
医療の高度化や地域医療の充実に伴い、看護師の専門性向上が強く求められています。その中で注目を集めているのが「診療看護師」と「特定看護師」という資格です。両者は似て非なる部分があり、多くの看護師が選択に迷っているのが現状です。
この記事では、それぞれの資格の特徴から、実際の業務内容、キャリアプランまで、詳しく解説していきます。
この記事を読んでほしい人
- 看護師経験3年以上で、さらなるキャリアアップを目指している方
- 診療看護師と特定看護師の違いを詳しく知りたい方
- より高度な医療行為に携わりたいと考えている方
- 地域医療や在宅医療での活躍を視野に入れている方
- 医師との協働をより深めたいと考えている方
- 教育や研究分野でのキャリア構築を考えている方
この記事でわかること
- 診療看護師と特定看護師それぞれの特徴と違い
- 具体的な業務範囲と実践できる医療行為の内容
- 資格取得に必要な要件と取得までのステップ
- 研修期間や費用などの実務的な情報
- キャリアパスと将来性の展望
- 実際の現場での活用事例と成功事例
- 給与水準や処遇の変化に関する具体的な情報
診療看護師と特定看護師の基本的な違い

医療現場で重要な役割を担う診療看護師と特定看護師ですが、その違いを正確に理解している方は多くありません。
ここでは、両者の制度的背景から実践的な違いまで、詳しく見ていきます。
制度としての位置づけ
法的な定義と根拠
診療看護師(NP:Nurse Practitioner)は法律上の正式名称ではなく、一般的な呼称として使用されています。一方、特定看護師は「特定行為に係る看護師の研修制度」に基づく公的な資格制度であり、正式には「特定行為研修修了者」と呼ばれます。
この制度は2015年10月から開始され、医療現場での高度な実践能力を持つ看護師の育成を目的としています。
資格認定の仕組み
特定看護師の認定は厚生労働省が定める基準に基づいて行われ、指定研修機関での研修修了が必要です。診療看護師の場合は、主に大学院での教育プログラムを通じて養成されますが、統一された国家資格としての制度は現時点では存在していません。
歴史的背景と発展過程
制度創設の経緯
特定行為研修制度は、超高齢社会における医療ニーズの増大と医師の働き方改革を背景に創設されました。2010年の「チーム医療の推進に関する検討会」での議論を経て、2015年に正式に制度化されています。
国際的な動向との関連
欧米では既にNP(Nurse Practitioner)制度が確立されており、特に米国では1960年代から導入されています。日本の診療看護師・特定看護師制度は、これらの先進事例を参考にしながら、日本の医療制度に適合する形で整備されてきました。
実務における違いと共通点
実践可能な医療行為
特定看護師は38行為21区分の特定行為を実施することができます。これには気管挿管や創傷処置などが含まれます。診療看護師も同様の医療行為を行いますが、その範囲は所属する医療機関の規定により異なる場合があります。
チーム医療における立場
両者とも医師の包括的指示のもとで高度な医療行為を行いますが、特定看護師は法的に明確な位置づけがあるため、医療機関での役割がより明確です。診療看護師は、教育研究面でのリーダーシップを発揮することが期待される傾向にあります。
教育カリキュラムの特徴
研修内容の違い
特定看護師の研修は、共通科目と区分別科目で構成され、合計315時間以上の講義と実習が必要です。診療看護師の場合、大学院での2年間のカリキュラムを通じて、より広範な臨床推論や研究手法を学びます。
実践力の養成方法
特定看護師研修では、特定の医療行為に焦点を当てた実践的なトレーニングが重視されます。一方、診療看護師教育では、臨床推論能力や研究能力の向上にも重点が置かれ、より包括的な学習が行われます。
業務範囲と役割の違い

診療看護師と特定看護師は、その業務範囲と役割において明確な特徴があります。
医療現場での実践、チーム医療での位置づけ、さらには教育・研究活動まで、それぞれの立場で重要な役割を担っています。
医療行為の実施範囲
特定行為と医療処置
特定看護師は、特定行為研修で習得した38行為21区分の医療行為を実施することができます。具体的には、脱水時の輸液による補正、気管カニューレの交換、創傷の陰圧閉鎖療法、持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整などが含まれます。
