
近年、公衆衛生の重要性が高まる中、行政保健師という職種に注目が集まっています。
本記事では、行政保健師の具体的な年収水準から昇給システム、各種手当まで、最新データに基づいて詳しく解説します。
転職を考えている看護師の方や、保健師を目指す学生の方に向けて、実践的な情報をお届けします。
この記事でわかること
- 自治体規模と職位による具体的な年収水準と昇給の仕組み
- 地域や職場による収入格差と、それを補う手当制度の内容
- 経験年数やキャリアパスに応じた収入アップのポイント
- 充実した福利厚生制度と各種手当の詳細な内容
- 実務経験者の声から見る、実際の収入事例とキャリア形成
この記事を読んでほしい人
- 行政保健師への転職を検討している看護師さん
- 保健師として就職を控えている学生さん
- 現職の行政保健師で昇給システムを詳しく知りたい方
- 他職種との待遇比較を検討している医療従事者の方
- 行政保健師のキャリアパスに興味がある方
行政保健師の初任給自治体規模別の比較

行政保健師の初任給は、自治体の規模や地域によって大きく異なります。
ここでは、各自治体規模別の具体的な初任給の水準と、その決定要因について詳しく解説していきます。
採用時の給与交渉や転職時の参考になる情報をお伝えします。
大規模自治体での初任給水準
政令指定都市の給与体系
政令指定都市における行政保健師の初任給は、月給25万円から26万円の範囲で設定されています。
諸手当を含めた年収では380万円から400万円程度となり、民間企業の看護師と比較しても競争力のある水準となっています。
また、職務経験や保有資格によって、初任給基準の調整が行われる場合もあります。
特別区(東京23区)の給与体系
特別区では、地域手当が最大20パーセントと高く設定されており、初任給の月額は26万円を超えるケースも少なくありません。
年収ベースでは400万円前後となり、大都市での生活費を考慮した給与水準が確保されています。
さらに、住宅手当や通勤手当も充実しており、実質的な収入を押し上げる要因となっています。
中規模自治体での初任給水準
中核市の給与体系
中核市における初任給は、月給23万円から25万円の範囲で設定されているのが一般的です。
年収ベースでは350万円から380万円程度となり、地域の生活水準に見合った給与体系が整備されています。
特に、地域の特性に応じた独自の手当制度を設けている自治体も多く見られます。
その他の市における給与体系
中核市以外の一般市では、初任給は月給23万円から24万円程度に設定されていることが多いです。
ただし、人材確保の観点から、独自の給与体系や手当制度を導入している自治体も増えてきています。
特に、都市部近郊の自治体では、近隣の大規模自治体との給与格差を埋めるための施策を講じているケースが見られます。
小規模自治体での初任給水準
町村部の基本給与
町村部における初任給は、月給23万円前後に設定されているケースが多く見られます。
年収ベースでは340万円から360万円程度となりますが、地域の生活費が比較的低いことを考慮すると、実質的な収入としては十分な水準が確保されています。
地域特性による調整制度
小規模自治体では、地域の特性や人材確保の必要性に応じて、様々な給与調整制度を設けています。
特に、過疎地域や離島では、特地勤務手当や定住促進手当などの独自の手当制度を設けているケースが多く、実質的な収入は表面的な初任給よりも高くなることがあります。
初任給決定のポイント
職務経験の評価方法
行政保健師として採用される際、看護師としての実務経験や、他の医療機関での保健師経験は、初任給の決定に大きく影響します。
一般的に、1年につき1号俸から2号俸程度の加算が行われ、経験年数に応じた給与水準が設定されます。
保有資格による優遇制度
保健師資格に加えて、専門看護師や認定看護師などの資格を保有している場合、初任給の上乗せや特殊資格手当の支給対象となることがあります。
特に、感染管理や地域看護の専門資格は、優遇される傾向にあります。
初任給の地域間格差
都市部と地方の比較
都市部と地方の初任給格差は、主に地域手当の違いによって生じています。
ただし、地方では住宅費や生活費が低く抑えられることが多く、実質的な生活水準では大きな差が生じにくい構造となっています。
生活費を考慮した実質収入
初任給の額面だけでなく、地域の物価水準や生活費を考慮した実質的な収入を比較することが重要です。
特に、住宅費や通勤費用の違いは、実質的な可処分所得に大きな影響を与える要因となっています。
経験年数による昇給システム

