医療現場でのSNS活用が広がる中、看護師には特有の注意点や配慮が必要となっています。
本ガイドラインでは、患者のプライバシー保護や職業倫理の遵守を基本に、効果的なSNS活用の方法を解説します。
実践的な事例やQ&Aを交えながら、現場で即活用できる具体的な指針を提供します。
この記事で分かること
- 患者のプライバシーを守りながら効果的にSNSを活用する方法
- 医療従事者としての職業倫理を遵守したSNS運用の具体的な指針
- 情報セキュリティとリスク管理の実践的な対策
- 組織のガイドラインに沿った適切な情報発信の方法
- ワークライフバランスを見つめながらのSNS活用術
この記事を読んでほしい人
- 医療現場でSNSを活用したい看護師の方
- 医療機関の情報管理責任者の方
- 看護教育に携わる方
- SNSの活用に不安を感じている方
- 効果的な活用方法を考えている方
患者のプライバシー保護

医療従事者として最も重要な責務の一つである患者のプライバシー保護について、SNS活用における具体的な注意点と対策を解説します。
医療現場における情報管理的な重要性を冷静に、適切な情報発信を行うための基本的な考え方から実践的な対策まで、システム的に説明していきます。
個人情報の取り扱い基準
患者の個人情報保護は医療従事者の最も重要な責務の一つです。
SNSでの情報発信において、適切な情報管理と運用が求められます。
診療情報の取り扱い
医療情報の取り扱いには特に慎重な配慮が必要です。
患者の症例や治療内容に関する情報は、匿名化されていても、複数の情報を得ることで個人が特定される可能性があります。
医療現場での出来事をSNSで共有する際は、患者の権利とプライバシーを最優先に考える必要があります。
写真・動画投稿における注意事項
医療現場での写真や動画の投稿には細心の注意を払う必要があります。
施設内の設備や機器の写真であっても、故意に患者の情報が書き込まれる可能性があります。
投稿前には必ず複数の視点からチェックを行い、問題がないことを確認する必要があります。
位置情報の適切な管理
SNSの位置情報機能は、意図せず重要な情報を開示してしまう可能性があるため、適切な管理が必要です。
位置情報設定の確認
施設内での投稿時は、位置情報の設定を必ず確認する必要があります。
位置情報が付加されることで、患者のプライバシーが侵害される可能性があるためです。
施設情報の保護
医療施設の内部情報や運営に関する情報も、慎重に検討する必要があります。
特に緊急時の対応や施設のセキュリティに関する情報は、投稿を控える必要があります。
プライバシー保護の実践的な対策
日常的な業務の中で、プライバシー保護を確実に実践するための具体的な対策を実施することが重要です。
投稿前チェックリストの活用
投稿前には必ず確認すべき項目を定め、チェックリストとして活用することで、情報漏洩のリスクを極力抑えることができます。
定期的な投稿内容の見直し
過去の投稿内容を定期的に見直し、大切な情報が含まれていないことを確認することも重要です。
トラブル発生時の対応
プライバシーに関するトラブルが発生した際の適切な対応手順を踏まえ、準備しておくことが重要です。
即時対応の重要性
情報漏洩が疑われる場合は、該当する投稿を削除し、責任者や情報管理責任者に報告する必要があります。
再発防止策の策定
発生したトラブルの原因を分析し、再発防止策を一日かけて、より安全な情報管理体制を構築することができます。
職業倫理の遵守

医療従事者としての職業倫理は、SNSを活用する上で最も重要な基準となります。
医療従事者としての情報発信
専門職として発信する情報には高い信頼性が求められます。
その責任を正しく、適切な情報発信を心がける必要があります。
専門知識の発信
医療や看護に関する情報を発信する際は、科学的根拠に基づいた正確な情報のみを共有することが重要です。
個人の経験や意見を発信する場合は、それが個人的な見解であることを明確にする必要があります。
正しい表現方法の選択
医療や看護に関する専門用語を使用する際には、一般の方にも分かりやすい表現を心がける必要があります。
守秘義務の範囲と実践
医療従事者としての守秘義務は、SNS上でも同様に適用されます。
守秘義務の対象範囲
守秘義務の対象となる情報には、患者の個人情報だけでなく、施設内で知り得た情報全般が含まれます。
施設の運営方針や内部情報、同僚の個人情報なども、慎重に進める必要があります。
日常的な実践方法
守秘義務を日常的に実践するためには、前の内容確認を習慣化することが重要です。
特に写真や動画を投稿する際は、背景に書き込む情報にも注意を払う必要があります。
組織の評判への配慮
医療機関の認知性は、所属する医療従事者の心構えによって大きく影響を受けます。
組織の価値観の理解
所属する医療機関の理念や価値観を十分に視野に入れ、それに沿った情報発信を心がける必要があります。
組織の評判を損なう可能性のある投稿は、厳に慎まなければなりません。
正しい情報発信の基準
医療機関に関する情報を発信する際は、組織の広報方針につき、適切な承認プロセスを経る必要があります。
エラー情報対策
医療に関する誤った情報の拡散を防ぐことも、職業倫理の重要な要素です。
情報の確認と検証
医療や看護に関する情報を共有する際は、その情報周知性を十分に確認することが重要です。
エラー情報への対応
誤った医療情報を発見した場合は、正しい方法で訂正する情報を発信することも検討する必要があります。
倫理的判断の実践
日々の投稿活動において、常に倫理的な判断を行うことが求められます。
投稿前の倫理的考察
投稿内容が職業倫理に照らして適切かどうか、複数の視点から検討する必要があります。
継続的な倫理観の向上
医療技術の進歩や社会情勢の変化に応じて、求められる自己倫理観も変化していきます。定期的な研修や子ども学習、倫理観を更新し続けることが重要です。
情報セキュリティ