これらの行為は、医師の包括的指示のもとで実施され、患者の状態に応じて適切な判断を行います。
診療補助業務の範囲
診療看護師の場合、特定行為に加えて、より広範な診療補助業務を行うことができます。臨床推論に基づく診療計画の立案、検査オーダーの提案、治療効果の評価など、医師との協働のもとでより包括的な医療行為に携わることが可能です。
患者アセスメントと臨床判断
包括的な患者評価
両資格とも高度なフィジカルアセスメント能力が求められます。バイタルサインの評価から身体診察、検査データの解釈まで、総合的な患者評価を行います。特に診療看護師は、より詳細な病態把握と治療方針の提案が期待されます。
医療介入の判断基準
特定看護師は、特定行為の実施に関する具体的な判断基準(プロトコル)に基づいて医療介入を行います。一方、診療看護師は、より広範な臨床判断を求められ、包括的な治療計画への参画が期待されます。
チーム医療における役割
多職種連携のコーディネート
両資格ともチーム医療のキーパーソンとして機能します。医師、薬剤師、理学療法士などの多職種との連携を図り、患者中心の医療を展開します。特に慢性期医療や在宅医療の場面では、チーム全体のマネジメント役としての役割も担います。
医師との協働関係
医師との協働において、特定看護師は特定行為に関する明確な役割分担が確立されています。診療看護師は、より包括的な医療判断に関与し、医師の診療支援者としての役割を果たします。
専門分野での実践
急性期医療での役割
救急外来や集中治療室では、両資格とも初期対応から継続的なケアまでを担当します。特定看護師は気道確保や循環管理などの特定行為を中心に、診療看護師はより包括的な患者管理を行います。
慢性期医療での活動
慢性疾患の管理では、患者教育や生活指導が重要な役割となります。両資格とも、患者の自己管理能力の向上支援や、合併症予防のための介入を行います。特に診療看護師は、患者の生活全体を視野に入れた包括的なケアマネジメントを実践します。
教育・研究活動
後進の育成と指導
両資格とも、看護スタッフの教育や指導的役割を担います。特定看護師は特定行為に関する実践的な指導を、診療看護師は臨床推論や研究手法についての教育を行うことが多いです。
臨床研究への参画
診療看護師は、大学院教育を受けていることから、臨床研究の計画立案や実施においてより積極的な役割を果たします。エビデンスの構築や新たな看護実践の開発に貢献します。
地域医療での活動
在宅医療での実践
在宅医療の現場では、両資格とも重要な役割を果たします。訪問診療への同行、在宅での医療処置、家族指導など、地域包括ケアシステムの中核を担います。
地域連携の推進
医療機関間の連携や、地域の医療資源の有効活用を図る上で、両資格は重要な橋渡し役となります。地域の医療ニーズの把握や、効果的な医療提供体制の構築に貢献します。
資格取得に必要な要件

診療看護師と特定看護師の資格を取得するためには、それぞれ固有の要件と過程があります。
ここでは、資格取得に必要な具体的な条件から、研修内容、試験制度まで詳しく解説していきます。
受験資格と基本要件
看護師実務経験
特定看護師の場合、原則として実務経験3年以上が求められます。ただし、より複雑な特定行為を含む区分では5年以上の経験が推奨されています。診療看護師については、大学院進学に際して3年以上の実務経験が一般的な要件となっています。
必要な基礎資格
両資格とも看護師免許の保持が必須条件です。さらに、診療看護師を目指す場合は、大学院入学試験に必要な要件として、学士号の取得や所定の英語力を求められる場合があります。
研修制度の詳細
特定看護師の研修カリキュラム
特定看護師の研修は、共通科目と区分別科目で構成されています。共通科目では臨床推論、フィジカルアセスメント、医療安全学などを学び、これには約315時間が必要です。区分別科目では、選択した特定行為区分に応じた専門的な知識と技術を習得します。
実習時間は区分によって異なりますが、一般的に各区分15~30時間程度が設定されています。
診療看護師の教育課程
診療看護師の場合、通常2年間の大学院修士課程で学びます。カリキュラムには、高度な臨床推論、病態生理学、薬理学、医療倫理学などの科目が含まれます。また、実習では急性期から慢性期まで様々な臨床現場での実践経験を積みます。
試験制度と評価方法
特定看護師の評価プロセス
特定看護師の研修修了には、各科目の試験に合格する必要があります。評価は筆記試験、実技試験、症例レポートなど、多面的な方法で行われます。特に実技評価では、シミュレーターを使用した手技の確認や、実際の臨床現場での実践能力の評価が含まれます。
