
診療科選びは看護師のキャリアにおいて非常に重要な分岐点です。特に給与面では、診療科によって手当体系や夜勤回数、専門性の評価などが異なるため、年収に大きな差が生じることがあります。
本記事では、2024年最新のデータに基づき、診療科別の給与ランキングと詳細な待遇比較をお届けします。単なる平均年収の比較だけでなく、手当体系、キャリアパス、ワークライフバランスなど、総合的な観点から各診療科の特徴を分析していきます。
看護師の皆さんが自分のライフスタイルやキャリア目標に合った診療科を選ぶための判断材料として、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでほしい人
- 診療科による給与の違いを知りたい現役看護師の方
- 転職や異動を検討中で、給与面で有利な診療科を探している方
- キャリアアップを目指し、将来的な年収アップを計画している方
- 新卒で就職先を選ぶ際に診療科による待遇の違いを知りたい方
- 夜勤や手当について詳しく知りたい看護師の方
- ワークライフバランスと給与のバランスを重視する方
- 専門性を高めながら収入アップを目指したい方
この記事で分かること
- 診療科別の平均年収と給与体系の詳細比較
- 各診療科の特徴的な手当や夜勤体制の違い
- 経験年数別の年収推移と昇給パターン
- 地域や病院規模による給与差の実態
- キャリアアップによる収入増加の具体的方法
- 給与以外の待遇条件で重視すべきポイント
- 高収入を得ている看護師の実際のキャリアパス
診療科別給与ランキング2024年版

2024年の最新データによると、看護師の診療科別平均年収には明確な差があります。
以下では、主要な診療科の平均年収を比較していきます。
基本給自体には大きな差はないものの、各種手当や夜勤回数の違いによって年収総額に差が生じています。
診療科別平均年収の全体像
高収入ランキングTOP5の診療科
集中治療室(ICU)
最も高い平均年収を誇っており、550万円〜650万円の範囲です。高度な専門知識と技術が求められることから、基本給への上乗せや特殊業務手当が充実しています。また、夜勤回数も多く、夜勤手当が年収アップに貢献しています。
救急外来(ER)
年収520万円〜620万円程度です。不規則な勤務体制や緊急対応の多さから、各種手当が厚く設定されています。特に、休日や深夜の勤務が多いため、割増手当が年収を押し上げる要因となっています。
手術室
平均年収500万円〜600万円で第3位に位置しています。高度な専門スキルが評価され、技術手当が設けられているケースが多いです。また、オンコール体制による待機手当も年収増加に寄与しています。
透析室
安定した勤務時間と専門性の高さから、年収480万円〜580万円程度で第4位です。夜勤が少ない一方で、専門技術手当が充実している点が特徴です。
精神科
意外にも高収入の診療科として知られており、平均年収470万円〜570万円で第5位です。精神科特有の業務負担に対する手当や、夜勤の際の特殊業務手当が設定されていることが多いです。
中間層の診療科の特徴
内科、外科、産婦人科などの一般病棟は、年収450万円〜550万円程度と標準的な年収帯に位置しています。夜勤回数は平均的で、特殊な手当は少ないものの、安定した収入を得られる特徴があります。
小児科は年収430万円〜530万円程度で、専門性は高いものの夜勤回数によって年収に差が出ています。小児医療に特化した手当を設けている病院もあり、施設間での差が比較的大きい診療科です。
整形外科や脳神経外科などの専門領域は、年収440万円〜540万円程度です。手術介助や特殊な処置に対する手当が設定されているケースが多いです。
比較的年収が低めの診療科とその理由
外来診療科は年収400万円〜500万円程度で、夜勤がほとんどないことが最大の要因です。ただし、規則正しい勤務時間という利点があり、ワークライフバランスを重視する看護師にとっては魅力的な選択肢となっています。
検診センターや健診部門も同様に年収400万円〜480万円程度で、夜勤や休日出勤がほとんどないことから、手当面での上乗せが少ない傾向にあります。
リハビリテーション科も年収410万円〜490万円程度で、勤務時間が規則的である反面、夜勤や特殊手当による収入増が期待できません。
診療科による給与差の主な要因
診療科による給与差には、いくつかの明確な要因があります。それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。
夜勤回数と夜勤手当の違い
