私、辞めてもいいですか
第5話
3月の私に、任せる
ノートを、表紙から読み返した。
表紙の裏に、たった一行。
「私、辞めてもいいですか」
震えた字だった。
一ページ目の一行目には、消した跡がある。
「3年は続けたほうがいいから」
その下に、あとから書いた字が残っていた。
「誰かに決められた数字ではなく、自分の体と気持ちで決めたい」
二ページ目には、給料明細が貼ってある。
三ページ目。
夜勤六回と四回の、手取りの差。その下に、毎月出ていくものを並べた自分の字。
四ページ目は、しばらく白いままだった。
私はそこに、遅れて書いた。
「登録した。世界は変わらなかった」
最後のページには、まだ何も書いていない。
そこに何を書くかを、私はまだ知らない。