医療従事者のSNS利用に関して、情報セキュリティの確保は患者の個人情報保護と医療機関の健全性を維持するための要です。
本セクションでは、具体的なセキュリティ対策と実践方法について解説します。
アカウント管理の基本
適切なアカウント管理は、情報セキュリティの基盤となります。医療従事者として、より高度な注意が必要です。
パスワード設定と管理
強固なパスワードの設定と定期的な更新は、セキュリティ対策の基本になります。
数字、英字、記号を組み合わせた12文字以上のパスワードを使用し、定期的な変更を行うことが推奨されます。
また、各SNSプラットフォームで異なるパスワードを使用することで、セキュリティリスクを低減することができます。
第二段階認証の活用
アカウントの安全性を高めるため、二段階の設定を必ず行う必要があります。
スマートフォンの認証アプリやSMSを利用した認証を併用することで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減することができます。
デバイスセキュリティの確保
SNSへのアクセスに使用するデバイスのセキュリティ管理は重要です。
端末管理ポリシー
業務用端末と私用端末を明確に区別し、それぞれに適切なセキュリティ設定を行う必要があります。
特に業務用端末では、不必要なアプリケーションのインストールを避け、常に最新のセキュリティアップデートを適用することが重要です。
アプリケーションの管理
SNS アプリケーションは常に最新バージョンを使用し、セキュリティパッチを適用することが重要です。
また、信頼できない第三者アプリケーションとの連携はどうしても必要です。
不正アクセス対策
不正アクセスの予防と早期発見のための当面の対策が重要です。
アクセス監視
定期的にアカウントのアクセス履歴を確認し、不審なログイン活動がないかチェックする必要があります。
不審な活動を発見した場合は、パスワードの変更など適切な対応をとることが重要です。
セキュリティ設定の確認
プライバシー設定やセキュリティ設定を定期的に確認し、必要に応じて更新することが重要です。
特に、投稿の公開範囲やアカウントの検索可能性などの設定には注意が必要です。
インシデント対応
セキュリティインシデントが発生した場合の対応手順を踏まえ、準備しておくことが重要です。
初期対応の手順
アカウントの不正利用や情報漏洩が疑われる場合は、閲覧パスワードの変更や該当するSNSプラットフォームへの報告を行う必要があります。
また、施設の情報セキュリティ担当者への報告も忘れずに行う必要があります。
事後対応と再発防止
インシデント発生後は、原因の分析と再発防止策の策定を行うことが重要です。
また、必要に応じて関係者への説明や謝罪も検討する必要があります。
セキュリティ教育
継続的なセキュリティ教育、職員全体のセキュリティ意識を高めることが重要です。
定期的な研修
最新のセキュリティ確保や対策について、定期的な研修を実施することが推奨されます。
特に、新しい手口のサイバー攻撃や、SNSに特化したセキュリティリスクについての注意が重要です。
日常的な意識の向上
セキュリティに関する情報を日常的に共有し、職員間で注意喚起を行うことで、組織全体のセキュリティレベルを向上させることができます。
コミュニケーション管理