診療看護師の修了要件
大学院での評価は、講義科目の成績、臨床実習の評価、修士論文など、総合的な基準に基づいて行われます。特に修士論文では、臨床研究や看護実践の開発に関する研究成果が求められます。
研修期間と時間的拘束
特定看護師研修の期間設定
特定看護師の研修期間は、選択する特定行為区分の数によって異なります。最短で8ヶ月、標準的には1年から2年程度かかります。現在は、eラーニングを活用した研修も増えており、働きながらの資格取得が可能になっています。
診療看護師課程の学習期間
大学院での学習は通常2年間です。昼間主コースの他、社会人向けの夜間コースや長期履修制度を設けている大学院もあります。実習期間は通常6ヶ月から1年程度で、この間は実習に専念する必要があります。
費用と経済的負担
研修費用の詳細
特定看護師の研修費用は、受講する区分数によって異なりますが、一般的に50万円から150万円程度です。診療看護師の場合、大学院の学費として2年間で200万円から300万円程度が必要です。
経済的支援制度
両資格とも、医療機関からの支援制度を利用できる場合があります。また、奨学金制度や教育訓練給付金の対象となることもあります。特に地域医療に従事する条件付きの支援制度も各地で整備されています。
資格取得までのステップバイステップガイド

資格取得を目指す方にとって、準備から取得後の実践までの具体的な道筋を知ることは重要です。
ここでは、両資格の取得に向けた具体的なステップと、各段階での重要なポイントを詳しく見ていきます。
準備段階での重要事項
キャリアプランの設計
資格取得を検討する際は、まず5年後、10年後のキャリアビジョンを明確にします。所属している医療機関の方針や、地域の医療ニーズなども考慮に入れながら、自身の目指す方向性を定めていきます。現在の職場で活かせる資格なのか、転職も視野に入れるのかなど、具体的なキャリアプランを描くことが重要です。
基礎力の充実
資格取得に向けて、フィジカルアセスメントや臨床推論などの基礎的なスキルを強化します。日々の看護実践の中で意識的にこれらのスキルを磨くとともに、院内研修や外部セミナーなどを活用して知識を深めていきます。また、英語力の向上も重要で、医学英語の学習や英語論文の読解力を養うことが推奨されます。
出願準備と選考プロセス
研修機関の選定
特定看護師を目指す場合は、厚生労働省が指定する研修機関の中から、通学の利便性、開講形態、費用などを考慮して選択します。診療看護師の場合は、大学院の教育内容、研究領域、指導教員の専門性などを確認し、自身の興味や目標に合った機関を選びます。
出願書類の準備
研修機関への出願には、職務経歴書、志望理由書、推薦状などが必要です。特に志望理由書では、資格取得後のビジョンや、地域医療への貢献についての具体的な考えを明確に示すことが求められます。
研修・学習期間中の取り組み
時間管理とスケジューリング
働きながら学ぶ場合は、効率的な時間管理が不可欠です。業務、学習、私生活のバランスを考慮したスケジュール立てが重要です。eラーニングを活用する場合は、計画的な学習進度の管理も必要になります。
実践的スキルの習得
座学で得た知識を臨床現場で実践に結びつけることが重要です。シミュレーション訓練や実習では、積極的に質問や技術確認を行い、確実なスキル習得を目指します。特に医療安全に関わる手技については、十分な練習を重ねることが必要です。
修了に向けた最終段階
試験対策の実施
各科目の試験や実技評価に向けて、体系的な学習計画を立てます。過去の試験問題や、実技評価のポイントを確認し、弱点の補強を行います。特に臨床推論や医療安全に関する内容は重点的に学習します。
修了後の実践準備
資格取得後すぐに実践できるよう、所属施設での役割や業務範囲について、上司や同僚との調整を進めます。必要な院内規程の整備や、チーム内での連携体制の構築なども視野に入れて準備を進めます。
資格取得後の実践開始
実践環境の整備
資格取得直後は、段階的に特定行為や高度な実践を開始します。医療安全に配慮しながら、徐々に実践範囲を広げていきます。定期的なカンファレンスや症例検討を通じて、チーム内での信頼関係を構築します。
継続的な学習
資格取得後も、最新の医療知識や技術の習得が必要です。学会参加や研究会への参加、論文投稿など、積極的に学術活動に関わることで、専門性の向上を図ります。
キャリアパスと将来展望

