【看護師のクレーム対応術】患者さんからの苦情を味方に変える7つの秘訣と実践例

この記事を書いた人
はたらく看護師さん 編集部
「はたらく看護師さん」編集部
「はたらく看護師さん」は看護師の働き方や専門知識を発信するメディアです。現役看護師や医療現場経験者による編集体制で、臨床現場の実態に基づいた信頼性の高い情報をお届けしています。看護師のキャリア支援と医療知識の普及を通じて、看護師さんの「はたらく」をサポートします。

看護師をしていると、必ず一度は経験するのが患者さんやご家族からのクレームです。中には理不尽なクレームもあり、対処に困ってしまうこともあるのではないでしょうか。あまりにひどいクレームだと、落ち込んだり悩んだり精神的にも影響を及ぼすこともあります。

 

看護師として避けられない患者さんからのクレーム。時に理不尽で精神的に辛い経験になることも。本記事では、クレームを味方に変える7つの秘訣と、よくあるクレーム別の具体的対応例を紹介。さらに、クレーム後のメンタルケアや職場での取り組みまで徹底解説。クレーム対応のプロフェッショナルになって、患者さんとの信頼関係を築き上げましょう。

患者からのクレームへの基本対応

 

無料写真 若いアジア医師女性笑顔

 

患者さんからのクレームにはさまざまなものがあります。まずは、クレームの内容を把握することから始めるようにしましょう。基本的な対応は以下の通りです。

 

話を傾聴し謝罪する

 

クレームを受けた際は、相手の主張を遮らず注意深く聞くことが大切です。相手が感じた不快な経験を理解し、共感を示しましょう。真摯に対応する姿勢を見せることで、相手の気持ちも落ち着いてくるでしょうし、クレームの確信を聞きやすくなります。傾聴には以下のポイントを意識してください。

 

・手の話を遮らずに最後まで聞く

 

・反論や言い訳は避ける

 

・真剣に聞いていることを伝えるために相づちや頷きを入れる

 

・同意できる点に共感を示す

 

同時に、部分的な謝罪を行います。自身の行動が原因で相手に不快な思いをさせた場合、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」と謝罪しましょう。ただし、全面的な謝罪を事実確認前に行ってしまうと、後になって「あの時は謝罪したじゃないか」と更なるトラブルに発展する可能性があります。

 

事実確認と要望確認を行う

 

相手の話を傾聴し終わったら、次は事実確認と要望確認です。クレームの内容や主張が間違っていないか確かめる方法として5W1Hがあります。「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」を追求し、状況を明らかにしていきましょう。

 

また、クレームの対象が看護師の対応に関連しているときは、関係者への聞き取りを行い、事実を正確に把握するようにしてください。

 

解決策を提示する

 

事実確認と要望確認が完了したら、解決策の提案を行います。決断が難しいときや即答が難しい場合は、無理に即座に決定せず、「一度検討し、〇日以内にご連絡差し上げます」と誠実に伝えましょう。より納得してもらえるように、解決策が決まっていなくても「一度、〇日までに連絡する」と相手に協力する姿勢をみせることが大切です。

 

クレームの内容に関わらず、患者さんの感情をなだめ、冷静になるように導くことが最優先です。誠実な態度で接することで、患者さんも理解しやすくなり、問題解決の道が開けるでしょう。患者さんに共感し、信頼を築くために、寄り添う姿勢を意識してください。

 

お詫びと感謝を伝える

 

最後に、感謝の意とお詫びを伝えましょう。クレームを受けると、不快な気持ちになる方もいるかもしれませんが、患者さんの中には、勇気を出して自分の意見を伝えたという方もいます。指摘を受け入れ、感謝の意を表し、今後の改善に役立てることを約束することで、相手も不快な思いを残さず、話をしてよかったと感じてもらえるでしょう。

 

上司やスタッフに報告し共有する

 

今後のクレーム発生を未然に防ぐためにも、上司や同僚スタッフに報告し共有することが不可欠です。クレームが部門内で解決できる場合でも、師長や上司からの説明や謝罪が必要な場合もあります。そのため、できるだけ早く報告し、クレームの背後にある問題や課題を洗い出すための協力を仰ぎましょう。

 

患者さんにも、部署全体で改善に向けた取り組みを実施しているという姿勢が伝わることで、本気で問題解決に取り組んでくれているという信頼感にもつながります。

 

<看護師・ナースのリアルな声>今までクレームを受けたことはありますか?