行政保健師の給与は、経験年数に応じて段階的に上昇していく仕組みが整備されています。
ここでは、キャリアステージごとの昇給システムと、昇格による収入アップのポイントについて詳しく解説していきます。
初任期(1-5年目)の昇給システム
基本給の上昇パターン
採用後1年目から5年目までは、年1回の定期昇給により基本給が上昇していきます。
一般的に月額4,000円から8,000円程度の昇給が見込まれ、5年目までに初任給から15パーセント程度の給与上昇が期待できます。
また、人事評価の結果により、昇給幅が変動する制度を導入している自治体も増えてきています。
職務手当の追加
経験を積むことで、業務の責任範囲が広がり、それに応じた職務手当が追加されていきます。
特に、新人指導や専門分野での業務を担当することで、月額1万円から2万円程度の手当が付与されるケースが多く見られます。
中堅期(6-10年目)の昇給システム
主任保健師への昇進
6年目以降は、主任保健師への昇進機会が増えてきます。
主任保健師に昇進すると、役職手当として月額2万円から3万円程度が追加支給されます。
また、業務の専門性が評価され、特殊業務手当などが加算されることも多くなります。
専門性の評価制度
中堅期には、特定の分野での専門性が重視されます。
感染症対策や母子保健、精神保健などの分野で専門的な活動を行うことで、専門職手当が追加される制度が整備されています。
一般的に月額1万5千円から2万5千円程度の手当が支給されます。
ベテラン期(11年目以降)の昇給システム
管理職への昇進
11年目以降は、係長や課長補佐などの管理職ポストへの昇進機会が増えてきます。
管理職に昇進した場合、職位に応じて月額5万円から8万円程度の管理職手当が支給されます。
ただし、時間外勤務手当は原則として支給されなくなります。
上級職への昇格
経験を重ねることで、給与表の上級職への昇格機会も増えていきます。
上級職に昇格すると、基本給の基準額が引き上げられ、月額で2万円から4万円程度の給与増が見込めます。
特に、専門的な資格や実績を有する場合は、昇格のスピードが早まる傾向にあります。
キャリアアップによる収入増加
専門資格取得の効果
認定保健師や専門看護師などの資格を取得することで、特殊資格手当が追加されます。
資格の種類や自治体によって金額は異なりますが、月額1万円から3万円程度の手当が支給されるのが一般的です。
また、資格取得によって昇進・昇格のチャンスが広がることも期待できます。
研究実績の評価
学会発表や研究活動の実績は、人事評価において高く評価される傾向にあります。
特に、政策立案や事業企画に関わる研究実績は、管理職への昇進において重要な要素となっています。
研究実績による直接的な手当は少ないものの、昇進や昇格を通じた収入増加につながるケースが多く見られます。
活動分野別の給与比較

行政保健師の給与は、担当する活動分野によっても差異が生じます。
各分野での業務内容や必要とされる専門性、また、それに応じた特殊手当や処遇について、詳しく解説していきます。
母子保健分野の給与体系
基本給と専門手当
母子保健分野では、乳幼児健診や育児相談、虐待予防など、専門性の高い業務が求められます。
そのため、母子保健業務手当として月額1万5千円から2万円程度が追加支給される自治体が多く見られます。
また、休日の乳幼児健診業務については、休日勤務手当に加えて特殊業務手当が支給されるケースもあります。
キャリアアップの機会
母子保健分野では、児童虐待予防専門員や子育て支援専門員などの専門職としてのキャリアアップが可能です。
これらの専門職に就くと、月額2万円から3万円程度の専門職手当が追加されます。
さらに、関連する研修や資格取得による給与面での優遇措置も設けられています。
成人保健分野の給与体系
特定健診・保健指導手当
成人保健分野では、特定健診や保健指導が主要な業務となります。
特定保健指導実施者としての認定を受けることで、月額1万円から1万5千円程度の資格手当が支給されます。
また、休日や夜間の健診業務については、追加の手当が設定されています。
生活習慣病対策業務
生活習慣病予防や重症化予防の取り組みに対しては、業務の専門性が評価され、月額1万円から2万円程度の専門業務手当が支給されます。
特に、データ分析や事業評価に関する能力が求められ、これらのスキルを有する職員には追加の手当が設定されているケースもあります。
高齢者保健分野の給与体系
地域包括ケア関連手当
高齢者保健分野では、地域包括支援センターでの業務や介護予防事業の実施が中心となります。
地域包括支援センター勤務者には、月額2万円から3万円程度の業務手当が支給されます。