診療看護師と特定看護師の資格取得後には、多様なキャリアパスが開かれています。医療現場での実践から教育研究まで、幅広い分野での活躍が期待されています。
それぞれの道筋と将来性について、具体的に見ていきます。
医療機関での役割拡大
急性期医療での展開
救急外来や集中治療室では、医師との協働のもと、より高度な医療判断と処置を担当します。具体的には、患者の初期評価から治療方針の提案、緊急処置の実施まで、幅広い業務を担います。特に夜間や休日の初期対応では、その専門性が大きく貢献します。
慢性期医療での活躍
慢性疾患管理や退院支援において中心的な役割を果たします。患者の状態評価、治療計画の調整、服薬指導など、包括的な医療サービスを提供します。また、患者教育やセルフケア支援においても、専門的な知識を活かした指導が可能です。
地域医療での展開
在宅医療の推進
地域包括ケアシステムの中核として、在宅医療の質向上に貢献します。訪問診療への同行、在宅での医療処置、家族支援など、地域に密着した医療サービスを展開します。特に医師の少ない地域では、その役割がより重要となります。
地域連携の強化
医療機関間の連携や多職種協働のコーディネーターとして活躍します。退院支援や地域の医療資源の効率的な活用において、重要な橋渡し役を担います。また、地域の健康課題への取り組みにも積極的に参画します。
教育・研究分野でのキャリア
教育者としての道
看護基礎教育や継続教育において、指導的な立場で活躍します。臨床経験と高度な専門知識を活かし、次世代の看護師育成に貢献します。また、実習指導や新人教育においても、重要な役割を果たします。
研究活動への参画
臨床研究の計画立案や実施において中心的な役割を担います。エビデンスの構築や新たな看護実践の開発に取り組み、医療の質向上に貢献します。また、学会発表や論文投稿を通じて、研究成果を発信します。
管理職としてのキャリア
看護管理者への道
看護部門のマネジメントや病棟運営において、リーダーシップを発揮します。医療安全管理や質改善活動の推進など、組織全体の質向上に貢献します。また、スタッフ教育や人材育成においても重要な役割を果たします。
医療政策への関与
医療機関の運営方針や地域医療計画の策定に参画します。高度な専門知識と臨床経験を活かし、効果的な医療提供体制の構築に貢献します。また、医療政策の立案や提言においても、専門家としての意見を発信します。
国際活動での展開
グローバルヘルスへの貢献
国際医療支援や海外での医療活動に参画します。日本の医療知識や技術を海外に発信し、グローバルな医療の質向上に貢献します。また、国際会議や学術交流を通じて、世界の医療専門職とのネットワークを構築します。
海外での活動機会
欧米のNP制度との連携や、アジア諸国での医療支援活動に参加します。特に発展途上国での医療体制整備や人材育成において、重要な役割を果たします。また、国際的な研究プロジェクトへの参画も期待されます。
研修機関の選び方
診療看護師・特定看護師を目指す上で、適切な研修機関の選択は将来のキャリアを左右する重要な決定となります。
ここでは、研修機関選びの重要なポイントと、実際の選択プロセスについて詳しく見ていきます。
研修機関の種類と特徴
大学院での教育プログラム
大学院での診療看護師養成課程は、通常2年間の修士課程として設置されています。研究能力の育成に重点を置き、臨床実践力と研究的視点の両方を養うことができます。また、専門領域の深い学習が可能で、修了後の研究活動にもつながります。
指定研修機関での特定行為研修
特定行為研修を行う指定研修機関は、全国各地の医療機関や教育機関に設置されています。実践的な技術習得に重点を置き、現場での即戦力となる人材を育成します。eラーニングシステムを導入している機関も多く、働きながらの学習が可能です。
選択基準のポイント
教育内容の充実度
カリキュラムの内容、実習時間の確保、指導体制の整備など、教育プログラムの質を確認することが重要です。特に実習施設の規模や症例数、指導者の経験と専門性などは、学習効果に大きく影響します。
通学の利便性
研修期間中の通学のしやすさは、学習継続の重要な要素となります。特に働きながら学ぶ場合は、職場との距離や交通アクセス、開講時間帯などを慎重に検討する必要があります。
費用と支援制度
研修費用の内訳
研修費用は機関によって大きく異なります。授業料や実習費、教材費など、すべての必要経費を確認しましょう。また、通学にかかる交通費や、必要な場合は住居費なども考慮に入れる必要があります。