 

よくあるクレームとは?

 

無料写真 アジアの医師が自宅で頭の痛みを抱えている年配の男性を訪問して診察する医師は退職後の医療病院のサービスをチェックして相談し、covid19を保護するためにマスクを着用します

 

ここからは、看護師が経験するよくあるクレームをご紹介していきます。皆さんも経験したことのあるクレームがあるのではないでしょうか。

 

待ち時間が長い

 

クレームの中でもよくあるのが待ち時間に関するクレームです。診察待ちの時間はもちろん、看護師からの回答が遅かったり、後から来た患者が先に呼ばれたりなど、さまざまな理由でクレームが発生します。

 

待ち時間に関するクレームの場合は、待たせてしまったことについて謝罪の意を丁寧に伝えましょう。そして、病院や部署の特徴を説明し、できる限り迅速な対応を心がけていることを説明してください。待ち時間の発生についての理解を得るため、コミュニケーションを大切にしましょう。

 

態度やマナーが悪い

 

看護師の外見や性格は人それぞれですが、患者さんによっては「怖い」「不快」と感じられることもあります。また、身だしなみや高齢患者への言葉遣い、私語の多さなどがクレームの対象となることも多いようです。

 

身だしなみについては、速やかに対処することが重要です。その場で改善できるものはすぐに対応し、難しい場合は次回の出勤までに改善するようにしてください。声の大きさについても、患者さんが不快に感じた場合は改善するようにしましょう。あやまちを認め、謝罪をし、今後に活かすことを伝えることで、患者さんとの信頼関係を構築することができます。

 

診察時間が短い

 

長く通院されている患者さんや経過観察のため受診する患者さんにとって、異常がない場合、診察時間は数分で済むことがあります。医療従事者にとっては、異常がないことは喜ばしいことですが、患者さんからのクレームに繋がることも。

 

あまりに短い診察時間に対して、「時間を割いて通院しているのに」「長時間待ったのに」といった、ネガティブな感情が生じることがあります。患者さんの立場を理解し、コミュニケーションを強化することで、診察時間が短くても患者さんの不安や不満を軽減できるでしょう。

 

食事がおいしくない

 

食事に関するクレームは頻繁に寄せられるものです。特に制限食や手術後の流動食など、食事に制約がある患者さんは、「味が好みでない」「食べにくい」と不満を口にすることがあります。

 

そのような場合は、まず患者さんが具体的に何に不満を感じているのかを確認しましょう。味は変えにくいかもしれませんが、提供方法やボリューム感など、改善の余地があるかもしれません。必要であれば、医師や栄養士に相談し、指示を仰ぎましょう。食事の変更が難しい場合、医師からの説明を受けることで、患者さんの理解を得やすくなることもあります。

 

医師への不満

 

「医師の診察が遅い」「診察が不十分だ」「説明がわかりづらい」といった医師への不満を看護師に訴える患者さんがいます。このようなときは、患者さんの不満を真剣に受け止め、感情に寄り添うことが重要です。

 

怒らせてしまったことに対して謝罪し、その後、担当医師に状況を報告し、適切な対応を依頼しましょう。医師が対応できない場合でも、そのままにせず、上司や師長などの関係者に相談し、状況を共有して対応を取ることが解決への近道です。

 

手技きの失敗が多い

 

新人看護師や経験の浅い看護師にとって、スキルの向上は練習と時間が必要なものです。しかし、ベテラン看護師であっても失敗はつきものです。特に採血や点滴確保など、上手くいかずに患者さんにクレームをもらうことがあります。

 

大切なのは、失敗が起きた際の適切な対応です。失敗した場合、まず患者さんに対して痛みや苦痛を増やしてしまったことについて謝罪しましょう。また、一度失敗したら他のスタッフに交代し、他のスタッフの手技を見学し、次回の処置に活かすようにすることをおすすめします。

 

<看護師・ナースのリアルな声>理不尽だなと思ったクレームはありますか?