また、認知症地域支援推進員などの専門職としての役割を担う場合は、追加の手当が付与されます。
在宅ケア支援業務
在宅療養者への支援や家族介護者支援など、地域に出向いての活動が多い業務には、訪問活動手当として日額1,000円から2,000円程度が支給されます。
緊急時の対応や休日対応が必要な場合は、別途手当が追加されます。
精神保健分野の給与体系
専門性の評価と手当
精神保健分野では、精神保健福祉士の資格を有する場合、月額2万円から3万円程度の資格手当が支給されます。
また、緊急対応や困難ケースへの対応が必要となるため、特殊業務手当として月額1万5千円から2万5千円程度が追加されます。
危機介入業務の評価
自殺予防や精神科救急への対応など、危機介入が必要な業務については、特別な手当体系が設けられています。
24時間体制での対応が必要な場合は、宿日直手当に加えて特殊勤務手当が支給されます。
感染症対策分野の給与体系
感染症対応手当
感染症対策分野では、新興感染症への対応や予防接種事業の実施が主な業務となります。
感染症対応手当として、月額2万円から4万円程度が支給される自治体が増えています。
特に、新型コロナウイルス感染症対応では、特別な手当体系が設けられているケースが多く見られます。
緊急時対応の評価
感染症の集団発生時など、緊急対応が必要な場合は、特殊勤務手当として日額3,000円から5,000円程度が追加支給されます。
また、夜間や休日の対応が必要な場合は、それぞれの勤務形態に応じた手当が上乗せされます。
地域特性による収入の違い

行政保健師の収入は、勤務する地域の特性によって大きく異なります。
ここでは、都市部と地方部の収入格差、各地域特有の手当制度、さらに生活費を考慮した実質的な収入について詳しく解説していきます。
都市部の収入特性
東京都特別区の給与水準
東京都特別区では、地域手当が最大20パーセントと高く設定されており、基本給に加えて大きな収入増となっています。
さらに、住宅手当も最大限に設定されていることが多く、月額7万円から8万円程度の収入増加要因となっています。
また、通勤手当も実費支給される場合が多く、実質的な収入を押し上げています。
政令指定都市の給与体系
政令指定都市では、地域手当が15パーセント程度設定されており、都市部での生活水準を考慮した給与体系となっています。
特に、若手職員の住宅支援制度が充実しており、住宅手当や単身赴任手当などの支給額が高く設定されています。
地方都市の収入特性
中核市の給与水準
中核市では、地域手当が6パーセントから10パーセント程度に設定されています。
基本給は都市部より若干低めとなりますが、住宅費や生活費が比較的低く抑えられているため、実質的な生活水準は都市部と大きく変わらない場合が多くなっています。
一般市の給与体系
一般市では、地域手当が3パーセントから6パーセント程度となっています。
ただし、人材確保の観点から、独自の給与体系や手当制度を導入している自治体も増えてきています。
特に、若手職員の定着を図るための住宅支援制度や、子育て支援手当などが充実している傾向にあります。
過疎地域の収入特性
山間部の給与体系
山間部の自治体では、過疎地域手当として月額2万円から3万円程度が追加支給されるケースが多く見られます。
また、へき地勤務手当も設定されており、地域の特性に応じて最大で月額4万円程度の手当が支給されます。
離島地域の給与体系
離島地域では、離島手当として月額3万円から5万円程度が支給されます。
さらに、住居手当や通勤手当も優遇されており、実質的な収入は都市部と遜色ない水準となっているケースも多く見られます。
地域による生活費の違い
住宅費の地域差
都市部では住宅費が高額となるため、住宅手当の上限額も高く設定されています。
一方、地方部では住宅費が比較的低く抑えられているため、同じ給与水準でも可処分所得は都市部より多くなる傾向にあります。
通勤費用の違い
都市部では通勤距離が長くなりがちで、通勤手当の支給額も高額となります。
地方部では自家用車通勤が一般的で、ガソリン代等の実費支給される場合が多く、実質的な収入に影響を与えています。
地域手当の詳細制度
級地区分による違い
地域手当は、級地区分に応じて支給率が決定されます。
1級地では給料月額の20パーセント、2級地では16パーセント、以降段階的に低くなっていきます。
この級地区分は、物価水準や民間給与水準を考慮して設定されています。
特例措置の内容
一部の自治体では、地域の実情に応じて特例措置を設けています。
