看護師の仕事は立ち仕事が多いうえ、患者の介護のため力仕事も多く腰に負担がかかることが多い職業です。そのため、多くの看護師は腰痛に悩まされているという調査結果が出ていますが、過酷な業務であればなおさら正常な健康状態で行いたいですよね。
そこで本記事では、腰痛に悩む看護師のために予防法や改善方法について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
腰痛は看護師の職業病
看護師の腰痛は、立ち仕事や患者の介助・移動など体力を多く使う業務が主な要因とされています。中腰での作業や身体を捻る動作が多く、これによって足腰への負担が大きく、慢性的な腰痛に悩む看護師が少なくありません。このようなことからも、腰痛は看護師にとって職業病と言えるでしょう。
しかし、重症化すれば業務に支障をきたす可能性もあるため、予防や改善対策が重要です。看護職は立ち仕事や患者のケア、移動作業が多いため、他の職種に比べて腰痛の発生率が高いとされています。特に、社会福祉施設や医療保健業界では、腰痛が多い職場の一つであり、全体の約8割が腰痛を抱えています。
国の統計では医療保健業界の腰痛発生率は低いとされていますが、看護職の場合は「患者さんの生命に関わる仕事」の意識から無理をしてしまう傾向があるため、実際の腰痛の実態は深刻と言えます。腰痛の有無は看護職の離職意向にも影響を与えており、看護職場における腰痛予防は人材確保の観点からも重要な課題となっています。
参考元:日本看護協会「腰痛予防対策について」
看護師が腰痛を抱えがちな原因は?

それでは、なぜ看護師の多くが腰痛を抱えているのか、その原因をご紹介していきます。
立ち仕事がメインで座る時間が少ない
看護師の業務は主に立ち仕事であり、患者のケアや巡回、診療補助などを行う際、長時間座ることができません。連続して立ちっぱなしで働くことは、腰部への負担を増加させ、筋肉の緊張や疲労を引き起こしやすくなります。
中腰になる作業が多い
看護師の業務では、患者さんのケアや介助において、抱え上げたり中腰の状態で作業することが少なくありません。これらの動作は腰への負担が大きく、不自然な姿勢を取ることが多いため、腰痛の主な要因となっています。
これらの姿勢での作業を減らすためには、工夫が求められます。例えば、ベッドの高さを適切に調節することや、患者さんを起こす際に片膝をベッドに乗せるなどの配慮が重要です。腰への負担を最小限に抑えつつ、安全で効率的な作業を心がけましょう。
患者さんの移動や介助
看護師の業務において、患者さんの移動や介助は肉体労働が中心です。特に、トイレ動作や移乗時には患者さんを持ち上げる必要がありますが、腰に大きな負担がかかるため、腕の力だけで持ち上げようとするのは避けるべきです。
また、移乗時や移動中においても、患者さんを支えながら腰をひねると、筋肉に過度の負担がかかり、腰痛のリスクが高まります。
腰に負担をかけない工夫や適切な体勢を心がけることで、腰痛の予防につながります。適切な介助技術や身体の使い方を習得し、安全かつ効果的な患者さんの移動や介助を行いましょう。
不規則な生活リズム
看護師の職業特性により、夜勤や交代勤務といった不規則な勤務体制が一般的です。このため、生活リズムが乱れがちになります。十分な休息を確保できず、筋肉が適切に回復せず、疲労が蓄積されることで、腰痛が発生するリスクが高まります。
また夜勤時の作業環境が適切でない場合、例えば温度や照明が適切でないなどの状況も、腰痛を引き起こす要因となり得ます。特に冷えは腰痛と直結する要因であり、適切な温度を保つことが重要です。
ストレス
近年、ストレスが原因で自律神経の乱れが生じ、その結果腰痛を含む身体的不調が増えています。ストレスの蓄積は、腰痛だけでなく睡眠障害や頭痛などさまざまな不調につながる可能性があり、注意が必要です。
ストレスの適切な管理やストレス発散法の活用は、腰痛の予防だけでなく、全体的な健康維持にも重要です。定期的な運動やリラックス法、趣味の時間を確保することで、ストレスを軽減しましょう。また、ストレスを抱えている場合は、専門家のサポートを受けることも有効です。
<看護師・ナースのリアルな声>普段の腰に負担がかかるような業務はありますか?