利用可能な支援制度
奨学金制度や教育訓練給付金、所属施設からの支援など、利用可能な経済的支援を確認します。特に地域医療に従事することを条件とした支援制度なども、積極的に活用を検討しましょう。
修了生の進路と実績
就職・キャリア支援
研修修了後の就職支援体制や、キャリア相談の仕組みを確認します。特に修了生の就職実績や、活躍している分野について情報収集することで、自身のキャリアプランを具体的にイメージすることができます。
修了生ネットワーク
修了生同士のネットワークや、継続的な学習支援体制の有無も重要な選択基準となります。修了後も研鑽を積み続けられる環境があるかどうかを確認しましょう。
研修環境の整備状況
学習設備の充実度
シミュレーション設備や図書館、電子ジャーナルへのアクセスなど、学習環境の整備状況を確認します。特に実技練習のための設備や、自己学習のためのスペースの確保は重要です。
オンライン学習環境
eラーニングシステムの使いやすさや、オンラインでの質問・相談体制なども確認します。特にコロナ禍以降、オンライン学習環境の充実は重要な選択基準となっています。
ケーススタディ:現場で活躍する看護師の声
診療看護師と特定看護師として活躍する方々の実際の経験は、資格取得を目指す看護師にとって貴重な参考となります。
ここでは、様々な医療現場で活躍する資格取得者の具体的な事例を紹介していきます。
急性期医療での活躍
救急外来での実践
Aさん(35歳、特定看護師、経験年数12年) 「救急外来で特定看護師として3年目になります。夜間の初期対応から、気管挿管や動脈ライン確保まで、医師の包括的指示のもとで実施しています。特に、医師が到着するまでの初期評価と必要な検査オーダーの判断は、私たちの重要な役割です。
研修で学んだ臨床推論が非常に役立っています。また、若手看護師への指導も担当し、チーム全体のスキルアップにも貢献できていると感じています」
ICUでの実践
Bさん(42歳、診療看護師、経験年数15年) 「ICUでは人工呼吸器管理や循環動態の管理など、より専門的な判断が必要とされます。診療看護師として、医師と密に連携しながら、患者さんの状態変化に応じた細やかな対応を心がけています。
特に、人工呼吸器からの離脱プロトコルの作成と実施では、エビデンスに基づいた実践を行い、良好な成果を上げることができています」
慢性期医療での取り組み
糖尿病看護での実践
Cさん(38歳、特定看護師、経験年数10年) 「糖尿病外来で、インスリン調整や療養指導を担当しています。特定行為研修で学んだ知識を活かし、患者さんの生活背景に合わせた細やかな指導が可能になりました。
特に、インスリンポンプ療法の導入時の調整や、シックデイ対応の指導では、より専門的な支援ができるようになったと実感しています」
透析看護での活用
Dさん(45歳、診療看護師、経験年数18年) 「透析センターでは、シャントトラブルへの対応やドライウェイトの調整など、様々な判断が求められます。診療看護師の資格を活かして、より包括的な患者評価と治療方針の提案ができるようになりました。
また、合併症予防のための生活指導や、他職種との連携調整も重要な役割となっています」
在宅医療での実践
訪問診療での活動
Eさん(40歳、特定看護師、経験年数13年) 「在宅医療の現場では、医師の診察の間の状態管理や、緊急時の対応判断が重要です。特定行為研修で学んだスキルを活かし、褥瘡の評価と処置、経管栄養の管理、疼痛コントロールなど、様々な場面で専門性を発揮しています。
特に、終末期患者さんのケアでは、家族を含めた包括的な支援が可能になりました」
地域連携での役割
Fさん(36歳、診療看護師、経験年数8年) 「地域包括支援センターを拠点に活動しています。診療看護師としての知識を活かし、複数の医療機関や介護施設との連携調整を行っています。特に、退院支援や在宅療養移行期の医療管理では、より専門的な視点からの提案が可能になり、スムーズな連携につながっています」
教育研究分野での活動
看護教育での実践
Gさん(44歳、診療看護師、経験年数16年) 「看護大学の教員として、学部生と大学院生の教育に携わっています。臨床経験と研究的視点を組み合わせた教育を心がけており、特に臨床推論や医療安全の授業では、実践的な事例を用いた指導を行っています。
また、臨床研究のサポートも行い、エビデンスの構築にも取り組んでいます」
研究活動での展開
