
医療現場において、患者さんの状態を正確に評価し、適切なケアを提供することは看護師の重要な役割です。
本記事では、重症度判断における効果的な評価方法と指標の活用について、実践的な視点からお伝えします。
この記事で分かること
- 重症度判断に必要な観察ポイントとアセスメント基準
- エビデンスに基づく緊急度評価の具体的な手法
- 系統的な患者評価と記録の実践的なテクニック
- 各種スケールを活用した客観的な重症度判定方法
- ケーススタディで学ぶ実践的な判断プロセス
この記事を読んでほしい人
- 重症度判断の基準を明確にしたい看護師
- アセスメント能力の向上を目指す方
- 新人指導を担当する看護師
- リスク管理の強化に取り組む医療機関のスタッフ
- 急性期病棟での実践力を高めたい方
重症度判断の基本的な考え方
医療現場における重症度判断は、患者さんの生命予後を左右する重要な看護実践です。
科学的根拠に基づいた判断基準と、豊富な臨床経験から得られる直感的な判断を組み合わせることで、より正確な評価が可能となります。
このセクションでは、重症度判断に必要な基本的な考え方と実践的なアプローチ方法についてご説明します。
重症度判断における3つの基本視点
客観的データの収集と分析
バイタルサインは重症度判断の基礎となる重要な指標です。
血圧、脈拍、呼吸数、体温、意識レベルなどの測定値を個別に評価するだけでなく、それらの相互関係や経時的変化にも注目する必要があります。
例えば、血圧低下と脈拍上昇が同時に起こる場合は、循環血液量減少を示唆する重要なサインとなります。
また、呼吸数の増加は様々な病態の早期警告サインとなることが多く、特に注意深い観察が必要です。
バイタルサインの解釈のポイント
体温変化については、単なる数値の高低だけでなく、発熱パターンや解熱傾向なども重要な判断材料となります。
また、血圧については、普段の値(ベースライン)からの変動幅を考慮することが重要です。患者さんによって正常値は異なるため、個別性を考慮した判断が必要となります。
主観的症状の評価手法
患者さんの訴えや表情、行動の変化は、数値化できない重要な情報源です。
特に、痛みの性質や強度、不快感の程度、息苦しさの自覚症状などは、患者さん本人からの情報が非常に重要です。
また、普段と様子が違うという家族からの情報も、重症度判断の重要な手がかりとなります。
コミュニケーション技術の活用
患者さんから正確な情報を得るためには、適切なコミュニケーション技術が必要です。
開放型の質問と閉鎖型の質問を使い分け、患者さんの状態に応じた聞き取り方を工夫することが重要です。
意識レベルの低下や認知機能の障害がある場合は、非言語的なコミュニケーションにも注意を払う必要があります。
背景情報の統合的評価
基礎疾患、服薬状況、年齢、既往歴などの情報は、重症度判断において重要な要素となります。
特に、抗凝固薬の使用や免疫抑制状態にある患者さんでは、通常とは異なる経過をたどる可能性があることを念頭に置く必要があります。
エビデンスに基づく判断プロセス
系統的なアプローチの重要性
重症度判断においては、Primary Survey(一次評価)とSecondary Survey(二次評価)の概念を理解し、実践することが重要です。
まず、気道、呼吸、循環の評価を行い、次に詳細な全身状態の評価へと進むという手順を守ることで、重要な所見の見落としを防ぐことができます。
判断基準の標準化
医療機関内での判断基準の標準化は、チーム医療の質を向上させる重要な要素です。
NEWS(National Early Warning Score)やMEWS(Modified Early Warning Score)などのスコアリングシステムを活用することで、客観的な評価が可能となります。
実践における注意点
経時的な変化の重要性
単一の時点での評価だけでなく、症状や徴候の経時的な変化を捉えることが重要です。特に、急激な変化や予期せぬ経過をたどる場合は、より慎重な評価と対応が必要となります。