看護師が腰痛になるデメリット
看護師が洋右通を発症すると多くのデメリットが出てしまいます。どのようなデメリットがあるのかご紹介します。
看護の仕事に制約が出る
腰痛がひどくなると、看護師の仕事に制約が出ることがあります。例えば、患者さんの移動や介助業務が難しくなり、適切なケアを提供することが難しい場合があります。これにより、看護業務の質や効率が低下する可能性があります。
看護師を続けなくなる場合もある
腰痛が慢性的になり、治療や対策を講じても改善しない場合、看護師の職業を続けることが難しくなることがあります。腰痛によって仕事が辛くなり、職場を離れることを余儀なくされることもあるでしょう。
ひどい場合は日常生活に支障が出る
ひどい腰痛の場合、日常生活にも支障をきたすことがあります。例えば、歩行や家事、趣味などが制約され、生活の質が低下する可能性があります。腰痛が慢性的になると、その影響が広がることがあります。
腰痛予防と改善のために心がけること

このように、腰痛になることで多くの業務に支障をきたし、重度であれば退職も視野に入れなくなってしまうため、普段から腰痛にならないための対策、または腰痛を改善するための取り組みが必要になってきます。
ここでは、どのような方法で腰痛と向き合うことができるのか解説していきます。
腰に負担のかからない姿勢で作業する
患者のケア時には、腕の力だけでなく体全体を使って作業することが大切です。腰や足に負担がかかるのを避けるため、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて重心を落とすことを意識しましょう。足の力も活用することで、最小の力で作業が行え、体位交換や移乗の介助が効果的に行えます。
例えば、オムツ交換や体位変換などの介助を行う際は、ベッドの高さを調整して前かがみの状態にならないようにしましょう。スタッフと患者さんからの距離が近づけば、前かがみにならずに介助ができます。高さを調節できない場合は膝を曲げる、足を広げるなどで腰を落とし、重心を低くした状態で介助すると良いでしょう。
また、長時間同じ姿勢を保つことは腰に負担をかけます。立ちっぱなしや座りっぱなしという場合には、定期的に姿勢を変えたり、軽いストレッチや運動を取り入れたりして、腰への負担を軽減しましょう。意識的な動作の変化が、腰痛の予防に有効です。
疲れにくい靴を選ぶ
長時間の勤務中に最適な靴を選ぶことは、足や腰への負担を最小限に抑える重要な要素です。看護師が着用する靴は、腰の自然なカーブを保ちつつ安定感のあるものが望ましいです。ナースシューズの選択は、この安定感と健康的な姿勢を保つ上で重要な役割を果たします。
ストレッチや体操を取り入れる
腰痛に対する体操やストレッチはさまざまありますが、インターネットで検索すると、数多くの予防や改善策をみつけることができます。これらは仕事の合間に手軽に行えるものが多いため、職場全体で導入することも可能です。
軽度の腰痛であれば、体操やストレッチで改善する可能性もあります。 日常の休憩時間や自宅で、腰痛の予防や改善に有益なストレッチを積極的に取り入れる習慣を持つことが重要です。また、血行を良くするために、ゆっくりとお風呂に浸かる時間も効果的です。
簡単に実践できるストレッチ方法として、まず両足を大きく開き、後ろに置いた方の膝を床に近づけるように下げます。この状態を20秒間伸ばし、その後足を逆にして同様の動作を繰り返します。これらのストレッチは、腰痛が発生していない場合でも日常的に継続することが重要です。
マッサージを受ける
自身で行うストレッチと併用して、定期的にマッサージを受けることも有効です。マッサージを受けることで得られる心地よいリラックス感は、腰痛予防にも効果的です。
コルセットの着用する
腰痛の予防や改善に効果的な手段として、コルセットの着用が挙げられます。腰痛は、腰部への過剰な負担によって引き起こされることがあります。
腰痛は放置すれば悪化する恐れがあるため、早期の対策が重要です。特に、仕事中に腰痛が支障となる場合は、コルセットの着用が役立ちます。コルセットは腹圧を高め、腰回りの安定感を与えることで、筋肉への負担を軽減します。これにより、腰の動きが制限され、介助などの際に腰痛が発生しにくくなります。
ただし、長時間の装着は背筋や腹筋の筋力低下につながる可能性があるため、必要な場面で適切に利用することが重要です。また、正しい装着方法を説明書などで確認し、適切に利用することがポイントです。
もし腰痛を発症してしまった場合は?
もし腰痛を発症してしまった場合、看護師や介護士の腰痛は、状況によっては労災として認定されることがあります。看護師の場合、腰痛は大きく分けて災害性腰痛と非災害性腰痛の2種類に分類されます。
災害性腰痛は、突然起こる原因で、健康な状態から急に腰痛が発生する場合に該当します。一方、非災害性腰痛は、慢性的な腰痛が悪化する場合など、症状が進行する中で発生するものです。どちらの腰痛も、医師が治療の必要性があると判断すれば、労災として認定される可能性があります。
しかし、現状では労災認定される腰痛のほとんどが災害性腰痛とされています。それでも、明らかに仕事が原因で腰痛が発生した場合には、速やかに医師の診察を受けることをお勧めします。
<看護師・ナースのリアルな声>腰痛にならないための要望対策はしていますか?