特に、人材確保が困難な地域では、独自の給与制度や手当体系を導入することで、実質的な収入水準を確保しています。
キャリアパスと収入の関係

行政保健師のキャリアパスは、専門性の向上と行政職としての昇進の両面があります。
ここでは、それぞれのキャリアパスにおける収入の変化と、キャリアアップに伴う待遇について詳しく解説していきます。
行政職としてのキャリアパス
係長級への昇進
一般的に経験7年から10年程度で係長級への昇進機会が訪れます。
係長級に昇進すると、役職手当として月額3万円から4万円が追加支給されます。
また、業務の責任範囲が広がることで、様々な専門手当も付与される可能性が高くなります。
課長補佐級への昇進
経験12年から15年程度で課長補佐級への昇進が検討されます。
課長補佐級では、月額5万円から6万円程度の役職手当が支給され、基本給も上級職への格付けが行われることで、大幅な収入増となります。
専門職としてのキャリア形成
専門分野でのスキルアップ
母子保健や感染症対策などの専門分野でのスキルアップにより、専門職手当が加算されます。
特に、認定保健師の資格を取得すると、月額2万円から3万円程度の資格手当が追加されます。
また、専門分野での研究活動や学会発表なども、昇給や昇格の評価対象となっています。
統括保健師への道
経験15年以上のベテラン保健師は、統括保健師としての役割を担う機会があります。
統括保健師に就任すると、管理職手当に加えて統括手当が支給され、月額合計で8万円から10万円程度の収入増となります。
学位取得による処遇改善
修士号取得のメリット
修士号を取得することで、専門的な知識や研究能力が評価され、給与格付けの上位への変更や、特別な手当の支給対象となることがあります。
一般的に、月額1万5千円から2万5千円程度の学位手当が支給されます。
博士号取得の効果
博士号取得者は、より高度な専門性が評価され、上級研究員などの専門職ポストへの任用機会が増えます。
また、月額3万円から4万円程度の学位手当が支給され、基本給の格付けも上位に変更されるケースが多くなっています。
研究職への転向
研究機関での勤務
保健所や衛生研究所などの研究機関に異動すると、研究職としての給与体系が適用されます。
研究職では、論文発表や研究実績に応じた評価制度があり、それに基づく手当や昇給が実施されます。
教育機関への転身
看護系大学や専門学校などの教育機関へ転身するケースもあります。
教育職の給与体系は一般行政職より高めに設定されていることが多く、教育研究手当なども追加されることで、収入増となるケースが多く見られます。
教育担当としての専門性
新人教育担当者の役割
新人保健師の教育担当者となることで、指導者手当が支給されます。
一般的に月額1万5千円から2万円程度の手当が付与され、さらに指導実績に応じた評価加算もあります。
実習指導者としての活動
看護学生や保健師学生の実習指導者として認定を受けると、実習指導手当が支給されます。
実習期間中は日額2,000円から3,000円程度の手当が追加され、年間を通じて実習指導に関わる場合は、月額での手当支給となることもあります。
充実の手当体系

行政保健師の収入を支える重要な要素として、様々な手当制度が整備されています。
ここでは、基本的な手当から職務に関連する特殊手当まで、詳しく解説していきます。
また、手当の受給条件や申請方法についても具体的に説明します。
基本手当の詳細
地域手当の仕組み
地域手当は勤務地の級地区分に応じて支給され、給料月額の3パーセントから20パーセントまでの範囲で設定されています。
東京都特別区では最高の20パーセント、政令指定都市では15パーセント前後、その他の地域では段階的に低くなっていきます。
この手当は毎月の給与に自動的に反映され、異動に伴う支給率の変更も人事担当部署で自動的に処理されます。
扶養手当の制度
扶養手当は、扶養家族の人数と続柄に応じて支給額が決定されます。
配偶者は月額6,500円、子どもは一人につき月額10,000円が基本となります。
また、16歳から22歳までの子どもについては、一人につき月額5,000円の加算があります。
扶養手当を受給するためには、扶養親族届の提出が必要となります。
職務関連手当の体系
時間外勤務手当の計算方法
時間外勤務手当は、平日の時間外勤務が基本給の125パーセント、休日勤務が135パーセント、深夜勤務が150パーセントで計算されます。
緊急時の対応や感染症発生時の対策などで、予定外の勤務が発生した場合でも、確実に手当が支給される仕組みが整備されています。
特殊勤務手当の種類