最も大きな収入差を生み出すのが夜勤の回数と手当額です。ICUや救急外来では月8〜10回程度の夜勤があるのに対し、外来や検診センターでは夜勤がほとんどありません。
夜勤1回あたりの手当は病院によって異なりますが、一般的に8,000円〜15,000円程度であり、これが月に10回あれば8万円〜15万円の差になります。年間では約100万円の差になることも珍しくありません。
特殊業務手当の有無
各診療科特有の業務負担に対して設定される特殊業務手当も重要な要素です。
例えば、ICUでは人工呼吸器管理手当、手術室では手術介助手当、透析室では透析技術手当など、専門性の高い業務に対して月額1万円〜3万円程度の手当が支給されるケースが多いです。
残業時間の傾向
診療科によって残業時間にも大きな差があります。救急外来や内科・外科病棟では患者の状態急変や緊急入院対応などで残業が発生しやすい一方、検診センターや外来では定時退勤が基本となっています。
月20時間の残業が常態化している診療科と、ほとんど残業のない診療科では、年間で20〜40万円程度の差が生じることもあります。
休日出勤の頻度
土日祝日の出勤頻度も診療科によって異なります。救急部門や集中治療室では24時間365日の対応が必要なため、休日出勤は避けられません。
一方、一般外来や検診センターでは休日診療を行わないところが多く、休日出勤手当の差が年収に影響します。
病院規模・地域による給与差
診療科選択と同様に重要なのが、病院の規模や地域による給与差です。
大学病院・総合病院・クリニックの比較
大学病院や大規模総合病院では、基本給は比較的高めに設定されていることが多く、平均で月給20万円〜25万円程度です。一方で、クリニックでは月給18万円〜22万円程度と若干低めの傾向があります。
ただし、大規模病院では夜勤や残業が多い反面、クリニックでは規則的な勤務となるケースが多いです。
大学病院や研修指定病院では研究手当や教育手当が設けられているケースもあり、年間で10万円〜30万円程度の上乗せとなることがあります。
都市部と地方の給与差
東京、大阪、名古屋などの大都市圏では、地方と比較して基本給が5%〜15%程度高く設定されている傾向があります。特に東京23区内では、地域手当として基本給の10%〜20%が上乗せされるケースもあります。
ただし、地方では住宅手当が充実していたり、病院が独自に定めた地域定着手当が支給されたりするケースもあり、単純な基本給だけでは比較できない面もあります。
公立・私立・国立による違い
公立病院では公務員としての安定した給与体系があり、昇給も定期的に行われる傾向にあります。一方、私立病院では病院の経営状況によって給与水準に差があり、好条件の病院と厳しい条件の病院の差が大きいです。
国立病院機構や労災病院などでは、国家公務員に準じた給与体系となっており、地域手当や扶養手当など各種手当が整備されています。
診療科別の待遇条件詳細

各診療科の特徴的な手当体系について詳しく見ていきましょう。
手当体系の比較
夜勤手当の診療科別比較
診療科によって夜勤の負担度や対応の困難さが異なるため、夜勤手当にも差が設けられていることがあります。
ICUや救急外来では、急変対応や重症患者の看護に対する負担から、一般病棟と比較して1回あたり1,000円〜3,000円高く設定されているケースが多いです。例えば、一般病棟が夜勤1回12,000円の場合、ICUでは15,000円といった具合です。
精神科では、患者の行動制限や緊急対応に備える必要があることから、特殊夜勤手当として上乗せされることがあります。産科では分娩対応のための待機を含めた夜勤体制となるため、分娩件数に応じた手当が別途支給されるケースもあります。
特殊業務手当一覧
診療科特有の業務に対する手当は、看護師の専門性に対する評価として重要です。
- ICU/CCU:人工呼吸器管理手当(月1万円〜2万円)、ECMO管理手当(1回あたり5,000円〜1万円)
- 手術室:手術介助手当(月1万円〜2万円)、麻酔科認定看護師手当(月2万円〜3万円)
- 透析室:透析技術手当(月5,000円〜1万5,000円)
- 救急外来:救急対応手当(月1万円〜2万円)、トリアージナース手当(月5,000円〜1万5,000円)
- 産科:分娩介助手当(1件あたり3,000円〜7,000円)
- 精神科:行動制限対応手当(月5,000円〜1万円)
- 内視鏡室:内視鏡介助手当(月5,000円〜1万円)
- 感染症病棟:感染症対応手当(月1万円〜2万円)
資格手当の違い
診療科によって求められる認定看護師や専門看護師の資格も異なり、それに伴う手当にも差があります。