Hさん(39歳、特定看護師、経験年数11年) 「大学病院で臨床研究コーディネーターとして活動しています。特定看護師としての知識を活かし、様々な臨床研究のプロトコル作成や実施支援を行っています。特に、看護介入研究では、より実践的な視点からの提案が可能になり、研究の質の向上に貢献できています」
おしえてカンゴさん!よくある質問
診療看護師と特定看護師に関して、多くの看護師の皆さんから寄せられる質問に、現役の資格保持者であるカンゴさんが丁寧にお答えします。実務的な疑問から、将来のキャリアに関する相談まで、具体的な回答を提供します。
資格取得に関する質問
受験資格について
Q:「看護師経験3年ですが、まだ資格取得は早いでしょうか?」 A:経験年数は3年以上あれば受験資格としては十分です。ただし、特定行為の内容によっては、より多くの臨床経験があった方が研修をスムーズに進められます。まずは興味のある分野で十分な経験を積むことをお勧めします。
費用と期間について
Q:「資格取得にかかる総費用と期間を教えてください。」 A:特定看護師の場合、研修費用は50万円から150万円程度で、期間は8ヶ月から2年です。診療看護師は大学院で学ぶため、2年間で200万円から300万円程度が必要です。ただし、医療機関からの支援制度や奨学金制度を利用できる場合もあります。
研修・学習に関する質問
働きながらの学習について
Q:「フルタイムで働きながら資格取得は可能ですか?」 A:可能です。特定看護師の場合、eラーニングを活用した研修プログラムも多く、働きながら学ぶことができます。診療看護師の場合も、社会人向けの夜間コースや長期履修制度を設けている大学院があります。ただし、実習期間は一定期間の休職が必要な場合もあります。
学習内容の難しさについて
Q:「臨床推論や医学的な内容についていけるか不安です。」 A:確かに初めは戸惑うことも多いですが、段階的に学習を進められるようカリキュラムが組まれています。また、多くの研修機関で補習制度や個別指導の体制が整っているので、基礎からしっかり学ぶことができます。
資格取得後の実践に関する質問
業務範囲について
Q:「実際にどのような医療行為が可能になりますか?」 A:特定行為として、気管カニューレの交換、創傷処置、投薬の調整など、38行為21区分の医療行為が可能になります。ただし、実施できる行為は研修を修了した区分に限られ、医師の包括的指示のもとで行います。
給与への影響について
Q:「資格取得後の給与はどのように変わりますか?」 A:医療機関によって異なりますが、特定行為手当や専門職手当として月額2万円から5万円程度の加算がある場合が多いです。また、職位の変更に伴う昇給も期待できます。
キャリアパスに関する質問
将来の展望について
Q:「資格取得後のキャリアパスについて教えてください。」 A:急性期医療、慢性期医療、在宅医療など、様々な分野での活躍が期待できます。また、教育者としての道や、研究者としてのキャリアも選択可能です。特に地域医療では、その専門性を活かした実践が求められています。
転職について
Q:「資格取得を機に転職を考えていますが、需要はありますか?」 A:医療機関の機能分化が進む中、高度な実践能力を持つ看護師へのニーズは高まっています。特に、地域医療支援病院や在宅医療の分野では、積極的な採用が行われています。
実践での不安や課題
医師との関係について
Q:「医師との関係性は変わりますか?」 A:より対等なパートナーとしての関係が築けるようになります。特定行為の実施に関する信頼関係が深まり、より建設的な議論や提案が可能になります。ただし、これには丁寧なコミュニケーションと実績の積み重ねが重要です。
責任の範囲について
Q:「医療行為の責任範囲が不安です。」 A:特定行為は医師の包括的指示のもとで実施され、その範囲内での責任となります。医療安全管理体制の中で、明確な手順とプロトコルに基づいて実践することで、適切なリスク管理が可能です。
まとめ
診療看護師と特定看護師は、これからの医療を支える重要な専門職として注目を集めています。両資格は、実質的には同じ制度を指す場合が多いものの、それぞれの特徴と取得方法には違いがあります。
資格選択の際は、自身のキャリアビジョンや目指す医療実践の方向性、所属施設のニーズなどを総合的に考慮することが重要です。より詳しい情報や、実践者の声を知りたい方は、【はたらく看護師さん】の会員登録がおすすめです。
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