腰痛に悩む看護師におすすめの転職先

腰痛により今の職場がつらいと感じているのであれば、腰痛に優しい職場への転職も視野に入れるのも一つの手段です。
ここからは、腰痛持ちでも関係なく仕事ができるおすすめの職場をご紹介していきます。
眼科
眼科は腰痛に悩む看護師の方におすすめの転職先の一つです。眼科での看護業務は、一般的には立ち仕事が少なく、座って作業する機会が多いため、腰への負担が比較的少ない環境と言えます。また、眼科施設の多くは比較的狭いスペースでの勤務となるため、歩き回る機会が減少することも腰への負担を軽減する要因となります。
また、患者さんの介助が少ないため、それによる腰への負担もありません。ただし、眼科施設において手術を行っている場合は、手術介助などで立ちっぱなしになることがあるため、注意が必要です。転職を検討する際には、手術関連の業務がどの程度あるか事前に確認することが重要です。
耳鼻科
耳鼻科も、腰痛を抱える看護師の方にとって比較的適した職場です。多くの耳鼻科施設が病棟を持たず、小規模クリニックが一般的であるため、頻繁に立ち上がって移動する機会が少ないという利点があります。
また、残業や夜勤が少ない傾向があり、日々の仕事後にしっかりと身体を休める時間を確保しやすい環境も整っています。これらの要因から、耳鼻科は腰痛やヘルニアを抱える看護師にとって穏やかな勤務環境を提供するのに適した選択肢と言えます。
<看護師・ナースのリアルな声>腰痛に悩まないおすすめの転職先を教えてください
腰痛に悩む看護師にはつらい職場

逆に腰痛に悩む看護師がつらいと感じる職場は以下の通りです。
総合病院の外来
総合病院の外来では、常に広い病院内で患者さんを案内し、1日中立ったり歩いたりすることが求められます。昼休みをとる余裕もなく、午後半ばまで立ちっぱなしや歩きっぱなしという日々も珍しくありません。
また、介助をしながら患者さんを移動させる機会も多く、さまざまな診療科の中でも特に腰への負担が大きいと言えます。本来、外来の看護業務は基本的に腰への負担が少ないとされていますが、広範で忙しい総合病院においては、歩くことが最も大きな負担となり得ます。
小児科
小児科は、15歳までの子どもが主な患者となる診療科で、さまざまな症状で受診する患者が多い特徴があります。このため、患者の数が多く、ナースは長時間立ちっぱなしで歩き回ることが求められます。また、自力で歩けない患者も多いため、介助の機会も頻繁に発生する可能性があります。
高齢者福祉施設
高齢者福祉施設での勤務は、介護士が入所者のケアをメインで担当すると思われるかもしれませんが、実際には看護師も非常に忙しい日々を送っています。施設では入所者の介護・介助が主に介護士やヘルパーの役割となりますが、看護師の仕事も決して楽ではありません。
患者のさまざまな測定や薬の管理、点滴など、病棟での業務と同様の作業が常に求められます。これに加えて、中腰の姿勢をとる機会が多く、忙しく歩き回ることも多いため、腰への負担が増えがちです。
病棟勤務
病棟での勤務経験がある方ならお分かりかと思いますが、病棟勤務では腰への負担が非常に多い業務が日常的に発生します。入院患者をベッドやストレッチャーに移動させる機会が多く、おむつ交換などの介助業務を一日中行う必要があります。
さらに、入浴やトイレの介助など、患者の体重を支えながら移動するケースも頻繁にあります。また、点滴の管理や栄養の補給などの細かな作業でも、中腰の姿勢が必要とされ、重いものを持ち上げなくても、腰に負担がかかることを実感することが多いでしょう。
<看護師・ナースのリアルな声>特に腰に負担がかかる業務は何ですか?
腰痛持ちの看護師に嬉しいノーリフトとは?
腰痛持ちの看護師にとって嬉しい「ノーリフト」の導入は、近年、医療や介護の現場において腰への負担軽減を重視したアプローチとして注目されています。
ノーリフトはノーリフトケアとも呼ばれており、福祉用具や介助器具を導入することで、人の力に頼らず患者の移動をサポートし、看護師の腰への負担を減らすことを目的としています。
腰痛やヘルニアは看護師にとって深刻な課題であり、そのまま放置すると職務への影響や患者へのサービスにも悪影響を及ぼす可能性があります。このため、ノーリフトを導入している職場は、看護師の健康を守りつつ、患者への質の高いケアを提供することを重視しています。
ただし、導入している全体の数はまだ少ないため、もしこのような医療機関を見つけたいという場合は、転職エージェントを活用するのがおすすめです。自身の体調や要望に合ったノーリフトを導入している職場を見つける手助けをしてくれます。
<看護師・ナースのリアルな声>ノーリフトが楽な点を教えてください?
まとめ
この記事では、看護師が抱える大きな悩みである腰痛について解説してきました。
腰痛は看護師の職業病ともいえます。若いうちから対策を怠ると慢性化し、看護師としてのキャリアに悪影響を与える可能性もあります。腰痛の慢性化を避けるために、日常的な対策が重要です。また、腰痛対策だけでなく、適した職場選びも重要です。
例えば、眼科や耳鼻科では座って作業する機会が多く、腰への負担が比較的少ないです。それに対して病棟勤務や高齢者福祉施設では腰への負担が大きくなる傾向があります。
腰痛を軽減し、仕事と健康を両立させるために、日常的なケアや適した職場選びが求められます。看護師としての長いキャリアを築くために、自身の健康を大切にしましょう。