 

クレームを受けやすい看護師の特徴

 

無料写真 うんざりしたアジア人女性医師

 

それでは、どのような看護師がクレームを受けやすいのでしょうか。クレームを受ける看護師に、共通している特徴をご紹介していきます。

 

コミュニケーション不足

 

看護師の業務は多忙です。そのため、患者さんが看護師に「来てほしい」タイミングと、看護師が患者さんのもとに「行ける」タイミングに違いが生じることがあります。しかし、患者さんにはその事情は関係ありません。

 

患者さんに「後回しにされている」と感じさせないよう、訪室時に「次は〇時ごろお伺いしますね」「何かありましたら遠慮なくナースコールでお知らせくださいね」といった一言を添えることで、コミュニケーション不足を解消できます。

 

適切でない距離感

 

初対面の患者さんに対して馴れ馴れしく接することは不適切ですが、逆に冷たい態度を取ると、「寄り添ってもらえない」と不安を引き起こすことがあります。

 

また、認知症の患者さんに対して、敬語を使用せずに子供扱いする看護師もいますが、家族が見たらどう思うでしょうか。大人だけでなく子供が患者さんでも同じです。怪我をした子供でも、相手は患者であり、看護師の役割を理解しましょう。決して、患者さんとの距離感を間違わないよう接していくことが大切です。

 

過剰な心配をしてしまう

 

看護師の本質は患者さんを心配しサポートすることですが、過剰な心配は患者さんの不安を増加させるだけでなく、過保護な態度に見えることがあります。例えば、転倒や誤嚥のリスクがある患者さんに対して、あまりにも過剰な注意や制約をかけると、「そんなことは分かっている」と、自分が下に見られていると思う患者さんもいます。

 

長期入院やリハビリが必要な患者さんは多くの不安を抱えており、治療の先にある日常生活を取り戻せるよう努力しています。そのため、看護師は患者さんができることや手助けが必要なことを注意深く観察し、患者さんを尊重したサポートをする必要があります。

 

待たせてしまう時間が長い

 

忙しい業務に追われている看護師は、1日が終わるのを早く感じる方もいるでしょう。しかし、長期入院の患者さんにとって、1日はとても長いものであり、待たされることにストレスを感じることもあります。

 

待たせてしまうことが予想される場合、あらかじめその旨を説明し、理解を得るよう心がけましょう。患者さんへのコミュニケーションと配慮が、待ち時間を少しでも快適にするのに役立ちます。

 

<看護師・ナースのリアルな声>クレームの対応をした後、患者さんとの関係はどうですか?

 

クレームを受けないためにできること

 

さまざまな場面でクレームは発生するわけですが、ちょっとした努力でクレームを抑えることができます。ここからは、クレームを受けないために普段からできることをご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

 

マニュアルの作成と徹底

 

クレーム防止において欠かせないのがマニュアルです。詳細に網羅することは難しいかもしれませんが、クレームの種類を分類し、発生状況を分析してデータを収集することで、未然にクレームを防止することができるかもしれません。また、定期的にマニュアルを見直し、最新の情報に合致しているか確認することも大切です。

 

接遇・マナーの徹底

 

接遇やマナーは、社会人としての基本です。特に身だしなみについては、個人差があるため、規定を設けたり、お互いにチェックし合うのがいいでしょう。患者さんからの信頼を得て、安心感を提供できるよう、社会人としてのマナーを持った看護師を目指してください。

 

人によって態度を変えない

 

相手によって態度や言動をコロコロ変えることは避けましょう。あの人にはこんな接し方なのに、なぜ自分はこんな接し方をされるんだと、クレームの原因になることがあります。柔軟な対応が求められる職種ではありますが、一貫性のある態度で接することで、クレームの発生を減少させるようにしましょう。

 

発生したクレームの記録

 

どれだけ努力しても、クレームを完全に避けることは難しいことです。クレームが起きた際には、同じことを繰り返さないため、クレーム内容をしっかりと記録し、スタッフ全体に共有しましょう。

 

<看護師・ナースのリアルな声>クレームを受けないために職場で取り組みは行われていますか?