- 集中ケア認定看護師(ICU):月2万円〜3万円
- 救急看護認定看護師(救急外来):月2万円〜3万円
- 手術看護認定看護師(手術室):月2万円〜3万円
- 透析看護認定看護師(透析室):月1万5,000円〜2万5,000円
- がん化学療法看護認定看護師(腫瘍内科):月2万円〜3万円
- 感染管理認定看護師(ICU・感染症科):月2万円〜3万円
- 緩和ケア認定看護師(緩和ケア科):月1万5,000円〜2万5,000円
- 精神看護専門看護師(精神科):月2万5,000円〜3万5,000円
専門看護師(CNS)の資格保持者には、認定看護師よりも高額の手当(月3万円〜5万円)が支給されるケースが多いです。
勤務体制の特徴
診療科によって勤務体制も大きく異なり、ワークライフバランスに直結する重要な要素です。
日勤のみの診療科とその特徴
外来、検診センター、リハビリテーション科、透析室(一部施設)などでは日勤のみの勤務体制が一般的です。
勤務時間は基本的に8:30〜17:00または9:00〜17:30程度で、週休2日制が保証されています。夜勤がないため、身体的負担が少なく、生活リズムを崩さずに働けるメリットがあります。
日勤のみの診療科では、夜勤手当がないため基本給が若干高めに設定されていたり、外来処置加算などの特殊手当で調整されていたりするケースもあります。
三交代制と二交代制の比較
一般病棟では三交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)または二交代制(日勤・夜勤)が採用されています。
三交代制の一般的な勤務時間は、日勤(8:30〜17:00)、準夜勤(16:30〜1:00)、深夜勤(0:30〜9:00)で、拘束時間は8時間30分程度です。二交代制では日勤(8:30〜17:00)、夜勤(16:30〜9:00)といった形で、夜勤の拘束時間が16時間30分程度と長くなりますが、出勤回数は減少します。
ICUや救急外来では、患者の重症度を考慮して三交代制を採用しているケースが多いですが、近年は二交代制へ移行する施設も増えています。精神科や療養型病棟では、夜間の業務量を考慮して二交代制を採用するケースが多いです。
オンコール体制のある診療科
手術室、カテーテル室、産科、救急外来などでは、オンコール(待機)体制を取っているケースが多いです。
オンコール時には通常、待機手当(1回3,000円〜5,000円程度)が支給され、実際に呼び出されて出勤した場合には別途出勤手当(1回5,000円〜1万円程度)が支給されます。
心臓血管外科や脳神経外科などの緊急手術が発生しやすい診療科の手術室看護師は、オンコール回数が月に5〜10回程度と多い傾向にあります。
残業の実態
診療科による残業時間の差は、年収だけでなく生活の質にも影響します。
残業が多い診療科ランキング
内科系病棟
残業が多い診療科のトップです。特に呼吸器内科や消化器内科では月20〜30時間程度の残業が発生しているケースが多いです。患者数の多さや重症度の高さに加え、検査結果の確認や翌日の治療準備などが要因となっています。
外科系病棟
手術後の患者管理や緊急入院対応などで月15〜25時間程度の残業が発生しています。特に消化器外科や心臓血管外科では手術が長引くことも多く、勤務終了時間が延長される傾向にあります。
救急外来
患者の来院状況に左右されるため、繁忙期には月20〜30時間程度の残業が発生することがあります。特に二次救急以上の医療機関では、勤務終了間際の救急搬送によって残業が発生するケースが多いです。
ICU/CCU
重症患者の急変対応や処置の複雑さから、月15〜25時間程度の残業が発生しています。患者の容態が安定するまで引き継ぎができないケースも少なくありません。
産科
分娩のタイミングに左右されるため、分娩が長引いた場合には大幅な残業となることがあります。月平均では10〜20時間程度ですが、変動が大きいのが特徴です。
定時退勤が多い診療科の特徴
外来
基本的に診療時間が決まっているため、定時退勤率が高い傾向にあります。特に予約制を導入している専門外来では、ほぼ定時で業務が終了するケースが多いです。
検診センターや健診部門
健診プログラムが時間枠で管理されているため、ほぼ100%定時退勤が可能となっています。
リハビリテーション科
患者のリハビリスケジュールが決まっているため、残業は月0〜5時間程度と少ない傾向にあります。
透析室
透析のスケジュールが固定されているため、定時退勤率が高いです。ただし、透析中のトラブル対応で残業が発生することもあり、月5〜10時間程度の残業となるケースもあります。