感染症対応や精神保健業務など、特殊な環境での業務に対しては、日額1,000円から3,000円程度の特殊勤務手当が支給されます。
特に、新型コロナウイルス感染症対応では、特別な手当体系が設けられ、通常の特殊勤務手当に加えて追加の手当が支給されるケースも多くなっています。
管理職手当の詳細
職位別の支給額
管理職手当は職位に応じて段階的に設定されており、係長級で月額2万円から3万円、課長級で月額5万円から8万円が一般的です。
ただし、管理職手当が支給される場合は、原則として時間外勤務手当は支給されなくなります。
管理職の種類と手当
統括保健師や保健センター所長などの専門管理職には、通常の管理職手当に加えて、専門性を評価した追加手当が設定されているケースがあります。
これらの手当は月額1万円から3万円程度で、職務の責任度合いに応じて決定されます。
住居手当と通勤手当
住居手当の支給基準
住居手当は、賃貸住宅の場合、家賃額に応じて最大月額28,000円まで支給されます。
また、自己所有の住宅についても、一定の条件を満たせば手当の支給対象となります。
住居手当を受給するためには、賃貸契約書のコピーなどの証明書類の提出が必要です。
通勤手当の計算方法
通勤手当は、公共交通機関利用の場合は実費支給、自家用車通勤の場合は距離に応じた定額支給となります。
電車やバスを利用する場合は、6ヶ月定期券の金額が基準となり、最も経済的な経路で計算されます。
自家用車通勤の場合は、片道2キロメートル以上の場合に支給対象となり、距離に応じて月額2,000円から31,600円の範囲で支給されます。
福利厚生制度の詳細解説

行政保健師として働く上で、給与以外の重要な待遇として福利厚生制度があります。
ここでは、休暇制度から年金制度、健康保険制度まで、充実した福利厚生の内容について詳しく解説していきます。
休暇制度の種類と取得実態
年次有給休暇の制度
年次有給休暇は、1年度につき20日が付与され、残日数は20日を限度として翌年度に繰り越すことができます。
新規採用の場合も、採用月に応じて15日から20日が付与されます。
取得率は一般的に60パーセントから80パーセント程度となっており、計画的な取得を推進する取り組みが行われています。
特別休暇の内容
結婚休暇は5日間、忌引休暇は続柄に応じて1日から10日間、子の看護休暇は子一人につき年間5日(最大10日)が付与されます。
また、夏季休暇として3日から5日、ボランティア休暇として年間5日が設定されており、これらは有給での取得が可能です。
年金制度の仕組み
共済年金の特徴
地方公務員共済組合の年金制度に加入し、老後の生活保障が確保されています。
掛金は給料と諸手当の総額の約11パーセントで、そのうち半分は自治体が負担します。
年金額は最終給与や勤続年数によって決定され、一般的な厚生年金と比較して給付水準が高めに設定されています。
退職金制度の内容
退職手当は、給料月額に支給率を乗じて計算されます。
支給率は勤続年数によって増加し、定年退職の場合、25年勤続で約50か月分、35年勤続で約60か月分となります。
また、役職加算や特別昇給による増額も考慮されます。
健康保険制度の特徴
医療保険の給付内容
共済組合の医療保険では、医療費の自己負担が3割で、附加給付により実質的な負担がさらに軽減されます。
また、高額医療費の場合は、事前に限度額認定証の申請をすることで、窓口での支払いが軽減されます。
健康診断・検診制度
定期健康診断は年1回必須で、35歳以上は人間ドックも受診可能です。
人間ドックの費用は、共済組合から補助があり、自己負担は2割から3割程度となります。
また、婦人科検診やストレスチェックなども定期的に実施されています。
共済組合の各種サービス
保養施設の利用制度
共済組合が運営する保養施設を、会員価格で利用することができます。
全国各地の施設が利用可能で、家族との利用も割引価格が適用されます。
予約は年間を通じて可能で、繁忙期は抽選制となっています。
各種給付金の制度
結婚祝金、出産祝金、入学祝金などの祝金制度があり、それぞれ1万円から5万円程度が支給されます。
また、災害見舞金や死亡弔慰金なども設定されており、不測の事態への備えも整っています。
福利厚生施設の利用
職員住宅の制度
単身用や世帯用の職員住宅が用意されており、民間の賃貸住宅と比べて低額な家賃で利用できます。
特に、新規採用者や遠隔地からの異動者は優先的に入居できる制度が設けられています。
職員食堂・売店の利用
庁舎内や関連施設には職員食堂が設置されており、補助により低価格で利用できます。
また、売店では日用品や文具類を割引価格で購入することが可能です。