 

落ち込んだ時の対処法

 

無料写真 自宅で悲しいブルネットのティーンエイジャー

 

看護師として、理不尽なクレームに直面して落ち込むことは避けられないことです。しかし、次に進むためにも、乗り越えていかなければいけません。そこで、クレームを受けて落ち込んだときに、どう対処すればよいかを解説していきます。

 

一人で抱え込まない

 

重要なのは、一人で悩みを抱え込まないことです。どんなに経験が豊富であっても、一人で解決するのが難しいこともあります。同僚や先輩、上司などに話を聞いてもらうことで、解決策を見つけやすくなりますよ。

 

どうしてもつらい時は対象患者を変えてもらう

 

患者さんからのクレームや理不尽な言動が続くと、受け持つことが苦痛になることもあるでしょう。そのようなときは無理をせず、先輩や師長に、その患者さんの受け持ちを外してもらえるようお願いしてみましょう。

 

転職を検討する

 

患者さんとのコミュニケーションに大きなストレスをもたらし、看護師の仕事に支障をもたらすのであれば転職するのも一つの手段です。ストレスに対処しながら楽しく働くために、新しい職場でのスタートを切ることは、前向きなものといえるでしょう。

 

新たな環境で自身のスキルを活かし、充実感を感じながら看護師としてのキャリアを築いていくことも視野に入れてみてはいかがでしょう。

 

<看護師・ナースのリアルな声>今までクレームを受けて落ち込んでしまったことはありますか?

 

様々なケースに対応できるようにしよう

 

患者さんからのクレームにはどのような物があるかお判りいただけたかと思いますが、中には例外もあります。そんな時、どのように対処すればよいかを解説していきます。

 

患者が話せる状態ではない

 

患者さんが感情的になって話ができない状態の場合、まずは患者さん自身と周囲の安全を確保することが最優先です。迅速に上司や他のスタッフに支援を依頼し、複数の人間で適切に対応できるようにしましょう。

 

家族に対するクレームの対処

 

患者さんのご家族からのクレームに対応する際は、基本的には患者さんへのクレーム対応と同じアプローチを取ります。ご家族は患者さんの療養生活を支える大切な存在であり、家族自身も精神的なケアを必要としていることがよくあります。

 

まず、冷静な態度を保ち、感情的にならないように努力しましょう。クレームに対して即座に正論で反論したり、過度な謝罪を行ったりするのは避けるべきです。相手の立場や感情を理解し、共感の意を示すことが大切です。

 

ご家族とのコミュニケーションにおいては、傾聴を怠らず、相手の立場や思いに耳を傾けるよう心がけましょう。誠実さと尊重の姿勢を持ち、共通の目標である患者さんの健康と幸福に向けて協力できるよう努力してください。

 

まとめ

 

この記事では、患者さんやご家族からのクレームに対する正しい対応や落ち込んだ時の対処法について解説してきました。

 

看護師をしていると、クレームを受けたことがあるという方も多いと思います。クレームとは、受ける側だけでなく、発する側にとってもストレスになることがあるため、対処法を間違えると大きな問題になりかねません。

 

そのため、受けたクレームに対して「傾聴」「謝罪」「事実確認・要望確認」「解決策の提案」「感謝」を徹底することが大切です。

 

特に、患者さんや医療機関を利用する人にとっては、健康状態からくる不安やストレスを抱えがちです。クレーム対応の基本と予防対策マニュアルを共有し、クレームに冷静に対処し、信頼関係を築くよう心がけましょう。

コメントを残す

*