SNSを活用した効果的なコミュニケーションには、医療従事者としての正しい判断と対応が求められます。
正しい投稿内容の管理
医療従事者としての専門性と信頼性を維持しながら、効果的な情報発信を行うことが重要です。
投稿内容の基準
医療や看護に関する情報を発信する際は、科学的根拠に基づいた内容を選択することが重要です。
表現方法の工夫
専門的な内容を一般の方にも分かりやすく伝えるため、適切な例示や図表の活用を検討することが有効です。
患者・同僚との関係性構築
オンライン上での患者や同僚との関係性には、特別な配慮が必要です。
患者とのコミュニケーション指針
SNS 上の患者との直接的なコミュニケーションは原則としてさけることが推奨されます。
医療相談や質問を受けた場合は、適切な診療チャネルへの誘導を行う必要があります。
職場内のコミュニケーション管理
同僚とのSNS上でのコミュニケーションにおいても、専門職としての品位を認めることが重要です。
職場内の問題や人間関係に関する投稿は控え、建設的な情報共有を心がける必要があります。
炎上防止と対応
SNS上でのトラブルを未然に防ぐため、万が一の事態に適切に対応するための準備が重要です。
予防策
投稿前には内容の適切性を十分に確認し、意見を考える可能性のある表現や、感情投稿を気にすることが重要です。
また、物議を醸す(議論を呼ぶ)ような話題に関する投稿は特に慎重に行う必要があります。
トラブル発生時の対応
トラブルが発生した場合は、冷静かつ迅速な対応が求められます。
必要に応じて投稿の削除や訂正を行い、組織の広報担当者に早急に報告することが重要です。
クレーム対応の基本
SNSでのクレームや批判的なコメントへの対応には、専門的かつ冷静な姿勢が求められます。
初期対応の重要性
クレームを受けた際は、まず相手の意見に耳を傾け、十分な指摘を示すことが重要です。
感情的な応答を避け、事実に基づいた丁寧な説明を心がける必要があります。
組織的対応の必要性
重大なクレームや組織全体に関わる問題については、個人での対応は避け、組織の広報担当者や社長と相談しながら、適切な対応を検討する必要があります。
組織のガイドライン

医療機関におけるSNS活用では、組織として統一された方針とガイドラインの遵守が必須です。
本セクションでは、組織のガイドラインの理解と実践について、具体的な方法を解説します。
施設ポリシーの理解
医療機関ごとに定められたSNSポリシーを正しく、遵守することが重要です。
基本方針の確認
所属する医療機関のSNSに関する基本方針を十分理解することが必要です。
特に情報発信の範囲、禁止事項、推奨される投稿内容などについては、明確に把握しておく必要があります。
部門別ガイドライン
看護部門特有の規定や制限事項について、正確な理解が求められます。
承認プロセス
組織として適切な情報発信を行うための承認プロセスを踏まえ、遵守することが重要です。
投稿前の確認手順
業務に関連する情報を発信する際は、定められた承認プロセスに応じる必要があります。
緊急時の対応手順
緊急時や災害時など、通常の承認プロセスを経ることが困難な状況における対応手順についても、事前に確認しておく必要があります。
報告体制の確立
SNS活用報告に関する体制を正しく、適切に運用することが重要です。
定期報告の実施
SNSの活用状況や効果について、定期的な報告を行うことが求められます。
投稿内容の分析、反応の確認、問題点の洗い出しなど、継続的なモニタリングが必要です。
問題発生時の報告ルート
問題が発生した際の報告ルートを明確に把握し、トラブルなく報告ができる体制を整えることが重要です。
研修制度の活用
組織が提供する研修制度を積極的に活用し、SNS活用スキルの向上を目指していくことが重要です。
必須研修の受講
SNS活用に関する基本的な研修やコンプライアンス研修など、組織が決める必須研修を確実に受講する必要があります。
スキルアップ研修への参加
より効果的なSNS活用のため、オプショナルな研修プログラムにも積極的に参加することが推奨されます。
ワークライフバランス