精神科の閉鎖病棟
夕方のミーティングや申し送りが効率化されているケースが多く、残業は月5〜10時間程度と比較的少ない傾向にあります。
残業手当の支給実態
残業手当の支給実態は病院によって大きく異なりますが、診療科別の傾向もあります。
大学病院や大規模総合病院
タイムカードや電子認証による勤怠管理が導入されているケースが多く、実績に基づいた残業手当が支給される傾向にあります。特にICUや救急外来など、残業が避けられない診療科では、残業手当の支給率が高い傾向にあります。
中小規模の民間病院
「みなし残業」として、月10〜20時間分の残業代があらかじめ基本給に含まれているケースも少なくありません。この場合、実際の残業時間がみなし時間を超えた場合に限り、超過分の残業手当が支給されます。
クリニックや診療所
残業自体が少ないものの、残業手当の概念がなく、代わりに職務手当や調整手当などの名目で一定額が支給されているケースもあります。
公立病院
公務員としての勤務規定が適用されるため、残業(時間外勤務)手当は確実に支給される傾向にありますが、申請手続きが煩雑なケースもあります。
診療科選択の基準と判断ポイント

診療科選択では、給与面だけでなく自分のライフスタイルとの相性も重要な判断材料となります。
個人のライフスタイルに合わせた選択
ワークライフバランス重視型の選択肢
育児や介護などの家庭の事情がある場合、日勤のみの診療科を選択するメリットは大きいです。外来、検診センター、リハビリテーション科などは、日中のみの勤務で休日出勤も少ないため、家庭との両立がしやすいです。
週休2日が確実に取得できる透析室も、プライベートの予定を立てやすいという点で魅力的です。多くの透析施設では土曜日は半日勤務、日曜日は休診となっているため、週末の時間が確保しやすい傾向にあります。
日勤のみの診療科では夜勤手当がないため年収は下がりますが、夜勤による身体的負担や生活リズムの乱れがないことで、長期的な健康維持というメリットがあります。
キャリアアップ重視型の選択肢
専門性を高めてキャリアアップを目指す場合は、ICU、救急外来、手術室などの高度専門領域が適しています。これらの診療科では認定看護師や専門看護師の資格取得への道が開かれており、資格取得後は給与アップにつながります。
大学病院や高度専門医療機関の特定診療科(がんセンターの腫瘍内科、循環器専門病院の心臓血管外科など)では、最先端の医療技術や看護ケアを学べるチャンスがあり、将来的なキャリアの幅を広げることができます。
臨床研究に関わる機会が多い血液内科や腫瘍内科なども、専門的知識を深める点でキャリアアップに有利です。学会発表や論文執筆の機会も多く、着実にキャリアを積み上げることができます。
収入最大化を目指す選択肢
純粋に収入を最大化したい場合は、ICU、救急外来、手術室などの夜勤回数が多く、特殊業務手当も充実している診療科が最適です。特にICUは、夜勤手当、特殊業務手当、認定看護師手当などの複数の手当が重なることで、高収入の傾向にあります。
また、大学病院や大規模総合病院の救命救急センターなどでは、夜勤に加えてオンコール体制もあるため、待機手当や呼び出し手当なども含めると年収600万円を超えるケースも珍しくありません。
精神科の閉鎖病棟も、精神科特有の業務負担に対する手当が設定されているケースが多く、夜勤とあわせて高収入を期待できる診療科として注目されています。
経験年数による最適診療科の変化
看護師としてのキャリアステージによって、最適な診療科は変化します。
新人看護師に適した診療科
新人看護師には、基本的な看護技術をしっかりと習得できる一般内科病棟がおすすめです。患者層が幅広く、様々な疾患や処置を経験できるため、看護の基礎を固めるのに適しています。
教育体制が整っている大学病院や研修指定病院の一般病棟も、プリセプター制度やクリニカルラダーが確立されており、段階的にスキルアップできる環境が整っています。外科系病棟も、術前・術後管理から退院支援まで一連の流れを学べるため、多様な看護ケアを経験できるメリットがあります。
新人のうちからICUや救急外来などの高度専門領域に配属されるケースもありますが、教育体制がしっかりしている施設を選ぶことが重要です。基本給は一般病棟と変わらないことが多いですが、夜勤や特殊業務手当によって年収は若干高くなる傾向にあります。
中堅看護師のキャリア戦略
経験5年程度の中堅看護師は、これまでの経験を活かしつつ専門性を高められる診療科への異動を検討する時期です。この時期に認定看護師や専門看護師の資格取得を目指すことで、将来的な年収アップにつながります。