チーム医療における情報共有
重症度判断は個人の判断に頼るのではなく、チームでの情報共有と判断の確認が重要です。
定期的なカンファレンスやブリーフィングを通じて、多職種間での情報共有と判断の統一を図ることが推奨されます。
継続的な学習の必要性
医療の進歩に伴い、重症度判断の基準や方法も日々更新されています。最新のエビデンスや診療ガイドラインを学び続けることで、より質の高い看護実践が可能となります。
効果的な観察ポイントと評価指標

患者さんの状態を正確に評価するためには、系統的な観察と適切な評価指標の活用が不可欠です。
このセクションでは、各系統別の具体的な観察ポイントと、それらを評価する際の重要な指標について詳しく解説します。
循環器系の評価
バイタルサインの詳細評価
循環動態の評価において、血圧と脈拍の測定は基本となりますが、その測定値の解釈には十分な注意が必要です。
収縮期血圧と拡張期血圧の差(脈圧)にも注目し、循環血液量の状態を推測することが重要です。
また、脈拍については、回数だけでなく、リズムや強さ、左右差なども重要な情報となります。
末梢循環の評価方法
皮膚の色調、温度、爪床の毛細血管再充満時間(CTR)は、末梢循環の状態を評価する重要な指標です。
特にCTRは2秒以内が正常とされ、これを超える場合は末梢循環不全を疑う必要があります。四肢末端の冷感や蒼白、チアノーゼの有無についても、注意深い観察が必要です。
呼吸器系の評価
呼吸状態の包括的アセスメント
呼吸数は重要なバイタルサインの一つですが、単なる回数だけでなく、呼吸パターンや呼吸の深さ、呼吸音の性状なども重要です。
また、会話時の呼吸困難の有無や、呼吸補助筋の使用状況も観察のポイントとなります。
呼吸音の聴取と解釈
呼吸音の聴取では、左右差や部位による違いに注目します。
副雑音の種類(水泡音、笛声音、捻髪音など)を識別し、その強さや出現タイミングを評価することで、呼吸器系の状態をより詳細に把握することができます。
SpO2モニタリングの実際
パルスオキシメーターによるSpO2測定は簡便で有用な方法ですが、末梢循環不全や体動がある場合は測定値が不正確になることがあります。
そのため、患者さんの全身状態や測定環境を考慮した解釈が必要です。
神経系の評価
意識レベルの評価手法
意識レベルの評価にはJCSやGCSを用いますが、これらのスケールを正しく使用するためには、十分な訓練と経験が必要です。
また、意識レベルの変化は他の身体症状に先行して現れることがあるため、わずかな変化も見逃さないよう注意が必要です。
瞳孔所見の観察ポイント
瞳孔径、対光反射、左右差の有無は、中枢神経系の状態を反映する重要な所見です。瞳孔所見の観察は、適切な照明環境下で実施し、経時的な変化を記録することが重要です。
運動機能の評価
四肢の運動機能、筋力、感覚について、左右差や経時的な変化を評価します。特に、突然の片麻痺や感覚障害の出現は、脳血管障害を示唆する重要なサインとなる可能性があります。
消化器系の評価
腹部症状の観察
腹痛の性状、部位、持続時間などの情報収集に加えて、腹部の視診、聴診、触診による系統的な評価が重要です。
腸蠕動音の聴取や腹部の張り具合、圧痛の有無なども重要な観察ポイントとなります。
消化器症状の詳細評価
嘔吐や下痢などの消化器症状がある場合は、その性状、回数、量などを詳細に記録します。また、食事摂取状況や水分バランスの評価も重要です。
全身状態の評価
体温管理と熱型の観察
発熱のパターンや解熱傾向は、疾患の経過を反映する重要な指標となります。また、体温の測定部位による違いや、日内変動についても注意を払う必要があります。
皮膚所見の観察
発疹や浮腫、出血斑などの皮膚所見は、全身状態を反映する重要な情報源です。これらの所見の部位、範囲、性状を正確に記録し、経時的な変化を追跡することが重要です。
疼痛評価の実際
痛みの評価には、NRSやVASなどの客観的なスケールを用いることが推奨されます。また、痛みの性質や増悪因子、軽減因子についても詳細な情報収集が必要です。