食堂は栄養バランスの取れた食事を提供し、健康管理面でもサポートしています。
職場環境と収入の関係

行政保健師の職場環境は、勤務する施設や部署によって大きく異なり、それぞれの特性に応じた手当や待遇が設定されています。
ここでは、主な勤務先ごとの職場環境と収入の関係について詳しく解説していきます。
都道府県庁での勤務
本庁勤務の特徴
都道府県庁本庁での勤務は、政策立案や広域的な保健事業の企画調整が中心となります。
本庁勤務者には、政策業務手当として月額2万円から3万円が支給されます。
また、超過勤務も比較的多いため、時間外勤務手当の支給額も大きくなる傾向にあります。
専門部署配属の待遇
感染症対策課や母子保健課などの専門部署に配属された場合、専門分野に応じた業務手当が追加されます。
特に、課長補佐級以上の職位では、管理職手当に加えて専門職手当が支給され、月額合計で10万円程度の手当が付与されます。
保健所での勤務
一般保健所の勤務体制
保健所勤務では、地域保健の第一線で活動するため、フィールドワークが多くなります。
そのため、活動手当として月額1万5千円から2万円が支給されます。
また、感染症発生時の緊急対応や夜間休日の待機業務には、別途特殊勤務手当が設定されています。
専門保健所の特徴
精神保健福祉センターや難病相談支援センターなどの専門保健所では、より高度な専門性が求められます。
そのため、専門業務手当として月額2万円から3万円が追加支給され、さらに資格手当などが付与されるケースも多くなっています。
市区町村での勤務
保健センターでの業務
市区町村の保健センターでは、地域に密着した保健サービスの提供が中心となります。
保健指導業務手当として月額1万5千円程度が支給され、特定保健指導や母子保健事業の実施回数に応じて追加手当が設定されているケースもあります。
地域包括支援センターの待遇
地域包括支援センターでの勤務では、高齢者支援の専門性が評価され、月額2万円から3万円の専門職手当が支給されます。
また、地域ケア会議の開催や介護予防事業の実施に伴う業務手当も別途設定されています。
出張所での勤務
へき地出張所の特徴
山間部や離島などのへき地出張所では、地域手当に加えてへき地手当が支給されます。
へき地手当は、地域の級地に応じて月額2万円から4万円が設定され、さらに住居手当や通勤手当も優遇されています。
支所勤務の待遇
市区町村の支所勤務では、少人数での業務運営となるため、業務の範囲が広くなります。
そのため、業務総合手当として月額1万5千円程度が支給され、地域の特性に応じた追加手当も設定されているケースがあります。
職場環境による手当の違い
施設整備と手当
新築や改修直後の施設では、最新の設備が整っている一方、古い施設では設備面での課題があります。
そのため、一部の自治体では、施設の状況に応じた環境改善手当を設定し、月額5千円から1万円程度を支給しています。
勤務形態による調整
夜間休日の対応が必要な職場では、宿日直手当や待機手当が充実しています。
特に、保健所や精神保健福祉センターなどでは、24時間体制での対応が求められるため、勤務形態に応じた手当が詳細に設定されています。
実務経験者の声
行政保健師として働く方々の実際の声を通じて、年収やキャリアパスについての具体的な事例を紹介します。
様々な年代や経験を持つ保健師の方々から、収入面での満足度や将来的な展望についてお話を伺いました。
20代前半での就職事例
Aさんの場合(23歳、政令市勤務1年目)
新卒で政令指定都市に就職したAさんは、初任給として月給25万円からスタートしました。
各種手当を含めると年収は380万円程度となり、同期の看護師と比較しても遜色ない収入を得ています。
特に住宅手当と地域手当が充実しており、一人暮らしでも余裕を持った生活ができていると話しています。
Bさんの場合(24歳、中核市勤務2年目)
看護師として1年の実務経験を経てから保健師として就職したBさんは、その経験が考慮され、初任給が若干高めに設定されました。
業務に慣れてきた2年目からは時間外勤務手当も含めて年収400万円程度となり、将来的な昇給にも期待を持っています。
30代での転職事例
Cさんの場合(32歳、都道府県庁勤務3年目)
病院での看護師経験を活かして都道府県庁に転職したCさんは、経験年数が考慮され、年収450万円からのスタートとなりました。
感染症対策部門での専門性が評価され、特殊業務手当も加算されています。
また、福利厚生の充実度にも満足していると話しています。
Dさんの場合(35歳、特別区勤務5年目)