ICU、救急外来、手術室などの高度専門領域は、中堅看護師の経験と意欲を活かせる場であり、特殊業務手当や夜勤手当も含めると年収500万円前後となるケースが多いです。
また、訪問看護ステーションやクリニックの管理職なども、病院勤務の経験を活かせる選択肢です。訪問看護では24時間対応の施設であれば、オンコール手当などで年収アップが期待できます。
ベテラン看護師の収入最大化戦略
看護師長や主任などの管理職になると、管理職手当(月3万円〜5万円程度)が支給され、年収600万円を超えるケースも少なくありません。特に大学病院や大規模総合病院の看護師長クラスでは、年収700万円程度になることもあります。
専門看護師や認定看護師として専門領域を極めると、資格手当に加えて講師活動や執筆活動などの副収入も期待できます。特に、がん看護や緩和ケア、感染管理などの需要が高い分野のスペシャリストは重宝されます。
企業の産業看護師や治験コーディネーター(CRC)として転身するケースもあります。特に製薬会社関連の治験コーディネーターは年収600万円〜700万円程度と高水準です。
病院選びの重要ポイント
同じ診療科でも、病院によって給与体系や待遇は大きく異なります。病院選びで注目すべきポイントを見ていきましょう。
給与体系の透明性
面接時に具体的な給与明細(モデルケース)を確認することが重要です。基本給だけでなく、各種手当の内訳や支給条件、昇給の仕組みなどを詳しく聞きましょう。
就業規則や給与規程を確認し、残業手当の計算方法や夜勤手当の金額、各種特殊手当の支給条件などを把握することで、実際の年収をより正確に見積もることができます。
給与改定の頻度や昇給幅についても確認が必要です。公立病院や大規模病院では定期昇給が保証されていることが多いですが、中小の民間病院では業績に左右されるケースもあります。
手当の実態
求人票に記載されている手当が、実際にはどのような条件で支給されるのかを確認することが重要です。夜勤手当の金額や回数制限、特殊業務手当の支給条件など、詳細を把握しておきましょう。
住宅手当や家族手当などの生活関連手当も、支給条件や金額が病院によって異なります。特に住宅手当は地域によって金額に大きな差があるため、引っ越しを伴う就職の場合は重要なチェックポイントとなります。
昇給システムと評価制度
年功序列型の昇給システムを採用している病院と、実績評価型の病院では、長期的な収入に大きな差が生じます。公立病院や大規模総合病院では年功序列型が多く、勤続年数に応じて確実に昇給する傾向があります。
一方、民間病院では実績評価型を採用しているケースが増えており、業績評価や能力評価によって昇給額が変動します。評価制度が透明性の高いものであれば、頑張った分だけ収入に反映されるメリットがあります。
人事考課の頻度や方法、評価基準なども確認しておくことで、将来的な昇給の見通しを立てることができます。
診療科別年収データと推移

経験年数による年収の変化は、診療科によって傾向が異なります。
代表的な診療科の年収推移を見ていきましょう。
経験年数別の平均年収推移
ICU・救急領域の年収カーブ
ICUや救急外来では、新人時代から特殊業務手当や夜勤手当が加算されるため、初任給から比較的高水準で始まります。新人時で年収430万円〜480万円程度、5年目で500万円〜550万円程度、10年目では550万円〜600万円程度となっています。
特に認定看護師資格(集中ケア、救急看護、クリティカルケア)を取得すると、5年目以降で大きく年収が上昇するケースが多く、資格取得後は年収50万円〜70万円程度のアップが期待できます。
管理職(主任・師長)になると、夜勤回数は減少しますが管理職手当が付くため、年収600万円〜700万円に達することもあります。
一般病棟の年収推移
内科・外科などの一般病棟では、新人時の年収は400万円〜450万円程度からスタートし、5年目で450万円〜500万円程度、10年目で500万円〜550万円程度と緩やかに上昇していきます。
認定看護師資格(がん看護、糖尿病看護、皮膚・排泄ケアなど)を取得すると、年収30万円〜50万円程度のアップが期待できます。
一般病棟では、主任になると年収550万円〜600万円程度、師長クラスでは600万円〜650万円程度となるケースが多いです。
外来・検診部門の年収推移
外来や検診センターなど日勤のみの部署では、新人時の年収は380万円〜430万円程度と比較的低めですが、夜勤がないため身体的負担は軽減されています。
経験年数が上がるにつれて徐々に昇給し、5年目で420万円〜470万円程度、10年目で450万円〜500万円程度となりますが、夜勤手当がないため年収の伸びは緩やかです。