観察結果の統合と解釈
データの総合的評価
各系統の観察結果を個別に評価するだけでなく、それらの相互関係や全体像を把握することが重要です。
特に、複数の異常所見が存在する場合は、その因果関係や優先順位を考慮した解釈が必要です。
記録と報告の重要性
観察結果は、経時的な変化が分かるように正確に記録することが重要です。また、重要な所見については、速やかにチームメンバーへ報告し、情報共有を図ることが必要です。
この系統的な観察と評価の手法を身につけることで、より確実な重症度判断が可能となり、適切な看護介入につながります。
各種評価スケールの解説

重症度判断を客観的かつ標準化された方法で行うために、様々な評価スケールが開発されています。このセクションでは、臨床現場で広く使用されている主要な評価スケールについて、その特徴と使用方法を詳しく解説します。
意識レベル評価スケール
Japan Coma Scale (JCS)
日本で最も広く使用されている意識レベル評価スケールです。刺激に対する反応性を3群10段階で評価します。
覚醒度によってI桁(1~3)、II桁(10~30)、III桁(100~300)に分類され、数値が大きいほど意識障害が重症であることを示します。
評価時の注意点
JCSの評価では、まず声かけから開始し、反応が乏しい場合は徐々に強い刺激を与えていきます。ただし、過度に強い刺激は避け、患者さんの安全と快適性に配慮することが重要です。
Glasgow Coma Scale (GCS)
国際的に広く使用されている意識レベル評価スケールです。開眼(E)、言語反応(V)、運動反応(M)の3項目について評価を行い、合計3~15点で表します。神経学的評価において標準的な指標として使用されています。
早期警告スコアリングシステム
National Early Warning Score (NEWS)
呼吸数、酸素飽和度、体温、収縮期血圧、心拍数、意識レベルの6項目について、それぞれスコア化して合計点を算出します。7点以上を高リスクとし、緊急対応の必要性を判断する指標として活用されています。
Modified Early Warning Score (MEWS)
NEWSをより簡略化したスコアリングシステムです。各項目のスコアリング基準が簡素化されており、迅速な評価が可能です。特に、一般病棟での使用に適しています。
急性期アセスメントツール
Rapid Emergency Medicine Score (REMS)
年齢、平均動脈圧、心拍数、呼吸数、酸素飽和度、GCSの6項目を評価します。救急外来での予後予測に有用とされています。
評価結果は0~26点で表され、点数が高いほど重症度が高いことを示します。
Sequential Organ Failure Assessment (SOFA)
臓器機能不全の程度を評価するスケールです。
呼吸器系、凝固系、肝機能、循環器系、中枢神経系、腎機能の6項目について、それぞれ0~4点でスコア化します。集中治療領域で特に重要な評価ツールとなっています。
疼痛評価スケール
Numerical Rating Scale (NRS)
痛みの強さを0~10の数値で評価します。0は痛みなし、10は想像できる最も強い痛みを表します。患者さんの主観的な痛みの程度を客観的に数値化できる利点があります。
Visual Analogue Scale (VAS)
10cmの直線上で痛みの程度を視覚的に表現するスケールです。一方の端を「痛みなし」、もう一方の端を「最も強い痛み」として、患者さんに現在の痛みの程度を指し示してもらいます。
スケール使用上の注意点
これらの評価スケールは、あくまでも判断を支援するツールであり、これらの結果のみで臨床判断を行うことは適切ではありません。
患者さんの全体的な状態や背景因子を考慮した総合的な評価が必要です。また、定期的なスタッフ教育を通じて、評価の標準化と精度の向上を図ることが重要です。
実践的ケーススタディ
