務や予測可能な業務が多い科は、残業が比較的少ない傾向があります。
ここでは、残業が多い科と少ない科をご紹介していきます。
残業が多い科
医療現場において、残業が多い科として以下のような科が、その傾向が強いといえるでしょう。
・産婦人科
・循環器科
・外科
・救急科
循環器科は、患者が急変することが多く、その場合は残業する必要があります。また産婦人科の場合、出産が予定通りにいかず難航する場合は、時間を大きくすぎることがあります。
また、救急科は予測不能な患者数や状況の変化により、予定外の残業が頻繁に発生することが多く、外科手術を中心とする業務であり、手術の予定や状況によって残業が発生することがあります。は、
残業が少ない科
一方で、残業が比較的少ない科も存在します。残業が少ないとされる科は以下のとおりです。
・リハビリテーション科
・内科
・皮膚科
・精神科
リハビリテーション科は、患者の回復を支援するための業務が中心です。患者の状態や進捗に合わせてプランを調整して行われるため、時間通りに勤務が終了します。
また内科は、患者の病状が安定しているケースが多いため、急変への対応が他の科に比べて少ないことがあります。
精神科や皮膚科についても、患者が急変することや救急患者が少ないため、残業をすることはほとんどありません。
まとめ
この記事では、看護師の残業の実態として、看護師の残業時間や残業が多くなる原因、それを解消する対策などを解説してきました。
医療機関になくてはならない看護師ですが、残業が問題となっている現実があります。手不足や急患増加などの要因がその背後にありますが、適切な人員配置や業務の効率化、予測可能なシフト管理、チームワークの強化などの対策を図ることで、看護師の負担を軽減し、質の高い医療提供が続けられる環境を整えることが大切です。
働き方改革の流れを受けて、医療現場では労働環境を改善していく取り組みが行われていますが、看護師が働きやすい環境づくりのため、医療機関全体でこの状況を改善していく必要があるでしょう。