診療所での保健師経験を経て特別区に転職したDさんは、専門性と経験を活かして母子保健分野でのキャリアを築いています。
現在は主任保健師として年収500万円程度となり、ワークライフバランスも取りやすい環境だと評価しています。
40代でのキャリアチェンジ事例
Eさんの場合(45歳、中核市管理職)
20年以上の経験を経て管理職に昇進したEさんは、現在年収600万円を超える収入を得ています。
特に管理職手当と地域手当が収入アップに貢献しており、部下の育成やマネジメント業務にやりがいを感じていると話します。
Fさんの場合(42歳、政令市統括保健師)
専門性を極めるキャリアを選択したFさんは、統括保健師として高度な専門業務を担当しています。
年収550万円程度となり、今後は後進の育成にも力を入れていきたいと考えています。
50代のベテラン事例
Gさんの場合(52歳、保健所長)
医療機関での経験も含めて30年以上のキャリアを持つGさんは、現在保健所長として年収700万円程度の収入を得ています。
行政経験を活かした政策立案や、若手保健師の育成に携わることにやりがいを感じていると話します。
Hさんの場合(55歳、教育機関勤務)
豊富な実務経験を活かして教育機関に転身したHさんは、次世代の保健師育成に携わっています。
教育職としての給与体系が適用され、年収650万円程度となっています。
実践的な教育を提供できることに満足感を得ていると話しています。
事例で見る収入モデル

行政保健師の収入は、勤務する自治体の規模や職位、経験年数によって大きく異なります。
ここでは、具体的な事例を通じて、典型的な収入モデルと、それに影響を与える要因について詳しく解説していきます。
政令指定都市でのキャリア形成
ケースA:経験7年目の中堅保健師
基本給28万円に地域手当や住居手当などを含めると、月収は36万円となっています。
年間の時間外勤務手当や期末勤勉手当を加算すると、年収は約450万円に達します。
主に母子保健分野を担当しており、業務の専門性が評価され、特殊業務手当も支給されています。
研修や学会参加の機会も多く、キャリアアップの環境が整っていると評価されています。
ケースB:経験15年目の管理職
課長補佐として管理職の立場にあり、基本給32万円に管理職手当や地域手当を加えると、月収は44万円となっています。
年間の諸手当を含めた年収は約530万円です。
政策立案や部下の育成にも携わり、職務の責任度合いに応じた待遇となっています。
中核市での勤務実態
ケースC:新人保健師の収入例
初任給は月給23万円からスタートし、地域手当や住居手当を含めると月収は28万円となっています。
年間賞与を含めた年収は約360万円です。
先輩保健師による手厚い指導体制があり、専門スキルの習得に専念できる環境が整っています。
ケースD:経験10年目の主任保健師
主任保健師として中堅職員の指導も担当しており、基本給27万円に職務手当や各種手当を加えると、月収は35万円となっています。
年収は約420万円で、今後の管理職登用も視野に入れたキャリア形成を進めています。
町村部での特徴的な事例
ケースE:へき地勤務の保健師
基本給25万円にへき地手当や住居手当を加えると、月収は33万円となっています。
年収は約400万円で、都市部と比較しても遜色ない水準を確保しています。
独自の手当体系により、地域での生活基盤を支える配慮がなされています。
ケースF:統括保健師としての役割
町村部の統括保健師として、基本給30万円に役職手当や特殊業務手当を加えると、月収は38万円となっています。
年収は約460万円で、地域の保健活動の中核を担う立場として、責任ある業務を遂行しています。
特別区での収入事例
ケースG:中途採用者の給与
看護師としての経験を活かして特別区に転職したケースでは、基本給26万円に地域手当や住居手当を加えると、月収は35万円となっています。
年収は約420万円で、経験が給与に反映される仕組みが整備されています。
ケースH:ベテラン保健師の待遇
経験20年以上のベテラン保健師として、基本給35万円に各種手当を加えると、月収は45万円となっています。
年収は約540万円で、専門性と経験が十分に評価された待遇となっています。
政策提言や後進の育成にも力を入れており、やりがいのある職場環境が整っています。
おしえてカンゴさん!よくある質問
行政保健師の給与や待遇に関して、多くの方から寄せられる質問について、現役の保健師であるカンゴさんが詳しく解説します。
実践的な観点から、具体的な事例を交えながら、わかりやすく説明していきます。
基本的な給与について
Q1:行政保健師の初任給はどのくらいですか?