外来部門では認定看護師(糖尿病看護、皮膚・排泄ケア、がん化学療法看護など)の需要も高まっており、資格取得により年収30万円〜50万円程度のアップが期待できます。
資格取得による収入アップ効果
看護師のキャリアアップと収入増加に大きく貢献するのが、各種専門資格の取得です。
認定看護師・専門看護師の収入効果
認定看護師(CN)の資格を取得すると、多くの病院で資格手当として月額1万5,000円〜3万円程度が支給されます。年間では18万円〜36万円の収入増となります。
専門看護師(CNS)はさらに上位の資格として位置づけられており、月額3万円〜5万円程度の資格手当が支給されるケースが多いです。年間で36万円〜60万円の収入増となります。
資格手当以外にも、院内外での講師活動や専門外来の担当など、追加の業務機会が増えることで収入アップにつながるケースもあります。
特定行為研修修了者の待遇
2015年に始まった特定行為研修修了者は、21区分38行為の特定行為を実施できる資格として注目されています。修了者には月額2万円〜3万円程度の手当が支給される傾向にあります。
特に在宅医療や地方の医療過疎地域では、特定行為研修修了者の需要が高く、基本給のベースアップや特別手当など、優遇措置が講じられているケースもあります。
医師の働き方改革に伴い、今後さらに需要と待遇の向上が期待される資格です。
認定看護管理者の市場価値
認定看護管理者は看護部門のマネジメントを担う上級資格であり、取得者には管理職としてのキャリアパスが開かれます。
認定看護管理者の資格を持つ看護師長クラスでは、年収650万円〜750万円程度となるケースが多く、看護部長クラスでは年収800万円〜900万円に達することもあります。
大規模な病院グループや医療法人では、複数施設の看護部門を統括する役職に就くケースもあり、年収1,000万円を超える事例も出てきています。
地域別・病院規模別データ
地域や病院の規模によっても、診療科別の年収に違いがあります。
首都圏・関西圏の高給与傾向
東京23区内の大学病院や大規模総合病院では、地域手当(基本給の20%程度)が支給されるケースが多く、ICUや救急外来の看護師では年収600万円〜700万円に達することもあります。
大阪や京都などの関西圏でも、地域手当(基本給の10〜15%程度)が支給される傾向にあり、専門性の高い診療科では年収550万円〜650万円程度となっています。
首都圏では人材確保のための独自手当(採用困難手当、人材確保手当など)を設けている病院も多く、特にICU、救急外来、手術室などの専門領域では月額1万円〜3万円の上乗せがあるケースもあります。
地方病院の給与事情
地方では基本給は都市部より若干低めですが、住宅手当や定住促進手当などの生活関連手当が充実しているケースが多いです。特に医師不足地域では、看護師の確保のために独自の手当体系を設けている病院もあります。
地方の公立病院では公務員としての安定した給与体系があり、地域手当は低めですが、退職金や福利厚生が充実しているメリットがあります。ICUや救急外来でも年収500万円〜570万円程度が一般的です。
地方の中核病院では、専門性の高い診療科(救命救急センター、集中治療室、周産期センターなど)の看護師確保のために、資格取得支援制度や奨学金返済支援制度を設けているケースもあります。
病床規模による給与差
500床以上の大規模病院では、規模に応じた手厚い手当体系が整備されていることが多く、基本給も高めに設定されている傾向があります。ICUや救急外来の看護師では年収550万円〜650万円程度が一般的です。
100〜300床程度の中規模病院では、基本給は大規模病院よりやや低めですが、夜勤回数が多めに設定されているケースが多く、実質年収ではそれほど大きな差はありません。ICUや救急外来でも年収500万円〜580万円程度となっています。
20〜100床程度の小規模病院では、基本給は低めに設定されていることが多いですが、少ない看護師で幅広い業務をこなすため、職務手当や調整手当などの名目で基本給を補填しているケースもあります。専門性の高い診療科は少ないため、一般病棟勤務が中心となり、年収450万円〜500万円程度が一般的です。
看護師のキャリアパスと収入戦略

戦略的な転職は、収入アップの有効な手段となります。
転職による収入アップ戦略
好条件の転職タイミング
転職に最適なタイミングは経験3〜5年目と言われています。基礎的な看護スキルが身についた段階で転職すると、即戦力として評価され、給与交渉がしやすくなります。