実際の臨床現場での重症度判断をより具体的に理解するために、代表的な症例を通して学んでいきましょう。以下の4つのケースでは、観察から判断、対応までのプロセスを詳しく解説します。
Case 1:術後患者の急変予測
症例概要
A氏、65歳男性。胃がんに対する幽門側胃切除術後2日目。術後経過は概ね良好でしたが、夜間巡回時に状態の変化が認められました。
観察所見と評価
術直後のバイタルサインは安定していましたが、夜間巡回時に血圧が132/85mmHgから95/60mmHgへ低下、脈拍は78回/分から96回/分へ上昇していました。
SpO2は98%から95%(室内気)へ低下し、軽度の腹痛の訴えがありました。腹部の張りと軽度の圧痛を認め、ドレーンからの排液量が増加傾向にありました。
アセスメントのポイント
バイタルサインの変化から循環血液量減少が疑われ、腹痛の訴えと合わせて術後出血の可能性を考慮する必要がありました。
特に、血圧低下と脈拍上昇の組み合わせは、代償機能が働いている段階であることを示唆しています。
対応と経過
直ちに主治医に報告し、緊急採血とCT検査を実施。術後出血が確認され、緊急止血術が行われました。早期発見により、重篤な状態に陥る前に適切な治療介入が可能となりました。
Case 2:呼吸不全の早期発見
症例概要
B氏、78歳女性。慢性心不全の既往があり、肺炎で入院中です。夜間に呼吸状態の悪化を認めました。
観察所見と評価
呼吸数が16回/分から24回/分に増加し、SpO2は酸素2L/分投与下で95%から90%に低下。軽度の意識レベル低下(JCS 1-1)を認め、両側肺野で水泡音が聴取されました。
起座呼吸の傾向があり、頸部の呼吸補助筋の使用が観察されました。
アセスメントのポイント
呼吸数の増加は呼吸不全の早期サインとして重要です。また、水泡音の出現と起座呼吸は心不全の増悪を示唆する所見として注目すべきポイントでした。
対応と経過
NEWSスコアを用いた評価で7点となり、高リスク状態と判断。当直医に報告し、利尿薬の投与と酸素投与量の調整が行われました。継続的なモニタリングにより、状態の改善を確認できました。
Case 3:敗血症の早期認識
症例概要
C氏、45歳男性。糖尿病で外来通院中。発熱と全身倦怠感を主訴に救急外来を受診しました。
観察所見と評価
来院時、体温38.9℃、血圧85/50mmHg、脈拍112回/分、呼吸数26回/分、SpO2 94%(室内気)でした。
意識レベルはJCS 1-1、全身の冷感と末梢チアノーゼを認めました。右下腿に発赤、腫脹、熱感を伴う創部を認めています。
アセスメントのポイント
qSOFAスコアを用いた評価で、呼吸数増加、血圧低下、意識レベル低下の3項目中2項目が該当し、敗血症が疑われる状態でした。
糖尿病の既往も重要なリスク因子として考慮されました。
対応と経過
直ちに感染症プロトコルを開始し、血液培養採取後に広域抗菌薬が投与されました。早期からの輸液療法と厳密なバイタルサイン管理により、状態の安定化が図られました。
Case 4:脳卒中の早期発見
症例概要
D氏、70歳女性。高血圧症で内服加療中。デイルームで過ごしている際に、突然の構音障害と右上肢の脱力が出現しました。
観察所見と評価
発症時、血圧185/95mmHg、脈拍86回/分、呼吸数18回/分、SpO2 97%(室内気)でした。意識レベルはJCS 1、瞳孔は正円同大で対光反射は迅速でした。構音障害と右上肢の筋力低下(MMT 2/5)を認めました。
アセスメントのポイント
突然発症の神経学的症状であり、高血圧の既往もあることから、脳卒中(特に脳梗塞)の可能性が高いと判断されました。
FAST(顔面、腕、言語、時間)による評価も実施し、発症時刻の特定が重要でした。
対応と経過
脳卒中プロトコルを開始し、直ちに脳神経外科医に報告。
頭部CT、MRI検査が実施され、左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断されました。発症から4.5時間以内であったため、t-PA療法の適応となりました。