公務員の初任給は地域によって異なりますが、一般的に月給23万円から26万円程度となっています。
都市部では地域手当が加算され、さらに住居手当なども含めると、月収30万円程度からスタートするケースも多く見られます。
民間病院の看護師と比較しても、決して見劣りしない水準となっています。
Q2:昇給は自動的に行われるのでしょうか?
基本的に毎年1回の定期昇給があり、1号俸あたり約4,000円の昇給が行われます。
ただし、人事評価の結果によって昇給幅が変動する場合もあります。
また、役職への昇進や資格取得による昇格など、様々な昇給機会が用意されています。
手当について
Q3:残業代はしっかり支給されますか?
管理職を除き、時間外勤務手当は確実に支給されます。
平日は125パーセント、休日は135パーセント、深夜は150パーセントの割増率で計算されます。
災害時などの緊急対応でも、適切に手当が支給される仕組みが整っています。
Q4:どんな種類の手当がありますか?
基本的な手当として、地域手当、住居手当、通勤手当があります。
さらに、扶養手当、期末勤勉手当(ボーナス)も支給されます。
業務内容に応じて、特殊勤務手当や管理職手当なども付与されます。
特に、感染症対応や精神保健業務などには、特別な手当が設定されています。
キャリアアップについて
Q5:資格取得で給与は上がりますか?
専門看護師や認定保健師などの資格を取得すると、特殊資格手当が付与されます。
資格の種類によって金額は異なりますが、月額1万円から3万円程度の手当が追加されます。
また、資格取得により、より専門性の高いポストへの登用機会も増えます。
Q6:管理職になるとどのくらい収入が増えますか?
係長級で月額3万円から4万円、課長級で月額5万円から8万円の管理職手当が支給されます。
基本給も上級職への格付けが行われるため、年収ベースでは100万円から150万円程度の増加が見込めます。
ただし、管理職は原則として時間外勤務手当の対象外となります。
福利厚生について
Q7:休暇制度はどうなっていますか?
年次有給休暇は年間20日付与され、最大20日まで繰り越しが可能です。
そのほか、夏季休暇、結婚休暇、忌引休暇、子の看護休暇など、様々な特別休暇制度が整備されています。
育児休業や介護休暇なども、法定以上の制度が用意されています。
転職について
Q8:民間から行政への転職は不利になりませんか?
むしろ、実務経験は給与面でも優遇されます。
看護師や保健師としての経験年数は、初任給の決定や給与格付けに反映されます。
特に、専門分野での経験は、配属先や業務内容の決定にもプラスとなります。
公務員試験の受験においても、実務経験者を対象とした採用枠が設けられているケースが増えています。
収入面での特徴
安定した基本給与
行政保健師の給与は、法令に基づく給与表で明確に定められており、安定した収入を得ることができます。
初任給は地域によって23万円から26万円の範囲で設定され、経験年数に応じて着実に昇給していく仕組みが整備されています。
充実した手当体系
基本給に加えて、地域手当、住居手当、通勤手当などの基本的な手当が整備されています。
さらに、業務内容に応じた特殊勤務手当や、役職に応じた管理職手当など、職務や責任に見合った手当が適切に支給されます。
キャリアパスの展望
段階的な昇進機会
経験を積むことで、主任保健師や管理職といった上位職への昇進機会が用意されています。
特に、専門性を活かしたキャリア形成や、行政職としてのマネジメントキャリアなど、複数のキャリアパスを選択することができます。
専門性の評価
認定保健師や専門看護師などの資格取得は、特殊資格手当の支給や、専門職としての処遇改善につながります。
また、研究活動や学会発表なども評価され、キャリアアップの機会として活用することができます。
今後の展望
処遇改善の動き
近年の公衆衛生における保健師の役割の重要性から、処遇改善の動きが活発化しています。
特に、感染症対策や災害時の対応など、専門性の高い業務に対する評価が高まっており、それに応じた待遇の充実が進められています。
まとめ
行政保健師の年収は、基本給に加えて充実した手当体系により、安定した水準を確保できます。
自治体規模により初任給に差はあるものの、経験年数に応じた着実な昇給が期待でき、専門性を活かしたキャリアアップも可能です。
また、福利厚生も充実しており、ワークライフバランスを重視した長期的な生活設計が立てやすい環境が整っています。
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