私、辞めてもいいですか
第2話
「3年は続けろ」は、誰のため?
夜勤明けの部屋で、私はノートを開いた。
Xで引用カンゴさんにもらった宿題。
Xで引用辞める理由ではなく、残ってる理由を書くこと。
Xで引用最初の一行目に、私はこう書いた。
Xで引用「3年は続けたほうがいいから」
Xで引用書いた瞬間、手が止まった。
Xで引用それは理由というより、誰かの声だった。専門学校の先生。実習先の指導者。新人研修で話してくれた先輩。親戚のおばさん。SNSの知らない人。
Xで引用みんな、同じことを言った。
Xで引用「とりあえず3年」
Xで引用「3年は続けろ」は、励ましの顔をしている。でも、限界の人には、あと何日倒れずにいれば許されるのかを数えさせる言葉になる。
Xで引用次の日勤で、後輩の美咲が点滴更新のタイミングを間違えた。
Xで引用大きな事故にはならなかった。すぐ気づいて、すぐ直せた。けれど、美咲の顔色は紙みたいに白くなっていた。
Xで引用「すみません、私、向いてないです」
Xで引用昔の自分を見ているみたいだった。
Xで引用私は反射的に言った。
Xで引用「大丈夫。最初はみんなそうだから。3年くらい経ったら慣れるよ」
Xで引用言ってから、息が止まった。
Xで引用私が嫌だった言葉を、私が渡していた。
Xで引用しんどかった言葉ほど、なぜか後輩に渡してしまうことがある。自分が耐えた時間を、意味のあるものにしたくなるから。
Xで引用美咲は小さくうなずいた。でも、そのうなずきは安心ではなかった。逃げ道をひとつ閉じられた人のうなずきだった。
Xで引用