認定看護師や専門看護師の資格取得直後も、転職市場での価値が高まるタイミングです。資格を活かせる専門領域への転職で、基本給のアップや資格手当の上乗せを期待できます。
診療報酬改定のタイミング(2年に1度)も注目すべきポイントです。新たな加算が設定された分野では看護師需要が高まるため、転職で好条件を引き出しやすくなります。
高給与が期待できる職場特性
以下のような特性を持つ職場は、比較的高給与が期待できます。
医師不足地域の基幹病院
医療過疎地域では看護師確保のために給与水準を高く設定しているケースが多いです。特に北海道や東北、中国・四国の一部地域では、都市部より高待遇となることもあります。
高度専門医療機関
がんセンター、循環器センター、小児専門病院などの専門特化型医療機関では、高い専門性に対して相応の待遇を用意していることが多いです。
企業立病院
製鉄所や自動車メーカーなどの企業が運営する病院では、福利厚生が充実しており、企業の給与体系に準じた高待遇が期待できます。
医療ベンチャー関連
治験コーディネーター(CRC)や臨床開発モニター(CRA)など、製薬関連企業の医療職は、一般的な病院勤務よりも高収入となるケースが多いです。
給与交渉のポイント
現在の給与明細を用意し、基本給だけでなく手当込みの実質年収ベースで交渉することが効果的です。特に、現職での特殊業務手当や資格手当などは、転職先でも同等以上の条件を求める材料となります。
自分の市場価値を客観的に把握しておくことも重要です。看護師専門の転職サイトや人材紹介会社を複数利用し、同じ経験年数・資格・専門領域での相場観を掴んでおきましょう。
交渉では基本給だけでなく、諸手当や福利厚生も含めた総合的な条件で判断することが大切です。
副業・兼業による収入増加法
看護師の副業・兼業も、収入増加の有効な手段となっています。
許可される副業の種類
多くの病院では就業規則で副業に関する規定が設けられていますが、以下のような副業は比較的許可を得やすい傾向にあります。
非常勤看護師(週1〜2日程度)
主に外来クリニックや検診センターでの勤務が一般的で、時給1,800円〜2,500円程度となっています。
訪問入浴介助
介護サービス会社などで需要が高く、1回3,000円〜5,000円程度の報酬となっています。
看護講師
看護学校や医療専門学校の非常勤講師として、専門科目を教えるケースです。90分授業で1万円〜1万5,000円程度の報酬が一般的です。
健康相談員
企業の健康管理室や健康保険組合の相談業務などがあります。半日で1万円〜1万5,000円程度の報酬となっています。
収入増加が見込める副業ランキング
収入増加の観点から見ると、以下のような副業が効果的です。
治験コーディネーター(CRC)
製薬会社や臨床試験支援企業(SMO)での非常勤勤務で、時給2,500円〜3,500円と高水準です。月2〜3回の勤務で月収5万円〜10万円程度の増収が見込めます。
美容クリニック看護師
美容医療クリニックでの非常勤勤務は、時給2,000円〜3,000円程度と比較的高めです。土日勤務が中心となりますが、月4回の勤務で月収6万円〜9万円程度の増収となります。
産業保健師・看護師
企業の健康管理室での非常勤勤務は、時給2,000円〜2,500円程度です。定期健診や保健指導が中心で業務負担も比較的軽めなため、効率的な副業となります。
医療ライター
医療専門誌やウェブサイト向けの記事執筆は、文字単価1円〜3円程度が一般的です。専門性の高いテーマほど単価が高くなる傾向にあり、月に数本執筆することで月収3万円〜10万円程度の増収が見込めます。
副業と本業のバランス戦略
副業を始める際は、以下のようなバランス戦略が重要です。
本業との業務内容の差別化
本業と全く異なる業務内容の副業を選ぶことで、心理的なリフレッシュ効果も期待できます。例えば、急性期病院勤務の場合は、検診センターや企業の健康管理室など、比較的落ち着いた環境での副業が適しています。
労働時間の管理
労働基準法の制限(週の労働時間が原則として40時間以内)を考慮し、本業と副業を合わせた労働時間が過剰にならないよう注意が必要です。月8回の夜勤がある場合は、副業は月2〜3回程度に抑えるなどの工夫が必要です。
体力・健康面の配慮
特に夜勤のある勤務形態の場合、副業による過労で本業に支障をきたさないよう注意が必要です。副業は本業の休日に限定する、連続勤務にならないようスケジュールを調整するなどの工夫が大切です。
看護師さんからのQ&A「おしえてカンゴさん!」
Q1:診療科による給与の違いはどのくらいありますか?