医療従事者のSNS活用に関して、業務とプライベートの適切な境界を設定し、健全なワークライフバランスを維持することは限りなく重要です。
本セクションでは、SNS活用における時間管理と精神衛生の維持について解説します。
業務時間中のSNS利用
業務時間内のSNS利用については、明確なルールと基準を設定することが重要です。
時間管理の基本原則
業務時間中のSNSの使用は、患者ケアや通常業務に支障のない範囲で行う必要があります。
特に緊急性の高い患者対応中は、SNSの使用を控えることが求められます。
業務関連の投稿管理
業務に関連する投稿を行う場合は、適切な時間帯を選択し、計画的に実施することが重要です。
患者対応の合間や休憩時間を活用し、効率的な情報発信を心がける必要があります。
プライベート利用の境界設定
業務とプライベートのSNS利用の境界を明確に設定することが重要です。
アカウントの使い分け
業務用アカウントとプライベートアカウントを適切に活用することで、効率的な情報管理と精神的な負担の軽減を行うことができます。
それぞれのアカウントの目的と運用方針を明確にすることが重要です。
オフタイムの管理
勤務時間外でのSNS活用については、自分の生活リズムやプライベートな時間を尊重した運用が必要です。
メンタルヘルスケア
SNS活用に伴うストレスや精神的な負担に適切に対処することが重要です。
ストレス管理
SNSでの情報発信や反応へのプレッシャー、ネガティブな反応への対処など、精神的なストレスに適切に対応することが必要です。
必要に応じて、上司や同僚に相談することも推奨されます。
デジタルデトックス
定期的にSNSから時間を忘れて、精神的なリフレッシュを行うことが重要です。
休暇中や休日には、意識的にSNSの使用を控える時間を作ることが推奨されます。
付録
このガイドラインの実践をサポートするための具体的なツールと参考資料を提供します。
日常的なSNS活用における判断基準や、トラブル対応の指針として活用してください。
実践的なチェックリスト
SNSを活用する際の基本的な確認事項と、定期的な自己点検のためのツールを提供します。
投稿前の確認事項
投稿内容の適正性、個人情報の保持、セキュリティリスクなど、投稿前に必ず確認すべき事項についてまとめています。
特に写真や動画を含む投稿の場合は、より注意な確認が必要です。
定期的な自己点検項目
アカウント設定やセキュリティ状態、過去の投稿内容など、定期的に確認が必要な項目について解説します。
トラブル対応シナリオ
SNS利用時に発生する可能性のある様々なトラブルについて、対応手順を体系的に整理しています。
情報漏洩時の対応手順
患者情報や施設情報の漏洩が疑われる場合の初動対応から、再発防止策の策定までの一連の流れを説明します。
クレーム対応の手順
SNS上のクレームや批判的なコメントへの対応手順について、具体的なステップを示しています。
組織としての対応が必要な場合の判断基準も含まれます。
事例集
実際に発生した事例や想定されるシナリオをもとに、適切な対応方法を解説します。
トラブル事例と解決策
過去に発生した代表的なトラブル事例について、問題点の分析と具体的な解決策を提案します。
同様の事態を予防するための注意点も含めて解説します。
好事例の紹介
効果的なSNS活用の成功事例について、具体的な取り組み内容とその成果を紹介します。
これらの事例は、今後のSNS活用の参考として活用できます。
関連法規・ガイドライン
SNS活用に関連する法規制やガイドラインについて、重要なポイントを解説します。
法的規制の概要
医療情報の取り扱いに関する法規制や、SNS利用に関連する各種規制について、実務に即した形で解説します。
コンプライアンスの視点から特に注意が必要な事項を中心に説明します。
業界ガイドライン
医療業界におけるSNS活用に関する各種ガイドラインについて、その要点と実践における留意点を解説します。
おしえてカンゴさん!

看護師の皆様からよくいただくSNS活用に関する質問について、経験豊富なカンゴさんが分かりやすくお答えします。
Q1:患者さんとSNSで繋がってもいいですか?
カンゴさん:現役の患者さんとSNSでつながることは推奨されません。
退院後であっても、プロフェッショナルな関係性を維持するために、SNSでの交流は控えめにすることをお勧めします。
Q2:看護師として医療情報を発信するときの注意点は?
カンゴさん:医療情報を発信する際は、必ず科学的根拠のある情報を選び、出典を信頼することが重要です。
また、個人の経験に基づく内容を発信する場合は、それが個人の見解であることを明確に示す必要があります。
Q3:仕事の様子を投稿したいのですが、どこまでOKですか?
カンゴさん:業務内容の投稿には細心の注意が必要です。
施設の方針を必ず確認し、承認を得た内容のみを投稿しましょう。
写真や動画を投稿する際は、患者さんの個人情報はもちろん、医療機器のモニター画面や書類なども写り込まないよう注意が必要です。
Q4:SNSで医療相談を受けた場合はどう対応すべきですか?
カンゴさん:SNS 上の個別の医療相談には応じるべきではありません。
相談者に対しては丁寧にその旨を説明し、適切な医療機関の入場を行わせます。
緊急性が高いと判断される場合は、救急医療機関の受診を勧めることも必要です。
Q5:炎上してしまった場合の対処法は?
カンゴさん:まずは冷静で賢く、感情的な返信は絶対に避けましょう。
問題のある投稿はとりあえず削除し、最悪の場合は広報担当者に報告することが重要です。
必要に応じて褒めや訂正を行う場合も、組織の指示に従って対応しましょう。
また、今後の予防策として、投稿前のチェック体制を改めることをお勧めします。
Q6:プライベートアカウントでも気をつけることは?
カンゴさん:プライベートアカウントであっても、医療従事者としての社会的責任は変わりません。
特に写真投稿時は施設や患者さんの情報が書き取られないよう注意が必要です。
まとめ
医療従事者のSNS活用は、適切に運用することで大きな可能性を広げるツールとなります。
日々進化するSNSの特性を広く把握し、患者のプライバシー保護や職業倫理を基本に、セキュリティ対策もしっかりと行っていきましょう。
また、個人のSNS活用方針を明確にし、ワークライフバランスを守りながら、持続可能な運用を守ることが重要です。
【はたらく看護師さん】では、さらに詳しい情報や実践的なアドバイスを提供しています。