これらのケーススタディを通じて、重要なポイントは以下の通りです。
早期発見のためには系統的な観察と適切なアセスメントが不可欠であり、わずかな変化も見逃さない注意深い観察が重要です。
また、状態変化を察知した際の迅速な報告と対応も、患者さんの予後を大きく左右します。標準化された評価ツールを活用しながら、個々の患者さんの特性を考慮した総合的な判断を行うことが求められます。
重症度判断における記録と情報共有

重症度判断の質を高めるためには、適切な記録方法と効果的な情報共有が不可欠です。
このセクションでは、記録の重要性とチーム医療における効果的な情報共有の方法、さらにデジタルツールの活用について解説します。
重症度判断の記録方法
経時的記録の重要性
患者さんの状態変化を時系列で把握するためには、正確な記録が不可欠です。
バイタルサインの変動、症状の推移、実施した観察や処置などを、時間軸に沿って記載することで、状態の変化を視覚的に捉えることができます。
また、記録する際は主観的情報と客観的情報を明確に区別し、エビデンスに基づいた判断過程を明示することが重要です。
SOAPフォーマットの活用
Subjective(主観的情報)、Objective(客観的情報)、Assessment(アセスメント)、Plan(計画)の要素を含むSOAP形式での記録は、重症度判断の過程を論理的に示すことができます。
特にアセスメントの部分では、観察された情報からどのような判断に至ったのか、その根拠を明確に記載することが求められます。
効果的な情報共有の方法
チーム内コミュニケーション
医療チーム内での情報共有においては、SBAR(Situation、Background、Assessment、Recommendation)などの標準化されたコミュニケーションツールを活用することで、必要な情報を漏れなく効率的に伝達することができます。
特に緊急性の高い状況では、簡潔かつ的確な情報共有が求められます。
カンファレンスの活用
定期的なカンファレンスは、多職種間で患者さんの状態や治療方針について討議し、情報を共有する重要な機会です。
それぞれの専門的な視点からの意見を集約することで、より適切な重症度判断と治療方針の決定が可能となります。
デジタルツールの活用
電子カルテシステムの効果的利用
電子カルテシステムでは、バイタルサインの推移をグラフ化したり、アラート機能を設定したりすることができます。これらの機能を活用することで、重症度の変化をより早期に察知することが可能となります。
また、過去の記録との比較も容易に行うことができ、経時的な評価に役立ちます。
モバイルデバイスの活用
タブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイスを用いることで、ベッドサイドでの記録や情報参照が容易になります。
また、チーム内での即時的な情報共有も可能となり、迅速な対応につながります。
記録と情報共有における注意点
個人情報保護への配慮
患者さんの個人情報を含む記録の取り扱いには、細心の注意が必要です。特にデジタルツールを使用する際は、情報セキュリティに関する規定を遵守し、適切な管理を行うことが重要です。
記録の質の維持
記録の質を維持するためには、定期的な監査やフィードバックが必要です。また、スタッフ教育を通じて、記録の重要性や適切な記載方法について理解を深めることも重要です。
このように、適切な記録と効果的な情報共有は、質の高い重症度判断を支える重要な要素となります。
デジタルツールの活用と併せて、チーム全体で情報を共有し、活用していく体制を整えることが求められます。
看護師さんからのQ&A「おしえてカンゴさん!」

現場で働く看護師の皆さまから寄せられた、重症度判断に関する疑問や悩みについて、経験豊富なカンゴさんが分かりやすく解説します。
実践的なアドバイスを通じて、より確実な重症度判断ができるようにしていきましょう。
基本的な重症度判断について
Q1:夜間の重症度判断で特に気をつけることは何ですか?