A1:診療科により基本給の差は少ないですが、手当体系に大きな違いがあります。最も年収が高いICU・救急外来と、最も低い外来・健診部門では、年間で100万円〜150万円程度の差があります。
これは主に夜勤手当や特殊業務手当の違いによるものです。例えば、ICUでは月8〜10回の夜勤と特殊業務手当で月10万円以上の上乗せがあるのに対し、外来では夜勤がなく、特殊手当も少ないためです。
Q2:認定看護師資格を取ると収入はどのくらい上がりますか?
A2:認定看護師資格を取得すると、多くの病院で月額1万5,000円〜3万円の資格手当が支給されます。年間では18万円〜36万円の収入増となります。
さらに、資格を活かした専門外来の担当や院内教育担当などの役割が与えられることで、職務手当などの追加手当がつくケースもあります。
特にICUや救急外来などの高度専門領域では、認定看護師の市場価値が高く、転職時にも有利な条件を引き出せる可能性が高いです。
Q3:夜勤のない診療科でも収入を上げる方法はありますか?
A3:夜勤のない診療科でも、以下の方法で収入アップが可能です。
①認定看護師や専門看護師などの資格取得による資格手当の獲得
②外来管理や部門管理などの役職への昇進による役職手当の獲得
③専門外来(糖尿病外来、ストーマ外来など)の担当による専門性加算の獲得
④非常勤として週1〜2日の副業(クリニックなど)を行う
⑤診療報酬加算が多く算定されている施設への転職(緩和ケア、認知症ケアなど)
Q4:転職で年収を上げるコツはありますか?
A4:転職で年収アップを実現するためのコツは以下の通りです。
①現在の給与明細(賞与含む)を基に、実質年収ベースで交渉する
②資格や専門経験を活かせる専門性の高い職場を選ぶ
③給与体系の透明性が高く、昇給システムがしっかりしている病院を選ぶ
④診療報酬改定後に人員基準が厳しくなった分野(回復期リハ病棟、地域包括ケア病棟など)を狙う
⑤複数の求人に同時に応募し、条件を比較検討する ⑥看護師専門の転職エージェントを利用し、市場相場や交渉術のアドバイスを得る
Q5:将来的に需要が高まる(=給与が上がりやすい)診療科はどこですか?
A5:将来的に需要が高まる診療科としては、以下が挙げられます。
①在宅医療領域(訪問看護、在宅療養支援診療所など)
②緩和ケア・終末期ケア(緩和ケア病棟、ホスピス)
③認知症ケア(認知症専門病棟、認知症ケアチーム)
④回復期リハビリテーション
⑤地域包括ケア関連部門
⑥精神科(特に児童・思春期精神科)
⑦救急医療(高齢化に伴う需要増)
高齢化社会の進展と医療制度改革により、これらの分野では慢性的な人材不足が予想され、給与水準の上昇が期待できます。特に在宅医療と緩和ケアは、今後10年間で需要が大幅に拡大すると予測されています。
まとめ
看護師の診療科選択は、給与面だけでなく、自分のライフスタイルやキャリア目標との相性も重要です。
給与体系の透明性や昇給システムなど、病院選びのポイントも見逃せません。求人情報だけでなく、実際の給与明細の詳細や評価制度についても確認することで、将来的な収入見通しを立てることができます。
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