夜間は患者さんの訴えが曖昧になりやすく、観察機会も限られます。そのため、巡回時の観察を丁寧に行い、わずかな変化も見逃さないようにすることが重要です。
特に、睡眠中の呼吸状態や循環動態の変化には注意が必要です。また、夜間は当直医への報告を躊躇しがちですが、気になる変化があれば迷わず相談することをお勧めします。
Q2:バイタルサインの中で、特に注目すべき組み合わせはありますか?
血圧低下と脈拍上昇の組み合わせは、循環血液量減少を示唆する重要なサインです。
また、呼吸数増加とSpO2低下の組み合わせは、呼吸不全の進行を示す可能性があります。これらの組み合わせを認めた場合は、原因検索と対応を急ぐ必要があります。
実践的なスキルアップについて
Q3:新人看護師が重症度判断の能力を向上させるコツを教えてください。
経験豊富な先輩看護師とのカンファレンスへの参加や、症例検討会での学習が効果的です。
また、判断に迷った際は必ず相談することを習慣づけましょう。日々の実践の中で、「なぜそう判断したのか」という根拠を常に考える習慣をつけることも重要です。
Q4:観察技術を向上させるためには、どのような方法がありますか?
系統的な観察方法を身につけることが重要です。たとえば、頭から足先まで順序立てて観察する習慣をつけることで、見落としを防ぐことができます。
また、普段から正常な状態をしっかりと把握しておくことで、異常の早期発見につながります。
具体的な判断場面について
Q5:意識レベルの微妙な変化を評価する際のポイントは何ですか?
普段の患者さんの状態をよく知っておくことが重要です。会話の内容や反応の速さ、表情の変化なども重要な観察ポイントとなります。
また、JCSやGCSなどの評価スケールを用いる際は、チーム内で評価基準を統一しておくことが必要です。
Q6:急変の予兆を見逃さないためには、どのような点に注意すべきですか?
バイタルサインの変化だけでなく、患者さんの表情や活気、食欲の変化なども重要な予兆となることがあります。
また、「何となく様子がおかしい」という看護師の直感も大切にし、より注意深い観察を心がけましょう。
特殊な状況での判断について
Q7:認知症のある患者さんの重症度判断で気をつけることは何ですか?
認知症のある患者さんは症状を適切に表現できないことがあります。そのため、普段の様子をよく知っておき、行動や表情の変化を注意深く観察することが重要です。
また、ご家族や普段のケアに関わるスタッフからの情報も重要な判断材料となります。
Q8:複数の基礎疾患がある場合の重症度判断のコツを教えてください。
各疾患の特徴と相互作用を理解しておくことが重要です。また、優先順位をつけて対応することが必要です。不明な点がある場合は、各専門医への相談を積極的に行いましょう。
記録と報告について
Q9:医師への報告をより効果的に行うコツはありますか?
SBARなどの標準化されたコミュニケーションツールを活用し、簡潔かつ的確に情報を伝えることが重要です。
また、報告前に必要な情報を整理し、自身のアセスメントも含めて報告することで、より適切な対応につながります。
Q10:重症度判断の記録で特に気をつけるべきポイントは何ですか?
客観的な所見と主観的な情報を明確に区別して記載することが重要です。
また、どのような根拠でその判断に至ったのかを明確に記載することで、チーム内での情報共有がより効果的になります。時系列での変化が分かるような記録を心がけましょう。
まとめ
重症度判断は患者さんの生命予後を左右する重要なスキルです。
バイタルサインの的確な評価、系統的な観察、標準化されたスケールの活用、そして適切な記録と情報共有が、確実な重症度判断の基礎となります。日々の実践を通じて判断力を磨き、チーム医療の質の向上につなげていくことが大切です。
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